梅の湯@立川で風呂あがりの生ビールと一万冊の漫画
世の中で一番旨い酒の飲み方は何かと考えると結局、風呂あがりに生ビールをグビグビではないかと思うのですよ。
実はよく友達と、一緒に銭湯に行ってから、飲み屋に行くなんてことをやっています。銭湯でじっくりと温まってから、飲み屋に駆け込むのです。生ビールを飲み干すのです。正に甘露、正に至福。この時、風呂から上がってから、ビールを飲むまでの時間は短ければ短いほど美味しくなります。つまり、銭湯から飲み屋までの距離は短いほどいい。
この考えを突き詰めると、銭湯の更衣室や休憩室で飲むのが最高ということになります。おなじみフルーツ牛乳などと一緒に缶ビールを置いている銭湯なんかもあるんですが、やっぱりここは生ビールをジョッキで飲みたいものです。
探してみると、結構あるんですね、生ビールが飲める銭湯。そこで、そのひとつ立川にある「梅の湯」に行ってみることにしました。
立川に来たのは久しぶりですが、大きい町ですねぇ。都会ですね。
目指す梅の湯は、立川駅北口から6分ほど。立川女子高の隣なので、それを目印に行くとわかりやすいですね。
ほほう。なかなか立派な建物じゃないですか、梅の湯。
入り口に貼紙色々。営業時間は15時から24時ですか。早くからお風呂に入れるのは嬉しいなぁ。「今週 1階男性 2階女性」というのは、週によって入れ替えがあるということですね。今日は1階か。どっちの方が広いのかなぁ。
入ってみて驚きました。
あれ。
あら。
なんか、やたらと本棚が多いじゃないですか。そしてその本棚には漫画がぎっしり。
漫画読み放題というわけですか。これは嬉しいな。風呂あがりにビールに漫画。
なんですか、これは天国ですか。
まずは自動販売機で入浴券を買います。入浴だけなら大人460円。ここはせっかくなので、サウナも付けちゃいますか。合計760円。さらに岩盤浴30分500円なんてのもありますが、今日は止めときましょう。
あとレンタルタオルなんてのもあるんですね。ボディソープやシャンプーは浴場に備え付けであるようなので、手ぶらで来ても大丈夫ってことですよ。フェイスタオル、バスタオル、そして身体を洗う用のナイロンタオル三点セットを借ります。200円ナリ。
では行ってまいります。バッグの中にはタオル三点セットね。梅の湯さん、「銭湯力」も高いんですよ。ハイパージェット風呂や電気風呂、座風呂。
そして露天風呂。
さらにサウナ。
お風呂の温度はややぬるめなので、じっくりと時間をかけて入浴を楽しめます。まだ明るい早めの時間から露天風呂なんか入ったりすると、もうそれだけで旅行気分というか、非日常感を楽しめたりしますよね。
意味もなく「あー」とか声を出してみたりして、身体中のストレスが抜けていきます。
あー、気持よかった。満喫した。
しかし、僕にはこの後、もっと気持ちのいいことが待ち受けているわけです。というか、そっちが本当の目的ですよ。
どーん! 生ビール中400円。
もう、一刻の猶予もありませんので、色々説明は後にして、早くいただかせてもらいますよ。
グビグビグビ……。
入浴とサウナで、芯から温まり切った身体の中心を冷た〜いビールが通り抜けます。爽やかな苦味と発泡感が、喉を刺激していきます。
カーッ!
たまんないね、こりゃ。心が震えるほど美味いね。もう一気にジョッキの三分のニくらいまで飲んじゃいましたよ。
で、いちおう、軽食のつまみなんかもあるわけです。やきそば、たこやき、おでんが各300円。
でも、ここは。
オール100円のスナック菓子でしょう。
バナナ味とかみかん味のポテチなんかもありますが、
歯ごたえのある「ギザギザ」と、カニカマをチョイスいたしました。
で、ポテチをバリバリ、ビールをングングやってますと、どうしても気になるのが、目の前の大量の漫画。
漫画、
漫画、
漫画。
いったい何冊あるのか、わからないほど大量の漫画ですよ。しかも品揃えが、実にいい感じです。その中から私、安田理央が選んだ「風呂あがりに読みたい漫画ベスト3」。
第3位『ママゴト』(エンターブレイン・刊/松田洋子・著)。
辛口ながらもホロリと来る日本漫画家協会賞優秀賞受賞の名作です。
第2位『ぷりぷり県』(小学館・刊/吉田戦車・著)。
個人的には吉田戦車の最高傑作だと思ってる作品です。物産展好きとしては、物産ネタがメインというのが嬉しい。
そして第1位は『ネイチャージモン』(講談社・刊/寺門ジモン、刃森尊・著)です!
寺門ジモンが肉料理やクワガタなどのウンチクを過剰なパッションで語りまくる暑苦しい漫画。読んでると、また汗が出てきちゃいそうですけどね。
てなわけで、漫画を読みながら、ビール飲んで、ポテチ食べて。何、この幸せな時間。自宅かと思えるほどのくつろぎ感。
カニカマも食べますよ。
マッサージチェアも利用しますよ(200円)。
ビールをもう一杯行こうかと思ったんですが、ちょうどサイダーフェアを実施中。全国のご当地サイダーが10種類も販売されています。
佐賀の「湯上がり堂サイダー」と大阪の「塩サイダー」をチョイス。
「湯上がり堂サイダー」、美味いんだけど、ちょっと量が少ないのが物足りないかなー。
ちょっとしょっぱ目の「塩サイダー」は汗をかいてる湯上がりに飲むには、なかなかいいかも。
気がつけば、休憩室は漫画を読むお客さんでいっぱい。しかも銭湯には珍しく若いお客さんが多いのです。ここは漫画喫茶か? しかも、恐ろしいことに二階にまで漫画棚がいっぱいあるんですよ。今日は二階は女湯なんですが、もちろん休憩室までは男性客も入れます。
ん、これはテーブル型テレビゲーム機じゃないですか。懐かしいな。しかも、2821種類のゲームが出来るとな?
んじゃま、やらせていただきましょうか。
お風呂入って、ビール飲んで、ポテチ食べて、テレビゲームやって……。なんでしょうね、この男の子の楽園みたいな場所は。せっかくなので、この素晴らしいお店を作られた店主の佐伯雅斗さんにお話を聞いてみました。
──いつからこんな銭湯を始めたんですか?
佐伯さん:梅の湯自体は、今年で創業75年、私で3代目なんですよ。
──わ、ずいぶん由緒ある老舗銭湯だったんですね。
佐伯さん:9年前に建て替えたんです。その時は、和のテイストを活かした落ち着いたムードにしたんですけど、そうしたらあまりお客さんが来てくれなかった(笑)。
──高級志向は受け入れられなかったと。
佐伯さん:それで、若いカップルなんかにも来てもらいたいなと考えたんです。でも、男女で来ると、女性の方がお風呂に入ってる時間が長いから、男は待つことになるでしょう? じゃあ、漫画でも読んでたら待つのも楽かなと思って、私の家にあった漫画を持ってきたんですよ。最初は千冊くらいでしたね。
──あ、自分の蔵書だったんですか。
佐伯さん:そのうち漫画がたくさんある銭湯ってことで話題になって、お客さんが来るようになったんですよ。そうなると『あの漫画無いの?』とか聞かれて無かったりすると、悔しいからどんどん揃えちゃった(笑)。もう本棚をたくさん置けるようにフロントも改装したりしてね。
──今、いったい何冊あるんですか?
佐伯さん:もう1万冊は超えましたね。
──1万冊!
佐伯さん:もともと集めるのが好きなんですよ。集めるというか、並べるのが好きっていう感じかな。ほら、『ワンピース』のフィギュアもたくさんあるでしょう?
──ありますね。店内の色々なところに綺麗に並べられてます。
佐伯さん:あれもフィギュアを並べるのが好きで……。実は以前は『ガンダム』を集めてたんですよ。でも、今は『ワンピース』の方が種類がたくさん出てるので、そっちに変更して。実は『ガンダム』はちゃんと見たことは無いし、『ワンピース』もそれほど熱心なファンじゃないんですけどね(笑)。
──フィギュアを並べるために! では漫画もそんなに好きじゃないんですか?
佐伯さん:好きですよ。でも、自分の趣味で揃えると、秋田書店とか日本文芸社の漫画ばかりになっちゃうから、その辺はバランスを考えて。
──あ、男臭い感じのが好きなんですね。しかし、こんなに漫画が読み放題だったら、いつまでも読んじゃいそうだな。
佐伯さん:何時間もいるお客さん、多いですよ。風呂に入る前に一、二時間読んで、風呂に入ってから、また一、二時間読むとか。
ちなみに今、佐伯さんのオススメ漫画は『キングダム』だそうです。
いや、しかし、何時間いても入浴料だけって、素晴らしいですね。昼は15時からやってるし、こんな店が近所にあったら、本当に毎日来ちゃいますよ。休日をずっとここで潰しちゃいますよ。風呂あがりに生ビールと山ほどの漫画……。
ああ、天国って立川にあったんだなぁ。
お店情報
梅の湯
住所:東京都立川市高松町3-13-2
電話番号:042-522-3800
営業時間:15:00~24:00
ウェブサイト:立川湯屋敷 梅の湯