牡蠣の達人に教わる「絶品すぎる牡蠣」ベスト10を食べ比べてみた

f:id:Meshi2_IB:20151027130159j:plain

牡蠣が食べたい!

お酒が美味しい季節だから! 特に理由はなくても、いつでも、プリップリジューシーな磯の香りたっぷりで、とろ〜りクリーミーな牡蠣が食べたい!

 

そこで、やってきました漁港! ではなくて恵比寿! 産直かき炉端焼き牡蠣ツ端」(かきつばた)。ここ「牡蠣ツ端」さんでは、全国から取り寄せた牡蠣を常に8種類以上、11月から2月のトップシーズンには15種類も取り揃えているのです。

取材日(2015年10月中旬)には10種類を用意してもらいました。

 

f:id:Meshi2_IB:20151027130154j:plain

おお!

 

f:id:Meshi2_IB:20151027130212j:plain

ひょおお~! 

 

f:id:Meshi2_IB:20151027130203j:plain

美味しい牡蠣の食べ方を指南してくれるのは店長の本田さん。

 

f:id:Meshi2_IB:20151027130213j:plain

本田さんは日本におけるオイスターバーの黎明期だった12年前、都内のオイスターバーの料理長として日本各地の牡蠣を取り扱っていました。それ以来、産地の生産者さんと直接取引きしているのだそうです。

 

「牡蠣のことならお任せください!

それぞれの牡蠣の特徴に合わせたお召し上がり方、美味しいお酒もご案内しますよ!」

 

そうそう、こちらは全国の銘酒もグラス(480円!)で楽しめます。牡蠣に合わせて色々いただいてみたいですね。

 

さて、早速オススメの牡蠣を準備していただきましょう。こうやって、ナイフを入れて……

f:id:Meshi2_IB:20151027130210j:plain

パカッ!

 

f:id:Meshi2_IB:20151027130204j:plain

「今の季節、まだ西の方の牡蠣が入ってきてないんですよ。11月になれば、広島三重福岡辺りからたくさん入ってきて15種類くらいになりますね。夏は夏で岩牡蠣があるんでやっぱり10種類くらいはありますね」

 

それぞれの牡蠣に合わせた味でいただけるようカキソースセットもあります。

f:id:Meshi2_IB:20151027130215j:plain

左から、とろろ昆布、ごま油+塩、ポン酢+もみじおろし、ワインビネガー、カクテルソース。

 

さてさて、いよいよ牡蠣のご紹介です。ちなみに牡蠣は基本的に、産地での表記です。あと、順番は順位ではありません。牡蠣の好みは人それぞれ。お好みの品種を見つけてくださいね。

 

トップバッターは、本日一番の濃厚さを誇るこちら!

NO.1 北海道 仙鳳趾(せんぽうし)

f:id:Meshi2_IB:20151027130155j:plain

f:id:Meshi2_IB:20151027130156j:plain

大きい!!!!

「非常にクリーミーで濃厚、白子みたいな濃厚さです。食べ方は生でも焼きでもOKですが、お好きな方はやっぱり生ですね。焼いても焼き縮みが少ないのでいいですよ」

 

こちらは白ワインビネガーでいただきます。いただきますっ!

f:id:Meshi2_IB:20151027130157j:plain

とろける! クリーミー! まさに海のミルク!

こちらに合わせていただくお酒は、「二世古」北海道)で。このお酒を作っている「蔵元 二世古酒造」さんは北海道で一番小さな酒蔵だそうで、加水調整をしない原酒にこだわっているそうです。

 

f:id:Meshi2_IB:20151027130208j:plain

「牡蠣と日本酒って、まあ何を合わせても美味しいんですが、目安として地域を合わせるのも良いんですよ。牡蠣って、森から流れ出て海に注ぐで育つじゃないですか。お酒も同じ水で作ったものが合うと思うんですよ」

 

さて、お次は

NO.2 宮城 浜市(はまいち) クリーミーパール 

f:id:Meshi2_IB:20151027130207j:plain

「小粒なんですがミネラル分を多く含んでいて濃厚です!」

 

f:id:Meshi2_IB:20151027130145j:plain

ポン酢+もみじおろしを添えて。お酒はこれも産地を合わせて「日高見」(宮城)。魚介系に合うのが自慢のお酒です。

 

どんどんいきます!

 

NO.3 兵庫 室(むろつ)

f:id:Meshi2_IB:20151027130218j:plain

これまた大きい! 丸みがありますね。「貝柱に甘みがあって、塩分とクリーミーさのバランスがいいです。これは洋風にしてみましょうか」

 

f:id:Meshi2_IB:20151027130142j:plain

カクテルソースを添えて。スペインのスパークリングワイン「カヴァ」でいただきます。ここだけ、オイスターバーになりました!

 

NO.4 宮城 浜市(はまいち)珠姫(たまひめ)

f:id:Meshi2_IB:20151027130211j:plain

「小粒でさっぱりめです。でも旨味は強いんですよ。こちらは生と焼き、両方いってみましょう!」

 

f:id:Meshi2_IB:20151027130214j:plain

生には、ごま油+塩を添えます! これはなかなか新鮮な味わい!

 

f:id:Meshi2_IB:20151027130143j:plain

お酒は「ひやおろし 浦霞(うらがすみ)」宮城)で。まろやかでふくらみのある味わいです。

 

そして、焼きます!

こちら「牡蠣ツ端」さんは炉端焼きも自慢なのです。

f:id:Meshi2_IB:20151027130200j:plain

じゅわあああ……

 

できた!

f:id:Meshi2_IB:20151027130144j:plain

左から、とろろ昆布、ポン酢+もみじおろし、ガーリックバターでいただきます。お酒は「菊姫」石川)で。まろやかで深みがあります。

 

f:id:Meshi2_IB:20151027130209j:plain

プルプル~!

ガーリックバターと牡蠣! 合わないわけがありません! っていうか絶品です!

  

NO.5 岩手 山田(やまだ)

f:id:Meshi2_IB:20151027130217j:plain

「大粒で身がふっくらしていて旨みがありますね」レモンを絞ってさっぱりと。

 

さて、いただきます!

f:id:Meshi2_IB:20151027130158j:plain

うお~! これもでかい! 口いっぱいに広がる、磯の香りがたまらない!

 

f:id:Meshi2_IB:20151027130205j:plain

お酒は「田酒」青森)で。旨味、幅もありながらキレの良い、飽きのこないお酒です。

 

さて、今度は外国産の牡蠣二種が登場。

NO.6 コフィンベイ オーストラリア ポートダグラス

NO.7 アイルランド アイリッシュプレミアム

f:id:Meshi2_IB:20151027130216j:plain

「外国の小さい牡蠣は、生で食べるのがほとんどですね。魚介類をあまり生で食べない外国の人も牡蠣だけは生で食べるんですよ」特にアイルランド産はフランスで好評だそう。

 

f:id:Meshi2_IB:20151027130146j:plain

ワインビネガーを添えて。

 

お酒はやはりフランスの白ワイン「シャブリ」。さっぱりした辛口です。フランスとかアメリカのオイスターバーでは、こういう小粒の牡蠣をダース単位で注文して、お酒と合わせて、ちゅるんちゅるん大量にいただくんですよね! あ~、行ってみたい!

 

おや? これは?

f:id:Meshi2_IB:20151027130201j:plain

「炉端の上で、牡蠣を干しているんです。乾燥すると同時に煙で燻されて奥深い香りがつくんですよ」

 

そして、この乾燥牡蠣をどうするかというと…

f:id:Meshi2_IB:20151027130147j:plain

牡蠣酒!

 

熱燗にした日本酒の中にさきほどの牡蠣が沈んでいるのが見えるでしょうか? 乾燥した牡蠣を注文を受けてから炉端で炙り、熱い日本酒に投入。濃縮された牡蠣のエキスがじんわりと浸み出したお酒……。

 

美味い! 美味くないわけがないでしょ!

 

お酒を飲み終わった後はもちろん、

f:id:Meshi2_IB:20151027130148j:plain

乾燥牡蠣本体もいただきます! ほどよく柔らかく戻っていて、濃厚な旨味も味わえます。

 

こちらの牡蠣の品種は、先ほど生と焼きでもいただいた宮城 浜市(はまいち)珠姫(たまひめ)なかなか使い勝手の良い品種なのですね。

 

さて、身体も温まってきたところで、お次は、

 

NO.8 北海道 厚岸(あっけし)

f:id:Meshi2_IB:20151027130149j:plain

 「こちらも大変濃厚でクリーミーなので有名です」実は筆者、前回このお店に来た時、一番強烈な印象が残ったのがこの厚岸産だったのです。こちらの厚岸、国内で唯一、牡蠣を一年中出荷できる産地だそうです。なので、一年中新鮮なものが生でいただけるというわけです。

 

f:id:Meshi2_IB:20151027130202j:plain

お酒は「磯自慢」静岡)で。丁寧な低温醸造による爽やかな飲み口です。

 

NO.9 岩手 大船渡赤崎(おおふなとあかさき) 

f:id:Meshi2_IB:20151027130150j:plain

「今の時期、わりとさっぱりしてますね」とろろ昆布を添えて。お酒は「ばくれん」山形)、こちらは超辛口です。さっぱりに超辛口! 硬派な組み合わせですね。

 

「実のところ、牡蠣って同じ産地でも時期によって味の違いが大きいんです。なので、濃厚でクリーミーなのが好きとか、さっぱりとか、コクがあるとか、香りが強めとか、好みを伝えていただければ、その時期にお好みの味になっているオススメの牡蠣をお出しできますよ!」

 

なるほど、実は予習していかなくても良かったと……。いや、でもやっぱり産地ごとの個性はあるのでね……。

 

さて、トリを飾るのは、

NO.10  宮城 女川(おながわ)

f:id:Meshi2_IB:20151027130151j:plain

「磯の香りが高くて濃厚ですね。薬味はなんでも合うと思うのですが……。お前、何が好き?」と、ここでプレス担当の奥様に訊く店長。「私、カクテルソース!」と力強く即答する奥様。

 

ということで、

f:id:Meshi2_IB:20151027130152j:plain

カクテルソースを添えて。お酒は「南部美人」岩手)で。フルーティーで後味すっきり、食事の味を引き立てるお酒だそうです。

 

さあ、みなさま、お目当の牡蠣は見つかりましたでしょうか?

 

私はぶっちゃけ、どれでもいいです! っていうか、全部美味しすぎ! 良いコンディションの牡蠣を美味しい味付けで、美味しいお酒を一緒にいただく……天国です!

f:id:Meshi2_IB:20151027130206j:plain

さあ、牡蠣を食べに行こう!

 

お店情報

産直かき炉端焼き『牡蠣ツ端』(かきつばた)

住所:東京渋谷恵比寿南1-9-2 A1ビル地下1階
電話番号:03-6452-3414
営業時間:平日11:30~14:30 17:00~24:00(LO.23:30)
土日祝日 17:00~24:00(LO.23:30)
定休日:無休
ウェブサイト:http://kaki-tsubata.com/

 

秋葉原に中華の“秘境”見つけたり。「過橋米線」で激レアな雲南料理を食べる

f:id:Meshi2_Writer:20151030210639j:plain

中国は広い。面積は日本の約25倍。冬はマイナス40℃以下という酷寒の地があるかと思えば、冬でも泳げてしまう常夏の場所すらある。国境を面しているのはロシア、モンゴル、北朝鮮、インド、カザフスタン、アフガニスタンにベトナムなど。実に14カ国にものぼっている。

中国の内陸、その最南部に雲南という名の省がある。

省とは日本でいう都道府県に当たる行政単位。県にあたるといっても雲南省だけで約4659万人(2012年末)、面積は約39万平米と日本とほぼ同じ。西にミャンマー、南にラオスとベトナムと面する内陸の山岳地帯という特徴を持っている。

緯度が低く、常夏の場所ばかりかと思いきや、山が多いため、常夏ではなく常春の場所があったり、万年雪をいただく5000メートル級の山があったりもする。気候や地形がバラエティに富んでいるため、南国の果物やキノコ類など、食材は豊富。中国の他の地域にはない特色ある料理が特徴だ。

 

雲南の山を越えると、気候や風景、人の顔や衣装がかわった

今回はそんな一風変わった雲南料理を食べさせてくれるレストランを紹介してみよう。と、その前に思い出話を披露させていただきたい。

 筆者は昔、雲南省を2カ月ほどかけて旅行したことがある。シベリア鉄道に乗って北京からモスクワへ向かうつもりがトラブルに巻き込まれて乗り遅れ、失意のなか、何のあてもなく向かったのが、雲南省だったのだ。出かけたのは1992年だから、もう20年以上前のことになる。省都の昆明(クンミン)から夜行バスで一晩、長いときは二晩かけて、あちこちに出かけていった。

f:id:Meshi2_Writer:20151030210420j:plain

ちなみにこの昆明、人口300万人を超えていて、年間を通して20℃を超えない気候から春城と呼ばれている。

 

f:id:Meshi2_IB:20160214094435j:plain

野を越え山を越え。ガードレールのない山道をすすんだり、あるときは震動のためにシートが壊れたり。田園風景を望んだり、落石に行く手を阻まれたりしながら、シートに座り、ひたすら耐えに耐え、目的地へ向かった。

 

f:id:Meshi2_IB:20160214094447j:plain

かつて川端康成が「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」と書いたように(『雪国』より)、山を越えると世界がかわった。雲南の山をバスで越えると、気候がかわり、風景がかわり、住んでいる人々の顔立ちや衣装がかわっていった。

 

f:id:Meshi2_IB:20160214094502j:plain

市場に行くとこの通り。売っている物も劇的にかわった。左上から時計回り順に芭蕉(バナナ)に菠萝蜜(パイン)、芒果(マンゴー)に椰子(ココナッツ)、そして甘蔗(サトウキビ)。

 

市場の中や道路沿いには露店があり、ありとあらゆる食材を扱っていた。写真には写っていないが、雷おこしのように固めた納豆やみそ、なれずしといった発酵食品が売られていて、中華料理というより日本料理に近い気がした。ミャンマーの国境近くの少数民族の路上市には日本でも食材として使われている蜂の子が売られていた。

もしかすると、漢民族の支配に絶えかね、南に逃げたのが雲南の人たちで、海を越え東に逃げたのが日本人ではないか。確証はないがそんな気がした。

 

下の写真は屋台で食べた麺類。右はミャンマー国境の街で食べたインド系の店主が作るカレー味のラーメン、左は肉団子たっぷりの麺。どちらも米の麺だった。

f:id:Meshi2_Writer:20151030210555j:plain

 

23年前の筆者。弱冠22歳。意外なことに現在と体型はほとんど変わっていない。にしても屋台の餃子は美味しかった。

f:id:Meshi2_Writer:20151030210600j:plain

 

スパイシーでホクホク感がたまらない山椒ナス

さて。昔話はこのぐらいにしておこう。筆者にとっては懐かしく、おそらくほとんどの『メシ通』読者にとっては珍しい、雲南省の料理を扱う店があるというので出かけてみた。それが今回紹介する「過橋米線」(かきょうべいせん)である。

秋葉原の電気街からほど近いところにあり、最寄りの駅は都営地下鉄の末広町駅。そこから徒歩1分だ。

f:id:Meshi2_Writer:20151030210606j:plain

 

平日、18時すぎの店内。この後1時間もしないうちに満席になった。

f:id:hotpepper-gourmet:20160222204019j:plain

 

店内の壁にはエジプトの遺跡によく見られる象形文字、ヒエログリフに似ている壁掛けが。これはナシ族が使うトンパ文字というものだろうか。

f:id:Meshi2_Writer:20151030210620j:plain

 

ちなみに雲南料理だが、お店のウェブサイトによると次の通り。

 

雲南省は、中国の西南部に位置し、年中春のような天候が続いており、「植物王国」「香料王国」「薬草の故郷」「キノコの故郷」などと呼ばれています。山の幸に恵まれ、豊富な天然食材にこだわり、各少数民族の食習慣や知恵を絞りながら「過橋米線」や「気鍋鶏」などを代表とする雲南特有の食文化が発展されてきたのです。雲南特産の味噌や宣威ハムを使いながら、古くから香りよく軽微な辛さや酸味を表す特徴が伝えられる一方で、新しい菜肴の創作方法を絶えずに代々の雲南人に探究されつつあります。

 

そう、「架橋米線」というのは料理の一種らしいのだ。ほとんどの日本人にはまだなじみがないのではないだろうか。

 

さて、お通しはピーナッツとキュウリ。小皿料理は30種類もあり、すべて298円。

f:id:Meshi2_Writer:20151030210626j:plain

 

ひとまず、現地風の飲み物「アモンドミルク」(298円)。現地の屋台にありそうな味だ。飲み物はソフトドリンクの他、ビール、焼酎、ワイン、日本酒、カクテルと各種取りそろえてある。中国酒は紹興酒、白酒などがメニューにあった。

f:id:Meshi2_Writer:20151030210623j:plain

 

雲南家庭料理の「山椒ナス」(894円)。ナスをニンニクとともに揚げてあって、まるでジャガイモのようなホクホク感。そしてかなりスパイシー! これは雲南で食べてないなあ。広すぎて網羅しきってないらしいぞ。

f:id:Meshi2_Writer:20151030210631j:plain

 

滋味深い鶏スープと、厚揚げと餃子のミックス料理

次はこの店の二大名物の一つで、代表的な雲南料理である「薬膳気鍋鶏」(やくぜんきなべどり、894円)。

f:id:Meshi2_Writer:20151030210639j:plain

店のウェブサイトには「雲南料理に使われる汽鍋(チーグォ)という、独特の形をした鍋に、食材と薬材を入れた料理です。まるで小さな、しゃぶしゃぶ鍋なのですが、穴が小さいところがポイントになります。蒸気を循環させて、中に入れた食材や漢方薬は時間をかけて蒸します」と紹介してあった。

一見したところ、鶏のスープといったところだろうか。しかし、鶏のダシが嫌というほど出ていて、中には鶏肉というより鶏ガラそのものといった骨だらけの鶏肉がぎっしり。同行した『メシ通』の担当編集者Mは唸りながら「こんなに濃い鶏ガラスープを食べたことがあるだろうか」とひと言。確かに濃厚! 

油っこいのに、身体の中から健康になっていくような、滋味深いスープだ。塩と少しの香辛料しかつかっていないのに、独特の濃厚さがある。表面には鶏の脂がギトギト浮いており、この脂と薬膳の効果なのか、身体が温まる感じ。

f:id:Meshi2_Writer:20151030210644j:plain

 

「老江湖豆腐」(ロウジャンフードウフ、745円)。一見すると、天飯か麻婆豆腐風。ところがレンゲで割って、口の中に入れると、厚揚げの中には餃子の具(ひき肉)という意外な組み合わせ。厚揚げの上にかかっている麻婆豆腐のタレという組み合わせも面白い。「俺のような餃子も厚揚げも好きなヤツにはたまらない料理ですよ」と編集M。

f:id:Meshi2_Writer:20151030210753j:plain

 

後でウェブで確認してみると、上にかかっていたのは麻婆豆腐のタレではなく、雲南の味噌なのだという。思ったよりは辛くなかった。

f:id:Meshi2_Writer:20151030210650j:plain

 

お店の名前にもなっている雲南省の伝統料理「伝統雲南過橋米線」(894円)。なんだかつけ麺のような見かけをしている。

f:id:Meshi2_Writer:20151030210653j:plain

これは筆者も省都、昆明で食べた記憶がある。フィルム時代だったのでけちって写真を撮らなかったが、油が膜となり、冷めにくく温かい麺だったと記憶している。

ちなみに過橋米線という変わった名前にはいわれがある。お店のウェブサイトから引用してみよう。

 

昔、ある秀才が蒙自の南湖にある小島で科挙の試験勉強に励んでいた。聡明な妻が食事を作って運ぶのだが、彼がすぐに食べないので、いつも冷めてしまう。ある時、妻が鶏のスープの壺を触ると熱い。中を見ると、上に油の熱い層があり、熱気を封じ込めていた。妻はこれにヒントを得、この後、夫に運ぶ麺のスープに鶏油を貼るようになり、夫に熱い麺を食べさせることができるようになった。いつも「橋を渡って行く」ので“過橋米線”という。

 

食べ方はかなり独特だ。麺以外の具は、鶏肉、豚肉、宣威ハム、チャーシュー、いかの皿、鶉卵、湯葉、もやし、豆苗の小皿。この順番でラーメン鉢に入れていくよう、店員から助言された。

f:id:Meshi2_Writer:20151030210656j:plain

 

 20年以上前なのでさすがに入れる順番は忘れていた。

f:id:Meshi2_Writer:20151030210709j:plain

 

具を入れて食べてみる。あっさりしているけど具だくさんな鶏だしのラーメン風。麺はラーメンにしてはやや太めで、色も白いので、ちょうど稲庭うどんのよう。

f:id:Meshi2_Writer:20151030210712j:plain

さきほどの「薬膳気鍋鶏」もそうだが、雲南料理は非常にヘルシーである。食べること自体が薬のような効果があるのかも知れない。

 

シメは「普洱茶(プーアル茶)」(298円)をホットで。このお茶、実は雲南省が原産のお茶なのだ。血圧を下げ、血の巡りを良くする効果があり、専門店で買うと値段はピンキリ。筆者も実は結婚式のお祝いに20年物をいただいたことがある。

f:id:Meshi2_Writer:20151030210727j:plain

 

身体に良さそうで、普通の中華とは少し違った独特な雲南料理。アキバの本店でぜひ食べてみて下さい。

f:id:Meshi2_Writer:20151030210715j:plain

おまけ:お店の壁にはこんな色っぽい壁掛けが!

 

お店情報

架橋米線

住所:東京都千代田区外神田6-5-11 MOAビル1F
電話番号:050-5834-5826
営業時間:11:30~14:30 、17:00~23:30 (LO23:00) 
定休日:無休
ウェブサイト:https://www.hotpepper.jp/strJ000678864/

www.hotpepper.jp

 

書いた人:西牟田靖

西牟田靖

1970年大阪生まれのノンフィクション・ライター。多すぎる本との付き合い方やそれにまつわる悲喜劇を記した「本で床は抜けるのか」(本の雑誌社)を2015年3月に出版。代表作に「僕の見た大日本帝国」「誰も国境を知らない」など。

過去記事も読む

ドイツでおでんを作ってみました

ああ、寒い……。

f:id:Meshi2_Writer:20151113084330j:plain

はじめまして、溝口シュテルツ真帆と申します。

ドイツはミュンヘンに嫁いで、はや1年半。

こちらは長くて暗~い冬が……まだまだ続いています。

 

外国暮らしをしていたって、体は純・日本製です。

日に日に恋しくなるのが、日本のたべもの。

そう、この寒さをいやしてくれるような、あったかいたべもの。

 

おでんが……!

 

 

おでんが恋しい……!

 

 

 そう、「あったかいおでん」に思いが募るばかりなんです!

 

f:id:Meshi2_Writer:20151113085910j:plain

※こころのイメージ。もちろんドイツではそう簡単に食べられません

 

そうだ……考えてみれば、ドイツにだっておでんに入ってるような野菜はある。

 

それにソーセージといえば、こっちが本場。
つくねの代わりになりそうなアレや、ちくわぶっぽいアレもあるじゃないの。

 

これ、もしかしていけるんじゃない?
そう、今回の記事のテーマは「ドイツでおでん」、これです。

 

わたし、作ってみせますとも!!

 

 

 

そもそもおでんの作り方がわからない

しかし、はじめから根幹をゆるがす大問題が。
わたし、食べるのは大好きなんですが、料理となると……まだまだ新米主婦。エヘッ

日本にいたころは「月に1度料理すればよいほう」でした。

冷蔵庫はいつでもすっからかん。

あ、コンロの上にずっと観葉植物を置いてたこともあったな……。
そう、それを見て昔の彼があきれてそのあとケンカになって……アハハ。

 

はい。

 

おでんなんて作ったことないんです!!

 

そして嫁いでみたら、ドイツは「料理しない派」には天国のようなところでした。
なんていうか……みんな、シンプルライフ? というか粗食?
冗談じゃなくてうちの夫、そしてうちの夫の家族、

みなさん「ハム・チーズ・パン」があれば満足なんです。

 

ええ、毎日でも。

 

 

これ誇張なしです!そんなこんなで1年半……。

 

まず、手っ取り早く日本の母親に聞きました。

 

一番の決め手はやっぱり、だし!
私は昆布だしのみで、鰹節は使いません

 

ふむふむ、なるほど。で?

 

味つけはしょうゆ、濃口は味が出すぎるので、薄口で。
お酒を少々。うどんつゆの素とか、鶏ガラスープの素を足してOK。
最後に味見をして、物足りなければ塩で味を調えてね

 

薄口しょうゆと、うどんのつゆや和風スープの素は自宅にない。

あるのは濃口しょうゆと料理酒(清水の舞台から飛び降りるつもりでドイツで買いました。たっかいんですよこっちだと!)、そしてだし昆布と鶏ガラスープの素は日本から持ち込んでたはず。

 

よし、これでだしはなんとかなりそう。

 

f:id:Meshi2_Writer:20151113090048j:plain

注:ここは本当にドイツです

 

 

おでん食材を求めていざ、ミュンヘンの街へ!

ミュンヘンにも日本食品専門店はありますが、価格は日本の数倍はあたりまえ。

せっかくですし、具は土地のものだけで挑戦です。

まずはミュンヘンで最もにぎわう市場、ヴィクトアーリエンマルクトへ!

 

 

f:id:Meshi2_Writer:20151113090128j:plain

「ヴィクトアーリエン」って、古いドイツ語で「備蓄食糧」という意味だそう。

上の写真に写っている手前のとんがった野菜、なんだかわかりますか?
これ、キャベツなんです。丸いキャベツより、柔らかくておいしいんですよ。

ロールキャベツやスープの具材、あるいはサラダにしたり。

ちなみに、ドイツ料理として有名なザワークラウトですが、最近は自宅で手作りする人って、こちらでもほとんどいないそう。手間のかかるものだそうです。

 

f:id:Meshi2_IB:20160217102504j:plain

市場のすぐそばには、精肉店が軒を連ねる通りがあります。

 

f:id:Meshi2_Writer:20151113090250j:plain

白ソーセージはミュンヘンの名物

地元の人は朝ごはんに食べます。

白ソーセージはいたみやすいので、冷蔵庫がなかった時代は早朝に作られたものを朝テーブルに並べていたそうなんですね。その名残のよう。

いまでも午前中しかオーダーできない正統派レストランも多いんですよ。


さっとゆでて食べれば、ぷりぷり、ふわっふわ

肉を表現するのになんですが、まるで魚肉ソーセージのような……。

一度食べればみんな大好きになる、軽くてやさしい味わいです。

 

うん、これはおでんにマストでしょう!

 

f:id:Meshi2_Writer:20151113090438j:plain

ここはミュンヘンの中央広場。向こうにそびえる塔はなんと市庁舎!

かわいい仕掛け時計もついています。

最初にここに立ったときは映画のヒロインにでもなった気分でしたねぇ。

 

 

f:id:Meshi2_Writer:20151113090509j:plain

さて次は、ビオ食品・製品のみを扱っているスーパーマーケットへ。

こちらのスーパーには「練りもの」のかわりになりそうな加工食品がありました。


※編集部註:ちなみにドイツではオーガニック製品を希望する人が多く、エコ意識がうーんと高いのだそう。家のエアコン設定も「地球にやさしめ」が基本なんだそうです。冒頭の毛布をかぶってる溝口さんですが、ヒーターの設定温度を高くするたびドイツ人の旦那さんが低めに戻すので、あんな格好になってしまうのだとか。地球にやさしく、妻にはきびしく……。

 

 

ドイツおでんのメンバーが出そろった

こうしてそろえてみたのが、以下の食材です!

 

◇まずは日本おでん的な食材群

f:id:Meshi2_Writer:20151113090739j:plain

じゃがいも、卵、太ネギ、大根。

大根は日本のものより小ぶりで、辛み強め。

こちらでは薄切りにして肉料理の付け合わせなどになります。

シャキシャキしていてなかなかおいしい。

 

太ネギは、日本のものよりかなり太くて立派。

火を通すとトロッと甘くなります。下仁田ネギに近い感じかも?

 

 

◇ソーセージ

f:id:Meshi2_Writer:20151113090815j:plain大きくてつながった、マンガみたいなソーセージ。

白ソーセージのほかに、ドイツ人に評判の

カットチーズ入りソーセージを選んでみました。

 

さて、ここからは日本では珍しい食材の紹介です!

 

◇コールラビ

f:id:Meshi2_Writer:20151113091439j:plain

ちょっと妖怪チックというか……カブのおばけみたいですね(笑)。

ゆでて食べると、カブとキャベツの中間のような香りで美味。

ドイツではさいの目に切ってスープの具にしたりします。

 

 

◇ドイツ豆腐

f:id:Meshi2_Writer:20151113091547j:plain

「これが…豆腐?」

日本のみなさんの声が聞こえてくるかのようですが、豆腐です。
「TOFU」として売られていて、ビーガン(完全菜食主義者)に評判の食材。

日本の豆腐よりかなり水気が少なく、沖縄の島豆腐のような感じ。

色つきのはフレーバータイプ。

手前のいかにも豆腐然としたものが「ナチュラル」タイプで、

(時計回りに)
・アーモンドとゴマを加えたスモーク豆腐
・トマト豆腐
・バジル豆腐

なんともフリーダム……。

ナチュラルタイプはおでんに入れても間違いなくおいしそう。

変化球タイプの豆腐は……どうでしょう……。

でもほら、日本でもおでんの具にトマト入れたりするし?

 ええい、思いきって全部入れちゃえ!!

 

 

あと、おでんといえば欠かせないのが練りもの。

こんなのを買ってきてみました。

 

 

◇クヌーデル

f:id:Meshi2_Writer:20151113092925j:plain

ドイツの巨大団子、とでもいいますか。

ゼンメル(白パン)、じゃがいも、レバーなどがメイン材料。

直径5~7センチもあるんです。

上の白いのがゼンメルクヌーデルで、肉料理と一緒によく出てきます。

これ「ちくわぶ」っぽくなるんじゃないかなぁ。黒っぽい4つはレバークヌーデル。

つくね」としてコク出しになることを期待します!

 

 

◇マウルタッシェン

f:id:Meshi2_Writer:20151113093030j:plain

味つけをしたひき肉を小麦粉の生地で包んだドイツの郷土食です。

スープの具になるので、おでんに通じるところもあるような? 

大きなラビオリみたいなものですね。

うん、おでんの具でいえば「巾着」みたいな存在になってくれるかも?

 

 

◇ファラフェル

f:id:Meshi2_Writer:20151113093153j:plain

ひよこ豆のコロッケ。これもビーガンの人が好んで選びます。中東地域を中心に食べられていて、クミンやコリアンダーなどのスパイスが使われてます。見た目が「イカ団子」っぽかったので、思わず買ってしまいました。

 

 

 

いよいよドイツおでん、調理開始

 

Also, jetzt koche ich!(訳:さあ、作るぞ!)

 

母親からの教えどおりに、昆布だしをとります。

ドイツの水は硬水で、だしが出にくいと聞きました。

なので昆布はたっぷりと使い、煮出す時間も長めに。

それと同時に卵、大根、コールラビを下ゆでします。

 

 

f:id:Meshi2_Writer:20151113093405j:plain

子どものころから果物をむくのだけは大得意。

ちょっと野菜を切るくらいならほら、一人前にできてるでしょ?

 

f:id:Meshi2_Writer:20151113093650j:plain

独身時代は観葉植物の置き場だったコンロが、

今ではこんな素敵マダム系の雑誌に出てくるような状態に……感無量です!

 

 

f:id:Meshi2_Writer:20151113093714j:plain

続いて昆布だしにしょうゆ、酒、鶏ガラスープ、塩で少しずつ味つけ。

ああ、なんか遠くに「おでん屋さんのカウンター」が見えてきたような……?

 

う~ん、味見しすぎてわからなくなってきました(涙)。

おでんってどんな味だったっけ? 

まあ、ものは試し! すべてを大鍋で煮ていきます!

 

 

f:id:Meshi2_Writer:20151113093827j:plain

ジャーーーーーン!

う~ん……なんだかおでんというより……闇鍋?

そんな思いに駆られながらも、20分ほどコトコト煮たあたりで、完成!

 

 

 

 

おそるおそるの試食タイム!

f:id:Meshi2_Writer:20151113093929j:plain

ん?

 

 

おおっ!

 

 

 

これは……。

 

 

 

 

f:id:Meshi2_Writer:20151113094035j:plain

おでんだ♡

 

 

存外に……きちんとまとまっている! 

各食材からしみ出た味で、はじめのだしとは段違いの美味しさに! 

予想以上にこれ……おでんです!!

 


ああ、おでんだよ!!!!!!!!!

 

 

 

自分でも、びっくり。
おでんって、なんて包容力のある料理なの!!

 

 

た・だ・し・・・合わなかったものも。

 

 

 

f:id:Meshi2_Writer:20151113094245j:plain

………………………………………。

 

スパイスのきいたファラフェル、TOFU変化球チームのトマト&バジル。

やっぱりというか当然というか、元の味が強すぎて……NGでした。

ゼンメルクヌーデルも味がしみ込まず食感イマイチ。もっと煮込めばいけるかなぁ?

 

 

ドイツおでんランク別評価(あくまで独断)

では結果発表します。

Aチームはレギュラー確定、Bチームは今後に期待、Cチームは降格という格付けに。

 

Aチーム

◎卵
◎じゃがいも
◎大根
日本でのスタメン食材は文句なしの美味。卵やじゃがいもは素材がいいので、下手したら日本のものよりおいしいかも。ドイツの大根も立派にがんばってくれました!

◎TOFU(ナチュラル、スモーク)
ナチュラルは、だしをしっかり吸い込んで、ふわっとした木綿豆腐のような美味しさに。スモークは風味も立ち過ぎずちゃんと馴染んで、サクサクとしたアーモンドの歯触りも楽しい!

◎コールラビ
日本の味にきちんと寄り添ってくれて違和感なし。

◎太ネギ
予想通り甘くとろけつつ、香りもちゃんとあって美味しい。

◎白ソーセージ
スープで長く煮られることを想定していないためか皮がはじけてしまったものの、さすがミュンヘンのご自慢、大いにあり!

 

Bチーム
〇カットチーズ入りソーセージ
チーズ入りソーセージは、食べてみるとあれ? チーズの姿がどこにもない。不思議とスープにすっかり溶け出してしまったみたいです。

〇レバークヌーデル
少しレバーの臭みが残ってしまいましたが、上々。

〇マウルタッシェン
悪くないけど、ファラフェルなどと同じ理由で、元からついている味がだしと少しケンカをしてしまっている感じ。

 

Cチーム
△ファラフェル
△TOFU(トマト、バジル)
△ゼンメルクヌーデル

 

 

ドイツ人の夫のリアクションは……

「僕の奥さん、一体なにをやっているんだろう」

ちょこちょこ不安げにキッチンをのぞいてた夫にも食べさせてみました。

 

 

f:id:Meshi2_Writer:20151113094607j:plain

こら、においかがない!

 

f:id:Meshi2_Writer:20151113094636j:plain

どうよどうよ?

 

 

 

f:id:Meshi2_Writer:20151113094704j:plain

笑顔出ました!!

― Und? Wie ist mein ODEN?? Schmeckt es gut?? 

(で、わたしのおでんはどう?おいしい?)

― Ja. Nicht so schlecht. 

(うん、わるくないね)

― Nicht schlecht??!! 

(わるくない!?)

― Nein, nein. Gut. Sehr gut!!! 

(いやいや、おいしい、すごくおいしいよ!)

 

ドイツ人って、食に保守的なんです。


はじめは「白ソーセージを海藻(=昆布)スープの中に? なにそれやめてよ~!」

なんて言っていた旦那ですが、最終的にぱくぱく、もりもり。

 

結局私より食べてます。

 

― Was schmeckt dir am besten?? (お気に入りはどれ?)

― Kartoffeln! (じゃがいも!)

 

ってあたりは、いかにもなんですけど。

でもたしかに、じゃがいもおいしいよね。

 

しかし、見てくださいよこれ? 

f:id:Meshi2_Writer:20151113094937j:plain

ルックス的に立派なおでんですよね! でもなにか忘れているような……

 

あっ! からしだ!

残念。ドイツおでんにドイツのマスタードつけて食べてみたかったなあ。

ということで、またドイツおでん作ってみなきゃ。

 

 

f:id:Meshi2_Writer:20151113095022j:plain

みなさんも日本で素敵なおでんライフ、楽しんでくださいね!

 

書いた人:溝口シュテルツ真帆

溝口シュテルツ真帆

1982年、石川県生まれの編集者。(株)講談社にて楽しく週刊誌→グルメ誌編集者をしていたはずなのに、なんのご縁か2014年、ドイツに嫁ぐことに(自分でもびっくり!)。現在はフリーランスとしてドイツのあれこれなどを研究、発信中。

公式Twitter:https://twitter.com/MMizoguchiStelz

過去記事も読む

トップに戻る