この鍋を食べずして冬を終わらすな!「秋田だまこ鍋」のつくりかた教えます

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ひと口に「」といっても、日本中いろいろありますな。

 

2015年秋に紀文さんが全国1400人を対象にした調査によると、

日本人の好きな鍋は「おでん→すき焼き→キムチ鍋→寄せ鍋→しゃぶしゃぶ」

という結果だったそうです。

 

またこの調査によると、福岡ではやっぱり水炊きが好まれていたり、

大阪から西はふぐ鍋が評判だったりと、郷土色がそれぞれに出るんですね。

ここがまた、おもしろいところ。

  

そう、郷土の鍋!

 

私は以前に雑誌で、2年半にわたり日本各地の郷土料理を調べていたんです。

そのとき、

「ああ……これ、今まで食べた中で一番うまい鍋だっ!!」と、

感激したものを、きょうはご紹介したいと思います。

 

その名も、秋田の「だまこ鍋」。

新米の季節になると、秋田の『メシ通』たちが食べたくなる鍋なんだそうですよ。

  

だまこ鍋の三大柱その① 秘密は「セリの根っこ」

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まずご用意いただくのは、長ネギ、マイタケ、ゴボウ、鶏もも肉。

※あとで分量つきのレシピにまとめますね

 

そして忘れてはならないもの、それがセリ!

 

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秋田のセリは、ひと味違います。

 

ひと味というか、1パーツ違うというか。

  

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どうですこの根っこ!!

 

秋田県南部の湯沢市三関(みつせき)地区で育てられるこのセリ、

通称「三関セリ」といって、有名な地元野菜。

この根っこから、セリ独特の濃厚なふかーーい香りが出てくるんです。

  

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タイ料理に詳しい人ならピンときませんか?

あちらはパクチーの根っこを、香り出しによく使いますよね。

あれと一緒で、セリの根っこも香り出しにバツグンの部位。

そこを見逃さなかった昔の秋田人、すごいっ。

  

「土がついてたりして、汚いんじゃ……?」と懸念される人もいるかもですが、

地元の農家さんが徹底的に洗浄して出荷しているので、どうぞご心配なく。

  

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東京・有楽町にあるアンテナショップ秋田ふるさと館」では、

定期的にこの三関セリが入荷されています。

今回、僕もこちらで購入しました。その日は3束で1千円ぐらいだったかな。

大手デパートや大型青果店でも扱っている場合もあり。

手に入らない場合は、一般的なセリで代用OKです。 

  

だまこ鍋の三大柱その② 新米を丸めた「だまこ」

しかしそもそも、名前にもなっている「だまこ」って、なんだ?

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これです。ごはんを軽く潰して丸めたもの。

「玉っこ」から転じたのかとおもいきや、向こうの言葉で「丸める」という意味の「だまける」からきたという説や「お手玉」をあらわす秋田言葉「だまこ」からきているとする説もあるよう。

  

秋田では新米の季節になるとこのだまこ鍋、よくやるのだそうです。

ごぞんじ「きりたんぽ」ってありますね。

あれも新米シーズンによく食べられるものなんですよ。

炊いたごはんを潰して秋田杉の棒につけて焼くのが本来のきりたんぽなのですが、

その簡略版がこの「だまこ鍋」と思ってください。

  

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今回は「やっぱり秋田の米でつくらねば!」ということで、

秋田県産 あきたこまちを用意。

 

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それをこんな感じで半分量ぐらいをつぶしていきます。

 

ちなみにこれ、地元の言葉では

「はんごろしにする」って言うんですよ。

秋田美人が「あ、お米はんごろしにしておいてー」なんてサラッと言います。

ちなみに秋田出身の美人といえば壇蜜さんや藤あや子さんが思い浮かびますね。

あや子にはんごろし。されてみたいものです。

  

さて、ごはんをつぶしたら直径4センチぐらいにまとめて、完成!

  

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ちょっと余談ですが、こんなものも地元では売られていたりします。

ちっちゃなきりたんぽ。使いやすくておいしい。もちろん新米製。

 

秋田って最後が「こ」で終わる言葉、多いんです。この「ミニっこ(子)」もそうだけど、「いぶりがっこ」とかね。ちなみに「がっこ」は漬物全般をさす秋田の言葉。

しかし秋田の人々はことのほか新米を祝い、堪能するなあ。 

  

だまこ鍋の三大柱その③ すべてを包みこむ「鶏ガラの滋味スープ」

さてさて、だまこ鍋のベースとなるスープは鶏ガラです。 

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こんな感じで、パックの製品が向こうではよく売られているんです。

しかし味にうるさい秋田人は、ガラから取る人も少なくない!

 

香りの強いものをまとめるスープですからね。いわば鍋のベース。この味がしっかりしてないと台無し! 秋田が誇る比内地鶏のガラスープが最高ですよ

 

地元の人はよく、こう言うんだよなあ。

よっしゃ、これは引き下がるわけにはいかないぞ。

 

今回は比内地鶏のガラを入手して……とまではちょっとできませんでしたが、スーパーで売ってるガラからつくりました。

 

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鶏ガラ、安くてありがたい。

  

仕込みのポイントは、一度ゆでこぼすこと!

こんな感じです。

 

1:鍋にガラと水を入れて中火にかける

2:沸騰したらざるにすべて一度あげる

3:鍋を水ですすいで、汚いようならサッと洗う

(泡残りがあると台無しなので気をつけて)

4:ガラは水で全体を洗い、鍋へ。

 

ゆでこぼしたガラを鍋に入れたら、ひたひたになる量の水をそそぎ、また加熱します。

アクを取りつつ30~40分ほど、煮立たないぐらいの火加減でスープを取りますよ。

  

セリの風味と新米だまこの“しみしみ感”がたまらない!

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さて、それでは具材とスープを鍋に入れて煮れば、もう完成!

味つけは醤油とお酒、塩少々。

 

鍋に具をたーーーっぷり盛りつけましょう。

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ジャーン!

 

そして火が通ってくると……

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ジャジャーン!!

煮えてくると、部屋のなかになんともいい香りが満ちてきます。

ゴボウ、セリ、マイタケ、そして鶏スープのうまみ……それぞれ主張の強い香りが次第に溶け合って、これがまあ……なんとも、たまらない。

 

さあ、いただきましょう!

  

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ある程度食べたら、またどっさり三関セリを投入。うーん、なんとも贅沢。

野菜をたーーーっぷり食べられるのも、だまこ鍋のいいところです

 

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このぐらい煮詰まったときのスープ、もう最高なんです……。

 新米だまこに味が"しみしみ"になって、これがごちそう。

 

「新米をつぶすなんてもったいない!」と思うなかれ。

スープのからみが格段によくなって、これはこれでいいものですよ。

  

三関セリは手に入らずとも、ぜひトライしてみてほしいなあ。

以上、秋田のおいしい郷土鍋のレシピでした!

 

だまこ鍋レシピまとめ

<4人分の材料>

  • ごはん 2合程度
  • 鶏ガラスープ 2リットル程度
  • 鶏もも肉 500g
  • セリ 2束
  • 長ネギ 2本
  • ゴボウ 1本
  • マイタケ 2パック 

※好みで、しらたきを入れてもおいしい

 

A

  • 薄口しょうゆ 大さじ3~4
  • ※少し薄いかな、と思うぐらいがちょうどいいです。だんだん煮詰まってくるので
  • 酒 大さじ2
  • 塩 小さじ1

 

<作り方>

  1. ゴボウはささがきにして5分程度水にさらし、ザルなどにあげておく。長ネギはななめ切り、鶏肉はひと口大に、マイタケは小分けにほぐし、セリは3センチ長さぐらいに切っておく。
  2. 炊き立てのごはんをボウルなどに移して、5割程度つぶす。手を水で軽くぬらし、直径4センチ程度に丸める。
  3. 鶏ガラスープを鍋に入れて、鶏肉、ゴボウ、調味料のAも加えて、ひと煮立ちさせる。だまこ、長ネギも加える。マイタケ、セリはすぐ火が通るので食べる直前に入れる。

 

書いた人:白央篤司

白央篤司

フードライター。雑誌『栄養と料理』などで連載中。「食と健康」、郷土料理をメインテーマに執筆をつづける。著書に「にっぽんのおにぎり」「にっぽんのおやつ」(理論社)「ジャパめし。」(集英社)がある。

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湘南のグルメキーワードは「やさしさ」と「希少価値」!~名店巡礼 湘南編~【タベアルキスト】

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みなさんこんにちは、メシ通レポーターのタベアルキストWakuiです。

今回も我々タベアルキストが、わざわざ食べに行く価値のある逸品を提供しているお店へ実際に訪れ、食べまくる究極の食べ歩き「名店巡礼」をお届けします。名店巡礼のセレクト店の定義やこの企画ポリシーなどは、ぜひ以前の記事をご確認ください!

 

~名店巡礼 湘南編~

今回の巡礼先は「湘南」を選びました。

今までの巡礼の中で一番メジャーなエリアでグルメスポットもいっぱい。湘南の持つイメージに忠実に行くならば、もちろん魚や若者向けの料理がテーマになりますが、いろいろ調べていく中で、小規模ながらもこだわりの畜産を行っている方がいることが判明。

 

これは是非ともいただいてみたいと、この希少なお肉をいただけるお店を軸に、テーマを「肉」に絞って、湘南エリアのお肉の美味しいお店をリストアップ。個性豊かな湘南の肉グルメ5軒が出揃いました。

 

1軒目:Loasi(ロアジ) 逸品:みやじ豚ロースト

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2015年11月某日、秋の気配を残す暖かな日射しが眩しい快晴。江ノ島のビーチからは富士山もくっきりと見えます。今回は4名のタベアルキストで5軒の名店を巡ります。まずは観光客で賑わう江ノ電・江ノ島駅から湘南巡礼スタートです。

 

 江ノ島へとむかう商店街、すばな通りにある「Loasi(ロアジ)」が1軒目。2013年にお隣の腰越駅前から移転してきたという話題のイタリアンレストランで、週末は満席になってしまうと聞き、事前に予約をしての訪問です。

 

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お目当ては「みやじ豚のロースト(2,100円)」。

柔らかく内側からパンッと張るようなお肉には、しっかりと脂が入っています。しかしその脂はしつこくなく、口に入れるとすっと溶けていきます。歯応えはありつつも、柔らかな肉の繊維がほぐれて広がり、噛む程に溶け出す脂と一体化してクリーミーな旨さが味わえます。

 

この「みやじ豚」は、地元藤沢市の畜産農家「宮治さん」が生産から販売までを一貫して手がける湘南のブランド豚。ストレスフリーの環境で穀類・芋類を特別に配合した餌を食べて育つこだわりの豚は、月間100頭しか販売されない希少な豚肉だそう。

 

「Loasi(ロアジ)」では扱い初めて9年目。シェフ自身も「みやじ豚」のファンであり、定番の食材としてお客さんからも評判の逸品です。

 

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また一緒に頼んだランチコース(1,600円)では、湘南の新鮮な食材をふんだんに使った料理も楽しめます。

とくに野菜は種類も豊富で、そのどれも力強い味わい。味濃く甘さもしっかりと感じられる、みずみずしい野菜たち。前菜の盛り合わせや、食材の組み合わせが面白い日替わりのパスタなどでもたっぷりと使っています。

 

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湘南の美味しいものをひと通り楽しめるのが、コース仕立てのレストランのいいところ!

 

つづいて、電車に乗って辻堂へ向かいます。

 

お店情報

Loasi(ロアジ)

住所:神奈川県藤沢市片瀬海岸1-9-6
電話番号:0466-90-3200
営業時間:ランチ 11:30~14:00、ディナー 18:00~21:00
定休日:火曜日

 

執筆者:Kae Suda

 

2軒目:bhojan(ボージャン) 逸品:ラムカバブ

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2軒目は、住宅街の中に一風違った佇まいを見せる「bhojan(ボージャン)」。カレーマニアの間では有名なお店です。

 

インド煉瓦で覆われた可愛いらしい建物は、中に入ると店全体に天窓から光が刺し込み、窓が無いのにとっても明るい。店内に入った瞬間からまるでインドの家庭にお邪魔したかのような、素朴で温かな空気感に包まれます。家庭的な接客にもほっこりとした気持ちに。

 

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▲ランチセット bhojan C 1,430円(カレー チキンララ)

 

カレーはランチタイム提供の4種から、ボージャンおすすめのチキンとポテトの辛口「チキン ビンダルー」と、チキングレビーを卵・ クリーム・トマトで仕上げ、野菜を加えたマイルドな「チキン ララ」を。

 

優しく、そして挑戦的なスパイス達が辛味とともに徐々に襲ってきます。チキンや野菜の旨味と絡まって脳を刺戟する美味さ。いくらでも食べられそうです。

 

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▲ランチセット bhojan C 1,430円(ベジタブルカレー、サラダ、プラオ、ピクルス)

 

ランチセット(bhojan C 1,430円)には他にベジタブルカレーとサラダ、チャイが付き、高温の土窯タンドールで焼いたナン、もしくはスパイスを加えて炊いたプラオというライスでいただきます。プラオはもちもちっとした食感で美味しい。

 

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さてカレーには定評のあるボージャンですが、今回こちらのお店で 注目したメニューは、インディアンバーベキューの「ラム カバブ」1,650円 。骨つき仔羊の肉をタンドールの炭火で表面はカリっと、中はしっとり焼き上げた一品です。

 

ヨーグルト、クリーム、スパイスに漬け込んだお肉は、柔らかくしっとりジューシーな食感。表面はねっとりとスパイスやクリーム状のソースをまとっています。噛みしめると肉汁とともにヨーグルトの柔らかな酸味、そして複雑に絡み合ったスパイス達が口の中で次々と踊り始めます。

 

ラムの臭みは香り高いスパイスの中にしっかりと閉じ込められ、 深〜い肉の旨味となって口の中に広がってきます。ラムチョップとはまた違うインパクトある味わい。ヨーグルトもラム肉の旨味を引き出すのに一役買っています。ボージャンならではの逸品と感じました。

 

お店情報

bohjan(ボージャン)

住所:神奈川県茅ヶ崎市浜須賀1-44
電話番号:0467-88-1373
営業時間:11:30~21:30 (L.O.)
定休日:月曜日・火曜日

www.hotpepper.jp

 

執筆者:Satovi Yoshida

 

3軒目:ecomo Bakery marumaru 逸品:湘南ぴゅあソーセージピッツア

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いつの間にか日射しもやわらぎ、夕刻のそれに近づいてきました。そんな中、辻堂駅から約25分、てくてくとあるいて藤沢バイパスのあたりまで(もちろんバスの時間が合えば、バスを利用した方が良さそうです)。

 

目的地は「ecomo」というLOHASをテーマにしたコミュニティモール内にある、「marumaru」というパン屋さん。国産のオーガニック食材を使った、子供も安心して食べられる美味しいパンが評判です。

 

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美味しいお肉を食べ歩いていたはずなのに、なぜパン?その答えはこれです。

 

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▲湘南ぴゅあウインナーソーセージ 464円

 

平塚で作られる、無添加のソーセージ、「湘南ぴゅあ」。これを使ったソーセージロールが食べられるとのことでやってきました。

しかし読みが甘かった……

 

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ソーセージロールはお昼過ぎには早くも売り切れてしまい、我々が到着する頃にはお店の商品があとわずかなのでした。

そんな中で確保できたのがピッツア2種類。

 

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▲左:ふじさわやさいのピッツァ 220円/ 右:ソーセージとジャガイモのピッツァ220円

 

ふじさわやさいのピッツァとソーセージとジャガイモのピッツァ。どちらももっちりとしたパン生地がおいしいピザです。

 

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▲ふじさわやさいのピッツァ 220円

 

たっぷりとのった野菜は、地元の有機栽培農家が集まった「ふじさわ野菜をつくる仲間たち」のもの。
旬のとれたて野菜とともに、「湘南ぴゅあ」のプレーンソーセージをトッピング。 

 

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▲ソーセージとジャガイモのピッツァ 220円

 

一方、こちらはシンプルにジャガイモと玉ねぎ、それにローズマリーの香るソーセージ。塩・砂糖・香辛料のみでつくったソーセージは肉そのものの味が楽しめ、噛むほどにその存在感が増していきます。

 

この肉々しいソーセージが気に入ったら、「ecomo」のショッピングエリアでも買うことができます。もちろん我々もお土産に購入しました。

 

外もすっかり暗くなり、近くのバス停からバスに乗って、今度は湘南ライフタウン方面に向かいます。

 

お店情報

ecomo Bakery marumaru

住所:神奈川県藤沢市城南5-6-20
電話番号:0466-37-3022
営業時間:10:00~17:00
休業日:月曜日

 

執筆者:Kae Suda

 

4軒目:Fika Room 逸品:ちがさき牛のビーフシチュー

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すっかり暗くなってからの4軒目は、希少なちがさき牛が食べられる「Fika Room」です。

 

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▲もも肉のステーキ:時価 (この日は130g/1,500円)

 

まずは希少なちがさき牛の味をストレートに味わえるステーキから。

焼き目の美しい肉をカットすると、ほんのりピンクの断面。見てのとおり脂はほとんどなく、純粋に肉の味が楽しめます。見た目たがわず、この厚みでも強い弾力。しっかりした肉の繊維を噛みしめると、素朴で力強い肉の味がやってきます。昨今の柔らかいだけのステーキたちに「軟弱者め!」と喝を入れんばかりの硬派なステーキでした。

 

部位は、その日その日の仕入れの関係で変わってくるとのことなので、来るたびに違った楽しみ方ができそうです。

 

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▲Fika特製ハンバーグ:1,300円

 

2品目は、高座豚とちがさき牛のあいびきで作った、少し大きめのハンバーグ。

ステーキとはうって変わって、切り口からジュワジュワとにじみ出る肉汁。ステーキに比べると優しい味わいで、付け合わせの野菜との相性は抜群。「Fica Room」では野菜の直売もやっており、野菜の味もかなり良いです。

 

肉も野菜も美味しく食べたい! という欲張りな方にはおすすめな一品です。

 

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▲ビーフシチュー:2,500円

 

最後は、ビーフシチュー。満場一致でステーキではなく、こちらのビーフシチューを逸品として推すことに決まりました。

 

ステーキが生産者のこだわりがストレートに楽しめるとしたら、ビーフシチューはシェフのこだわりがストレートに楽しめる一品。香味野菜と赤ワインに一晩漬け込んでから、トロトロになるまでじっくりと煮込まれた肉の柔らかさは驚きそのもの。ここまで柔らかく仕上がるのかと、ちがさき牛の持つ表情の多彩さに感じ入ってしまいました。

赤ワインのコクがしっかりと伝わるソースも絶品。ぜひバゲットも一緒に頼んで一滴残らず楽しんでください。

 

お店情報

Fika Room

住所:神奈川県茅ヶ崎市堤73-5
電話番号:0467-98-1886
営業時間:ランチ 11:30~14:30、ディナー 17:00~22:00
定休日:水曜日

 

執筆者:Kazushi Kikutani

 

5軒目:糸半 逸品:鉄鍋もつ煮込み(玉子入)

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そして、5軒目は茅ヶ崎駅南口から徒歩5分程でたどり着くもつ焼き専門店へ。

店の外にはもつ焼きのいい香りが漂い、赤提灯に誘われて暖簾をくぐると、店内は地元の常連客で活気に溢れています。その評判の理由は、リーズナブルな価格設定。串焼き一律120円の品書きに心がはずみます。

 

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▲鉄鍋もつ煮込み(玉子入)450円

 

名物のもつ煮込みは、注文を受けてから鉄鍋で熱々に煮込まれて提供されます。味付けは濃い目の味噌味で、モツがたっぷり盛られ煮玉子も入っています。よく煮込まれて余分な脂が落ち、プリプリとした歯応えが楽しい。また、煮汁にはモツから落ちた脂が溶け、コクのある力強い味わいにお酒が進みます。

 

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▲秘伝タレ5本盛り 500円

 

串焼きは、焼きとんと焼鳥がありネタはどれも規格外の大きさ。部位はおまかせ盛りなので、異なる食感が楽しめます。

 

焼きはガスロースターを使用し手際よく焼き上げられ、最後に秘伝のタレがたっぷりかけられます。噛みしめると肉の旨みがじんわりにじみ、甘辛で濃厚なタレがクセになる串焼きです。

 

モツの味はもちろんのこと居心地の良い雰囲気で、ついつい長居してしまう。地元に愛されている店というのが、店内の活気からも伺うことができました。

 

お店情報

糸半

住所:神奈川県茅ヶ崎市幸町4-25
電話番号:0467-82-2868
営業時間:17:00~22:00
定休日:日曜日

 

執筆者:Masayuki Wakui

 

名店巡礼 湘南編まとめ

今回の5軒のセレクトいかがでしたでしょうか。

湘南といえば、「魚」のイメージが強いですが、今回はあえて「裏」グルメとも言える、「肉」をテーマに巡礼しました。湘南らしいオシャレなお店から、知る人ぞ知るディープなグルメまで、タベアルキストならではの魚に負けない肉を探してきました。

そんな湘南のグルメキーワードは「やさしさ」と「希少価値」。

 

やさしさについては、湘南独特のどこかゆったりとした空気感の中で生み出される料理は、食材の味を引き立てるやさしい味わいを楽しめます。

そして希少価値。今回取り上げた、みやじ豚とちがさき牛は一般的なブランド食材よりもさらに希少価値の高く、個人のブランドになります。それゆえ、外にはなかなか出てこず、ここ茅ヶ崎ならではのグルメと言えます。

 

カラッと晴れ渡った冬の海岸沿いをぶらりと散歩しながら、あえての「肉」グルメ。そんな、少し通っぽい湘南小旅行はいかがでしょうか。

 

 

次回は、東海道線をさらに奥へ!静岡市編です!

(取材日/2015年11月28日)

 

書いた人:タベアルキスト

タベアルキスト

タベアルキストとは、「食べる幸せ、探す喜び」をモットーにした実名制の食べ歩きマニアのコミュニティ「Tabearukist Association」に所属する、年間300軒以上の外食をしているメンバーのことを「タベアルキスト」と言います。その一食、一食を、お腹も心も満たされる幸せな時間とするため、「一般人による一般人のためのグルメ検証」を旗印に、公正中立な立場から「食べる価値のある逸品」の情報を発信しています。

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【糸島】黄身がつまめる「つまんでご卵」の 美味しいロールケーキを食べてごらん【つまんでご卵】

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メシ通レポーターのマツータケシです。

 

早速ですが、またまた地元自慢をしてもよかですか。

某アンケートで“日本でイチバン住みたいトコ”にも選ばれ、近年耳にする機会が増えた人も多いのではないでしょうか?新鮮な食材が手に入り、おしゃれなカフェやこだわりのランチを目当てに訪れる人が急増中! 行くだけで気分が上がるホットなスポット、糸島

福岡の中心地である博多や天神から車をビューンと走らせること、およそ30分。海あり、山あり、おいしいものあり、に加えてモノ作りが盛んで、自然にも癒されちゃう……。そう、ここは楽園なんでございます!

のんびりドライブはもちろん、マリンスポーツ、ハイキング、フィッシング、ゴルフ、雑貨屋巡りにスイーツ巡りetc…魅力を挙げたらきりがありません。

そんな糸島のなかでも、必ず立ち寄って欲しい、極上ロールケーキを今回はご紹介します。

 

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店があるのは、県道567号線沿い。海岸線の景色が話題のスポット・二見ケ浦から車を走らせること2~3分ほどの場所です。自然豊かな場所に、看板が分かりやすく出ていますが、ただその看板が衝撃的なんです!「ん?あれ?えっと?これって、つまめるものでしたかね?」となっちゃう気持ちはわかりますが、はじめてこの道を通るドライバーさん。しっかり前を見てくださいね。わき見運転は危険ですよー。

 

でその正体はなにかというと、そうです、それです。タネも仕掛けもございません、なんです。

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ここは、指でつまめてしまう卵「つまんでご卵」の生産者・早瀬さんが営むケーキ工房。噂のロールケーキを求めて、平日、休日問わず女性客でいっぱいです。

評判の理由はこだわりの素材にあり!  ってことで、まずは「つまんでご卵」についてお話しします。

 

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少年時代からの夢、勤めていた前職で日本中の養鶏家を見てきたこと、身体を壊したこと、こどもたちに安心で安全な食べ物を食べさせたいという気持ちなど、いろいろなことが重なり、27年前に養鶏家としての道を歩み始めたオーナー・早瀬憲太郎さん。

目指したのは、安心、安全はもちろん、ニワトリの幸せを第一に考えた養鶏。そんな理由から、手間とお金はかかり効率も悪いけど、のびのびと鶏が過ごせる飼育方法・平飼いでの自然卵養鶏は、こだわりをもってやろうと決めていたといいます。

一般的なケージ養鶏に比べ10分の1以下の飼育密度で飼われているニワトリたちは、みんなのびのび、リラックス。ゆとりのある空間と衛生的な環境で、ストレスなく過ごすことが健康な卵作りには一番大切なのだとか。

このようにニワトリのことを第一に考えて育てた結果、生食賞味期限が1カ月、殻がかたく丈夫、盛り上がるほど卵白が強い、低カロリー、低コレステロールetc。誰もが喜ぶ唯一無二の卵が生まれたというわけです。

 

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「つまんでご卵」オーナーの息子さん・早瀬憲一さんと店長の上竜夢(りゅうむ)さん。おふたりは高校の同級生なのだとか。

鶏さんニコニコ、この鶏舎は運動場付きなんですよ。天気の良い日は、散歩や日光浴や砂遊びで、リラックスタ~イム! そして臭いもなくて、ハエもいない。実に清潔なんでございます。

 

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ぬぬっ!? なんですと? なんとニワトリの言葉がわかるという社長さん。

 

ニワトリが「ギャーッ! ギャーッ!」と鳴くのは、ここから出してくれー! という悲痛な叫びだよ。ウチのニワトリは、心が満ち足りているからほとんど鳴きませんね

 

と、騒音問題もおきないというから驚きです。

卵の品質だけでなく、地域の方も応援してくれる安心・安全な環境も生み出していました。

とはいえ、気になるのは卵のお味。日本人ならやっぱり、なじみ深いあの食べ方で。てことで、卵そのものを味わえる、シンプル料理“たまごかけごはん”をいっただきま~す。

あったかごはんに、あらよっ、と卵をひと割り。醤油をちょろっと垂らして、混ぜ混ぜ。あとは無心でかきこむべし! 旨い! 卵ってこんなに濃厚で甘いんだ。止まらないんです、箸が…。食べ終えたあと、口の中はいっさいべたつかず、美味なる余韻がいつまでも…

 

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この卵は本当に美味しいです。卵の盛り上がり方、色の濃さ。指でつまんで持ち上げることができる黄身の力強さ。膨らみにくいとされる国産の小麦粉をも見事に膨らませる白身。そして、卵本来の甘い芳香が立ちのぼります。

 

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所変わって、ケーキ屋さん。

見るからにフカフカのスポンジが印象的な「つまんでご卵ロールケーキ」は、極上卵に、石臼で挽いた福岡産の無農薬小麦粉、そして喜界島産のキビ糖などを加えて作られる無添加ケーキです。

では、いざ実食、と真上からフォークをIN。しかし、驚くほどの弾力に、フォークを弾かれそうになります。「ほほう。おぬし、ただものではないな」と思いながら、いただいてみることに。

ぬおっ! 期待を超える食感と味。フワフワのスポンジの食感、と鼻を抜ける風味が心地よすぎる。甘さ控えめの生クリームも、やさしい口当たりでバランス感覚最高! 10点満点です。

 

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この日は10月末ということもあって、ハロウィンのケーキがたくさん作られていました。来店客の8割が購入するという、一番評判の「つまんでご卵糸島ロール(1,470円~)」以外にも洋菓子はいろいろあって、どれもオススメなので少しだけご紹介します。


「塩麹キャラメルのロールケーキ(1,575円/カット525円)」 「プリン(368円)」 「マドレーヌ(189円)」 「クッキー(各210円)」 「チーズケーキ(390円)」 などなど。

 

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背景が養鶏家の、つまんでご卵ケーキ工房の洋菓子は、穀物の利用の一形態としての洋菓子を追求しています。華やかなスイーツ業界において、小麦本来の風味をしっかり感じられる素朴で地に足の着いた安心感がここにありました。

 

最後に、ちょいと補足。

「つまんでご卵ケーキ工房」から道をはさんですぐ近くに、同社が営む直売所があります。先ほど卵かけごはんをいただいたのもこの店。

 

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まず目につくのが看板で、「にぎやかな春」の下に逆さまに「沈黙の春」の文字が書かれています。

なんですか?と興味で伺うと、店名の由来は、レイチェル・カーソン著書の『沈黙の春』からとったそう。化学薬品や農薬がもたらした被害の実情が描かれたこの本の内容とは真逆、人や土地が健やかであるように、という想いが込められているのだそうです。

 

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ここ「にぎやかな春」には、地元・糸島の美味しい無農薬・有機栽培・超減農薬野菜をはじめ、全国各地から集めた無添加でおいしい食材が豊富にそろっています。もちろん「つまんでご卵」が購入できますし、食肉である「万歩鶏(まんぽけい)」も売っていました。

 

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店は只今、改装の真っ最中。実は2016年にはレストランがオープンするんです!

目玉メニューとして、「万歩鶏」と「つまんでご卵」の「親子丼」も出るとか出ないとか。いまからよだれを流しながら、乞うご期待!

 

では、お持ち帰りの「ロールケーキ」と「つまんでご卵」を抱えて退散~。

 

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お店情報

つまんでご卵 ケーキ工房

住所:福岡県糸島市志摩桜井5234-1
電話番号:092-327-5850
営業時間:平日11:00~17:00
土日祝日10:30~17:00
定休日:火曜日

www.hotpepper.jp

 

書いた人:マツータケシ

マツータケシ

福岡在住。某出版社を経て、フリーのカメラマン&ライターとして活動中。好きな言葉は「一日三度のメシ」。福岡の安くてうまい穴場を発掘することにはまっている。

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