自炊&弁当はモテのため!?健康&スタイル維持のため肉や酒は不評
「女子力男子」という言葉をご存知だろうか?
ざっくり言うなら「料理はもちろん、スイーツづくりまで難なくこなし、オシャレや体型維持に気を遣う今ドキの男の子」のことで、10代~20代を中心に増えているのだとか。しかも、この現象は単なる「男の女性化」ではないのだそう。『女子力男子〜女子力を身につけた男子が新しい市場を生み出す』(宝島社)の著者であり、「マイルドヤンキー」という言葉の生みの親としても知られる原田曜平さんに話をうかがった。
話す人:原田曜平
1977年東京都生まれ。慶應義塾大卒業後、(株)博報堂に入社。現在、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。多摩大学非常勤講師。日本、アジア各国で若者マーケティング&商品開発を行う。
――そもそも「女子力男子」の定義がイマイチ分からないんですが。
原田氏:「従来、女性がやっていたり、得意とされたりした領域の力を供えている男」と、私は考えています。
男性の女性化を示す言葉は近年、多く生まれてきました。草食男子という言葉が生まれたのは2009年ですが、それ以降も弁当男子、乙男(オトメン)、イクメン、日傘男子、美白男子、化粧ポーチ男子などなど、様々あります。
実際に女子力の高い男子と数多く会って感じたのは、彼らはそういった人々とは違うんです。ひとことで言って、モテたいから女子力をつけているんですよ。
――つまり、モテるには「女子力をつける」ことが大事になってきたと。
原田氏:はい、女子力男子は草食男子などと違い、恋愛やセックスに対して必ずしも消極的じゃないのが特徴です。
彼らは女子力をつけることがモテる上で「得策」と無意識のうちに気づいているから、そうしているんですね。もっといえば、彼らはもし80年代に生まれていれば松田優作に、90年代なら長渕剛に憧れるようなタイプなんですよ。
一方で女の子たちも、「見た目が男らしい」「無口で不器用」「イイ車に乗っている」といった男性よりも、女子力の高い男子といるほうが楽しいなって気づいてきた。一緒にスイーツの話で盛り上がったり、服やヘアスタイル、メイクのことにもきちんと気づいてくれて、ちゃんと褒めてくれるような男子を選ぶようになってきたんです。
――そういった女子力男子たちの存在が今後はマーケット的にも大きな影響力を持つというのが原田さんの見解ですが、彼らの食べものの好みはどうなっているのでしょう。
原田氏:私は「女子力男子予備軍」まで含めると、これはもうすでにマジョリティと言い切ってもいいのではないか、と思っています。
まず彼らは自己管理力に長けていて、見た目の管理意識が非常に高い。だから食に関しても、栄養やカロリーのことをまず考える。
女子力男子は自炊をしたり、弁当を作ったりしている子も多いのですが、それは節約や倹約のためではなく、
「カロリーのコントロールができるから」
「自分が食べたい味にできるから」
という理由で料理をするんです。これは一部の、かなり意識の高い女子力男子ですけれどもね。彼らの間で話題の能人といえば、速水もこみちさんです。彼は女性からも男性からも憧れられていますね。
――かっこいいだけじゃなく、料理が上手くて当たり前、ですか。ハードルが高い!
原田氏:女子力男子の食傾向としては、オーガニックに気をつかったり、肌のことを考えて油っこいものを控えるというのがあります。定番はサラダですね。サラダが自炊でも外食でも好まれる料理になっています。これと反比例して、お酒を飲む男の子たちはどんどん減っていく傾向にありますね。
――好まれる料理がサラダ……。すっかり唐揚げや生姜焼き定食かと思っていました。
原田氏:(笑)もっと言うなら、今はやはりSNSの存在が大きい。ちょうどこのインタビューを受けるにあたって、学生にどんな料理が好きか聞いてみたんですが、「彩りがよくて、写真映えするものを選ぶ」という声が多いですね。「がっつりと盛りつけられたものじゃなくて、少しずついろいろなものが盛ってある方がいい」という意見も出ています。
それと、ジャンクなものを食べてSNSにアップするとき、「自炊するつもりだったけど、味噌ラーメン食べたくなってつい来ちゃった!」とか「後輩がラーメン、ラーメン言うので、普段は食べないラーメン店でこんな夜中にデブ活なう」とかね。「あえてやっている」ということを強調して、逆に女子力をアピールしているんですよ。普段はこういうもの食べないんだけど、みたいなノリで。それなら女の子も共感してくれますよね。
――ある種、高等テクニックですね(笑)。今後も女子力男子は増加傾向にあると思われますか?
原田氏:今後も増えていくとは思いますが、まだまだ世の中は男社会です。若者は、同年代の女の子たちと仲良くしたい一方で、会社に入ったらオジサンたちと仲良くする力も求められるわけですよ。良い意味で「おじさんころがし」にならなくちゃ自分にとって良い職場環境にはならない。そう考えれば、求められるのは「男子力」なのかもしれませんね。近いうち、「男子力男子になろう」なんてコピーも登場する時代が来るんじゃないでしょうか。