大食いができれば悲惨な食生活は解消される!?
毎日の食事はスーパーで得売りしている鶏胸肉2キロ780円のテキトー料理。普段からTwitterで「貧乏あるある」をつぶやくのが日課の貧乏放送作家、井上コウヂです。
そんな生活の中で、最近フト思うことがあります。
(大食いできたらなぁ……)
そう考えたのはワケがあります。
理由1つ目は、冒頭で申し上げたとおり、毎日の食事がかなり悲惨なんです。井上は放送作家としてまだ2年目なので、月収が10万円程度です(実は2年目にしては割ともらえているほうですが)。
アルバイトをまったくしていないせいで、同期の放送作家や芸人よりもはるかに生活がキツキツです。
つまり、毎日の食事を切り詰める必要があり、朝昼晩とこんなものを食っております。
<朝食>
- コーンフレーク 204円(7回に分けて食べるので1食30円)
- 納豆 42円(1パック14円)
- ヨーグルト 105円(6回に分けて食べるので17円)
- 野菜ジュース 108円(4回に分けて飲むので27円)
朝は栄養を取るようにしています。なぜなら、栄養不足で倒れたときにかかる医療費を考えると、ある程度栄養を摂取しておいた方が将来的に安いからです。
というわけで朝は1食88円。
<昼食>
文字通りご飯です。白米、およそ1合。茶碗が割れたせいで弁当箱によそっております。健康のために(医療費節約&カロリー摂取のために)食べます。
雑穀米は実家から強奪してきました。今回はあきたこまち5㎏が半額の900円くらいで売っていたので、1食27円です。
この記事を読んで不憫に思った方は、井上にふりかけと茶碗をお送りください。
<夕飯>
これが記事の冒頭で触れている「鶏胸肉2㎏780円のテキトー料理」の正体です。
我が家にはシーズヒーター(電気コンロの一種。超危ないので使用しない方が賢明)しかないので、火を使うような料理ができません。そこでシリコンスチーマーを購入し、毎回電子レンジで蒸しています。
今回は1個20円の玉ねぎと一緒に蒸しました。鶏肉は2キロを8回に分けて、玉ねぎは2つに切り分けて食べるので、2食142円です(この場を借りて、780円という表記が税込みではなかったことをお詫びします)。
こんな具合で1日の食費を257円(税込)で抑えています。1カ月の食費は大体7,000円で収まります。主婦の皆さんは開いた口が塞がらないでしょう。しかし、僕の方も心にぽっかり空いた穴が塞がらないのです。
美味しいものをたらふく食べたい!!!
そんな衝動が極まって、猛烈に大食いにチャレンジしたいと思っております。
理由2つ目は、大食いができると”豪華タダ飯ライフ”を送ることができるからです。大食いのチャレンジメニューを提供しているお店はかなりあり、そのほとんどが制限時間以内に完食できればタダ。しかも美味しそうなメニューばかり。ビンボー井上、必死に頭を働かせました。
(俺は毎日美味しいものをたらふく食べたい……。しかしこんな悲惨な食生活だから、いきなりチャレンジメニューを挑んでも、達成できずに罰金を払うことになる。ならば「メシ通」の力を借りて、有名なフードファイターに大食いのコツを伝授してもらうのはどうだろうか。会得したあかつきにはチャレンジメニュー荒らしとして、毎日豪華タダ飯ライフを謳歌できるに違いない……)
というわけで、フードファイターとして活躍している方をリサーチ。できれば、コツを優しく伝授してくださる方がいいなぁと思っていると……適任者を発見。テレビやイベントなどで、フードファイターとして大活躍する三宅智子さんです。芸能人としても活躍されており、銀座には自身のお店「みやけ家」も構えています。
さっそくご本人に取材を申し込んでみると、「じゃあウチのお店に来て下されば、食べながら指導いたしますよ!もちろん大食い用のメニューもありますから」とのこと。
ヤッホーイ!
中華食べ放題で5kg食べて初めて「満腹」を実感
というわけで、東銀座にやってきました。
やる気十分です。この地下鉄出口はビンボーから大食いプレイヤーへの出口なんです。
目をつむっているのは眠いからじゃありません。最近思うんです。僕の間が悪いのではない。僕を写すカメラの間が悪いのではないか、と。
いやいや、そんなことを気にしている場合ではない!
雑念を振り払い、駅から徒歩1分の「みやけ家」へ。
いざ店内に入ってみると。
なんとオシャレな雰囲気。フードファイターの方はもちろん、一般のお客さんも気軽にお店に来ることができますね。こんなお店に毎日通いたいなぁ。
さっそく、気合いを入れることに。
はちまきを結んで気合を入れます。すると奥の方から「お疲れ様です~」と可愛らしい声が。三宅智子さん登場です!
いやーキレイな方です。そして思っていた以上にスリム。
こんな女性が大食いの覇者なのか。緊張がほぐれることなく、まずは軽くインタビューを試みることに。
井上「三宅さんはいつから大食いを始めたのですか?」
三宅「子どもの頃からずっとそうでしたね。満腹中枢というものがなくてお腹いっぱいになる感覚がなかったんです」
井上「そ、そんなことがあるんですね」
三宅「だから自分の限界が分からなかったんです。家では出されたもの全部食べちゃうから。それで17歳のときに上京して、生まれて初めて食べ放題のお店に行ったんです。新宿にある中華のお店で、1千円食べ放題。そこで5㎏は食べました。その時に初めて知ったんです。これがお腹一杯の感覚か、みたいな」
井上「想像もつかない……。今でも食べ放題のお店で5㎏くらいペロリと食べちゃうんですか?あ、でもそんなことしたら出禁になっちゃいますかね」
三宅「大手チェーン系のお店なら普通に食べちゃいますけど、個人でやってらっしゃるお店ならやっぱり控えちゃいますね。申し訳ないですし」
井上「そうですよね。でもそうなるとメチャクチャお腹が空きません?」
三宅「普段は4、5リットルくらい飲み物を飲んでお腹を膨らましています。そうじゃないと際限なく食べちゃうんで。あと、今では10㎏くらい食べることができますよ」
井上「じゅ、じゅ、じゅっきろ!」
極意その1「まず肉ではなく、野菜から攻略すべし」
やはり大食いは生まれ持った才能が必要なのか?
常人では考えられない話に圧倒されていると……。
三宅「本日のチャレンジメニュー、みやけ丼ができましたよ~」
これが「みやけ家」自慢の特製メニュー「みやけ丼」。
白飯2.5合(約800g)の上に、三宅さんの出身地である岡山の牛肉や豚肉、鶏肉が乗っかった、総重量1.4㎏のスペシャルデカ盛り丼です。
「みやけ丼は牛、豚、鶏の3種類のお肉が乗っているので、飽きずに食べられる初心者向けのメニューです。井上さんが食べる横でアドバイスしますね!」と三宅さん。
嬉しくて言葉がありません。これで鬼に金棒です。いや、井上は貧乏なので、ビンボーにカナボーか。いかん、こんなところでムダな韻踏んでどーする。
しかし、ふと頭に不安がよぎりました。
井上のビンボー生活が走馬灯のようによみがえります。三宅さんは僕の(食生活の)闇を知りません。
普段、こんなのしか食べてないからなー。
でもここで弱気になってどうする。こうなったら完食あるのみ。
というわけで、いただきまーす!
まずは美味しそうな岡山牛から食べようとすると……。
三宅「ストーップ!それはダメです!」
井上「ええっ!?」
いきなり止められてしまいました。今から素晴らしい食レポをするつもりだったのに。
三宅「まずは野菜から食べてください。野菜が胃袋でクッションとなってくれるんです。フードファイトの基本中の基本ですよ!」
井上「はい……」
少々へこみながらも、トマトを口に運ぶ井上。まさか1口目からダメ出しされるとは。
前途多難です。いや、いいアドバイスをもらったとポジティブに考えよう!
極意その2「肉は、鶏肉など軽めでさっぱりしたものから」
野菜をある程度食べた後は、「牛肉」に疑心暗鬼になってしまったので、次は「鶏肉」にしてみるか。毎日食べているし。恐る恐る口へ運ぶと……
三宅「それ、正解です! まずはさっぱりした鶏肉から食べていくといいです。始めから牛肉に手をつけてしまうと、あとで胃がもたれてしまうので」
なるほど、勉強になります。それにしても、この「鶏肉」はさっぱりとした塩味で美味。素材の味を活かしていて、非常に食べやすい。いくらでもいけそうです。
鶏肉も食べ進めた井上はとうとう本命の「牛肉」へ! 牛肉なんていったいいつ以来だろうか。いただきます!!
美味いっ!なんて美味いんだ……。
貧乏井上が食べたことのない上品なお味がします。塩とこしょうをベースにしながらもほのかに漂うソースの風味。
しかし、井上は美食家ではないので、そのソースの味を何と表現すればいいのか分かりません。こんなに美味いのに・・・。三宅さんすいません。素晴らしい食レポは諦めました。貧乏にはハナから無理でした。フードファイトに徹します。
いやーしかし美味いなー。井上は牛肉をどんどん食べ進めていきます。
ついに3種類目のお肉に突入。ザッツ豚肉!
デミグラスソースのかかったとんかつです。デミグラスソースとなると重たいイメージがありますが、なんとさっぱりしているのだろう。美味すぎて、サクサクいけます。これもお上品な味で、井上ひたすら感激。
極意その3「苦しいときは、酸っぱいものをイメージ」
3種類のお肉を食べましたが、全体的にさっぱりしているお味なので、案外、普通の方でもペロリといけてしまいそうです。ちなみに、なぜ3種類ものお肉が乗っているのか。それは、三宅さんの経験や性格にも関係しているのだとか。
三宅「大食い企画の番組に出演させていただくとき、何が一番ツライかというと、ずっと同じメニューを食べ続けることなんです。どんなに美味しい料理も同じものばかりを食べ続けると本当にツライ。飽きちゃう。だから、この『みやけ丼』を考えたとき、絶対に味に飽きがこないように3種類のお肉を乗せようと決めたんです」
出ました、フードファイターあるある。妙に説得力ありますね。
三宅「私自身が飽き性というのもあって、始めは3種類のお肉だけだったんですが、もっと色々な味を楽しんでほしいということで、ご飯の中にアナゴを埋めているんです。ぜひ掘り出して食べてみてくださいね」
井上「あ、はい……」
実は井上、三宅さんのアドバイスがあまりに耳に入っていませんでした。
そうです。「そのとき」が突然やってきたのです。
しんどい……かもしれない。
ついに満腹中枢が働き始めました。脳が訴えかけます。オマエの胃袋、そろそろ鈍ってきてるぞ、と。あぁ、まったく皮肉なもんです。普段あれほど欲している「満腹」が、こんなにも苦しい感覚になってしまうなんて。
しかし、ここで終わるわけにはいきません。まだ「みやけ丼」は残っている。この満腹の壁を乗り越えるべく、休憩がてら飲み物を飲もうとすると。
三宅「あ、飲み物はギリギリまで我慢してください!」
井上「ええっ!?」
三宅「飲み物をガブ飲みしたらお腹が膨れてしまいます」
確かに、飲み物で口の中のものを流し込むのは最終手段です。それは分かります。でも、そんな晴れやかな笑顔で言わなくてもいいじゃないですか。
三宅「井上さん、あとちょっとでゴールですよ!ご飯を飲み込むのが苦しかったら、具と一緒に飲み込んでください!」
大食いも最後は気持ちの勝負ってことか。苦しくても飲み込む根性がないと話にならんのだろうな。
三宅「お腹いっぱいで苦しくなったときは、梅干しとか、すっぱいものをイメージするといいですよ。唾液が出てきて飲み込めるようになりますから」
なるほど。でも、今はもう梅干しさえもお腹一杯で食べたくないのです。想像もできません。
極意その4「飽きてきたら好きな飲み物でリフレッシュ!」
なおも口をモゴモゴしていると、意外な一言が。
三宅「好きな飲み物はありますか?」
よくぞ聞いてくださいました。しかしなぜだろう?飲み物は我慢しなくちゃいけないのでは。
三宅「大食いにはリフレッシュも必要。好きな飲み物を飲むことで、口の中と胃をリフレッシュさせましょう!そうしたら、また食べられるようになりますよ」
なるほど。フードファイトは根性だけでなく、ガラッと気分を変える術を知っておくことも必要なんですね。
井上「ふぁ、ふぁるひす、くだしゃい」
もはや苦しくて正確な発音すらままならないリクエストを察して、三宅さんはちょっと濃い目にカルピスをもってきてくださいました。
あー、もともと好きなカルピスが今日はこんなに美味いなんて。
アドバイスどおり完全リフレッシュ。まだ頑張れる気がしてきました!
さて、ラストスパートです。
と、頭の奥の方からうっすらと音楽が流れ始めました。ああ、これは……。大食い選手権の番組のクライマックスでいつも流れているアレだ。
映画『Over The Top』に使われている「The Fight」という曲。まだ俺は闘えるぜ!
三宅「フードファイトはマラソンのようなものです。『まだ〇〇㎞もある!』と思ってしまったら急に走れなくなるけど『もうあとちょっと!〇〇㎞しかない!』と思ったら何とか走り切れるんですよ」
「みやけ丼」もあとちょっと。頑張ります!
三宅「胃を大きくするためには自分の限界を広げることです。お腹一杯と感じたところから、さらにたくさん食べる。すると、その量が次から普通に食べられるようになるんです。今日で井上さんの限界を広げてくださいね。」
僕は食べますよ!限界を超えていきますっ!
三宅「食べることが好きにならないと大食いにはなれません。井上さんも食べることが大好きになってください!」
もちろん、僕は食べることが……
大好きなんですけど……
もう……入らない……。
かくして井上、まさかのギブアップ宣言。貧乏らしく、全ての肉を食べきりました。ですが、ご飯の壁は厚かった。
ちなみに、この店の常連さんは「みやけ丼」を3分で平らげてしまうそうです。
遅い人でも15分くらいだとか。井上は30分かけてやっと半分。情けない限りであります。
三宅智子さん、本当にありがとうございました。そして申し訳ございませんでした。「みやけ丼」はめちゃめちゃ美味しいのに、その魅力の全てを伝えきることはできなかったのが悔やまれます。
失意のまま、店をあとにしました。
身の丈に合わないことをしてしまった。もう二度と「豪華タダ飯ライフ」なんて夢を見るのはヤメよう。というわけで、まだまだ不肖・井上のビンボーライフは続きます。またどこかでお会いしましょう。
お店情報
OKAYAMA DINNING 銀座みやけ家
住所:東京都中央区銀座4-10-1銀座 AZAビル2F
※このお店は現在閉店しています。
※飲食店の掲載情報について。
※本記事は2015年6月の情報です。