通人に訊く「この酒、このつまみ」。渋谷道玄坂『立呑み なぎ』店主・甲田力さん

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通人たちは、普段どんなつまみで酒をやっているのか?

そんな興味から誕生したこの企画、第1回目は渋谷の日本酒の達人にご登場を願いました。

福島の日本酒を専門に揃えた道玄坂『立呑み なぎ』の主人、甲田力さんです。

 

ペンネ・アラビアータと日本酒の意外な相性

さてさて、渋谷福島の日本酒を専門に扱う立ち呑み屋さんがあるのを、ご存知ですか?109の左側、道玄坂を上がると百軒店という通りが右手にあります。ラーメンの『喜楽』やカレーの『ムルギー』があるエリアですね。

この通りの奥まったところにあるのが、こちらのお店『立呑み なぎ』。

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入り口には笹の葉が揺れて、なんとも風流!

取材時期はちょうど七夕のころで、色とりどりの短冊が飾られていましたよ。

 

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ご主人の甲田力さんは東京・大田区育ち、10代から飲食の道に入りました。

バーテンダーや料亭、フレンチなどの勤務経験を経て、2013年8月にこの店をオープン。今年44歳の働き盛りです。

 

しかしどうして日本酒の店、それも福島の酒限定の店を開こうと思ったのでしょう?

 

うちの嫁が福島の人間なんです。彼女の小さい頃からの遊び場が酒屋と駄菓子屋さんを兼ねているようなところで。そこへ行ってみたら福島の酒がたくさん取り扱われていたんですね。本当に小さな蔵のものもあったり、品ぞろえが豊富で。ちょうど独立を考えていたときだったので、こういう酒を仕入れたい……と思ったのがきっかけでした

 

バーテンダー経験もある甲田さん。オープン当初は、スパークリングワインやモヒートなど、好きなものをジャンル問わず置いていたけれども、次第に福島の酒のみに絞られていったのだそう。

 

福島の酒が飲みたい、というお客さんの声が強くなっていったのもありますが、やっぱり日本酒って、本当にいろんなものに合うんです。ワインだと相性がイマイチのものでも、日本酒だとよく合ったりする。たとえばトマトソースって意外にワインと合わせにくいことがありますが、日本酒との相性はいい。個人的にペンネアラビアータが好物なんですが、これも日本酒のいいつまみになるんですよ!

 

真夏にオススメのつまみと、福島の地酒たち

そんな甲田さんに、「日本酒と合わせるなら、何を選ぶ?」という質問を投げかけてみました。日本酒と好相性のものはたくさんあれど、彼が選んだのは…

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ずばり

水ナスの刺身、キュウリや谷中生姜、エシャレットに金山寺味噌。丁寧に描かれた水彩画を見ているようなみずみずしさです。

 

「夏の明るいうちから飲むときって、こういうつまみでやりたくなる。塩辛なんかもいいんですけどね。暑い時期だったら、僕はこういうのがいい」

 

生野菜で酒をやる、というのがなんとも意外でした。しかし試してみると、夏野菜らしい青い香りが日本酒と合うことに、びっくり!まずは味噌をつけずに試してみてください。単品だと口に残る野菜の青くささが、日本酒できれいに消えて、さらにお酒を呼ぶんですねえ……。

続いて、甲田さんオススメの夏酒 from 福島を。

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「夏の日本酒って、さらさらと飲みやすいタイプと、味わいしっかりの2タイプがあるんです。『七口万』や『天明 さらさら純米』は前者で、アルコール度数が低め。まず1杯目はこういうタイプのを、きりっと冷やして飲むのがいいですね」

 

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「この左の『国権 純米原酒』は対照的に、味わいしっかり。夏だからこそ辛くてスパイシーなものを食べたりするじゃないですか。酒もそういう感じで、強さのあるものが合うんです。右の『冩楽』は甘味と酸味のボリューム感がしっかりあって、これも夏におすすめ。インパクトはあるのに、きれいに後味が消えていきますよ」

 

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ちなみに、このお店『立呑み なぎ』のお料理はすべて甲田さんがひとりで担当されています。お刺身が一人前なら300円程度からいただけて、各種珍味や、旬の焼きものなどが日替わりであれこれ楽しめますよ。

 

「最近、若いお客さんが多いんですよ。今は良質な日本酒がたくさんつくられている時代。そういう良いものから飲み始めているから、偏見がないんですね。僕らの世代だと罰ゲームみたいなお酒も多かった(笑)。福島は県自体でいま酒づくりに力を入れています。蔵元同士も仲が本当に良くて、情報交換もよく行われているから、全体的なレベルがすごく上がっているんだと思います」

 

良質な日本酒をワンコインで気軽に飲める……。今まで渋谷にはなかったタイプのお店のさきがけとして誕生したのが、こちらの『なぎ』。若者からアラフォーを中心にファンを広げ、この8月にはオープン2周年を迎えます。

 

「8月1日には何かイベントをやろうと思っています。遊びにきてください!」

 

お酒で福島応援も兼ねて、通人のお店に行ってみませんか?

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▲店の入り口には福島名物・赤べこが。甲田さんの4歳になるお嬢さんがペイントしたオリジナルで、彼女の名前も「なぎ」ちゃんというのだそう

 

お店情報

立呑み なぎ

住所:東京渋谷区道玄坂2−20−7
電話:03-6416-5257
休み:日曜日・祝日
営業時間:17:00~24:00

道玄坂 立呑み なぎ

 

書いた人:白央篤司

白央篤司

フードライター。雑誌『栄養と料理』などで連載中。「食と健康」、郷土料理をメインテーマに執筆をつづける。著書に「にっぽんのおにぎり」「にっぽんのおやつ」(理論社)「ジャパめし。」(集英社)がある。

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