史上初600試合連続救援登板の“鉄人左腕”が腕によりをかける豚焼専門店『焼きゅう豚 繁』店主 藤田宗一さん【男の野球メシ#03】

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独立リーグ・群馬への移籍がきっかけで“豚”と出会う

ひとくちに“プロ野球選手のお店”と言っても、いわゆる“1億円プレーヤー”だったスター選手が常駐しているというお店は数少ない。そういう意味でも異彩を放っているのが、今回訪れた藤田宗一さんのお店『焼きゅう豚 繁』だろう。

 

藤田さんと言えば、ロッテ在籍時の2005年に、勝利の方程式“YFK”の一角を担って日本一に大きく貢献し、その後、巨人、ソフトバンクと渡り歩いてプロ初登板から600試合連続救援登板という史上初の偉業をもなし遂げた、球界を代表する左のセットアッパー。06年には、第1回WBCの日本代表メンバーにも選出されるなど、野球ファンにとっては、まさにスター中のスターといっていい。

 

そんな彼が、なぜまた豚焼専門店を切り盛りすることになったのか──。僕らは、偶然にも東山紀之のナレーションでもおなじみのTBS『バース・デイ』で取りあげられた直後の7月某日、赤坂にあるお店で藤田さんご本人を直撃した。

 

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▲店の入口では、藤田さん着用のユニフォームなどがお出迎え

 

現役のときから、引退したら飲食店をやりたいなとは思ってたんです。ホントは自分で焼きながら接客もするような、カウンターだけの焼鳥屋をイメージしてたんですけど、たまたま群馬(ダイヤモンドペガサス)にいたときに、肉の卸しをやってる会社で修業させてもらえるって話をいただいて。

だから、向こうでは、野球をやりながら、吊ってある状態の豚から、部位ごとに肉をカットしたり、目利きの方法を覚えたり……っていう肉の勉強もイチからやってたんですよ。

 

 2012年、ソフトバンクで自身3度目の戦力外通告を受けて、独立リーグ・群馬へと入団した藤田さんは、ふくらはぎの故障をきっかけに引退を決意。そこで、かねてから自分の中にあった“第2の人生”プランを具体的に模索しはじめた。そのタイミングで出会ったのが、店のイチ押しでもある群馬県産の稀少なブランド豚“愛豚”だったという。

 

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▲お店のイチ押しは『厚切りタン』(1,290円)。見た目は豪快だが、味は繊細

 

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▲都内ではココでしか食せない群馬県産のブランド豚『愛豚のロース』(880円)

 

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▲こちらも群馬県産『赤城鶏のハラミ』(880円)。写真加工ナシで、この艶!

 

半年かけて修業して、それこそ養豚場の社長さんのところにも自分で頭下げに行ってね。この愛豚っていうのは、エサや環境にこだわってるのはもちろん、人が触れるだけでもストレスを感じる豚の繊細な気質のことも考えて、極力人と接触しなくて済むように育てられているんです。しかも、それでいながら鹿児島の黒豚よりはリーズナブル。これなら「美味しいもんをできるだけ安く」っていう、自分の考えとも合うんちゃうかなと思ったんですね。

 

だが、同じ“人気商売”と言えども、グラウンドとスタンドのあいだに明確な垣根のある“野球選手”と、客と密にコミュニケートをしてナンボの飲食店“店主”とでは、その距離感からしてまるで違う。ましてや藤田さんは「JAPAN」のユニフォームも着たスター選手。なおさらそうしたギャップは大きかったことだろう。

 

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▲肉本来の甘みがなんとも美味!! 冷めても味を損なわないのも特徴のひとつ

 

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▲ひとくちサイズにカットした厚切りタンは、1枚でもかなりのボリューム

 

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▲2日かけて熟成させた藤田さん自家製の醤油ダレにつけて食べるのがオススメ

 

自分はもともと人見知りで、現役のときは、どっちかって言うと“しゃべりかけんといてオーラ”を出してたほうやったから、やりはじめた当初は「思ったより大変やな」っていうのは、すごく感じましたね。たとえ相手がお客さんやとしても、「○○さんのサインもらっておいて」なんて言われると、やっぱり「はっ!? なんで!?」とは思っちゃいますしね(笑)。

ただ、まわりからは「引退してから顔が優しくなった」とはよく言われます。当時は毎日が勝負やったから、無意識のうちにそういう緊張感みたいなものが顔に出てたんでしょうね。

 

オープンして3年目を迎えたいまとなっては、たたずまいもすっかり気さくな“店主”然としている藤田さんも、当然、接客業は未知の領域。準備期間には、約1ヵ月にわたって都内のラーメン店で働き、一般の店員として“接客修業”もした。いくら表情は優しくなっても、彼のなかに流れるのは常に本気の“勝負師”の血なのだ。

 

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▲店内には、現役選手・OBらとの記念写真が壁一面に所狭しと並んでいる

 

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▲トイレにも錚々たる面々のサインが

 

いずれはプロ野球のコーチをしながら、チェーン展開も!?

店で出してるタレひとつをとっても、ぜんぶ自分でやってるんで、最初はお客さんから「薄いんじゃない?」「ちょっと味変わった?」って言われるたびに、ちょっとずつ変えたりして、正直バラつきもあったんです。

でも、結局は自分の店ですからね。試行錯誤を重ねたいまはもう「コレ!」ってものを自信をもって出してます。もっと辛いほうがよかったら、自分でコチュジャン足してくださいって(笑)。

 

自ら厨房に立って、食材の調達や仕込みをこなし、客として訪れる野球ファンへの挨拶も欠かさない。遅いときには深夜2時、3時に帰宅することもザラにあるなど、その生活環境は、野球がすべてだった頃からは想像もできないほど激変した。だが「それでもお店は続けていきたい」と藤田さんは言う。

 

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▲現役時代は「シーズン中とオフとで顔が違う」とも言われたことがあるとか

 

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▲食材の仕込みもすべて藤田さん自身が行う。包丁をもつのも当然サウスポー

 

もちろん、いつかはコーチとして帰りたいっていう気持ちもあるんですけど、それまでにはこっちのほうもある程度、しっかりした筋道を作っておきたい。まぁ、これは自分と身内次第でもあるんですけど、将来的にはいまの店を息子に任せて、別の場所でもう一店舗やりたいなとも思ってます。肉切らせてもまだ客に出せる状態ではないんで、彼自身にもまず修業をしてもらわないとダメですけどね(笑)。

 

千葉ロッテマリーンズあるある』などという単行本を2冊も出してしまっている“ロッテバカ”の筆者としては、「左腕コーチ不在のいまこそ、藤田さんの出番!」という想いもなくはない。だが、ただでさえココは、数少ない“スター選手に会える店”。野球談義に華を咲かせる場所として、これ以上の場所もない……。

 

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▲お酒もつい進む、激ウマの豚焼をつまみながらの野球談義。まさに至福の時間……



【藤田宗一 (ふじた・そういち)】

1972年、京都府生まれ。長崎・島原中央高から西濃運輸に進み、97年のドラフト3位で千葉ロッテに入団。1年目から中継ぎ・抑えとして活躍し、3年目の00年には最多ホールドのタイトルも獲得。05年には薮田安彦、小林雅英とともに“YFK”の一角として、日本一にも貢献した。ソフトバンクに在籍した11年に、プロ初登板から600試合連続救援登板という史上初の偉業を達成。翌年、独立リーグの群馬ダイヤモンドペガサスで現役を引退した。生涯成績は、600試合/19勝21敗8S 77H/防御率3.89。

 

お店情報

〈店名変更〉

肉まつり酒場 宗一

住所:東京都港区赤坂2-13-4 第15大協ビル1F
電話:03-3505-2329
※2015年8月の取材時から、店名が変更されました

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▲千代田線・赤坂駅の2番出口を出て、東に徒歩3分(詳しくは下記リンク参照)

 

※本記事は2015年8月の情報です。

※このお店は、現在店舗運営状況が確認できておりません。
飲食店の掲載情報について。

撮影:石川真魚

 

書いた人:鈴木長月

鈴木長月

1979年、大阪府生まれ。関西学院大学卒。実話誌の編集を経て、ライターとして独立。現在は、スポーツや映画をはじめ、サブカルチャー的なあらゆる分野で雑文・駄文を書き散らす日々。野球は大の千葉ロッテファン。

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取材協力:アスリート街.com

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