『深夜食堂』に出てくるアノ豚汁が食べたい!【冬のド定番レシピ】

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ますます寒くなるこれからの季節にぴったりな料理と言えば、現在公開中の映画『続・深夜食堂』にも登場する、具だくさんな豚汁定食!

 

小林薫さん扮するマスターがいる「めしや」唯一の正式メニューにして、ドラマ版の冒頭では毎回調理シーンも描かれる『深夜食堂』シリーズの“象徴”とも言える逸品だ。

 

そこで今回は、シリーズ全作の料理を手がけているフードスタイリスト・飯島奈美さんにご協力いただき、身も心も温めてくれる“あの”豚汁定食を完全再現。料理無精な読者諸兄でも手軽に作れる、美味しい豚汁の“極意”をレクチャーしていただいた──。

 

フードスタイリストは体力勝負

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とはいえ、「フードスタイリスト」と、ひとくちに言っても、具体的にどんな仕事なのかが、いまひとつピンとこない──という人も多いはず。

 

そんな読者のために、まずは飯島さんが手がける実際のお仕事について聞いてみた。

 

簡単に言えば、映画やドラマ、CMなんかの撮影現場で、撮影用の料理を作るのが私たちの仕事です。なんとなくのイメージで「芸能人にたくさん会えて、華やかでいいですね」なんて言われたりすることもありますけど、実際のところは、けっこうな体力仕事。現場のスタジオには、冷蔵庫とテーブルぐらいしかないことのほうが多いんで、ひとたび撮影となると、カセットコンロに鍋やザル、まな板に包丁、食材に食器……と、「引っ越しですか?」ってぐらいの大荷物で現場入りしますしね(笑)。

 

言ってみれば、食材の調達から、搬入・搬出に至るまで、監督の要求に応じて、食に関するいっさいがっさいを“スタイリング”するのが飯島さんのお仕事。そこにはもちろん、一筋縄ではいかない“撮影”ならではの苦労もあるという。

 

たとえば、お母さんが台所で煮物を作っているシーンのあとに、すぐ食卓を囲むシーンがあったとしても、全体のスケジュールがあるから、「ちょっと煮込むのに時間をください」なんて言うわけにはいきません。だから、煮込み終わった完成品も並行して作って、いかにジャストのタイミングで出せるようにしておくか、みたいな部分には、どんな現場でもすごく神経を使います。松岡(錠司)監督とは、『東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜』以来、かれこれ10年近いお付き合いなので、こと『深夜食堂』に関しては、わりと信頼して任せてもらえているのかな、とは思いますけどね。

 

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▲こんな焼肉定食も……

 

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▲焼きうどんも……

 

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▲すき焼きも! 映画『続・深夜食堂』にも、うまそうな料理は盛りだくさん!!

 

経費削減のシワ寄せは料理に

ちなみにこのご時世、「経費削減」が叫ばれるのは、映像の世界も一般企業と同じ。作品によっては、スタイリスト泣かせなムチャなオーダーもあるのだとか。

 

いくら味は映像に映らないと言っても、食材の差は、味にも見た目にも出ちゃいますから、演者さんががっつり食べるシーンがあるのに、「食材はスーパーで極力安いものを買ってください」とかって言われたりすると、「なんだかなぁ」と思ったりはしますね。もし安くて白っぽいトマトと、高いけどちゃんと赤いトマトがあったら、私たちはやっぱり赤いほうを選びたい。まぁ、レシートをチェックされて、「このトマトはちょっと高いんじゃないですか?」なんてツッコまれたりすることも、ままあるんですけどね。

 

一方、飯島さんがフードスタイリストとしての一歩を踏みだしたバブル時代には、食材はもちろん、食器類もその都度、使い捨てが当たり前。なかには、それを“元手”に食器のリース業を始める先輩もいたというから驚きだ。

 

食器も、ある程度は持っていたほうが便利ではあるんですけど、自前のものは一度使ってしまったら、しばらくは使えない。だから、いまは借りることのほうが多いです。しかも最近は、そういうリース屋さんで食器を借りて、ハンバーグを食べるシーンはコレで、デザートのときはコレ。コーヒーカップはコレ……って感じで、盛りつけのイメージが分かる写真資料を作って、事前に先方のOKをもらうのが主流。角切りにしたキャベツを「千切りにしてもう一度(写真を)撮ってください」なんて言われることも普通にありますし、意外と撮影当日までの準備もひと苦労なんですよ(笑)。

 

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▲ざるそばも……

 

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▲チャーハンも……

 

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▲さんまの塩焼きも! 飯島さんの“プロの仕事”のたまもの!!

 

あの『深夜食堂』の豚汁レシピを公開!

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▲これが家でササッと作れたら、ちょっとカッコよくないですか?

 

……と、飯島さんのプロ魂がキラリとのぞく、その仕事ぶりをお分かりいただいたところで、お待ちかねの豚汁レシピをさっそく公開。飯島さん直伝のワンポイントアドバイスを参考にしつつ、ぜひみなさんにも実践していただきたい。

 

まず、肝心の材料はコチラ!

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【材料】(4〜5人分)

  • 豚バラ肉(スライス)  200g
  • 大根          1/4本
  • にんじん        1/2本
  • しいたけ        4個
  • ごぼう         1/2本
  • 里芋          3個
  • こんにゃく       小1枚
  • 豆腐          1/2丁
  • 油揚げ         1枚
  • 長ねぎ         1/2本

 

  • だし汁         1500cc
  • ごま油(or サラダ油)  大さじ1
  • 味噌          大さじ5~6
  • しょうゆ        小さじ1
  • みりん         小さじ1

 

【飯島’s ポイント】
少ない材料で作るとしたら、いい味が出るごぼう、長ねぎ、里芋、大根はマスト。人参は彩りを考えるなら「あったらいいな」ぐらいの感じです。味噌に関しては、『深夜食堂』の劇中では、熟成期間の長い濃いめの仙台味噌と、甘みのある信州味噌の2種類を合わせていますが、そこは好みでまったく問題ありません。

 

【作り方】

①豚バラ肉を4㎝の長さに切る。大根、にんじんはいちょう切り、しいたけはスライス、ごぼうはささがき、里芋は一口大に切る。

②こんにゃくを食べやすい大きさに手でちぎってアクを抜き、豆腐は水切りして食べやすい大きさにちぎる(※ちぎったほうが味が染みこみやすいのだ!)

③油揚げを横半分に切って、1㎝幅に切る。長ねぎのうち、半分は1㎝の小口切り(※一緒に煮込む用)に、残りは薄い小口切り(※最後に乗っける用)にする。

 

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④熱した鍋にごま油をひき、豚バラ肉を炒める。里芋と長ねぎ以外の野菜とこんにゃくを入れて炒める。

 

【飯島’s ポイント】

野菜は、水分が出てくるぐらいまでしっかりめに炒めておくと、煮る時間も短くて済むので、夜中に急に食べたくなったりしたときなんかは、早く水分が出てくるよう、気持ち塩を入れて炒めると、時短にもなってすぐ食べられます。

 

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⑤全体に油がまわったら、だし汁を加える。

 

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⑥アクが出たらすくい、味噌の半量を加えてフタをして、10~15分煮る。

 

【飯島’s ポイント】

ここで味噌を半量入れるのは、野菜に味を染みこませるため。煮つづけると味噌も香りが飛んでしまうので、半分は味つけ用にここで使い、残りは、風味をしっかり残すための仕上げ用として取っておきましょう。煮つめ具合によっては、味が濃くなってしまう可能性もあるので、仕上げのときは、味をみながら量を加減するといいと思います。

 

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⑦野菜が柔らかくなったら、里芋、長ねぎ、豆腐を加えて約10分煮る。

 

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⑧残りの味噌、みりん、しょうゆを加え、沸騰する直前に火を止める。

 

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⑨お椀に盛りつけ、長ねぎをのせて、ご飯と漬物を添える。

 

【飯島’s ポイント】

おかず的にガッツリ食べたいときには、豚バラ肉をちょっと厚みのある生姜焼き用なんかに変えてみるのもいいと思います。5mmぐらいの厚みがあるお肉を使えば、次の日になってもホロッとした肉々しい食感が楽しめるんじゃないかな、と。 

 

飯島さんが、劇中で2種類の味噌を合わせたのは、「マスターのお店には、いろんな地方の人が来そうだから、ミックスしたほうが馴染みやすい」との思いから。

 

この冬は、大切な誰かとご当地味噌をミックスしあって、ふたりだけの「豚汁」でホッコリ……というのも、なかなかオツだと思うのだが、読者のみなさんはどうだろう?

 

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【飯島奈美(いいじま・なみ)】

東京都生まれ。フードスタイリスト。TVCMなど広告を中心に活動をはじめ、’05年の『かもめ食堂』(荻上直子監督作)への参加をきっかけに、映画やドラマにも進出。『深夜食堂』シリーズのほか、映画では『南極料理人』や『海街diary』。’13年にはNHKの朝ドラ『ごちそうさん』でもスタイリングを担当した。著書に『LIFE なんでもない日、おめでとう! のごはん。』(1,2,3巻)などがある。

 

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【作品情報】

映画『続・深夜食堂』全国の劇場にて、絶賛公開中!

制作・配給:東映

© 2016安倍夜郎・小学館/「続・深夜食堂」製作委員会

※本記事は2016年11月の情報です。

 

書いた人:鈴木長月

鈴木長月

1979年、大阪府生まれ。関西学院大学卒。実話誌の編集を経て、ライターとして独立。現在は、スポーツや映画をはじめ、サブカルチャー的なあらゆる分野で雑文・駄文を書き散らす日々。野球は大の千葉ロッテファン。

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