一見さんが入ってくると、店主の方が驚いた表情を見せる。そんなお店をこよなく愛する、メシ通レポーターの裸電球です。
今回は札幌を拠点に活動するバンドマンに教えていただいたお店です。観光客が絶対に行かないようなコアな札幌をリクエストしたところ、なんともハードルの高いお店を紹介してくれました。
その名も「161倉庫・モリモ亭」です。
正式名称は「161倉庫」なのですが、名物スタッフのモリモトさんが働いていることから、オープン以来「モリモ亭」と呼ばれているそうです。店にあだ名があるなんて……楽しみではありませんか!
安くて美味いというのは調査済み。
しかし、アンダーグラウンドにも程がある外観に、恐怖すら感じます。
バンドマンが集うお店
札幌といえば北海道最大の繁華街ススキノがありますが、今回はネオンにサヨナラして暗闇を進みます。途中、不安になってギターケースを抱えた青年に道を尋ねました。
「161倉庫のモリモ亭ってこっちで合っていますか?」
「北16条東1丁目ですよ」
なるほど、だから161倉庫って名前なんだね!
「モリモ亭って行ったことあります?」
「たまにバンド練習のあとに寄りますよ」
「初めて行くんだけどさ〜」
「は?マジっすか! 勇気ありますね!」
最高のリアクションをいただき、教えてもらった道を進むと、闇夜にポカンと看板を発見しました。
全身刺青のバンドマンがウロウロしているのでしょうか。
それともリーゼントか。どうであれ怖いです……。
うわ〜、これはきついな。
映画だったら、ジャンキーな不良モヒカンが壁に寄りかかって「デヘヘ」って笑っているシーンですよ。音楽は好きなので、札幌のライブハウスはあちこち行ったことがありましたが、まさかこんな場所があったとは。知らないことはたくさんあります。
ちょっと待って! どの店も営業していません。
いやいやいや、アンダーグラウンドすぎるでしょ!
名店っていうのは地下にある場合が多いですから、私も色々なビルに潜ってきましたが、ここまでの「不良感」は感じたことがありません。
ここだね、「161倉庫」。
中からはバンドが演奏するドカドカした音が聞こえます。
事前の情報によりますと、ライブや練習のあとに、サクッと飲めるお店とのことですが、本当にこの扉を開けて良いのか悩みます。
スペルが間違っていますし、触らないですし。
ここにきて、入りづらいお店を紹介してとお願いしたことを後悔しています。
おや……??
振り返ると、もうひとつ、謎の入口を見つけました。
こちらもフライヤーだらけの扉。
壁に耳を近づけると、中からは……。
おお、優しいアコースティックギターの音色が聞こえます!
「モリモ亭」の文字を見つけて一安心。
こっちが正解のようです。
むこうはライブや練習のスペースで、こちらが飲み屋ということですね。
味噌汁付きで500円はバンドマンに愛される理由が早速わかった気がします。
勇気を出して、いざ入店!
カオスな世界が広がっている
カウンターではマスターとお客さんが談笑しています。
それにボックス席が2つ。10名も入れば満席といった感じです。
こんばんは〜。
あの……ここ座ってもいいですか?
完全にアウェーな雰囲気……。
しかし、気持ちを強く持って潜入調査開始です。
目が慣れるまでに時間がかかりました。お店の数少ない光源を担う、電球がフンワリと照らしています。
不思議です。初めてお邪魔したというのに、すごく落ち着くんですよね!
かっこつけても、しょうがない。ありのまま、自分のままでぶつかることが、このお店の攻略法かもしれません。
ただ、これだけは私が代表して宣言しましょう。
「一見さんには、ハードルが高すぎます」
闇に紛れてギターをつま弾くオーナーです。
このあと、友人が経営するライブハウスで弾き語りをするそうで、そこで披露する曲を、今まさに作曲しているところでした。
怖い人か……とドキドキしましたが、屈託のない笑顔で、この歌詞どう思う?と初めて会う私にもフレンドリーです。
フードメニューはどれも安い!200円〜500円のフードメニューが並びます。
ノーチャージで、何を飲んでも500円と明朗会計。演奏を終えたバンドマンがマラソンの給水所のようにひっかけていくのでしょう。
それでは、私も。
噂で聞いていたアレをお願いします!
モリモ亭の名物「もりもいも」
想像していた「イモ」とは違うカタチで登場しました。
てっきり北海道ですから、ジャガバターのような感じかと思ったのですが、出てきた「もりもいも」は丸い輪切りの一口サイズ。
これが札幌のバンドマンに愛されるB級グルメですか。
一皿にたっぷり入って300円。表面はきつね色に焼いてあり、香ばしい匂いが漂います。
一口食べて、衝撃が。
これ、ジャガイモじゃない!まさかの「長芋」ではありませんか!
「もりもいも」とは、長芋を絶妙な焼き加減でサクっと仕上げた一品だったのです。
この方がお店の名物スタッフ・モリモトさんです。
「モリモ亭」のモリモトさんが作った「もりもいも」です。
──これ、表面は片栗粉ですか?
「教えられないね」
──長芋にカツオ節に……このタレは何ですか?
「さあ、なんだろうね〜」
こんな感じでほとんど教えてくれません!
札幌のバンドマンから絶大な支持を集める「もりもいも」。
しかし、札幌のバンドマン以外は知っている人がほとんどいない「もりもいも」。
勇気を出して潜入した甲斐がありました!ビールがゴクゴク進む、最高のつまみです。
お腹が空いたので「油そば」を頼みました。400円というから驚きます。これは近所に住んでいたら毎晩通ってしまいそうです。しかも、お酒が進む美味しい味付け。油断していただけに、衝撃が走ります。
中毒性のある味わいで、無性に食べたくなる、そんな「油そば」でした。
勇気ある挑戦者は潜れ!
地下へ続く階段、そして中が見えないフライヤーだらけの扉と、ルーキーの心を折る仕掛けが満載の「161倉庫・モリモ亭」でした。今日もきっと、バンドマンが熱く音楽を語っていることでしょう。
ちなみに「もりもいも」ですが、なんとなく自宅でも作れそうな気がしませんか?
すぐに長芋を買って、片栗粉をまぶして焼いてみたのですが、どうしても、ここの味にならないんですよね!
シンプルだからこそ奥が深い、「モリモ亭のもりもいも」。
気になる方は勇気を出して地下へと潜りましょう!
お店情報
161倉庫
住所:札幌市東区北16条東1丁目2-10 西沢水産ビル地下
電話番号:011-721-7193
営業時間:19:00〜0:00
定休日:不定休