名古屋めし勢揃い。老舗「山本屋 大久手店」のオールスター感にひれ伏せ!

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どて煮、味噌串かつ、手羽先などおなじみのメニューがズラリ

今や名古屋観光のキラーコンテンツになっている「名古屋めし」。ここ数年間で名古屋駅界隈には名古屋めしが食べられる店が急増した。とくに地下街は、味噌煮込みうどんや味噌かつ、手羽先、ひつまぶしなど、ありとあらゆる名古屋めしが楽しめる。

 

しかし、どの都市の地下街も同じだと思うが、高額なテナント料ゆえに出店している店の大半は、大手外食産業が手がける店である。なかには東京にも出店している店もあり、いまいち真新しさに欠けるのは否めない。

 

そこで今回紹介するのは、名古屋駅から地下鉄桜通線で7つ目、「吹上」駅から徒歩3分の場所にある『山本屋 大久手店』。

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▲店は「大久手」交差点からすぐ

 

その店名を聞いて、味噌煮込みの有名店を連想した人は多いはずだろう。たしかにココの名物も味噌煮込みうどんであるが、巷の有名店とは一線を画する。味噌煮込みうどんの並々ならぬこだわりは後ほどたっぷりと紹介するとして、まずは名古屋めしに話を戻そう。

 

実はココ、ほとんどの名古屋めしが揃うだけではなく、味においても専門店にまったく引けを取らないほど完成度が高い。

 

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▲店内奥には個室も完備している

 

味噌煮込みうどんが看板メニューだけに、味噌を使った料理がふんだんに揃うのが特徴だ。なかでも絶対に注文したいのは、豚ホルモンを八丁味噌でじっくりと煮込んだ「味噌どて煮」。

 

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▲味噌どて煮(3本500円)

 

ホルモンはサクッと噛み切れるほどやわらかく、噛むほどに旨みがジュワッと広がる。お酒のアテにもぴったりだ。

 

うどんに使うダシで煮込み、自家製の味噌ダレをかけた「味噌おでん」も定番。寒い季節にはコレを肴に熱燗でキュッとやるのが最高だ。

 

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▲味噌おでん(3本480円)

 

味噌を使ったメニューは、ほかにも「味噌串かつ」や「味噌焼きとり」も用意している。

 

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▲味噌串かつ(3本500円)

 

揚げ物では甘辛い味付けがクセになる「手羽先」も好評だ。

 

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▲手羽先(3本500円)

 

味噌煮込みうどんの陰に隠れてしまっているが、「かけきしめん」も常連客の間では大好評。

 

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▲かけきしめん(750円)

 

特筆すべきはつゆの旨さ。通常、きしめんのつゆはムロアジやさば節でとった野趣溢れる味わいのダシがベースだが、ココは贅沢に鰹節がメイン。それゆえに巷のきしめんよりも上品すぎるほど上品で、一滴残らず飲み干したくなる。

 

名古屋のかまぼこはピンクより派手な朱色

変わったところでは「板わさ」なども。

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▲板わさ(600円)

 

えっ!? ごくフツーのかまぼこじゃないかって? 注目すべきは、その色である。ここで山本屋 大久手店の5代目で専務取締役の青木裕典さんに解説してもらおう。

 

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▲山本屋 大久手店専務取締役、青木裕典さん

 

地元のかまぼこ屋さんから仕入れる“名古屋かまぼこ”です。かまぼこといえば、全国的にピンク色が一般的ですが、名古屋は朱色のかまぼこが主流なんです。名古屋は派手なものを好む趣向がありますが、味噌煮込みうどんやお雑煮、お吸い物に入れても映える色の朱色にした、という説が有力のようです(青木さん)。

 

また、名古屋めしとは異なるが、うどん店らしく「天ぷら盛り合わせ」や「磯巻き揚げ」もあり、居酒屋としても利用できる。

 

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▲磯巻き揚げ(800円)

 

素材選びから麺打ちまでこだわり抜いた味噌煮込みうどん

さて、ここからは名物の味噌煮込みうどんについて触れよう。青木さんによると、もともと味噌煮込みうどんは、八丁味噌の味噌汁に水で練った小麦粉やぶつ切りにしたうどんを入れた簡単な料理で、どの家庭でも食べられていたという。

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▲親子味噌煮込みうどん(1,150円)

 

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▲純系名古屋コーチン味噌煮込みうどんのおすすめセット(2,300円)。天ぷら盛り合わせと味噌おでん、ご飯、漬け物が付く

 

もともと家庭で食べられていた味噌煮込みうどんを店で提供したのが、当店の初代店主、島本万吉が大正12年頃に大須で創業した「山本にこみ」のはじまりです。味噌煮込みうどんのレシピや使用する食材は現在とほとんど変わっておらず、卵やかしわも入っていたそうです。当時は高価だったと思いますが、より美味しく、栄養のあるものを提供したいという思いがあったのでしょう。(青木さん)

 

当時の大須は、遊郭や芸者の置屋が並ぶ歓楽街だったこともあり、新しいもの好きの富裕層も多く訪れ、味噌煮込みうどんは話題になった。その評判がどんどん広がっていき、名古屋名物としての確固たるポジションを築き上げたのだ。

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▲麺もつゆもすべて手づくり

 

ここ山本屋 大久手店では、水と小麦粉のみで打ち上げる麺や八丁味噌をベースとしたつゆなど創業当時の味を頑なに守り続けている。

 

味噌は愛知県岡崎市にある「角久」の八丁味噌をメインに独自ブレンドしたものを使い、ダシは1日2回、朝と夕にとっています。もちろん、添加物や保存料は一切使っていません。卵やネギ、名古屋コーチンなどの食材もすべて国産、減農薬のものを厳選しています。(青木さん)

 

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▲テーブル席から麺打ちを見ることができる

 

特筆すべきは、噛むごとに小麦の味と香りが広がる麺。打ちたて・茹でたてを味わってもらいたいとの思いから、なんと、1日に5回も麺を打つという。

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▲小麦粉、水でこねる。かなり体力を要する作業だ

 

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▲のばす前の生地

 

味噌やダシもそうですが、私たちがめざしている味は機械では作ることができないんです。とくに麺は絶妙なかたさと太さが求められるので、職人の技術があってこそだと思います。(青木さん)

 

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▲左から4代目で現店主の青木一哉さん・美千代さんご夫妻、先代の浅井仲治・昭代さんご夫妻、青木裕典さん、青木晃佑さん・知聡さんご夫妻

 

昨今、日々刻々と進化し続ける「名古屋めし」が注目を集めているが、長年にわたって地元で愛されてきた味に思いを馳せるのも楽しい。どて煮や味噌おでんを肴に呑み、味噌煮込みうどんで締めるトラディショナルな名古屋めしを存分に楽しんでみてはいかがだろう。

 

お店情報

山本屋 大久手店

住所:愛知名古屋市千種区大久手町5-9-2
電話番号:052-733-7413
営業時間:11:00~22:00(21:30L.O.)
定休日:月曜
ウェブサイト:https://www.hotpepper.jp/strJ000396951/

www.hotpepper.jp

 

書いた人:永谷正樹

永谷正樹

名古屋を拠点に活動するフードライター兼フォトグラファー。地元目線による名古屋の食文化を全国発信することをライフワークとして、グルメ情報誌や月刊誌、週刊誌などに写真と記事を提供。最近は「きしめん」の魅力にハマり、ほぼ毎日食べ歩いている。

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