1,980円で「全国各地の日本酒100種類飲み放題」が成り立つ理由を聞いてきた

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「いいのかこんなことして」

 

このお店に初めて訪れたとき、そう思った。お酒の中でも、割と会計時に驚く事態になりがちな「日本酒」。その日本酒をなんと100種類、2時間1,980円で飲みまくれるお店がここ「酒蔵(しゅぞう)」だ。

 

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那覇市内に住む日本酒好きの間で瞬く間に話題となり、週末は入れるか入れないか分からない状態が続くこのお店は、もはや日本酒好きにとってかなり穴場……というか天国。

 

フードでお金をもうけているのかと思いきや、なんとこのお店にはフードメニューがほとんどない。5品くらいあるけど非常に安い。それどころか持ち込みもOK、鍋やタコ焼き機の貸し出しは500円、なんなら近くのコンビニに置いてあるおすすめのつまみを推奨しているほどだ。

 

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以前訪れた際に「ローソンにお刺身あるの? ちょい買ってくる!」とおつまみをGETしに向かったのは私だ。(ちなみにローソンは徒歩1分くらい)

 

っていうかどうやってもうけてるの? もしやローソンからお金もらってる?

 

その疑問を解消すべく、実際に「酒蔵」のオーナーさんに話を聞きに行ってきた。

 

100種類の日本酒が飲み放題! 日本酒セルフ飲み放題のお店「酒蔵(しゅぞう)」

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18時よりOPENするこのお店は、サラリーマンが多く飲み会の場所として選択するオフィス街「久茂地」に存在する。

 

入り口には日本酒のラベルがベタベタと貼られており、入り口手前には、日本酒好きが「おっ?」となりそうな「秋の贅沢冷やおろし」の看板が。

 

早速中へ入ると、すぐ右側に日本酒がずらり。

 

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奥に進むとテーブル席とカウンター席が並んでおり、和風と豪華さがミックスされた空間が広がる。

 

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早速テーブルに座り、お店のシステムを確認。

 

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お店のプランは「単品」「飲み放題」の2種類。単品プランは日本酒グラス一杯500円。飲み放題は、2時間~4時間の時間単位で選択でき、それぞれ金額が分かれている。

 

2時間1,980円が最安値となっており、4時間いても2,980円と、かなり安い。

 

飲み放題メニューの中には、100種類から選べる日本酒をはじめ、ビール・ソフトドリンク(5種類)も含まれている。持ち込みは完全自由。

 

日本酒は基本セルフで、各テーブルには日本酒リストがあらかじめ用意されている。

 

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入り口すぐにある日本酒コーナーにも日本酒リストが置かれているので、「酔っぱらったらテーブル離れた瞬間に飲みたいお酒なんだったか忘れちゃうよw」みたいな人でも安心だ。

 

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メニューが置かれた棚の下にはグラスが数種類置かれており、好みのグラスを選択し、セルフでつぐことができる。

 

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いろんな種類を飲みたい人は小さいグラス、ひとつの種類をじっくり楽しみたい人はとっくりや升に入れるのがおすすめだ。

 

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もちろんリストから選ぶのが面倒な人は、インスピレーションで選ぶのもありだ。私はいつも面白いラベルや格好いいラベルの日本酒をついつい選んでしまう。

 

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日本酒に詳しくない人でも、ボトルを見るだけでわくわくするほどいろいろな種類の日本酒がある。メガネの人だけで作ったメガネ専用日本酒なんて、メガネの人がボトル持って写真撮ったら確実に映える。それだけでメガネを連れて来たくなる。

 

「酒蔵」を営んでいる福島出身の福本 考平(ふくもと こうへい)さん

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福島から東京に上京し、その後沖縄の海や人の温かさにひかれ、沖縄に移住したという福本さん。

 

ーーとにもかくにも日本酒天国ですね。どうして日本酒セルフ飲み放題をやろうと思ったんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181102194155p:plain福本さん:「きっかけは二つあります。ひとつは僕が福島出身だということ。福島県は、実は日本酒の隠れ名産地と言われていて、日本酒の全国大会である『SAKE COMPETITION』では、毎年4~5本は金賞を受賞するほどいい日本酒がそろう土地なんです。で、もう一つのきっかけは、東京に住んでいるとき、同じようなスタイルでやっているお店があって、そこに好きでよく行ってたんですけど、沖縄に住み始めて『そういえば沖縄には同じスタイルがないな』と気づき、まだなかったので1発目に自分がやろうと。それがきっかけですね」

 

ーー沖縄は泡盛文化が根強い気がしますが、そこで日本酒をやるのは冒険だったのでは?

 

f:id:Meshi2_IB:20181102194155p:plain福本さん:「僕もそう思っていたんですけど、ここ数年久茂地界隈にも日本酒やワインのお店がたくさんできてて、はやっているのを見て『これはいけるんじゃないか』と思ったんです。あとは、僕がもう一つ経営している居酒屋さんで、日本酒と焼酎の飲み放題をやってみたら全然日本酒の方が出たので、挑戦してみようと」

 

ーーなるほど。けどこれだけの種類、日本酒飲み放題でこの価格は赤字じゃないんですか? 日本酒って結構お高いですよね?

 

f:id:Meshi2_IB:20181102194155p:plain福本さん:「うちのお店、基本店員は1人でまわしてるんですよ。人件費を削って原材料費を上げることで成り立っています。原材料費にほとんどあててますね。日本酒好きを観察していると、人間どんなに飲んでも4合くらいだということに気づいたので、どうにかやっていける価格で卸しています」

 

ーーフードがないと売り上げが少ないのではと思っていましたが、逆にフードがないから1人でも回せる仕組みを作ることができたんですね!

 

f:id:Meshi2_IB:20181102194155p:plain福本さん:「そうですね。一応数種類の簡単なフードは置いていて、あとは系列店の『とりからたまご』から出前もできるようになってます。あと缶詰も置いていますが、温めてお皿にのせれば終わりなので、満席になっても1人で全然回りますね(笑)」

 

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▲フードメニュー

 

フードメニューはどれも日本酒に合いそうなものばかり。「このおつまみと日本酒の相性を味わってみたい……!」その要望に、福本さんが応えてくれた。

 

福本さんおすすめの日本酒&おつまみを試食!

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▲おつまみ:奈良漬けクリームチーズ(中央)500円/牛筋の甘煮(左手前)500円/島らっきょの昆布漬物(左奥)400円

 

ーー福本さんおすすめのおつまみと日本酒を教えてください。

 

f:id:Meshi2_IB:20181102194155p:plain福本さん:「日本酒には四季があるので、メニューは頻繁に変えているので、その都度おすすめが変わります。定番であるものの中であえておすすめを選ぶとしたら、日本酒初心者の方には『田酒』『景虎』、あと福島のお酒でおすすめしたいのは『にいだしぜんしゅ』ですね」

 

ということで、3種類を試飲させてもらった。

 

「にいだしぜんしゅ」は、フルーティーかつトロっとした喉越しと甘みを感じる味で、辛めの「島らっきょの昆布漬物」によく合う味だった。

 

「景虎」は、水のように飲めてしまうほど、透き通った味(新潟のお酒は水っぽいお酒が多いそう)。これは量を飲んでしまいそうで、危険だ。こちらは「奈良漬クリームチーズ」と合わせてさっぱりを貫くか、「牛筋の甘煮」と合わせて濃さと薄さを楽しむか、悩みどころだ。

 

「田酒」は、こちらも飲みやすく透き通った味だが景虎ほど水っぽくはない。すっきり具合がちょうど良く、私は「田酒」が一番好みだった。

 

個人的にいうと、「奈良漬けクリームチーズ」と「田酒」の組み合わせが一番好きだった。「奈良漬けクリームチーズ」を食べた瞬間奈良漬けとクリームチーズはこんなに合うのか」と驚いた。そして野菜が練りこまれたクラッカーも合わさり、まろやかだけど癖のある、なんとも言えない絶妙さ。日本酒のために生まれてきた食べ物たちが、お互いの力をいかしながら120%の力を発揮している感じがする。

 

とにかくこれさえあれば他に何もいらないと思える相性なので、ぜひ味わってみてほしい。ちなみに「牛筋の甘辛煮」は販売前の新メニュー。甘辛くしっかりめに煮込まれた濃厚な牛筋は日本酒との相性が抜群の一品。常連さんも必見だ。

 

福島出身だから手に入る希少な日本酒も

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福本さんが、福島出身だからこそ手に入る希少なお酒もこのお店には多くある。

 

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福島県の日本酒メニュー

 

f:id:Meshi2_IB:20181102194155p:plain福本さん:福島県だけで、別枠として30種類用意しています。地元の酒屋さんとつながりがあるので、完全な地酒も結構置かせてもらってます」

 

地酒は47都道府県で作られているが、「地酒」の中には流通量が少なく、地元の酒屋さんにしか入らない銘柄も多いのだという。私たちは、沖縄に住んでいるにも関わらず、福本さんの人脈で手に入れた日本酒をこのお店で飲むことができるというわけだ。なんともありがたい。

 

ーーいつからそんなに日本酒が好きになったんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181102194155p:plain福本さん:「若い頃から日本酒は好きでしたね。逆に、若い人が飲むようなカクテルとかチューハイとかは昔から苦手で。もともと和食が好きだったこともあって、相性の良い日本酒は、自然と好きになりました」

 

ーー日本酒と和食がおいしい福島を離れて沖縄に住んだのは、なにか決意があったんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181102194155p:plain福本さん:福島を離れてしばらくは東京に住んでいたんですが、とにかく沖縄が好きで、8年くらい通ってたんですよ。東京では全く違う仕事をしていたので、沖縄に来て全く未経験の飲食業をやると言ったときは周りにかなり反対されましたけどね(笑)」

 

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周囲の反対を押し切り、沖縄に移住して居酒屋「とりからたまご」を出店、そして2号店として「酒蔵」をOPENさせた福本さん。

 

f:id:Meshi2_IB:20181102194155p:plain福本さん:福島は原発問題でいろいろと大変だったんです。だから日本酒くらいははやらせてやりたいなって思うんですよ」

 

ーー最後に、どんな人に「酒蔵」を利用してほしいと思いますか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181102194155p:plain福本さん:「そうですね。日本酒はやはり『とっつきにくい』と思われがちなお酒なので、日本酒に踏み込めていない人にぜひ来てほしいなと思います。うちは1杯500円から提供しているので、おひとりでもちょっと試しに、という方にも来てほしいなと思います。高いイメージもあるかもしれませんが、3,000円台でもおいしい日本酒はたくさんあるので、沖縄の人にとって日本酒がもっと身近になるといいな、と思いながらお店をやっています」

 

ーーありがとうございました!

 

沖縄を愛し、出身地を愛し、日本酒を愛する福本さんだからこそできた日本酒天国「酒蔵」。日本酒デビューしたい人も、日本酒に向き合いながらしっぽり飲みたい人にもおすすめしたいお店だ。

 

ぜひお店に訪れた際は、「田酒」+「奈良漬クリームチーズ」の相性を確かめていただきたい。

 

お店情報

酒蔵(しゅぞう)

住所: 沖縄那覇市久茂地2-19-5 赤崎荘 1F
電話番号:098-860-7358
営業時間:18:00~翌0:00(LO 23:30)
定休日:月曜日
ウェブサイト:http://meroom.com/syuzou.html

 

書いた人:三好優実

三好優実

お腹が減る感覚が一番嫌いで、「腹が減っては戦はできぬ」という言葉を作った人は天才だと思っている。回転寿しで36皿食べたことが武勇伝。ちなみに普段は納豆で生きています。

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