全国津々浦々、名物、名産、ご当地グルメに郷土食!タベアルキストの旅に美味しいご飯は欠かせません。
日本中の美味しいものを、そこに込められたハートも一緒に味わいたい! そんな想いから始めた大人のための食の旅こそが『おとなのぶらり旅』。
「知って食べれば、もっと美味しい」
食と人でつなぐグルメ旅2日目スタートです!
登って、登って。ようこそ天の茶畑へ
2日目の朝7:30。
この日の最初の目的地を目指して、山道をどんどん登ります。
ここは標高600m。昨晩、春香さんに教えてもらった「天の茶畑」、天野製茶はすぐそこです。
山の頂に広がる茶畑はひんやりと肌寒くて、空気が澄んでいます。
ちょうど茶の木は、かわいらしい白い花をぽつぽつと付け始めている時期でした。
天野製茶は標高600mの天の茶畑で無農薬栽培のお茶を作っています。
私たちが見学させていただいたのは、「ザイライ」と呼ばれる日本の在来種の畑はなんと樹齢約80年。
この山を茶畑として開墾したときから植えられているのだとか。
花が咲かないよう品種改良され、接ぎ木で育てられる一般的なお茶の木とは違い、このザイライは種から発芽し、土の中深くまでしっかりと根を張るので、天候に左右されにくく、野性的で病害虫にも強く、無農薬栽培向きの品種なのだそうです。
収穫されたお茶の葉は天野さんの持つ製茶工場へ運ばれ、一番茶は緑茶に、二番茶以降は紅茶へと加工されます。
摘みたての茶葉を乾燥させ、しっかりと揉み込み発酵、その後乾燥させて紅茶が完成するまで丸2日。予想外の早さに驚きました。
天野製茶の作る商品6種類テイスティングをさせていただきました。
- 天の紅茶FLサヤマカオリ
- 天の紅茶FL
- 天の紅茶FLクラサワ
- 天の紅茶焙煎
- 天の紅茶FLザイライ
- 天の紅茶しょうが
品種ごとのタンニンの含有量の違いや、酵素成分の違いによる発酵の深さの度合い、また標高などの生育環境等で茶葉の特徴が作られ、さらに、製造技術によっても味の変化が出てくるそう。
「日本の紅茶はブレンドの技術をもっと上げないと」という天野さん。それは外国産の紅茶を真似するのではなく、和紅茶らしさをよりひきだすということ。
そして天野製茶では日本の文化の中に日本の紅茶を取り入れようと力を入れています。
日本の食卓に合うお茶として最初に作られた「天の紅茶 焙煎」は、ザイライを使用し、焙煎しても負けない紅茶の風味が魅力。それは樹齢80年の生命力の強い木だからこそ実現できるのだとか。
とても強いその自然の生命力を、お裾分けしていただいているような気分になりました。
天の紅茶は老舗の和菓子店「とらや」の紅茶羊羹に使われたり、雑誌の手土産特集に掲載されたりと認知度も高く、通信販売もされていますが、店頭購入となるとまだまだお店が限られてきます。
そんな「天の紅茶」の買えるお店が、海沿いにもあるとか。
そろそろ山を下り、海へ向かいましょう。
お店情報
天野製茶
住所:熊本県水俣市石坂川370-119
電話番号:0966-69-0918
ウェブサイト:https://www.facebook.com/AmanoTeaFactory
水俣の環境に対する思いが垣間見える、高台の農場
教えていただいた次の目的地、福田農場へ向かっていくと、見えてきたのは農場らしからぬ、南欧風の建物と美味しそうに色づき始めたミカン畑、そして眼下に広がる不知火海のパノラマ。
ここ福田農場は湯の児スペイン村として、観光農園として経営されているのです。
正式名称は福田農場ワイナリーなのですが、ワインの醸造は行っていません。その代り、名産の甘夏を使ってサングリアを製造しているそうです。
園内の案内をしてくださったのは、柴田さん。
福田農場の生い立ちやオレンジ繋がりからスペイン村に至った理由など色々なお話を聞かせてくださいました。
印象深かったのは、この土地も元は松林で先代が一から開拓したというお話。
昨日の農山さん、今朝の天野さんと姿がダブって、熊本の人はなんと開拓魂に富んだ人たちなのだろうと感じました。
ちょっと上を見てください。と言われて見上げた天井には丸太の骨組みが。
一見するとただの木材ですが、これは昔電柱として使われていたそうです。
この他にもミシン台をリサイクルしたテーブルや枕木をつかった舗装など様々なところに昔の名残が見られます。
「水俣の人は、環境をすごく大切にしている」という一言が身に染みました。
そして、レストラン内に併設されている地ビール工場。不知火海浪漫麦酒と銘打ったビールを製造しています。
この地ビール、生産量が少ないため此処とオンラインショップでしか買えない貴重品。残念ながら味わう時間は取れませんでしたが、次回は是非とも挑戦したいところ。
お土産屋さんのスペイン館は品ぞろえが充実。
こだわり派の方は熊本空港で買うより、こちらで購入した方が満足のいくチョイスが出来ると思います。
色々味見もさせてもらった中で、私のお気に入りは写真のミルクサワーデコポン。カルピスに近い飲料なのですが、トロッとした飲み口とまろやかな舌触り。そして爽やかなデコポンの香りが広がって素敵な味わいです。
夏に氷たっぷりで作ったらたまんないだろうな~と思わせる一品。5倍濃縮とあるけど、希釈量はお好みで。私はもう少し水多めに割るのが好きです。
▲パエリアコース 1,750円 パエリア・パン・サラダ・スープ・デザート
最後はバレンシア館に戻って、自慢のお料理をいただくことに。
こちらの看板メニューはスペインらしくパエリア。地元産のお米や野菜、魚介をふんだんに使った逸品です。
驚いたのはサフランまで水俣産であること。水俣は山海の幸に恵まれた土地であることが良く分かります。ずっと昔、ここで働いていたシェフが東京に修行に出ていた時、一緒に上京した人が、今でも別のレストランをやっているよ。と教えていただいたので、本日2回目のランチはそちらでいただくことに。
お店情報
福田農場
住所:熊本県水俣市湯の児台地
電話番号:0966-63-3900
営業時間:8:00~17:00(売店) 10:30~21:00(レストラン)
休業日:無休
ウェブサイト:http://www.fukuda-farm.co.jp/
ヒゲのお父さんが切り盛りする、一軒家レストラン
山を登ったり下ったりが続きますが、これも水俣の起伏に富んだ地形ゆえ。
今度は中尾山の中腹にある「アージェひげのみせ」を目指します。
ペンションのような可愛らしい建物。
春には桜が咲き、その向こうには水俣市内が一望できるというグッドロケーションに位置します。
木のぬくもりを感じる、アンティークな雰囲気の店内は、ランチタイムとあってお客さんで賑わっていました。
「ひげのみせ」という店名と看板に描かれた髭のコックさん。その似顔絵そのままの、米田シェフが作るお料理は、洋食をベースとした創作料理。
かつては東京・銀座の三笠会館で修行をし、水俣市内へと戻ってレストランを開いたそう。現在の場所に移ってからはもう23年経つそうです。
我々も早速ランチをいただきます。
▲本日のランチ 1,080円
メインにスープ、サラダ、パン、デザート、コーヒーまでついた豪華なランチです。
メニューは日替わりで、その日入った食材で作るのだそう。
食材のほとんどが水俣・芦北エリア産のものを使用しているので、南熊本の美味しさをたっぷり楽しめます。
この日のメインはチキンとおからを使ったパン粉焼き。
鶏のミンチとおからでふんわりとしたつくねのような食感になっています。
南蛮ソースとタルタルソースを合わせ、大ぶりなの野菜のローストを添えた、食べ応えのあるひと皿でした。
もともとは小麦アレルギーの人に対応するために考えたというメニュー。手作りの優しさのこもったお料理です。
レーズンの天然酵母を使用したパンも店内で焼かれています。
このパンがまたおいしいのです。息子さんが焼いているそうです。
カリッと焼き上がったパンを割ると、しっかりとしたコシの強い生地で、噛むほどに広がる小麦の味わい。
パンは販売もしているので、我々も翌日の朝ご飯として、いくつか買いました。
単なる洋食のくくりに収まらない独創的なお料理ながら、どこかホッとする味。
米田シェフにそのこだわりを聞いてみたところ、「こだわりのないのがこだわり」なんだとか。
「がんばりすぎず、現状維持をしたい」とご本人はおっしゃっているけれど、きちんとした技術があるからこそ、お客さんによりそい、気負わずフレキシブルに対応できるお料理が作れるのでしょう。
来年春にはもう1人の息子さんがフランスでの修行を終えて戻ってくるそうで、米田シェフはそれが楽しみで仕方ないみたい。
新たな刺激が想像力となり、さらにレストランが活気づくのではないでしょうか。
お腹も程よく膨れた我々は、次の目的地 人吉へと向かいます。
お店情報
アージェひげのみせ
住所:熊本県水俣市南福寺1000-9
電話番号:0966-62-0908
営業時間:12:00~14:00(ランチ) 18:00~(ディナー※予約制)
休業日:水曜日
ウェブサイト:https://www.facebook.com/higenomise
人吉エリアのスタートは名物駅弁
海沿いの水俣からぐっと山の方に移動して、ここは人吉駅。観光列車のSL人吉号や、いさぶろう・しんぺい号の起点となる駅です。
ここの名物は旅のお供に欠かせない駅弁。
人吉駅弁やまぐちさんが製造する栗めしと鮎ずしがお目当てです。
店主の菖蒲さんが、今では珍しくなってしまった売り子の駅弁販売を行っていて、旅情を高めてくれます。
店内に飾られているパネルは、人吉球磨物語という駅弁のパッケージ。
昭和初期の頃の駅弁販売の様子を垣間見れる貴重な写真が使われています。
▲鮎ずし 1,100円
そして名物鮎ずし。矢代の駅弁鮎屋三代とは、果たしてどう違うのか……
インパクトはこちらの勝ち!(ちょっと目が怖いかも。)
腹開きの酢で〆た 鮎が丸っと一匹、竹をモチーフにしたお弁当箱の中に鎮座しています。シコッとした食感の鮎と、堅めに炊き上げた酢飯で食べごたえは十分。
車窓から鮎の育った球磨川を眺めつつ食べるのが風情があって良さそうです。
▲栗めし 1,100円
そして、もう一つの名物栗めし。栗をかたどった弁当箱がキュートです。お尻の部分は模様が入っていて芸が細かい。
菖蒲さん曰く、特許取得済みのデザインだとか。
この栗ご飯は栗もさることながら、お米が抜群に美味しい。
もう冷えてしまっていて、お世辞にも美味しいとは言えないお弁当のご飯が多い中、なぜこんなにも美味しいのかと感嘆してしまうほど。
ふっくらと軟らかく、一粒ずつお米の立った魔法のお弁当ご飯。
菖蒲さん曰く、秘伝の炊き方があり、地元の米と球磨川の水がそろって初めて出せる味だそうです。
お米はもちろん、水が変わってしまうだけでもこの味は出せないとのこと。
そして、人吉にはこのお米と水を極めて生み出した世界一のお酒があるとか。
次の目的地はその蔵元さんです。
お店情報
人吉駅弁やまぐち
住所:熊本県人吉市中青井町300
電話番号: 0966-22-5235
営業時間:7:00~19:00
休業日:無休
五臓六腑に染みわたる世界一の酒
続いて我々が向かったのは繊月酒造。明治36年創業の米焼酎の蔵元です。すべての銘柄やサイズを組み合わせると実に90種類。看板商品の繊月はじめ、貴重な古酒なども取りそろえています。
蔵元といえば、醸造工程の見学ツアー。
繊月酒造でも行っているので、私たちも見学をさせていただきました。
丁度六代目馬場杜氏が作業をされているところでした。
最後に味を決めるのは杜氏の経験と技術であり、この技をいかに継承し、次世代につないでいくかがとても重要とのこと。
三代目堤正博社長が独自に技術研究を行い開発した蒸溜機。常圧蒸溜・減圧蒸溜を使い分けることができる機械で、味の違いを様々に産み分けます。
繊月酒造の一押しのお酒がこちらの川辺。
賞状とメダルが飾られていました。
2013年にロサンゼルスで行われた70年の歴史を持つワインとスピリッツのコンテストで、その年初めて新設された焼酎部門の最高金賞を得た銘柄だそうです。
世界に受け入れられる確かな味ということなのでしょう。
最後は蔵見学のお楽しみ、試飲タイム! せっかくなので川辺をいただいてみることに。
蓋を開けた瞬間にフワッと立ち上る吟醸香。日本酒を更に研ぎ澄ませたような香りが鼻を突き抜けていきます。
仕込み水も、割水も使っているのは国交省の一級河川を対象にした水質検査で、9年連続日本一の清流、川辺川の水。まずはそのまま楽しんで欲しい。ということで今回はストレートで。
トロッとした舌当たりのあと、口に広がる米の甘み、そして焼酎特有の強いアルコールのアタック。クセの無い味わいで、焼酎を初めてチャレンジするような方でも、抵抗なくいけるのではないかと感じました。
お土産コーナーを眺めながら、ふと気になったのが栗の渋皮煮。 沢山のしょっぱいおつまみが多く並ぶ中、なぜ甘いものが……?
うかがってみると、地産地消的な観点から、地元の良いものを多くの方に知って欲しくて置いているそうです。酒蔵でも取り扱うほどのお勧めの甘味! さほど遠くないようなので、本店へ行ってみましょう。もっと面白い商品があるかも!
お店情報
織月酒造
住所:熊本県人吉市新町1
電話番号:0966-22-3207
営業時間:9:00~17:00
休業日:無休
ウェブサイト:http://www.sengetsu.co.jp/
栗という名の宝石
栗といえば丹波に小布施……いえいえ、実は熊本県も栗の名産地。
茨城県についで全国2位の収穫量を誇ります(2014年農水省調べ)。
中でもここ山江村の栗は粒が大きく、糖度の高い栗として有名だそう。
「繊月酒造」のお土産コーナーで見かけた渋皮煮も山江村にある「やまえ堂」のものでした。
▲やまえ栗100%使用渋皮煮 802円
JALのファーストクラスや「クルーズトレイン七つ星」にも採用されたという大粒の栗の渋皮煮。
一つ一つの粒が大きく、ふっくらとしたハリがあって、見た目もとても美しい栗です。グラニュー糖を使って糖度を抑えたスッキリとした甘さに仕上がっています。
身の詰まった栗はなめらかな食感で栗自体の風味もしっかりしているので、食べた時の満足度が高いです。
▲銀寄 10,800円
そんな渋皮煮の最高峰がこちら。
銀寄せという希少な栗のなかの大きな粒だけを使用し、1カ月かけて作るという宝石箱のような逸品。
一度体験してみたい!
▲栗んとう 432円
他にも一番好評の栗きんとんや、栗団子など様々な栗アイテムがありますが、意外にハマったのが「栗んとう」。
渋皮煮を作るときに割れてしまっったりする「はじけ栗」を40%も使用。
ほんのりとした甘さと、カリカリとした食感が楽しく、ついつい手が伸びてしまうかりんとうです。
「今年は台風の影響で」というお話は、今回の旅の中でどこへ行っても耳にしたのですが、栗もやはり影響を受けていました。
実がなる前に落ちてしまい、収穫量は例年の10分の1に満たないとのこと。やまえ堂でも栗の確保にはかなり苦労したようです。
おいしい栗菓子がいただけるのも尽力あってこそなんですね。
日もとっぷり暮れて、さあ晩ご飯!
実は、熊本に旅立つ前にタベアルキストメンバーから、絶品餃子があるという前情報を得ていたので、そちらへ向かいます!
お店情報
やまえ堂
住所:熊本県球磨郡山江村山田丁821
TEL:0966-24-7324
営業時間:9:00~17:00
休業日:日曜日(祝日の場合翌日)
ウェブサイト:http://www.yamaedo.jp/
0.1mmの薄さが生み出す魅惑の食感にプロのこだわりを見た
人吉を訪れるべきメニューとして、お勧めされたのがこの松龍軒。
ここに絶品餃子があるのです。
暖簾をくぐって、着席。そしてメニューを見てビックリです!
メニューは何と餃子のみ!
▲餃子 1人前370円 写真は4人前
待つこと数分。整然と並んだ餃子は何とも独特な形です。
棒餃子のような形をしていますが、大きさはとても小ぶりで一口サイズ。
皮の感じも普通の餃子のようなツルッ、モチッという感じではなく、もう少しクリスピーな揚げ餃子のような表情です。
そんな餃子に合わせるタレはこちら。
ここで食べるのは初めてと伝えたら、店主の岩井さんが自ら調合してくれました。
九州特有の甘い醤油ベースのタレにこれでもか! と一味を投入。
そんなに入れたら辛いですよ! と伝えても更にもう一さじ。
そして完成したのが、松龍軒一押し、一味ダレです。
いや、どう見ても辛いでしょ。コレは。。。
冷める前に食べてよ! という岩井さんの言葉に押されて、まずはタレも控えめに一口。
サクッという軽い食感の後に、ガツンとくるニンニク。
そしてほのかな野菜の甘み。
これはうまーい!
ですが、少しニンニクがキツイように感じます。
ところが、タレをたっぷりつけての2つ目。
するとどうでしょう、ニンニクのアタリが軟らかくなり、あれほど辛そうなタレはさほど辛くなく、旨味を膨らませます。
面白いのは3つ目から。ここから少しずつ食感が変わります。
程よく湯気に当たった餃子は少し水分を含み、サクッからフンワリに変化。溶けるような食感は独特で、クリスピーな1つ目、2つ目とは違う魅力があります。
軽く2人前はペロリといってしまう美味しさ。一味ダレ恐るべし。
お腹もいっぱいになり、最後に食感の秘密を教えてください! とお願いしたら特別に皮を1枚見せてくれました。
その厚さ0.1mm。指が透けて見えるほどです。通常機械で作れるのは0.3~0.4mmまで。そこから更に人の手で伸ばし、0.1mmを実現しているそうです。
ここまで薄いと、ほんの少しの水分変化で溶けてしまったり、乾燥してしまうためとても扱いはデリケートだそうです。
餃子談義を聞いていたら、いつの間にか閉店時間。
人吉の温泉に浸かって、ゆっくり体を休めるとしましょう。
お店情報
松龍軒
住所:熊本県人吉市宝来町12-15
電話番号:0966-22-4024
営業時間:11:30~19:30頃(売り切れまで)
休業日:火曜日(祝日の場合は月曜か水曜)