みなさんこんにちは、メシ通レポーターのタベアルキストKikutaniです。
レストランで見かける様々なブランド食材。
単に【良いもの】と感じがちですが、本当の姿は意外と知らないもの。
タベアルキストが美味しい料理として提供してくれるレストランと、その生産現場の両面から食材の魅力に迫ります!
食材のルーツを辿る旅の定義やこの企画ポリシーなどは、ぜひ以前の記事をご確認ください。
3回目の食材は幻の「きゅうり」です。
サラダやお漬物として脇役ポジションを確立している「きゅうり」。ちょっと地味ですかね? でも、脇役にしておくにはもったいない「きゅうり」があるとしたら? どうぞお付き合い下さい!
~幻の「きゅうり」の噂を聞いて、平塚へ~
今回訪れたお店は平塚のフレンチ「マリー・ルイーズ」。
創業30年を超えるこちらのお店は、気軽にフレンチを楽しめる親しみやすさを持ちつつ、確かな腕前で料理を提供する、親子3代でファンもいる地元の名店。ママたちのちょっと豪華なランチから、特別な日のディナーまで……、地元密着型のカジュアルフレンチです。
また、もう一つの側面として、リトアニア料理にも精通しています。
シェフの料理を食したリトアニア大使に対して、シェフがアドバイスを求めたところ、「何も教えることはない、パーフェクト」と言わしめたほどの味わいを生み出します。今回「マリー・ルイーズ」を訪れたのは、町の名店巡りをすることに加えてもう一つ。
幻の「きゅうり」【相模半白節成】を提供するお店だと聞きつけたからです!タベアルキスト 兼 野菜ソムリエとして、 このチャンス逃すわけにはいきません。今回は特別にお願いをして、「きゅうり」多めのフレンチを作っていただきました。
【相模半白節成きゅうり】だけの予定だったのに!
いくら幻の食材とは言え、「きゅうり」推しのフレンチなんて無茶なお願いをしたものだと思いつつ、店主の尾鷲さんにご挨拶。
「ヘンな注文するから、いろいろ仕入れて置きました」という声とともに、トレーに山盛りの「きゅうり」が登場。
おおよそスーパーでは見かけない「きゅうり」が5種類ほど。これだけの珍品種を一度に見たのは初めてです。ちなみにお目当ての【相模半白節成】は右下の白っぽい「きゅうり」。ラベルには「湘南きゅうり園」。これほど多彩なきゅうりを作る農家さんは、一体どんな方なんでしょう……。産地編はこちらの農家さんに取材に行きたいところ。
「いろいろインスピレーション湧いたんだよね」という言葉を残し、厨房に戻る尾鷲さん。さて、どんな一皿に仕上がるのか。
まずは「きゅうり」の前菜3種!
▲シャルディ・シャルパンティア
1品目はビーツの赤が鮮やかな冷製スープ。
「マリー・ルイーズ」得意のリトアニア料理です。こちらのきゅうりは【四葉(すうよう)】。赤と緑のコントラスト鮮やかな、甘口のスープは【四葉】の歯切れの良い食感とほのかな苦みが味を引き締めます。
▲ブランダード
続いて温かい魚のディップ。こちらに合わせるきゅうりは【四葉】と【うぐいす】。粗びきのブラックペッパーが生み出す荒々しい味わいのホットディップと、冷たい「きゅうり」のギャップが見事な一品。
▲ホタテ貝のタルタル
3品目はピクルス用の品種【ガーキン】にホタテのタルタルを合わせた一品。ホタテの甘味とタルタルの酸味が調和し、【ガーキン】を即席の高級ピクルスに昇華させています。サラダの片隅でその他大勢になりがちな「きゅうり」を、ここまで引き立てるとは!
品種により微妙に異なる「きゅうり」のみずみずしさや、食感、苦みの違いを使い分け、それぞれの個性を楽しむことができました。
「マリー・ルイーズ」のおすすめの前菜も、これまた美味。
続いていただいたのは、「マリー・ルイーズ」お勧めの前菜盛り合わせ。全部で6点盛でしたが、特に美味しかったのがこちら。
▲カンパチのマリネとノルウェー産サーモンの自家製スモーク サラダ仕立て
特に自家製のスモークサーモンが秀逸でした。桜のチップで強めに香りづけたサーモンは、レア感を残しつつ、ネットリとした食感で後を引く美味しさ。上に添えられたサワークリームとの相性が素晴らしい逸品です。
▲仔牛のパテ 青胡椒風味 キノコのマリネ
牛のパテならではの食べ応えをある一品ながら、脂はしつこくなく青胡椒の爽やかな風味で思いのほか軽い印象があります。合わせられたキノコのマリネは、独特のハーブ使いでとても個性的な一品に仕上がっています。
メインディッシュは鴨と「きゅうり」
最後にメインディッシュとして、過熱調理した「きゅうり」を出していただきました。
▲スペイン産マグレ鴨のロースト
メインはマグレ鴨のロースト。マグレ鴨とは、フォアグラを取り出した後の鴨肉のことで身が大きく、肉厚とされています。それに4種のきゅうりをグリルしたものを合わせた一皿でした。
鴨肉は、肉厚で噛み締めるごとに滋味あふれる仕上がり。きゅうりは、中を少し削ってトマトソースを入れ、チーズで蓋をした手の込んだ一品です。力強い鴨に、みずみずしさのある「きゅうり」が見事に合います。多くの場合は、ズッキーニが添えられそうですが、「きゅうり」の方が美味しいのではないかと思わせるほどのマッチング。品種の違いでは、中でも【うぐいす】が最良。コリコリとした食感の【相模半白節成】も良かったですが、鴨肉との相性で【うぐいす】に軍配。
平塚の名店で「きゅうり」の奥深さを知る。
今回、幻の「きゅうり」を入り口に「マリー・ルイーズ」を訪れましたが、そこで出会ったのは様々な品種の「きゅうり」とその特性をいかした料理でした。単調な味付けで脇役に甘んじがちの「きゅうり」ですが、調理法次第で様々な表情を見せることに気が付けました。
それにしても、本来夏野菜であるはずの「きゅうり」をこの時期に、しかも多品種を育成している「湘南きゅうり園」。とても気になります。
次回は「湘南きゅうり園」を訪問し、幻の「きゅうり」復活の裏側や、そこにかける思いを聞いてみたいと思います。
お店情報
マリー・ルイーズ
神奈川県平塚市松風町1-16 レーベンス松風1F
電話番号:0463-24-0465
営業時間:ランチ11:30~13:30(LO) ディナー 18:00~20:30(LO)
定休日:月曜日 (その他に仕込み調整で臨休の場合あり)
ウェブサイト:http://www.m-louise.com/