高円寺にたたずむスナック「美星」は予約いっぱいの評判のお店。そのワケは……

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漫画家のなかむらみつのり氏と「美星」に行ってみた

占い好きの女性は多いが、男性の場合、なかなか占い師のもとに足を運ぶことは少ないのでは? しかし、かの西郷隆盛どんを初め、政治家や実業家など、権力を持つ男性たちは、古来よりしばしば占いを頼りにしてきたといわれる。男性とて、時には占いに自分の未来を尋ねてみたくはないですか?

ということで、高円寺の「エトアール通り商店会」にある、飲みながら占いをしてもらえるというスナックに、本厄まっただ中のメシ通レポーターの増山かおりと、同じく本厄まっさかりの漫画家なかむらみつのり氏の2名が潜入してきました。

 

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古着屋も並ぶ商店街の一角。赤いテントに青いドアが目印の「美星」が今回のお目当て。これで「ビスター」と読む。

確かに、占いをしてくれるスナックであることがわかる。

 

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体を張った体験モノの漫画(メシ通での連載漫画はこちら→「ひものみち」)を多く執筆しているなかむら氏(左・42)と、厄年と結婚適齢期のはざまで揺れる増山(右・31)。

 

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半月状の窓から中をうかがいつつ、なかむら氏がその扉を開くと……。

 

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とってもいかついマスター、大清水高山氏が登場! マスターは、かつて警視庁に勤め、さまざまな人物を見てきた経験をいかし、ここ高円寺にて20年このお店を続けているのだ。

 

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マスターの占いは「人間鑑識学」というタイプのもので、参考までに手相も見るが、店に入ってきた瞬間の表情から、すでに占いは始まっているのだという。

 

なかむら氏「今まで占いって2回くらいしかしてもらったことがなくて、『人間鑑識学』というのは初めてなので緊張します!」

 

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占いを受けるにあたって、マスターから1枚記入用紙を受け取り、

 

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名前や生年月日などを記入する。

 

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「メガネも外したほうがいいんですかね?」となかむら氏。無防備な素顔があらわになった。

 

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大清水マスター「では、お顔の相からいきます」

 

マスターは真剣な面持ちで、なかむら氏の表情を見つめる。 

 

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大清水マスター「……はい! では、参考までに利き手から手相を見ます」 

 

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なかむら氏は、やはり緊張を隠せない様子だ。

 

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大清水マスター「次は、反対も」

 

マスターが一通りなかむら氏を見終えたところで、なかむら氏が口を開く。

 

なかむら氏「2年前、健康診断で飲んだバリウムが喉にひっかかって、炎症を起こして入院しそうになったり、去年も胸のあたりが痛くなりまして。まず不安なのは、体のことなんです」

大清水マスター「まず、結果として長生きするのは間違いないです。もともとみつのりさんは生まれながらにして、自分が持っている法律や法則、正義感にしたがって生きていらっしゃる方だと思います。なので周りの人が言うことを真に受けてはならない。不安がちらっとでもよぎると、自律神経からくる体の不具合が起こります」

なかむら氏「非常に思い当たるフシがあります! 気持ちの持ちようによって、体調も変わってくるっていうことなんですね?」

大清水マスター「そうです。なかむらさんという商品を、不安から過小評価してしまうことには、ご注意されたほうがいいと思います」

 

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と、ここで、おもむろにマスターの携帯電話が鳴る。

「いつご希望ですか? お名前は……はい、じゃあ、あした待ってますね。よろしくどうぞ」

新たな占いの予約の電話だったのだ。手元の予約表には、びっしりと占いの予定が詰まっていた。

 

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なかむら氏「いやあ驚きました……。それ、ちょうど今朝書いていたネームで使った言葉なんですよ! 上司が部下に対して、『商品を売る前に、お前自身が商品なんだからしっかりしろ』っていうセリフを書いたんです。いや〜、お見事です!」

 

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大清水マスター「おでこに、掲示板のように出てましたよ」

なかむら氏「そういえば、“オーラの色”があるって聞きますけど、僕は何色なんでしょうか?」

大清水マスター「例えば俳優さんはレインボー、お医者さんや歯医者さんは傷みを和らげるピンク色のオーラを持っている人が多いのですが、なかむらさんは、リトルコスモです」

なかむら氏「リ、リトルコスモ? なんだか宇宙みたいで、かっこいいじゃないですか! リトルコスモの上は、ビッグコスモなんですか?」

大清水マスター「いえ、人間としてはリトルコスモが最上級。100万人近くの人を見ていますが、非常に少ないです。人間としての卒業に近づいていますね」

なかむら氏:「マジっすか!」

 

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なかむら氏「ということは、政治家に向いてるとか、世の中を動かす道もアリということですか?(ニヤリ)」

大清水マスター「政治家になることも考えてらっしゃるとのことですが、自分の生業としているやり方で、社会風刺をしたほうが力強いという気がいたします」

なかむら氏「政治家になるんじゃなくて、社会風刺をする漫画を描いていけばいいんですね! 健康が一番心配で、あとはなせばなると思ってやってきたので、安心しました」

大清水マスター「なかむらの前になかむら無し、なかむらの後になかむら無し、一生現役、一生一人親方ですから」

 

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ちなみに、なかむら氏の手相の中には大きくカーブしている線「霊感線」があり、これによって、さまざまな人や場所に呼ばれ、偶然のような必然が生まれているのだという。漫画家という職業も、なかむら氏が選んだことではなく、漫画のほうに呼ばれた結果なのだそうだ。これにより、なかむら氏が漫画に選ばれし男であることが判明した。

 

なかむら氏「もう、迷うことはないですね!」

 

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すっかり忘れかけていたが、ここはスナックでもあるのだ。マスターにお酒を注いでいただき、しばしまったりタイム。

 

大清水マスター「うちは無制限飲み放題、カラオケも歌い放題で女性は2,800円。男性はプラス1,000円で3,800円。この料金で朝まで飲めます」

なかむら氏「めちゃくちゃ安いじゃないですか!」

 

9割方のお客さんは別料金での占いを受けつつ飲んでいくというが、占いをせず飲みだけでの利用もOKだ。

 

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大清水マスター「ここで20年やってるけど、1日も休んだことがないんです。出張のときを除いては」

なかむら氏「1回もですか! そもそも、なんで占いを始めたんですか?」

大清水マスター「占い自体は小学生からやってたんです。中学生のとき、学校の先生の不倫相談にものってましたから。保健室の先生と教頭とかね……」

 

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「子どものときから変に正義感が強くて、悪い人間にやめてくれといっても通じないということで、警察官になろうと思っていました。でも、いざなってみたら、拳銃をもった公務員としか感じなかったんです。内部からのバッシングもあったし、いろんな修羅場を見てきましたね」

カラオケ盛り上げグッズにも、マスターの過去が刻まれていた。

 

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「警察を退職したあと、日本にいちゃいけないと思って、アメリカのサンタモニカのビーチで、1年半毎日スクワットして過ごしました。週末はグランドキャニオンでずっと逆立ちしたりして」

そう話しながらグラスを傾けるマスター。ちなみに、このグラスをマイクに持ち替えると、素晴らしい美声を披露してくださるので、来店の際はぜひリクエストしてみてほしい!

 

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ふと、店内に気になる貼り紙があることに気づいた。

 

なかむら氏「これは何ですか?」

大清水マスター「毎年、宣言してるんです」

なかむら氏「あっ、平成二十八年に貼り替えてあるじゃないですか! 延長したんですね。今、何キロなんですか?」

大清水マスター「136キロですね」

なかむら氏「……増えてるじゃないですか!」

 

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こんなおちゃめなマスターだが、さきほどのハードトレーニングのエピソードからもわかるように、大変な肉体派だ。この写真は、かつてボディービル大会に出場したときのもの。真ん中でポーズを決めている逞しい青年が、マスターその人である!

 

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なかむら氏「うわー! こんなに筋肉が!」

 

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思わずおさわりしてしまう、なかむら氏。

 

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続いて、増山も占いをお願いすることに。彼氏と結婚したいと思いながらも言い出せず、モヤモヤとした毎日に業を煮やし、いま付き合っている男性と果たして結婚できるのか? と尋ねることにした。用紙には自分と相手の名前、生年月日を記入する。

 

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「人間鑑識学」ということで、携帯に入っている彼氏の写真も見ていただくことに。

 

増山「2年半くらい付き合っていて、わたしは最初から結婚したいと思って付き合っているんですけど、彼が果たしてどう思っているのか……教えてください!」

 

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大清水マスター「健康のバイオリズムは3カ月、運命のバイオリズムは6カ月周期で変わると言われているんです。あなたがこういうバイオリズムだったら、彼はこう。8月生まれのあなたと、3月生まれの彼の誕生日で計算すると、真逆なんですね。でも、真逆だから悪いというわけじゃない。あなたが彼をフォローし、彼があなたをフォローできる、助け合いという関係になりますんでね。特に2016年は、信頼できるもの同士が力を合わせてひとつの価値観を共有するコラボレーションの時代。彼にとっても、そろそろ年貢の収め時という気がいたします」

 

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大清水マスター「結婚して揺るぎないステイタスを確保するまでは、あなたは役者でなければいけない。あなたは今、試されているんです。彼はそこまで責任のない男ではないですよ。彼はそろそろ決断すると思います。彼は野心家の顔をしてますんで、仕事でなにか野心を抱いていると思うけれど、そろそろ彼も自分の力量を自覚して行く気がします。今年の春くらいには、今まで以上に、俺にはかおりが必要なんだなと思うようになるので、そこまでは最後の詰めが必要です。1%でもうがった気持ちがあったら、100%だめなのと同じ。信じるなら、100%信じてあげましょう」

 

増山の目に、思わず涙が……。

 

増山「自分にも悪いところがいっぱいあるし、今仕事ができているのもその人のおかげだし……うう……」

大清水マスター「取材の方が泣くなんて、いいことですね。今まで苦しかっただろうけどもね、往々にして女性は答えありきで物事を進める。男性はプロセスを大事にして決めていくというところが、違うと思いますのでね」

増山「2016年は自分の気持ちをリセットして、100%彼を信じて、生きていきたいです!」

 

 

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なかむら氏が「リトルコスモの持ち主」であることが明らかになり、増山も新たな道を見いだしたこちらのお店、占いだけでも、スナックとしても、ぜひ足を運んでみてくださいませ。マスターが力強く、迎えてくれますよ!

 

※ 金額はすべて消費税込です。

 

お店情報

美星(ビスター)

住所:東京都杉並区高円寺南3-48-4
電話:03-3312-2554
営業時間:13:00〜翌5:00
定休日:なし(出張鑑定のため臨時休業あり)
鑑定料金:30〜45分 3,240円
スナック料金:女性2,800円、男性3,800円
ウェブサイト:http://fortune-bisuta.jimdo.com/

 

書いた人:増山かおり

増山かおり

1984年、青森県七戸町生まれ。東京都江東区で育ち、百貨店勤務を経てフリーライターに。『散歩の達人』(交通新聞社)にて『町中華探検隊がゆく!』連載中。『LDK』(晋遊舎)『ヴィレッジヴァンガードマガジン』などで執筆。著書に『JR中央線あるある』(TOブックス)、『高円寺エトアール物語~天狗ガールズ』(HOT WIRE GROOP)。

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居酒屋さんにハンバーガーが登場!? メニューに加えた理由を聞いてみた

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大学生のときに「初デートでチェーン店の居酒屋さんに行くのはアリかどうか」について、友達と議論になったことがありました。

「絶対にやだ」という子もいれば「気にしない」という子もいたし、「顔がよければそれをつまみに飲めるからどこでもいい」というのもわからなくもないし、人によってかなり違いましたが、当時の私は「『土間土間』ならいいんじゃないの?」なんて言った記憶があります。

 

だって、「土間土間」最高じゃないですか。お店もキレイな感じで、女子ウケもいいのでは。

 

そんな個人的に初デートにおすすめの土間土間から、4月8日から6月30日までの期間限定で一口サイズの3種類のバーガーをセットにした「バルバーガー」がメニューに登場しています。

 

居酒屋さんなのに、ハンバーガー

お酒とハンバーガーって合うとは思うけど、なんか斬新。大人数で行ったときに頼んでも、みんなで分けて食べられないし……。どうして居酒屋さんでハンバーガーなんだろう。

 

そこで、「土間土間」を展開している株式会社レインズインターナショナルの広報・中澤里美さんにメニュー化した理由をうかがいました。

 

 

──バルバーガーを考案したきっかけを教えてください。

 

これまでも話題になりそうなものや流行のメニューなどはいろいろ商品化してきましたが、「『土間土間』で、これまでにないような新しいスタイルを提供できないか」というのがきっかけでした。そのときに、ちょうどグルメバーガーが話題で「ハンバーガーをビールで流し込んだら絶対おいしい!」「ハンバーガーにはコーラのイメージもあるけど、スパークリングワインも合いそう」なんて思っていたんです。それで、“居酒屋がハンバーガー戦争に参入!”というのも面白いと感じたのもあって、バルバーガーを考案しました。

 

──確かに、居酒屋さんでハンバーガーというのは話題性もありそうですもんね。バルバーガーのおすすめのポイントを教えてください。

 

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▲バルバーガー(3個セット)745円

 

「スライダー」と呼ばれる、ミニサイズのハンバーガーなのがポイントです。直径6cmほどの大きさにしたのは、気軽に注文してもらうためです。

また、3つのハンバーガーのなかで個人的におすすめなのが、ロブスターバーガーですね。表参道にあるロブスターロール専門店の「LUKE'S」が人気ですが、「土間土間」のロブスターバーガーも負けていません!

ロブスターの爪肉を1本丸々使っていて、プリプリな食感と濃厚なオマールソースの相性は抜群です。正直なところ、原価ももちろんかけていますし(笑)、ロブスターの旨みが詰まっていてかなりおいしいんです。

 

──バルバーガーをどんな人に食べてほしいですか?

 

そうですね。メインターゲットは女性なのですが、男性にもぜひ食べていただきたいです。居酒屋ではお酒を飲むのがメインで、食事はちょっとつまむ程度という人が多いと思うんです。しかし、せっかくの食事の場ですから満腹感を味わって欲しいと思います。ハンバーガーならガツンとお腹にたまるので、ぜひバルバーガーを食べてみて欲しいです。

 

 

ちなみに、店員さんに頼めばカットしてから出してくれるそうなので大人数でも分けて食べられるとのこと。よかった! これなら飲み会で注文しても安心ですね。

 

バルバーガーは期間限定販売だけでなく、各店舗1日10食の数量限定。ぜひ「今しかないから」という女子が好きそうなフレーズをチラつかせて、初デートで「土間土間」に行って、バルバーガーを仲良くシェアしてみるのもいいのではないでしょうか。

 

※ 金額はすべて消費税込です。

 

お店情報

ウェブサイト:https://www.hotpepper.jp/gstr00014/

※詳細は上記ウェブサイトをご覧ください。

 

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書いた人:
成瀬瑛理子

神奈川横浜市出身。編集プロダクション・プレスラボ所属の編集・ライター。お酒を飲んだら「葉っぱ1枚しか食べない」と言われるほど、アルコールが入ると少食になります。

最高すぎる玉子焼き「赤鬼とうきょう・のりたま弁当」のヒミツを直接聞いてきた

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超シンプルうまい玉子焼き弁当があった

「巨人 大鵬 玉子焼き」って言葉、ご存知ですか? 「子どもが好きなもの」の代名詞をあげた昭和の流行語です。しかし時代は平成となり早や28年、昭和の子供たちもとっくに立派な大人となった今も、玉子焼きの美味しさには変わりがありません。

そんな皆が大好きな玉子焼きを、まるまる1本、味わうことの出来るのり弁があるというので、さっそく買いに行ってきました。

 

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その玉子焼きの入ったお弁当を買うことが出来るのは、都内では2店舗。西武新宿PePeと大泉学園ゆめりあフェンテにある自然食品・無添加食品専門店の「ボンラスパイユ」です。

 

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「ボンラスパイユ」は、国産小麦・天然酵母使用のパン、おからや米ぬかを使ったお菓子、 フェアトレードのコーヒー、無添加のお惣菜やお弁当など、こだわりの食品を取り扱ったお店です。

 

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お弁当コーナーに発見!

キュートな黄色がひときわ目を引く「玉子焼き 赤鬼 とうきょう」のお弁当やお惣菜の数々です。

 

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メニューは、砂糖を使った甘い玉子焼きの入った「赤鬼のりたま弁当」(598円 ・税別)と、葱入りで甘くないだし巻き玉子の入った「青鬼のりたま弁当」(698円 ・税別)、赤鬼玉子焼きに加えて、数品のおかずが入った「赤鬼いろどり弁当」(630円 ・税別)。その他にも、鹿児島産黒豚のそぼろと玉子の組み合わせが楽しめる「赤鬼黒豚そぼろ丼」(698円・税別)、和三盆を使用した「赤鬼和三盆玉子焼き」(598円・税別)などを買うことが出来ます。

 

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こちらが「赤鬼のりたま弁当」。

のり弁といえば、白米の上に、おかかや昆布の佃煮をのせて海苔を敷いたものに、白身魚のフライにちくわの天ぷら(or 磯部揚げ)、そしてきんぴらごぼうに、たくわんのおかずの乗った、ある意味男らしいお弁当の代表格というイメージですが、「赤鬼のりたま弁当」のおかずは、直球に玉子焼きだけ

玉子焼きにかける、自信の程がうかがえます。

食べてみると、玉子は優しい味ながら、しっかりとだしと甘みが効いてます。ふわふわで冷めていても、美味しい! 角切りの大根は甘酢漬けでほどよいアクセントになります。持って帰ってくる途中にやや散乱してしまいましたが、ご飯の下にはおかかが敷かれています。

 

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「青鬼のりたま弁当」のほうは、もう少しあっさりしつつも、甘みがない分だけ、だしの味が引き立ってます。「甘い玉子焼きは苦手」という方はこちらをどうぞ。

 

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「赤鬼いろどり弁当」には、赤鬼玉子焼きに加えて、鶏肉のしょうが焼き、昆布の佃煮、青菜のおひたし、人参のきんぴらなどのおかずが。玉ねぎの自然な甘みが際立っているしょうが焼きは柔らかく、昆布は甘くてうまみがとにかく強い。人参はほんのりと甘くてごま油の風味が後を引き、青菜はしゃきっとして滋味深い。

すべてがいい素材を使って、丁寧に作られています。お弁当というと、添加物やカロリーが気になるけれど、「玉子焼き 赤鬼 とうきょう」のものならば、毎日食べても健康をバッチリ保てそうですね。

 

「赤鬼のり弁」の玉子焼きへのこだわりとは

しかし、なぜゆえに玉子焼き一本で勝負に出たのか。大久保にある厨房へうかがい、そのこだわりを聞いてみました。

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――そもそも、お店を始められたのきっかけは?

 「僕の父親が香川県の高松で玉子焼き屋さんをしておりまして。で、せっかくだから、その玉子焼きを東京の皆さまにも提供できないかな、と考えたのが最初です。東京でお店をオープンしたのは、3年前、2013年の412日ですね。ちょっと前までは、ここの店舗で販売やイートインもしていたのですが、現在は厨房としてのみ機能させております」

 

――この卵の特徴ってどんなものでしょうか。

「卵は、父親が使っているのと同じ、香川県産のものを使ってます。色が鮮やかで黄色が濃い。これは僕の感覚ですが、他のものと食べ比べても味が濃厚で、玉子焼きに合う味ですね。養鶏場から直送で届くので、鮮度もいいです」

 

――玉子焼き一本っていうのは、結構、挑戦的な試みだと思うんですが。

「特徴を絞った専門店にしたくて。東京には玉子焼きの名店がたくさんありますが、この味もぜひ食べてみていただきたいと思ったんです」

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――実は、わたしも、この近くを歩いていて「えっ、おかずが玉子焼きだけののり弁!?」と驚いたのが最初です。だけど、食べてみると、美味しくてこれだけで、もう満足です。「赤鬼」を食べるか「青鬼」を選ぶか、悩んじゃう人もいると思うのですが、それぞれの特徴をお願いします。

「両方とも、枕崎の鰹節と、利尻の昆布だけを使った一番だしが共通していて、『赤鬼』のほうはそこに砂糖と醤油と塩を加えて、合わせだしにしたものを使用しています。甘いですが、東京の玉子焼きと比べると、やや控えめになっていると思います。『青鬼』は砂糖が入っておらず、だしと醤油と塩だけですね」

 

――ものすごくシンプルなのに、美味しいってすごいですね!

「とことんシンプルに素材の旨みをいかして作っています。うちの商品はすべて、HPで材料を公開しているのですが、それ以外のものは一切使っていません。ちなみに一本焼くのに5分程度、卵は3個使用しています」

 

――すべての素材をHPで公開し始めた理由って?

「飲食店でも、産地を一部公表しているお店はありますけど、すべてを公開しているところはなかなかないですよね。『××産野菜のなんとか』とか『○○産和牛のなになに』とメニューにあっても、それ以外のものは書かれていない。『じゃあ、他のものは何なんだろう』ってずっと思っていました。だから、『うちは全部公開してみよう』と」

 

――砂糖や塩まで公表されているのは珍しいですね。これは確かに安心ですね。健康に気づかっていつつも「やっぱり美味しいものを食べたい」という人に、多く知ってもらいたい玉子焼きです。どうもありがとうございました。

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「赤鬼」「青鬼」ともに、玉子焼きだけでも販売されているので、手みやげとしても多く利用されているそうです。興味のある方はぜひ食べてみてください!

 

お店情報

「玉子焼き 赤鬼 とうきょう」のお弁当やお惣菜が買えるお店

ボンラスパイユ 西武新宿ぺぺ店

住所:東京新宿区歌舞伎町1-30-1 西武新宿ぺぺB2
TEL03-5287-1831
営業時間:10:00~22:00

※「玉子焼き 赤鬼 とうきょう」のお弁当は月曜日・水曜日・土曜日のみの販売になります。

bonraspail.com

 

「玉子焼き 赤鬼 とうきょう」のホームページ

※本記事は2016年5月の情報です。
※金額はすべて消費税込です。

  

書いた人:天川めお

天川めお

主にフード系の記事を書くライター。残りの人生の寿命を考えたら、まずいものは一口たりとも食べたくない煩型(うるさがた)。食に求めるのはトキメキです。

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納豆王国・茨城で絶大な評価を得る「舟納豆」の秘密に迫る【ネバうまアレンジ付】

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地元の人々にとって「ごちそう納豆」的な立ち位置

 

納豆の生産量全国一といえば、茨城県。

水戸を中心に、納豆は県内で広く生産されています。

水戸発ブランドとして有名な「くめ納豆」や、創業100年を超える老舗ブランド「天狗納豆」などは全国的にも定番の商品ですね。

 

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納豆づくりの中心都市、水戸に行ってみました。

駅周辺のおみやげショップに並ぶ納豆商品の充実ぶりには、びっくり!

そして街を歩けば、飲食店や居酒屋さんに納豆メニューがあるわあるわ。 

 

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納豆キムチや「納豆×刺身」などは基本中の基本。

納豆オムレツや納豆春巻き、納豆のから揚げに磯辺揚げなど、あるもんですねえ。とある店では納豆料理だけで15種類もあり、うならされました。

 

そんな納豆ワールド、茨城。私はふと、疑問に思いました。

納豆名産地で育った地元の人々に評判のメーカーって、どこなんだろう?

と。地味な聞き込み調査を続けたところ、よーく聞かれた答えが、「舟納豆(ふななっとう)」だったんです。

 

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今日はおいしい納豆が食べたい、と思ったときの"ごちそう納豆"です。

 

ささやかな自分へのごほうびに。

 

詰め合わせを、お使い物や差し上げ物にもします。

 

そんな声が実によく聞かれた、「舟納豆」。

東京でも、銀座にあるアンテナショップ『茨城マルシェ』(現 IBARAKI sense)や、ごく一部の百貨店でも買えるんです。さっそく試してみたら、これが評判どおり、おいしい。粒立ちがよくて食感がしっかり。なにより、香りがいいんです。

茨城マルシェ」では常に商品ランキングの上位というのも、納得!

茨城マルシェでは売り切れのこともあります。訪問前に確認を!

 

サイトをみれば、まだまだ様々な商品があり、いろいろな納豆の楽しみ方が考案されているよう。メシ通レポーターの白央篤司、大の納豆好きであります。さっそく舟納豆の製造メーカーへ取材に行ってきました!

  

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やってきました常陸大宮市、山方(やまがた)。

上野駅から特急「ひたち7号」に乗って水戸で下車、水郡線「山方宿駅」で降りて徒歩7分程度。ちなみにこちらの山方、あの山形県と読み方が同じという縁で、秋には本場さながらの芋煮大会も開かれるところ。

 

舟納豆が生まれる現場に潜入

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こちらが、舟納豆をつくる「丸真食品株式会社」の販売店。

その裏手には……

 

 

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久慈川が流れ、山がその対岸にありました。

取材日は4月の初旬、土手には菜の花が咲き、ツクシやヨモギが茂り始めていましたよ。こんな風光明媚なところで、舟納豆はつくられているんだな。

 

さあ、お店を訪れるとしましょう。 

 

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迎えてくださったのは、 マネージャーの会沢 智(あいざわ・さとし)さん。

 

きょうは遠いところを、よくいらっしゃいました!

 

どうぞよろしくお願いします!

 

会沢さんは早速、舟納豆がつくられている現場に連れていってくださいました。

工場の入り口で白衣と帽子をかぶり、入念に手洗い、足裏の消毒をしてから、内部へ。

 

ああ、豆を蒸している香りがする! 

 

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この大鍋で、豆類が一気に蒸しあげられていきます。

ほのかに甘く、生命力あふれる豆の香りが工場内に満ちていました。

 

 大豆はまず水に浸して、それからスチームで一気に蒸すんです。豆の産地や状態、そして季節によって浸す水温と時間、圧力、蒸し時間は微調整します。(会沢さん)

 

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蒸し上がったばかりの大豆。 蒸されたばかりの豆のにおいって、甘いんだなあ。

  

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左の人が大豆をかき出し、右の人が専用の器具で納豆菌を吹きつけています。大量の豆をかき出すのはけっこうな力仕事。

 

筋肉つきますよ!
納豆菌ならぬ「これがホントの納豆"筋"だ」なんていって、みんな笑ってますけどね。

 

と、現場のみなさん。

 

大型の蒸し器がずっと稼働しているので、当然のことながら暑い!

帽子と白衣が体をぴっちり覆っているので、なおさらだと思います。慣れるまでは、さぞかしくたびれるだろうなあ……。

 

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「夏なんかそりゃあ暑いですよ! もちろん冷房もきかせますけどね(笑) 」と、現場を案内してくださった、製造部工場長の廣木和弘(ひろき・かずひろ)さん。

  

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こちらでは蒸しあげられた黒大豆に納豆菌を吹きつけ、パック詰めが行われています。

このあと発酵室に入れられて、豆は発酵し、納豆へと育っていくのです。

 

豆の種類にもよりますが、18~20時間ぐらい発酵室で寝かせます。気温や湿度はすべて季節や豆の発酵状態によって微調整します。発酵が終わったら、その後冷却して、包装。これで納豆のできあがりです。(廣木さん)

  

黄金色に輝く納豆は、弾力も粘りも申し分なし

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すべての工程をこなせるようになるまで、丸3年はゆうにかかったという廣木さん。「舟納豆」が支持される理由を、率直にうかがってみました。

 

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やっぱり、納豆のおいしさは豆の良さに尽きると思っています。「舟納豆」はすべて茨城県産の大豆100%でつくられています。この小粒の大豆は、納豆菌の繁殖にとても適しているんですよ。そして納豆づくりはまず浸水から始まりますので、水の良さも大事です。水道水を使用していますが、源流は地元の伏流水。この水がおいしいんです。機械化も最小限におさえて、人の手と目でチェックしながらつくっていることも、おいしさにつながっていると思います。(廣木さん)

 

そして「とにもかくにも、食べてみてください!」と案内してくれたのが、先ほどの店舗内に設置された試食スペース。こちらが充実でした!

 

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「どうぞお試しくださーい!」 

 すべての商品を試食できる太っ腹なスペース。これがうれしいんだなあ。専任の店員さんがアテンドしてくれるのです。まずは看板商品の「舟納豆」(1パック 141円)からスタート!

 

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なんときれいな黄金色!! 

色ツヤがいいなあ。食べてまず感じるのは豆の食感の良さ、その弾力。噛んでいて気持ちがいいほどです。粘り具合も実にしっかり。

 

うまいっ!

 

ありがとうございます。豆のおいしさを存分に味わっていただきたいと思っております。従いましてわが社のタレは薄味で、量も少なめなんですよ。そして「経木(きょうぎ)」という松の薄く切ったものを納豆とパッケージの間に挟んであるのですが、それも香味アップにひと役買っているんです。(会沢さん)

 

まさに納豆天国! おすすめ商品一挙紹介

納豆商品はこれ以外にもたくさん!

バリエーションの豊かさと企画力が「舟納豆」の魅力でもあるんです。以下、一部をご紹介しますよ。

 

こごいら納豆&黒船

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個人的におすすめがこの2つ!

 

まず写真右が「こごいら納豆」(1パック 281円)といって、切り干し大根と、刻んだ大根の葉が入ったもの。

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これ、茨城郷土料理で「そぼろ納豆」といわれるものなんです。

ただ一般的な「そぼろ納豆」は、切り干し大根と納豆を醤油で味つけして、混ぜて寝かせたもの。ここで大根の葉もさらに混ぜこむのが、「舟納豆」のオリジナル。

ぽりぽりとした大根の食感が加わることで、納豆に新たなおいしさが加わります。

 

この「こごいら納豆」、ごはんにのせて、熱々のだしをかけて茶漬け風にするとまたおいしいんです。ぜひ試してみてください。(会沢さん)

 ※評判の商品なので品切れのこともあり

 

 

そして写真左の「黒船」(1パック 216円)は黒大豆を使った納豆。

f:id:Meshi2_Writer:20160414121929j:plainこれ、すごく食べやすい! 粘りはしっかりとあるのですが、味わいすっきり。黒豆らしい香りの良さもあって、私はおやつ感覚で食べてしまいました。

 

茶々丸

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山形県の川西町というところでとれる「紅大豆」を使用した「茶々丸」(1パック 389円)は、大粒の赤豆を使った納豆です。

 

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これが蒸される前の紅大豆。

 

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この納豆のふっくら加減、実に見事でした。ほどよく炊かれた煮豆を食べているような気になるほど。豆自体のおだやかな甘みをも楽しめる納豆なんです。

 

お酒のつまみにおすすめ「ワイン de ナットーネ」

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大の酒好きの私としては個人的にイチオシなのが、こちら!

「ワイン de ナットーネ」、トマト&バジル味とチーズ味(各216円)。

 

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開けてみると、こんなふうにチーズ風味のペーストが入っていて、それを納豆につけて食べるもよし、全体にからめるもよし。豆はさきほどの「紅大豆」が使用されています。意外な相性の良さにびっくりすること、うけあい。

 

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クラッカーにのせて軽く黒コショウをひいたら、これがまたうまいんだ!

 

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ワインはもちろん、ビールや日本酒のつまみにもいいんですよ。ゆでたてパスタにからめてもいいだろうなあ。

 

社員さん直伝のアレンジ料理 ア・ラ・カルト!

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さて、納豆といえば私は断然「白めしと一緒派」なのですが、ここでマネージャーの会沢さんから「待った!」が入りました。

 

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やっぱり納豆は単品で食べたいですねえ。納豆のおいしさを純粋に味わえるじゃないですか。(会沢さん)

 

うーむ。

そりゃあ納豆メーカーとしては、純粋に単体のおいしさを味わってほしいだろうけれどなあ……。

 

いやいや、それだけではないんですよ。うちで働くみんなは、かなり自由にアレンジして楽しんでますもん。(会沢さん)

 

えっ!

それ、すごく知りたい みなさん、どんなふうに納豆を食べているんですか!?

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というわけで、「舟納豆」が誇る販売担当のみなさんに聞いてみました。

興味深いアレンジがいっぱい!

 

◇納豆バゲット

まずよく聞かれたのがこちら。切ったバゲットに納豆をのせ、とろけるチーズなどを加えて軽く焼くのだそう。朝ごはんにもいいそうです。やってみたら確かにおいしい。ピザソースを足してみれば、これまた好相性!

 

◇唐辛子&ニンニク&ゴマ油

刻んだニンニク、ゴマ油、唐辛子で納豆を和えるというレシピ。「酒のつまみに最高!」とのことで、やってみたら確かにうまい。唐辛子ではなく七味でやるとさらに手軽にできますよ。

 

 ◇納豆汁

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山形秋田南部の郷土料理としても知られる、納豆汁。

味噌汁に軽く叩いた納豆をのせたものですが、とある店員さんから、

 

「すった豆腐を入れてもおいしいんです。もうどれだけ大豆好きなんだって感じですね(笑)」

 

とのお話を聞いて、早速ためしてみました。うーん……う・ま・い!

味噌と納豆と豆腐、それぞれの大豆のうまさが交互に押し寄せて、実に飲みよいものでした。一緒に入れる具はなんでもいいようですが、里芋やニンジンなどを入れて豚汁風にしてもおいしい。

ちょっと胃が弱ってるとき、食欲のないときなど、具無しのみそ汁をつくって、このやり方で食べたら体にも良さそう。味が薄いときはちょっと醤油を垂らしてもおいしい。

 

そのほか、

「アボカドを刻んで納豆をのせて、好みのドレッシングをかける」

「トマトと玉ネギを細かく刻んで、納豆に混ぜて、好みのドレッシングをかける」

 

といった、ドレッシングとの合わせ技が聞かれました。サラダにトッピング感覚で納豆が使われているようですね。

 

いやー、納豆アレンジ料理……奥深いなあ。いろいろ教えてくださった「舟納豆」のみなさん、本当にありがとうございました!

 

ちなみに、私からも一品、納豆アレンジテクを。

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スジコ on 納豆

これ、新潟の親戚に教えてもらって以来、ハマっています。うまいんですよ!! コクのあるもの同士が相乗効果でうま味を高めあう感じ。一度やってすっかりやみつきになりました。ぜひおためしを!!

 

さて、2016年茨城納豆の旅もそろそろ終わり。取材帰りに常陸大宮市のスーパーに寄ってみたら、なんと……

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納豆用の小粒大豆が売られていました。さすがに自宅で作る人はあまりいないようですが、販売されてるのがすごいですね。思わず買ってしまいましたよ(笑)。

茨城の納豆文化の深さ、厚さ、感じ入りました!

 

【最新情報】
7月10日(日)納豆の日にちなんで、ねばーる納豆レシピコンテスト開催中。最優秀賞は納豆1年分!
お気軽にご参加ください。詳細はこちら

 

お店情報

丸真食品株式会社

住所:茨城県常陸大宮市山方477-1
電話番号:0120ー042ー770
営業時間:9:00〜18:00
定休日:元日のみ
ウェブサイト:https://www.funanatto.co.jp/

※本記事は2016年3月の情報です。

 

執筆・撮影:白央篤司

白央篤司

フードライター。雑誌『栄養と料理』などで連載中。「食と健康」、郷土料理をメインテーマに執筆をつづける。著書に「にっぽんのおにぎり」「にっぽんのおやつ」(理論社)「ジャパめし。」(集英社)がある。

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コーヒープレゼンター芸人・平岡佐智男を知っているか?【コーヒールンバ】

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昨今のバラエティ番組で目にする「◯◯芸人」。

リアクション芸人、ガンダム芸人、家電芸人など……数多くの「◯◯芸人」たちが混在する中、皆さんはこんな唯一無二の「◯◯芸人」をご存知でしょうか? 

それがコーヒープレゼンター芸人、 平岡佐智男。

 

平岡佐智男(ひらおかさちお)

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松竹芸能所属のお笑いコンビ「コーヒールンバ」として活動。その傍ら、コーヒープレゼンター芸人として自らのカフェイベント「SACHIOPIA COFFEE(サチオピア・コーヒー)」では店主も務める(月に1回程営業、開催)。趣味は全国のコーヒー店を巡ること、特技は利きコーヒーという全身コーヒーまみれの芸人!

 

普段は、松竹芸能所属のお笑いコンビ「コーヒールンバ」としてコント・漫才などを演じている期待の若手お笑い芸人、平岡さん。

なんと、自ら定期的に場所を借りて「SACHIOPIA COFFEE」というカフェ営業も行うというコーヒー熱がハンパないお方!

 

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今回の「SACHIOPIA COFFEE」営業の場は、新代田にある某カフェ。コーヒープレゼンター芸人へのインタビューをお送りします!

 

大手有名コーヒーチェーン店で店長に

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──そもそもですが……なぜ「コーヒー芸人」ではなく「コーヒープレゼンター芸人」なんですか?

 

僕自身、実際にコーヒー店で社員として働いていた経験があるんです。ですので、ただコーヒーが好きなだけでなく“人にも美味しいコーヒーをオススメしたり入れたりできる”という自負から、ちょっと長いですがそう名乗らせてもらっています。

 

──コーヒー店の社員さんから、お笑い芸人になったということですか?

 

正確に言うと、その前に1度芸人をしていて辞めてるんです。その後、当時芸人をしながらアルバイトをしていたコーヒーチェーン店に社員として入社したんですが、気付いたらやることがなくなってしまいまして…(汗)

 

──社員なのにやることがないってどういうことですか!?

 

アルバイト時代にシフトリーダー的なポジションをやっていたのもあって、社員になってから新店舗の店長に任命されたんです。自分も気合いを入れて、時には怒鳴ったりしながら新人スタッフを徹底的に鍛えていったんです。「バリスタマシンのグループヘッドは温めなけれダメだろぉ!!!」とか。その甲斐あってか、いざ店がオープンすると、もう完璧な店が出来上がってしまったんです。

 

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──それって、とても良いことじゃないですか!

 

完璧なだけに、自分は後ろで座っているだけですべてがパーフェクトに回って一日が終わるんです。そこで「オレ、もう必要なくね?」と自分の役目の終わりを感じてしまって。鍛えすぎて自分の居場所がなくなってしまったという……。そんな時に今の相方・西原に声をかけてもらって、またお笑いの世界に戻ることにしたんです。

 

──そこから再出発したということですね。そして今のコンビ名にもコーヒー(「コーヒールンバ」)が入っています

 

事務所(松竹芸能)の先輩に挨拶しにいった時、アメリカザリガニの平井さんに「コーヒー店やったんやったら、お前ら今日から『コーヒールンバ』や!」と急に言われまして。そこで半ば強引にコンビ名が決まりました。普通、若手は先輩のライブの照明係とか受け付け係とかを担当しなければならないのですが、僕はなぜかコーヒー係に任命されまして、色んな先輩芸人の楽屋でコーヒーを入れてましたね。

 

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──楽屋からコーヒー活動がスタートしてたわけですね(笑)。コーヒープレゼンター芸人としては、現在どのような活動を?

 

コーヒー店巡りはもちろん、最近ではバリスタやラテアートの大会の司会などもさせてもらっています。でもやはり今最も力を入れているのは、今日お越しいただいている「SACHIOPIA COFFEE」ですね。

 

世界にひとつの「サチオピア・ブレンド」

「ちょっと今からコーヒーを入れますね」と席を立った平岡さん。店のメニュー「サチオピアブレンド」を飲ませていただけるとのこと。

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もちろん豆もオリジナル。今回は知る人ぞ知る某名カフェさんに特別に焙煎していただいてるんだとか。

 

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慣れた手つきでコーヒー豆をコーヒーミル(豆を砕く機械)へ。

 

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 サーバーにお湯を注ぐ。敷いてあるペーパーをあらかじめ濡らしておくと、一番おいしい最初の1滴目がペーパーに吸い取られてしまわずに済むんだとか。

 

さすがの豆知識や手つきに見とれているうちに、お待ちかねの「サチオピアブレンド」が完成。

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……これは美味しい!

リンゴやキャラメルを思わせるフレーバー、フローラルでずっと続く甘い余韻が特徴。

ブラックコーヒーが苦手な筆者もそのまま楽しめる味。ちなみにこれで1杯500円とのこと。安っ!!!

 

フード&スイーツもチョー本格的

そして、「ご一緒にどうぞ」と差し出されたのが……

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こちらもお手製の野菜たっぷりキーマカレー(800円)。

セロリやヨーグルトが入ったキーマカレーにブロッコリーのタルタルソース和えが添えられている。コーヒーとの相性もバツグン。

 

あっというまにカレーをたいらげ、コーヒーとのコンビネーションの余韻に浸っていると…

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デザートに手づくりパンナコッタ(500円)が!

かかっているカラメルソースは、先のサチオピアブレンドのコーヒーとレモンで作っているとのこと。

 

そして……

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自家製カスタードのバナナクリームパイ(500円)

でかい! かなりボリューミーだが、ほどよい甘さであっというまに完食。

 

初心者でも出来る! コーヒーを美味しく飲むための5箇条

そんなこんなで「SACHIOPIA COFFEE」のメニューを堪能した筆者。平岡さん自身も開店前の準備が落ち着いたようなので、ここでちょっとコーヒーブレイク(?)。コーヒー初心者の筆者でも出来る簡単な「豆」知識を聞いてみることに。

 

その①:インスタントコーヒーは、まず水でよく練るべし!

実はインスタント製品にも美味しい飲み方があるんです。
カップにインスタントコーヒーを入れたら、そこにスプーン1杯分の「水」を入れ、練ってなめらかになってからお湯を注いで下さい。
溶け残りを防ぐこともでき、コクのあるコーヒーが出来上がりますよ。

 

その②:ミルクと砂糖は、入れる順番を間違えるな!

コーヒーを頼んだ時に必ずと言っていいほどついてくるミルクと砂糖。これにも入れる順番があります。
ホットの場合は、必ず砂糖→ミルクの順で入れて下さい。これが甘さの偏りなく飲むための順番です。ミルクを先に入れるとコーヒーの温度が下がってしまい、後から入れる砂糖が溶けにくくなってしまうんです。

 

その③:コーヒーの容器のフタは外さずに飲むべし!

よく目にする穴のあいたフタ付きカップ。わざわざフタをして穴を開けてあるのには、意味があるんです。
例えばカフェラテなどの場合、フタを外して飲むと、中のミルクとエスプレッソが混ざり合わずに口に入ってしまうんですが、フタ付きカップの穴から飲むと、両者がバランスよく出てきて美味しく味を楽しむことが出来ます。

 

その④:コーヒー豆の長期保存は冷凍庫で!

コーヒー豆は、果実などと同じ生鮮食品です。なので、すぐに飲まれるなら常温保存で良いのですが、長期保存する場合は冷凍庫をオススメします。
冷蔵庫で保存する方もいますが、この方法だとコーヒーが持つ脱臭作用によって、冷蔵庫内のニオイがコーヒーに移ってしまうデメリットがあるんです。

 

その⑤:沸騰したお湯は少し冷ましてから入れるべし!

コーヒーを入れる際、お湯の温度が高すぎると、苦味成分が出やすくなってしまうんです。
したがってまずお湯が沸騰したら少し時間を置いて入れ始めてください。豆の種類にもよりますが、個人的には85℃ 前後がオススメです。

 

さすがはコーヒープレゼンター芸人!

ナルホドづくしな「豆」知識に関心していると、「SACHIOPIA COFFEE」が開店する時間に……。

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開店するやいなや、瞬く間に店は満席に。注文を取ったりコーヒードリップにと、かなりお忙しそうな平岡さん。その表情は、まさにガチのコーヒー店員さんそのもの!

 

居場所の無くなった我々は、しばらくその様子を見届け、退散することにしました。

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コーヒープレゼンター芸人が本気で入れるオリジナルコーヒー。あなたもぜひ「SACHIOPIA COFFEE」で堪能してみては?

 

SACHIOPIA COFFEE」関連情報は以下のリンクで!

 

書いた人:石田ケント

石田ケント

1988年生の放送作家。法政大学卒業後、独学・フリーで活動開始。考案した番組に日本テレビ「言わせろ!リアクションワード」「超年の差バトル! 神童 VS 老神」「衝動に負けましたSP」「なれそめザペアレンツ」など。日本テレビやTOKYO MXの番組の企画・構成、コント脚本を中心に活動中。担当レギュラー番組等はTwitterをご覧下さい。

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【姫乃たま】奥渋「SONE BAR」で考える“マルチな才能”とは【今夜もヒミツ酒:7軒目】

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誰にでも秘密はあります。たとえば、故郷などないような顔をしている酒場の人たちにも、きっと。おいしいごはんとお酒に緩んだ、その口元から溢れる、あなたの秘密を教えてくれませんか。

 

日替わりマスターの店「SONEBAR(ソネバー)」

前々から気になる飲食店ばかりが軒を連ねていた通りに、いつの間にか「奥渋(おくしぶ)」なる名前が付いていました。渋谷東急本店を駅から離れるように奥へ。

ついさっき外国人観光客とギャルカップルのための殿堂、ドン・キホーテを通過したばかりとは思えない、しっとりとした賑わいに満ちています。

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老舗の人間は「あそこのお店、ランチで奥渋カレーなんて出しちゃって、商魂たくましいというかなんというか」と笑います。曖昧な笑顔に、商店街を感じました。

 

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奥渋の真ん中あたりでピンクの看板を見つけたら4階の「SONEBAR」へ。

ちょっとクローズドな雰囲気。これが隠れ家というもの?

 

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このお店では、様々な本職を持つマスター達が、日替わりで出迎えてくれます。火曜日のマスターは、俳優・パフォーマーの「けーすけ」さんだと聞いていたのですが、扉越しにのぞくと、あれ? 誰かいますね……。

 

この方が、けーすけさんかな?

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ネット記事的なおとぼけを済ませて、着席。

 

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はい、この方が今夜のマスター、けーすけさん。 毎週火曜日の夜限定でお店に立っています。さっきのワンコは、彼の相棒のマンゴーちゃん。

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カウンター、広めのソファー、そして背の低いテーブルが置かれた店内には、日替わりマスター達が、それぞれ持ち込んだであろうポスターやオーナメントが、それぞれの場所で落ち着いていました。

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カウンターの中で働くけーすけさんを愛犬のマンゴーちゃんがソファーから見守ります。

 

パトカー運転手役で大暴走したデビュー作

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――あ、はじめまして、地下アイドルの姫乃たまです。アイドルと言いつつ、今日みたいにライターとして取材したり、いろいろやりながら、フリーランスで活動してます。けーすけさんは俳優だとうかがっていたのですが、ツイッター(@k_suket)を見ていると、なんだか毎日違う仕事をしていらっしゃるので、勝手に親近感を抱いておりまして……あはは。あの、肩書きってどうしていますか?

 

けーすけさん(以下敬称略):元々「せーじ・けーすけ」っていう漫才コンビで、1990年にデビューしたので漫才師だったんですよ。事務所が渡辺プロ(渡辺プロダクション)でなまじ大きいもんで、最初から俳優とか声優の仕事もさせてもらえてたね。ただ3年くらい前にコンビが解散して以降はピンなんで、いまの活動としては俳優が多いかな。

 

――そのコンビ名からして……元相方は、せーじさん! いまどうしてるんですか?

 

けーすけ:そうそう、せーじ。いまはバルーンアーティストやってます。僕もやってるんだけど。だから肩書きは、俳優と声優とバルーンアーティストとMCと歌手と、ペット・トリマーアシスタントもやってて、あ、あとここのバー店主と……

 

――あわわわ、ありがとうございます、ありがとうございます……多いなあ!!(笑) ありがちな質問ですけど、俳優業デビューのきっかけはなんだったんですか?

 

けーすけ:当時のマネージャーさんに神戸の劇団に所属してたって言ったら、けーすけは演技できるんだねってことになって。事務所が大きいので、吉田栄作さんの、いわゆるバーターでね、映画『代打教師 秋葉、真剣です!』(1991年)に警官役でデビューしました。監督は亡くなりはったけど、那須博之さん。ビー・バップと同じで、渋谷の本物のチーマーが出演してて、パラララ~♪ってバイクで来て、また撮影終わるとパラララ~♪って帰って行く。また那須監督って向こう見ずというかトッポイ人でね、「けー(低い声)」って僕のこと呼んでくれるんだけど「けー、パトカー運転できるか?(低い声)」って言われて、「できます!!」って即答して。

 

――あれ、スタントの経験ないのに、いいんですか?

 

けーすけ:そりゃもううれしいから! 監督に声かけられてね。免許持ってるし、いけるやろって気持ちで。何回かテストした後、本番前に監督が来て、「けー、そこのカーブでブレーキ踏むなよ……パトカーがブレーキランプ点けたらダサいだろ……(低い声)」って。助手席の俳優さんは本気にしてなかったみたいで「ブレーキ! ブレーキイィィ!」って叫んでたけど、アクセル全開でカーブ曲がったら監督にほめられてねえ。でもその撮影、あまりに危険で、午後にプロのスタントマンが事故りはって。その直後、事務所の人からはめっちゃ怒られたわ。「運転はスタントマンの仕事なんだから!」って。ただ、それを見てたマネジャーさんは、上司から「だったらお前が現場付いてけえ!」って二重で怒られてた(笑)。

 

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助手席で叫んでいた俳優さんを笑いながら再現中

 

――わははは、このしっかり落としてくる感じに、元漫才師を感じます……! 青春映画の仕事が多かったんですか?

 

けーすけ:女の子は知らんと思うけど、映画『湘南爆走族』に地獄の軍団って出てくるでしょう。その中の瀬島渉の役もやってたよ。赤い字で「呪」って書いてあるマスク付けて……。

 

――(一同ネット検索で写真を見て)わはははは、本当だ!! 「呪」って書いてある!

 

アキバのアイドルイベントでは「売れっ子MC」に

――秋葉原の電気店って週末にグラビアアイドルのDVD発売イベントやるじゃないですか。けーすけさんはああいうイベントで司会もされていますよね。一時期MCで引っ張りだこだったと聞いてますよ。

 

けーすけ:真鍋かをりちゃんの最後のイベントでMCやったの僕ですよ。安田美沙子ちゃんの初めてのイベントも僕。自慢です。いまはMCの仕事だいぶ減ったけどね。ソフマップ、石丸電気、LAOX……ピークの時は土日で8本! 1本だいたい2時間だから、週末は秋葉原だけで16時間も働いてた。

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――下手したらアイドルより働いてますね(笑)。

 

けーすけ:ほら、あの秋葉原の事件あったやん。ソフマップの前の道路で車突っ込んだ悲惨な事件ね。僕、あの日はたまたま早い時間空いてたんやけど、いつもなら丁度あの時間に渡ってたんよね。いろんな人が心配して電話かけてきて。でもその日の午後はイベントがあったから、すぐ後に警察がいる事件現場渡ってソフマップに行って。お客さんもちらほら来てたけど、こんな日に何やってんのかなあって。あと、昔あった「ヤマギワソフト」って知ってる?

 

――うーん、知らないですね。ソフマップみたいなお店ですか?

 

けーすけ:そうそう。あそこでもイベントやってたんやけど、ある日、前日にバラしになったことがあって、それはさすがにあかんでって言ったら、「会場が火事になっちゃったんです……」って電話が。それはしょうがないなと。で後日、延期になったDVDのイベントを改めてやったんやけど、タイトルが「BURN」やってん。堀口としみちゃんの『BODY BURN』。あれはいまでも忘れられない。

 

――ちょっと、それは話が出来すぎじゃないですか……!

 

亡き先代オーナーは伝説のDJ

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――ところで「SONE BAR」ってどうしてマスターが日替わりなんですか?

 

けーすけ:先代オーナーの曽根さんが、飲みすぎで店をたたむことにした時に、いまのオーナーが引き継いだんだけど、最初はふたりで店をまわせないから、仲間の常連さん達が手伝ってて、その時の名残なんでしょうね。

 

――けーすけさんは先代の時からいらっしゃるんですか?

 

けーすけ:いや、僕はいまのオーナーになってすぐ。なので7年前からかな。この仕事始めるまで、お酒はほとんど飲めなかった。

 

――へえー、意外!

 

けーすけ:飲めないし、まったく知らないから、お客さんにハーフ&ハーフって言われて、「……すいません、なんのハーフですか?」って聞いちゃって「何言ってんねん、ビールと黒ビールや!」って呆れられて、厨房入ってからやっと黒ビールがないことに気がつくようなレベルやったわ。

 

――ははは、すごく勉強されたんですね。

 

けーすけ:もうほんとに基礎的なところからね。でも「モスコミュール」とか「スクリュードライバー」とか、カクテルの名前ってなんでこんなんなのかなあって気になり始めてから面白くなったなぁ。

 

――じゃあ、せっかくなのでカクテルを飲みます……!

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けーすけさんがカクテルを作り始めると、この連載のカメラマンである沼田学さんが何かに気が付きました。

 

沼田学(以下、沼田):なんか、レコードたくさんありますね。けーすけさん音楽好きなんですか?

 

けーすけ:いや、僕はそっち方面よくわからないのよ。サマソニってのも知らんくて、僕はてっきり埼玉のソニックシティでやるからサマソニやと思っててん!

 

沼田:えー、あれ、「SONEBAR」のSONEって……もしかしてDJ曽根さん?

 

けーすけ:そうそう! へえ、やっぱり音楽好きの人には有名なんだ! なんかうれしいなあ。

 

沼田:ほげえええええええ!!!

 

もう一度、えっ、と驚いてしばらく硬直した沼田さんは、えっえっえっ、とさらに驚き、曽根さんのMIX CDを聴いていたこと、いかに曽根さんがすごいDJだったかを話し始め、リキュールをシガーカップに注ぐけーすけさんが「イベントのチラシ、トイレに飾ってあるよ〜」と言い終わる前には、トイレに向かって駆けだしていました。

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トイレには、レジェンドDJゆかりのフライヤーが

 

ジントニックからは、器用で凝り性なけーすけさんらしい味がしました。

 

先代のDJ曽根さんがどれだけすごかったかは、沼田さんに3回くらい教えてもらいました。「道ばたで会うといつも酔っ払っていたけど、生前から天使のような優しいおじさんだった」とは、けーすけさんの言葉。3年前に逝去された曽根さんは、本当に天使になったのかもしれません。

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同じビルの2階、おでん屋「まめひろ」から、休憩時に一杯だけ飲みに来た店長さんと乾杯

 

けーすけさんの秘密。大物芸能人のスタイリングを勝手に……

――そうだ、この連載、こっそりヒミツを教えてもらう連載なんですよ。すっかり忘れていたので、無粋にもほどがありますが、何かヒミツを教えてください……!

 

けー すけ:僕ね、渡辺プロの頃、N・Hさんの付き人を一時期だけやってたんだけど、当時N・Hさんが14本とかレギュラー持ってる頃でめっちゃ忙しくて。今でも大物やけどね。で、彼のスタイリストさんがまだそんなに売れてなかったN君(現在は超有名ファッションデザイナー)やってん。それでも当時から忙しい人やったから、14本分の衣装を一気にドサッと預かるのね。それで僕がスケッチブックと照らし合わせて、番組ごとにN・Hさんに渡すんやけど、よーわからんねん。衣装っていっても14のスタイリング、そんなに大差あるわけじゃないからね。赤いチェックのシャツっていっても、同じようなのが何枚もあるような有り様で。

いま時効やから言えるけど、だんだんどれでもいいような気がしてきて、僕がテッキトーに渡してた。だからあの当時のスタイリングは半分くらい僕やね。そもそもスタイリング放棄してるけど。わははは。

 

――わはははははは! これ書いていいのかしら。私も結構いろんな活動をしているんですけど、肩書きが多くてよかったことってありますか?

 

けーすけ:フットワークが軽くなるのはいいかなって思う。ピエロになって子どもたちにバルーンアート作って、スーツに着替えてグラビアアイドルの司会やって、ちょっとお色気系のVシネマに出たり……とか、そういう日があるのは面白いね。N・Hさんの付き人をしていた時、「みんな僕に何屋さんって聞くけど、それは世間が決めることで、僕は現場に合わせた職業になる」って言ってた。あれ、いま考えたら名言やなーって思う。

 

――私も時々何をしている人なのかわからないと言われるので、その名言を思い出すことにします。

 

けーすけ:俳優って究極のコスプレイヤーやと思うねん。アメリカだと映画の俳優は映画、CMはCMっていうふうに活動領域が限られているのが普通やけど、日本の芸能界はボーダーレスだし、ある意味でそこが醍醐味やろ。いろんな仕事して楽しんだ方がええと思うで。

 

私の目を見ながら真剣に話すけーすけさんは、手元の乾き物を思い切りカウンターにばらまきました。

 

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落ちた乾き物を悩ましく見つめ、自分で食べ始めたけーすけさんを、ソファからマンゴーちゃんと、オーナーのacoさんが見守っていました。

明日、けーすけさんは、acoさんが先生をしているベリーダンス教室の発表会で、司会をするそうです。

 

今夜の一品

けーすけさんのジントニック(800円)

お酒はほとんど飲めなかったというけーすけさんが、猛勉強の末、持ち前の器用さと凝り性を発揮して作ってくれます。

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今夜のお店

SONEBAR(ソネバー)

住所:東京渋谷区神山町17-1 第2渡辺ビル4F
電話番号:03-3465-4841
営業時間:21:00~5:00(日によって異なる場合もあります)
ウェブサイト:http://sonebar.jimdo.com/

 

書いた人:姫乃たま

姫乃たま

1993年2月12日、下北沢生まれ、エロ本育ち。16才よりフリーランスで地下アイドル活動を始め、ライブイベントへの出演を軸足に置きながら、文筆業も営む。そのほか司会、DJとしても活動。フルアルバムに『僕とジョルジュ』があり、著書に『潜行~地下アイドルの人に言えない生活』(サイゾー社)があ る。

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12歳のときから思ったことがその通りになるとはどういうことか。それは満州生まれの矢追純一氏が10歳のときに終戦を迎えたときのお話になった。

 

世の中ひっくり返ったなかに2年いた

「ものすごい長い話になるんだけどね。本を読んでもらうほうがいいんだけど。いま本屋さんに並んでいる『ヤオイズム(三五館)』という本にも書いてあります。父親が日本の建設省の役人をしてて、満州に出向してそこで生まれたんです。僕と妹ふたりの3人ですね」

 

「そこでけっこう豪勢な暮らしをしてたんだけど、ある日突然玉音放送があって、日本が負けましたと。使用人の中国人がふらっと現れて“お前らは負けた、うちらは勝った。ここはお前らの土地じゃないから今すぐ出て行け”と、着の身着のままでうちから放り出されて。日本人はみんなそういう生活になったわけ。みんないいところのお嬢さん奥さんだから生きてく術がないじゃん。みんな苦労したし。子供を中国人に預けた人もいれば、身を売らなきゃいけなかった人もいたし、餓死した人もいた」

 

「そういう、世の中がひっくり返ったなかに2年間いたわけだよ。まわり全部敵だからさ。日本人以外は敵。昨日敵だから今日も敵ってやつで」

 

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「うちのおふくろは何歳であろうとぜんぶ平等に扱う人なんです。親父は終戦の1年前に死んでしまったんですね。急病で。親子4人で暮らしてたところに晴天の霹靂がきた。母親は贅沢しか知らないような人だったんですけど、終戦の日を境に人間がガラッと変わりまして。放り出されたその日にどっかから部屋を借りてきて、君たちここに座んなさいってね」

 

「昨日までは坊っちゃん嬢ちゃんだったかもしれないけど、今日からはホームレス。お母さんは自分で食べていくのが精一杯だから、君たちの面倒は見られないからそのつもりで、と言い渡されまして。で、ホントになんにもやってくれないんですよ」

 

──終戦のタイミングに、日本国内ではなく満州にいらっしゃったのですね。

「そうです。それで、“これを売ってこい”と、かろうじて持ち出した着物を俺に渡して。売ってきなさいったってどこで? みたいな(笑)。でも、泣いてもなんでも絶対に家に入れてくれない。しょうがないから道端に立って。日本語しかできないんだけど、通りすがりのアメリカの兵隊とかロシアの兵隊とかに“どうですか”というところから始まり、だんだん人間らしくなってきたわけ。その前は俺は人間失格だったから。学校にも行かないし、身体が弱いからしょっちゅう入院してたし。対人恐怖症でしたし」

 

「でもそういう経験のおかげで、ちょっとはたくましくなって。いろんな人とケンカしなきゃいけない。盗られないようにがんばらないといけないしね(笑)」

 

「それから2年後に、やっと最後の引揚げ船に乗って帰ってきたんだけど、それまでの間にいっぱい人が死んだ。たぶん、あなた達が想像してる状況とはぜんぜん違うと思うよ。本で読んで、わかってるつもりになってるのとは」

 

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「とにかくそこで悟ったんですよ。物とか金とか地位とか名誉とか財産というものは、一夜にして消えるものだから、信頼を置く必要はない。そんなものはいらねえと。命だけでも助かってきたのはすごいじゃないかと。そうなったときに、物欲とか金欲とか名誉欲とかプライドとか、命に対する欲も無くなったのね」

 

──そういった経験をされて、食に対する欲望はどうですか。 

「食欲はすごくあるよ。でも子供の時の空腹感というものではない。不思議と。目の前にあれば食うけど、なければないで仕方ないじゃんって。1日3食食わなきゃいけないって間違った迷信がいまでも流行ってるけど(笑)、あんなもんウソで。1食でも足りるわけだし。そういう義務感だか、決められたことに従おうという“ヒラ社員根性”を直さないと(笑)」

 

身分的にはどうあれ、本人がどういう根性なのかが大事

「ヒラ社員根性で生きているから、みんな苦労するし精神的にも安定しないわけ。でもよく考えてみたら、世の中も株式会社みたいにできているわけで。社長はヒラ社員たちに本当のことは言わないで秘密にしといて、ヒラ社員はがんばれ、一生懸命に、努力、根性、間違ったことをするな、正しいことをしろ、悪い道に行くな。まじめにやれ……なんだかわけがわからないですよ(笑)。なにをもって正しいか正しくないかも、決まってないじゃない。これみんなヒラ社員への教育だよね。社長はそんなことは考えてないもんね。それを“常識”というのね」

 

「みんなそういう親に育てられているので、それが頭にこびりついてて、なんか食わないと大変なことになりそうな気がして、食うためには働かないと大変だぞって話になって。ずっと強迫観念で生きているわけですよ。でもそれは“ヒラ社員根性”だから」

 

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「身分的にはどうあれ、本人がどういう根性なのかが大事なんじゃないの。いろんなものに縛られるのは、それは制約としてはしょうがないのね。浮世の義理というんだけどね。それは適当に流して、自分がどういうふうに生きていくかが決まってないとダメですね。僕は、自分が思ったことはぜんぶその通りになるからなにもしないんですよ。勉強もしないし、努力もしないし、まじめじゃないです」

 

「うちの母親は勉強すると怒る人だったので。男は身体を鍛えなきゃダメだからうちの中でウジウジ勉強してんじゃねえと。明日試験だから勉強してるんだと言ったら、“試験だから勉強しないといけないってことは学校でサボってるに違いないから、そんな学校行かせない”って言われちゃう。うちの中にいると怒られるので一日中外で遊んでないといけない。晩飯食ったらまた行かないといけない。だから、いまだに勉強とかゲームとか一切できないです。トランプも無理」

 

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──原体験の中で思い出に残る食べものってありますか。

「そんな特別なもの、思いつかないね(笑)。引揚げ船で帰ってきたときに佐世保に着いたんだけど、上陸許可までに何日もかかって、そこで完全殺菌されるわけですよ。DDT(※)で。上陸して、引揚げ者の一時的な避難所みたいなところに入って。そのときに初めて、ふかふかの中華まんじゅうをくれたんです。ひとり1個ずつ。これはうまかったね。それまで大変だったからね」

※DDT:太平洋戦争直後、シラミ対策などの目的で米軍により持ち込まれ、使用された殺虫剤。頭髪や全身に噴霧された。発がん性物質のため現在は使用禁止。

 

「みんなそうなんだけど。日本にいた人はいた人で大変だったと思うんですよ。東京大空襲とか原爆とかあったからね。外地にいた俺たちみたいなのは、これはまた大変だったわけですよね。だから、命があるだけでも奇跡なんだよね

 

方針だけ決めて『なにか目に見えないもの』にお任せする

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「うちはもっと奇跡で、母親がすごいから食うものに困ったことない。毎日、白い飯で肉を食ってた。そのかわり4歳の妹も働かされて。そういう生活があったから今日の僕があるわけですけども、怖いものがまずないんですよね。命もいらないから」

 

「“命だけはどうぞお助け”ってみんな思ってるけど、それは無理だって。だいたい自分がいつ死ぬか分かってないやつが“命だけは”って、それは無理でしょって。歩道を歩いたって後ろから轢かれちゃう時代だからね(笑)。んなものどこ行ったってすぐ死ぬよ。いまここで突然脳になにか詰まっても死ぬわけだからね、脳溢血かなんかで。若いからって安心してられないじゃない。自分がいつ死ぬか分からないのに、命だけはお助けをってのは無駄でしょって思う。その1個の執着をなくすと、思ったことがその通りになるわけ。そんなものに執着してるからダメなわけで」

 

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──UFOや不思議な事に興味が湧いてきたのはなにかきっかけがあるんですか。

「興味なんて、ぜんぜんないです。いまもないです」

 

──そうなんですか!? とても意外です。

「そんなに特別にそれだけに興味を持つってのも変な話でね。人間はもっといろんなことをやるじゃないですか。まあ趣味でマッチ箱を集めるのに一生懸命って人もいるわけでさ。それはそれで結構なことなんだけど。僕は何ひとつ趣味はないし、これが好きだとか、これをやらなきゃとかいうことも一切ないので」

 

「自分がやりたいことしかやらない。自分からなにかやろうとは思わない。呼ばれるとしょうがないから行くみたいな。しょうがないというと語弊がありますけども。僕自身がなにかを選ぶのは無理だと思ってるんですよ。それほど頭良くないから。

みなさんはきっと自分が頭いいと思うから自分の才覚で生きていこうと思うんでしょ。えらいなと思うんですけど、自分の才覚で生きていこうと思ったら、そりゃ無理だと。自分の脳をパソコンだとすると、その脳はね、大したパソコンじゃないじゃないですか。大した体験もしてないのでほとんどのことがわかってないじゃないですか。知識もこんなに狭められた中で、知ったかぶりしてわかった気になってるだけであってね(笑)。日本の中で上から数えたら自分は何番目かって、そりゃ絶対下から数えたほうが早いでしょってレベルなわけじゃないですか。そいつが自分の才覚で生きていくったってそれは無理です。東大に入って、財務省に入ってって、そういう計算でやってもなかなかそうは簡単にいかないのは、基本的に人間は頭が悪いからですよ」

 

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「どうやって生きていくかっていう計算をやめて、自分のおおまかな方針だけ決めて、あとはお任せする。“なにか目に見えないもの”にお任せする」

 

「それは神さまとかじゃあないよ。なんだかわからないけど、目に見えない流れですね。世界の流れ、宇宙の流れ。そういう流れの中に乗ればいいのであって。その流れの中で必死に泳いで、俺はこっち行くったってそれは無理でしょって。まず第一に、どの人もみんな生きていく上での方針が決まってないんだよね。死ぬまで生きていくんだからさ。こういう方針でいこうかなってのがないんだよ。だから自信がないわけ。つい他人のほうに目が行っちゃうわけ。ひとはどうだろう、俺はこれでいいんだろうか。それはひとが決めるんじゃなくて、あんたが決めることでしょって。ぜんぶ他人任せになっちゃうんだよ。自信がないから。そうすると女性にもモテないんだ(笑)」

 

とっておきのバーを教えてあげる

親の教えで白米はあまり食べない、そもそも食べることに執着もないというが、お酒の席ではかなり食べる方だという。

 

「そんなに大量には食べないと俺が言うと、矢追さん、ものすごく食べてますよって言われるんだけど、酒飲んだときは食べるのね。お酒は、酒だけでは絶対飲めないんですよ。なにか食べるものがあって飲むので。たとえば中華なら日本酒は合わないから、ビールか紹興酒でしょ。そういうふうに食べるもので飲む酒が決まるんです。飲んで食って飲んで食ってってやってるもんだからここまで入ったら(喉元に手をやる)終わりになるわけね(笑)。基本的にそんなに飲まないし、食べる量も多くない。そのかわり、うまいものを食べたい」

 

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──好物はありますか。

「そんなのはないです。おいしければなんでもいい。ありがたいことにいろんな食べ物が世の中にあるんでね。とくに東京はね」

 

「おいしいものを安く食べたい。高くておいしいものはいくらでもあるから。だいたい高いものっておいしくないんだよね、基本的に。高いってことは格好つけてるわけですから、“格好代”が高いわけです。“俳優のどなたさんがおいでになりました”とかさ。庶民的なところで、なおかつおいしいところはけっこういっぱい知ってます。私は勘がいいですからね。そこははずさないです」

 

──ピンとくるわけですね。

「餃子はね、代々木の駅前の店が並んでるとこで。餃子屋やラーメン屋が3軒くらい並んでるんで間違えて入らないようにしないといけないんだけど。でっかい餃子 さんの店と書いてあるところ。ここは中国人がやってて、目の前で皮から作ってるんです。ここの餃子はおすすめします」

 

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「あ、そうだ。とっておきのバーを教えてあげる。新宿の新南口、階段降りたとこそのまま行って、線路沿いにちょっと行った左側のビルの5階なんですよ。『JazzBarサムライ』と書いてあるけど俺たちは“猫屋敷”と呼んでるのよ。サムライとまったく関係ないのよ。古めかしい扉を開けると、たぶんみんなびっくりするねえ」

 

「猫屋敷って呼ぶ理由は、猫の置物がいっぱいあるの。壁際に何百個とあって。とにかく怪しげな屋敷って感じなのよ。大きな猫の置物があったり、呪文が書いてある掛け軸があったり、提灯の中に仏様があるようなのがあったり、ありとあらゆる変なものがいっぱいあるわけ。これはまず入ったときに“おおっ”となりますよ。店内にはジャズがかかってて。これは俺の好きなとこなんですけど、最近なかなかジャズがかかってるバーってないんですよ。ほとんどのやつが耳が悪いんで、音楽を聴くためにバーに行かないんですね。いい音を出すのはジャズバーくらいなんですけど、ジャズバー自体があんまりないんですよね。なんか得体のしれないBGMをそれとなくかけてて、誰も聴いてないみたいなとこが多くて(笑)」

 

──謎めいているお店ですね。

「その店はジャズがかかっていて、親父が髭をたくわえてて、なんかちょっと変わってる感じなんですね。客には一切関わらないという方針なのか、いらっしゃいくらいは言うけど、あとは勝手なとこに座れって感じですよ。で、注文すら取りに来ません。こっちから呼ばないと来ない。なにやってても干渉しないからすごく楽なんですよね」

 

「しかもすごいかわいい女の子がいて。これが店主の娘さんらしいんだけど。めちゃくちゃ親孝行な娘だと思ってさ。たぶんまだ20代前半か、ひょっとしたら学生かもしれないんだけどさ。すごいかわいい、美人なわけ。この子が手伝いに来てるのね。お給料もらってないのね。その……怪しげなバーに手伝いに来るところが、えらいなと思ってさ。親孝行だねーって言うんだけどさ。その子も一切しゃべらないし。行ったほうがいいよ。安いし。いつまでいても文句言わないし。そこでたとえばミーティングとか会社の打ち合わせをやるといいと思うよ。けっこう座れると思うな。20人くらいは。とにかく居心地がいいから居着いちゃうよ」

 

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きっと本当に、とっておきのバーなのであろう。

 

我々にそのバーの話をする矢追純一氏は、楽しそうに、そして自慢げに語るのであった。皆さんもちょっと行ってみたくなりませんか。あの矢追さんがお勧めする、ちょっと怪しい、猫屋敷のようなそのバーに。

矢追純一氏・近著『ヤオイズム』(三五館)絶賛発売中。

 

参考情報

 

書いた人:鷲谷憲樹

鷲谷憲樹

フリー編集者。ライフハック系の書籍編集、専門学校講師、映像作品のレビュアー、社団法人系の広報誌デザイン、カードゲーム「中二病ポーカー」エバンジェリストなど落ち着かない経歴を持つ器用貧乏。好きな立教OBは中島かずき。

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