榎本ハンバーグ研究所。
研究所とつく硬いネーミングなので、野菜やひき肉の安全性でも調べていそうな施設だが、その実態はハンバーグ専門店。
ここでしか食べられないコンセプト性の高いハンバーグがいろいろ食べられる。
南北線「西ヶ原駅」や京浜東北線「上中里駅」からほど近い。
都内とはいえ決してアクセスの良い場所ではないが、平日は地元客、休日は遠方からのお客さんでにぎわっている。
「1年前にラジオで聞いてからずっと来たかったんですよ」なんてハンバーグ好きたちがわざわざここを目指してやってくるそうだ。
店長の榎本稔さん。
ハンバーグ好きが高じて現在400種類以上のハンバーグレシピを考案している。
榎本さん:ハンバーグってよく食べるわりに、みなさん種類があんまり出てこないんですよ。スパゲティならたくさん種類あるし、言えるじゃないですか。でも、ハンバーグはデミグラスソース、ガーリックソースとかせいぜい5~6種類ぐらい。
ハンバーグはそんな小さいものじゃないんだぞって知らしめるために、どのぐらい新作を作れるかブログで挑戦してたんです。
100種類ぐらいまでは軽くいけたんですけど、300種類超えたあたりからきつくなってきました。どこまでやろうか考えたときに、1年間毎日違うハンバーグが食べられるようにと365種類を目指して、いまは400種類を超えました。
毎日ハンバーグを食べても飽きないというほど、ハンバーグ大好き人間の榎本さん。
ハンバーグを次の次元に連れていくために日々、研究を絶やさない。
お店で提供してる定番メニューは10種類ほどだが、曜日限定メニュー、期間限定メニュー、メルマガ会員限定の裏メニューなどなど基本的に毎週新作を作っているのだとか。
ハンバーグ研究所の名はだてじゃない! 熱い!
榎本さんの熱さに応えるべく、朝メシを抜いてきた。
胃袋の許す限り、いろんな種類のハンバーグを食べることにしよう。
4つのオリジナルハンバーグを食べた
温玉とチーズが官能的!「榎研ハンバーグ」
まず注文したのは「榎研ハンバーグ」。
牛7:豚3の合びき肉で作ったハンバーグの上に温玉を乗せ、
チーズをかぶせて
バーナーで炙る。
▲榎研ハンバーグ(中・ライス付き) 1,590円
デミグラスソースをかければ完成だ。
丸っこいフォルムがかわい。
ナイフを入れると、肉汁と卵黄が一気にあふれ出る。
卵黄とデミグラスソースが絡みあって濃厚、ジューシーなハンバーグによく合っている。
これならいくらでもご飯がすすむ。
榎本さん:温玉をトッピングするお店は多いんですけど、大抵横に添えているだけでハンバーグの上に乗っているところは珍しい。だったら、やってみようと。
でも、プルプルってなって上に乗せるの難しいんですよね。なかなか乗ってくれなくて一時期やめてた時期もありました。
試行錯誤を繰り返して、温玉を軽く焼くことにしました。ちょっと焼き目がついて、滑り止めになるんです。
お米が肉の中に隠れてる!「ご飯★バーグ」
▲ご飯★バーグ 590円(テイクアウト専用、前日予約要)
お次は「ご飯★バーグ」だ。
テイクアウト専用メニューなのでプラスチックパックに入っている。
見た目はどうってことない、やや小ぶりな普通のハンバーグのようだ。
ナイフを入れて、断面にたまげた。肉に包まれ米が隠れているのだ。
甘めの照り焼きソースと食べ応えのお肉、主食でもありオカズでもある万能食だ。
熱々のご飯だとうまく肉が固まらないので、握ったご飯を一回冷ましてから肉で包んでいる。時間がかかるので、前日予約が必要だ。
榎本さん:ハンバーグを食べ歩こうと思ったら、ハンバーガーのようにパンに挟むしかないんですよね。
私はパンよりご飯派なので、なんとかご飯でファストフード化出来ないかなって考えまして。ご飯でハンバーグを挟むのは難しいので、逆にハンバーグの中にご飯を入れてみました。
そんな売れると思ってなかったし面白半分で始めたので、値段もちょっと安めです。
このメニュー、珍しいので取材でけっこう取り上げられてまして、値段を上げることが出来なくなりました。でも、ご飯を冷まさなきゃいけないし、手間がかかるんですよ。だから、メニュー表の目立たないところに載せています(笑)
ハンバーグとつけ麺の融合!「しるばーぐ」
▲しるばーぐ 1,480円
3品目目の「しるばーぐ」は、もう見るからに普通のハンバーグの領域を脱している。
丼に盛られたご飯とハンバーグ。メンマと味つけ玉子も乗っている。そして、横にあるのがつけ汁。ニラとモヤシが入っている。
なんだ、これは。
一体どうやって食べればいいのか。
はじめて対峙(たいじ)する形態の食べ物におもわず手が止まる。
説明書を読まずにテレビゲームをやり始めるタイプだが、こいつはそうもいかない。食べ方が書かれた紙に目を通す。
どうやら、まずはハシでハンバーグを食べやすいサイズに分けるようだ。
そして、つけ汁にイン。
ご飯もつけ汁に入れるのだが、一度にすべて入れると汁を吸い過ぎるので、3回ぐらいに分けるのが吉。
スプーンでスープと一緒にすくって食べる。
うまい! 汁物が好きなので、ズルズルとすごい勢いですすってしまう。
スープはつけ麺そのもの。魚介の匂いが香ばしい。雑炊に近いけど、ハンバーグも一緒に食べるからジューシーでもある。
これはなんとも不思議な食べ物だ。
榎本さん:スープのダシはカツオと豚の背脂ですね。まあ、つけ麺のパクリですね(笑)。好きなんでつけ麺をよく食べに行くんですけど、麺の代わりにご飯入れたらどうだろう、って思ったんです。私、ご飯派なので。
同じ肉だしハンバーグを入れたら、チャーシューの代わりになりそうですし。次の日試したら、これがほんとにおいしかったんですよ! ハンバーグの肉汁が加わるので、スープがまたおいしい。
「ご飯★バーグ」もそうだったが、とにかくご飯が大好きで、パンや麺をご飯でなんとか出来ないかというのが発想の足掛かりになってるようだ。
あなただけの1品を!「特別オーダーメイドハンバーグ」
最近始まった新メニューがこちら、「特別オーダーメイドハンバーグ」だ。
4つの工程を経て、世界に1つだけのハンバーグを作るメニュー。
- 3種類のハンバーグパテから選ぶ
- 8種類のソースから選ぶ
- 11種類のトッピングから2つ選ぶ
ここまでは、わりとどこでもありそうな感じだが、工程4が変わっている。
- ハンバーグの名前をつける
そう、自分でハンバーグに命名するのだ。
ネーミングに合うように盛りつけをしてくれて、店員さんがその名前で運んでくれる。
「牛豚合いびき肉200g、醤油ガーリックソース、榎研ポテトサラダ、ガーリック3種のせ」と部活帰りの中学生みたいなトッピングにしたので、名前は「漢の野郎バーグ」と命名した。
▲漢の野郎バーグ 1,600円
「お待たせいたしました、『漢の野郎バーグ』です」
思いのほか、かわいらしい盛りつけのハンバーグが運ばれてきた。
おなかいっぱいになるような、ゴージャスな感じの盛りつけにしてくれたとのこと。
大きめにカットしたハンバーグにポテトサラダとニンニクを乗せて、一口でほおばる。
口いっぱいに広がるガーリック臭が漢の食いもの感を醸しだしている。
榎本さん:
「名前からインスピレーションを受けて、こちらで仕上げをします。
以前、マリオスペシャルって名前をつけてもらった時はチーズを星型にしたり、マッシュルームを並べたりしました。
積み重ねた経験をベースに、お客様1人1人に合わせたハンバーグを作って、おいしいだけじゃなくて楽しんでもらえたらうれしいですね」
好きなものを作りたい! ファミレス社員からハンバーグ専門店への転身
――ハンバーグ、よっぽどお好きなんですね。
子どもの頃から好きでした。ハンバーグが出てくるとやっぱりうれしい。
毎日食べていても飽きないですね。いろんな味を試して試食してますけど、ぜんぜん飽きない。
好きじゃなきゃ、400種類も作れませんねえ。
――作ってみたけど、こりゃダメだって物もあるんですか?
試したけどやめたものもありますよ。たとえば、ご飯バーグのパン版ですね。
――パン版?
ご飯じゃなくてハンバーグの中にパンを入れてみたんですけど、これはまずかった。
パンがぐちょぐちょになっちゃうんです。肝心の肉汁も全部パンが吸っちゃいますし、いいところ全部なくなっちゃいました!
――最初からハンバーグ専門店として店を始めたんですか?
もともとは「コーヒーエノモト」という喫茶店で、両親がやっていました。
ピラフとかサンドイッチとか軽食を出してる普通の喫茶店ですね。
私は社員としてずっとファミレスで働いていたんですけど、10年ちょっと前からここで働くようになりまして。
――ファミレスの社員さんだったんですね。
ファミレスでは好きな物を勝手に作れないので、だんだん飽きてきまして。
それで、喫茶店で好きな物、ハンバーグとかパスタとかオムライスを出し始めたんです。中でもハンバーグの評価が良かったんですね。
次第に、おいしいハンバーグが食べられる喫茶店って見られるようになってきました。
――ああ、あくまでハンバーグは1メニューだったわけですか?
2015年に父が引退して、私がお店を引き継ぐ際に、いっそのこと喫茶店じゃなくてハンバーグ専門店にしようとこの形式になりました。
ブログ名だった「榎本ハンバーグ研究所」をそのまま屋号にして、今に至ります。
――やっぱりハンバーグが一番好きな料理なんですか?
うーん、つけ麺とハンバーグが好きですね。
でもまあ、1番はハンバーグということでお願いします(笑)。
お店情報
榎本ハンバーグ研究所
住所:東京都北区西ヶ原2-44-13 西ヶ原ハイツ1F
電話番号:03-3910-7020
営業時間:月曜日~土曜日 11:00~15:30、18:00~21:30 祝祭日 11:00~15:30
定休日:不定休
ウェブサイト:http://www.enomoto-hamburg-lab.com/
※この記事は2017年10月の情報です。
※金額はすべて消費税込です。