「中国でザリガニが爆発的ブームになってる」
そんな情報をネットで見かけた。
なんでも中国国内にあるマクドナルドの店舗数を、ザリガニ専門店が抜いたとか。
中国の吉野家にはザリガニ丼もあるらしい。
ザリガニ食に親しみのない私からすれば、にわかに信じがたい話しだけど、世界的に見ればザリガニはポピュラーな食材。大ヒットしていてもおかしくはない。
とはいえ、ザリガニだ。
一種、キワモノ的ブームではないかと疑っていた。
そんな怪しくも魅力的な情報を頭の片すみに入れつつ、つい先日、上海に行く機会があった。
さすが食の大国。
路地の奥にひっそりとある、味もそっけもない外観の麺屋さんでも、驚くほどうまい。
どこで食ってもたいていおいしいので、あえて下調べせず、毎食毎食、見た目の雰囲気だけでお店を決めた。
最終日の夕飯に飛びこんだのが「沪小胖龙虾」だ。
看板に書かれた中国語がなにを意味してるか分からないが、英語で「CRAYFISH」とある。川魚だろうか。海鮮料理のお店だろうか。
ぱっと華やかな外観、お客さんで賑わう店内にひかれ、何のお店か分からないまま入店した。
テーブル席、ソファー席が30以上ある。
広い店内は子どもづれの家族やカップルたちで埋めつくされ、年齢層もけっこう若めだ。
手渡されたメニューをめくって、驚いた!
めくれどもめくれども、ザリガニ、ザリガニ、ザリガニ、たまにシャコ、カニ、そしてザリガニ!
塩こしょう味、カレー風味、ガーリック炒めなどなど。
ザリガニをどういう味つけで食べるか、無数の選択肢が用意されている。
そう、ここ「沪小胖」はチェーン展開しているザリガニ専門店なのだ。
もちろんクレイフィッシュとはザリガニの意味。
まったく期せずして、なんとなく外観で選んだお店がザリガニ専門店とは! 爆発的ブームというのは本当のようだ!
クセになるうまさ! 静かな熱気に包まれる食卓!
▲ザリガニのガーリック炒め(中サイズ) 148元
豊富なザリガニメニューから選んだのが、ガーリック炒め。
出てきた量にがくぜんとした。なにせ大皿で山盛りだ! これでも中サイズなんだよ。
ザリガニがざっと40匹以上いる!
お値段は日本円で2,500円ぐらい。
メニュー表を眺めてたときは「わりと高いな」と思ってたんだけど、この量なら納得だ。
う~~~、どこからどう見てもザリガニ! 立派なハサミをしてらっしゃる!
見渡すとテーブルによっては、4人で4皿食べてるところもある。
1人40匹いくのか……。とにかく量をガツガツいくのが基本みたいだ。
硬い殻に包まれたザリガニ。上品にハシやフォークで食べるのは無理。
あらかじめ用意されたビニール手袋を装着して、手づかみだ!
できたてのザリガニ料理は予期せぬ熱さで、ちんたら殻をむいていられない!
スピードと手際が求められる世界だ。
夢中で殻を剥ぐ。
はじめこそ慣れない作業に戸惑うが、2匹3匹とこなしていくうちにどんどん素早くなっていく。
「うわ! ザリガニのチョモランマや!」
「はじめてのザリガニがこの量って!」
とか騒いでいた面々も、ひとたび食事が始まると、黙々とザリガニをむいて食べる。
どことなく真剣なムード。食卓は静かな熱気に包まれた。
この雰囲気、どこかで体験したことがあるとおもったが、カニだ。カニを食べているときに近い。
甲殻類には人をマジにさせる何かがある。
でね、うまいんだ!
ザリガニ、意外なほどうまいの、マジで。
ガーリック風味ががつんと効いて、肉に染み込んでもう最高。
食欲が刺激されちゃって、いくらでも食べられる。
めちゃくちゃうまいんだけど可食部が少ないのが難点。
むいたザリガニはすぐ食べ終わっちゃって、早く次を食べたいのに、口に放り込むまで手間がかかる。
このじれったさも、またザリガニの魅力かもしれない。
パラパラに炒められたチャーハン。これがねえ、ザリガニとの相性バツグンなのよ!
ガーリックソースでべとべとの手袋のまんま、手づかみで食べる。そうすると濃厚ソースが米になじんでまたうまいんだ。たまらん。
ザリガニ、チャーハン、ザリガニ、チャーハンの永久ループがここに完成。
▲カモの頭のピリ辛和え 12元/1つ
カモの頭を燻製して、ピリ辛風味にしたお肉なんかもあった。これも辛塩っぱくてうまい。
食事開始から1時間。食べても食べても減らないザリガニ。
「もう一生分のザリガニ食べたわ!」と満たされてるんだけど、大皿にはまだもう一生分のザリガニがいる。
ヤミツキになる妙なうまさで、満たされてはいても、あればあるだけ手が伸びる。
殻をむいて身を食し、頭部のミソをすするループ。
完食後、手元の皿にザリガニの殻が山積みになっていた。
ザリガニ料理の魅力、すっかりとりつかれてしまった……。
お店情報
沪小胖龙虾
住所:上海黄浦区淮海中路438号2楼
電話:021-63331686