栃木の名物郷土めし「しもつかれ」コンテストに行ってきた!【観光情報付き】

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ご覧ください、この美しい山々!

 

ここは日光連山を間近に眺められる、

栃木県は日光市、今市(いまいち)エリア

 

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新宿から電車で1本、下今市(しもいまいち)駅には約1時間45分で着きました。

案外近くてビックリ!!

 

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降りるとすぐに、駅からさっきの日光連山が見られて気持ちよかったなー!


さて、なぜこの今市を訪れたかというと……


こちらのイベントの取材だったのです!

 

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「第16回 全日本しもつかれコンテスト」!

 

栃木の郷土めし、「しもつかれ」を知っていますか?

とにもかくにも、まずは会場に入ってみますよー! 

 

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おお、会場は人であふれんばかり!

 

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会場後、30分経ってもまだまだ入りきれない人が列を成し、外までその行列は続いていました。なんと開始2時間前から行列が!

今市の人々、みんなこのイベントを楽しみにしてるんだなあ……(゚Д゚;)

 

ところで、What's しもつかれ?

 

さて、こんなにも愛される料理、「しもつかれ」とは……???

 

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ちょっと汁気の多いポテサラのように見えますが、栃木でずっと食べ継がれてきた、伝統の料理です。

 

 【基本的な材料】

・塩鮭の頭
・大豆
・ダイコン
・ニンジン
・油揚げ
・酒粕

 

これらがたーーーっぷり入った、煮込み料理なんですよ! 体にいいものばっかり。

 

【料理の由来】

初午(はつうま)の日(2月の最初の午の日)に、神様にささげる料理として作られてきたもの。現在では道祖神(ごく簡単にのべると、お地蔵さまなど)や、お稲荷様に捧げられることが多いよう。鎌倉時代前期の説話集『宇治拾遺物語』にも登場する、大変に長い歴史のあるものです。

 

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こちらが、今市の方が実際に「しもつかれ」をお稲荷様に捧げたときの様子です。

左の黒い器に入っているのが、「しもつかれ」。今市エリアでは、このようにお社のあるご自宅やお店がよく見られました。

(資料提供:たまり漬けでおなじみ、上澤梅太郎商店さん。ありがとうございました)

 

<名前の由来>

材料のひとつ、煎り大豆に酢をかけるとシワが寄って、人がむずかっているような表情になることから、「酢むつかり(=憤り)」となり、それが「すみつかり」「すむつかれ」「しみつかれ」などと転じていったようです(すべて、しもつかれの異名。今市以外の地域でも同様の料理は作られています)

 ※参考資料『たべもの噺』鈴木晋一著 小学館ライブラリー

 

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この「鬼おろし」という目の粗いおろし機で、ダイコンとニンジンをすりおろします。

この写真のもの、なんと大正時代につくられたもの。地元の方が今でも使っているもです。(長谷川愛子さん提供)

 

家庭によって味はかなり違う

【かんたんなレシピ説明】

1:塩鮭を、骨が柔らかくなるまでじっくり煮る。

2:大豆、刻んだ油揚げ、おろしたダイコンとニンジンを入れてさらに煮込む。

3:味をみて、塩気が薄ければしょうゆを足す。

4:お酢を少々(最近は入れない人も)。

5:最後に酒粕を加える。

 

※ただし……

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「家ごとに、かなり味わいが違う!」

これ、郷土料理ではすべてに共通することなんですが、「しもつかれ」は特にはっきりと家ごとの差が表れていました。

 

各参加者のしもつかれを味見したところ、甘め、しょっぱめ、汁気を多くする人・しない人、具材として日光名物・湯葉を加える人……あ・ま・り・に・も・家ごとにそのディテールが違う

驚かされました!

 

ここまで味も違えば、比べてみたくなるのが人情というもの。町おこしも兼ねてのイベントに「しもつかれ」を活用せんと、料理コンテストを開催。めでたく今年が16回目というわけです。

  

ちなみにこの「しもつかれ」、ご近所でよくおすそ分けされるのだとか。

七軒分の『しもつかれ』を食べると、その年は風邪をひかない

という言い伝えも。おすそ分けが日常となる連帯が、まだまだ生きている。

取材していて、実感したことです。

 

七軒もの家から「これ、作ったから食べてよ」なんて寄られるような家は「福のある家」ですよね。そりゃあ病気も寄りつかないだろう……なんて思ったり。

さて、会場に戻ってみましょう!

 

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会場には参加者作の「しもつかれ」があちこちに置かれています。これらを来場者全員が味見をして、投票するシステム。だからあんな行列になっていたのですね。

 

今回はなんと678名が来場!

 

会場のある方から、こんな話をうかがいました。 

もともとは、時期のものをうまく使った料理なんです。お正月に食べた塩鮭のあまり、節分の豆、そして新酒の時期ですから酒粕が出る。これらをみんな使って作る料理なんです。究極のエコ料理ですよ。お稲荷様にお供えするので、油揚げも欠かせません。栃木が誇る郷土食です!

 

な、なるほど。

シーズンならではの食材をあますところなく使った、合理的な料理なんですな。これって、元祖リメイク料理では? 近年では酒粕の健康効果が注目されたこともあって、新たな脚光も浴びているようです。

 

酒のアテにしてみるのも一興

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これは会場の外で売られていた「しもつかれ汁」で、汁ものとして食べやすくアレンジされていました。煮干しのだしをちょっと加えているそう。

 

「ただねえ、この料理、見た目があまりよくないでしょう?」


「だから子どもの頃はあまり好きじゃなかったなあ」

 

なーんて声、地元の方々からはよく聞かれるんです。


そうかなあ?

 

食べてみると鮭の香ばしさと酒粕風味がきいていて、実においしい。うーん……ハッキリいうと、「一杯欲しくなる味」なんですわ。そう、アテとしてもいい。

「酒が好きな年齢になってくるとこの料理、ファンが増えるんです!」とは、地元の呑んべえの声。わかる、わかるよその気持ち!

 

あれ、でも……

 

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会場には、ちっちゃな審査員もたくさんいましたよ。


おばあちゃんの『しもつかれ』が好き」という可愛い声も多く聞かれました。

 将来、「しもつかれ」の作り手になってくれるといいなあ。地元の味、祖父母の味が受け継がれるってのは、とても豊かなことですね。ちょっと真面目な話をすると、そういう祖父母の味(戦前の味)というのが日本からは今、消えかかっています。守られてほしい。

 

お、審査もすんだようです。結果発表タイム!

 

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今年の1位は男性でした。

宇都宮市の大森正雄さん、おめでとうございます!

 

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おっと、優勝賞品持てるかな。

 

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会場では、たくさんのテイクアウト用「しもつかれ」も売られていました。取材を終えて寄った、佐野市のスーパーの総菜コーナーでも「しもつかれ」を発見。県民に愛されてるなあ。

 

歴史ある造り酒屋さんも見どころ!

さて、会場となった「道の駅 日光街道ニコニコ本陣」は、下今市駅から徒歩7分程度。今市の中心部にありながら、

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どうですこの眺め!

こんな雄大な景色が共にあるって、うらやましい。

夜の月と星も、本当にきれいでした。

夜の暗さ、久々に思い出したな。

 

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この道の駅の目の前には、「船村徹記念館」があるんですよ。サブちゃん(北島三郎)の『風雪ながれ旅』や、美空ひばりの『みだれ髪』などを作った大作曲家。歌唱DVDを制作できるカラオケルームもあったりします。

 

そして道の駅の目の前には、なんと造り酒屋さんまで!

 

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渡邊佐平商店

創業は天保年間という長い歴史のある蔵元さんです。なんともクラシックな店構えで、昔の今市の風情が目に浮かぶようでした!

 

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中に入ると年代物のストーブがあって、情緒も満点! 見学客も多く、年間で約9000人が訪れるそうですよ。外国からの観光客にも好評というのに、納得。

 

※見学は無料ですが、条件等あるので下記リンクを参照ください

 

そしてこちらから10分も歩かずに、造り酒屋さんがもう1軒あるのです。2軒も蔵を歩いてまわれるというのは、うれしいですね。

 

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片山酒造

こちらもなんとも歴史を感じさせるたたずまい。見学にうかがったときは青々とした酒林(杉玉)が入り口に下げられていました。昔ながらの佐瀬式の搾りを今に続ける蔵元さんで、その様子が見たいと全国から見学に訪れる人も多く、こちらも外国からの観光客に評判です。

 

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蔵の中で、まさにいま搾られている酒の音を聞きました。

間近に見える日光の山々からの水で仕込まれる、今市の酒。

雨が降り、連山から川が流れ、その水がやがて人々の飲み水となり、酒が仕込まれる。すべて繋がっているのだなあ……と思いつつ、"しずく"の音を聞く。そして、お酒の味見。なんという贅沢なひととき。

 

飲み干せば、山の霊気が口の中に広がるよう。

造り手から直にお酒を注いでいただき、頂戴する。

酒がすぐとなりで静かに、そしてたしかに育っているのを感じながら。

これね、やっぱり格別なんですよ。

 

こういう体験、ぜひ一度していただきたい。酒好きならば特に!

 

 

※こちらも、見学の際は要問い合わせで!

 

いやー……正直に言って、今市(いまいち)のこと、今までほとんど知りませんでした。しかしこんなに東京から行きやすく、観光しやすいところだったとは!

いまいちな所でしょ、なんてよーくからかわれます(笑)

と地元の方がしばしば仰ってましたが、(*´ω`;) いやいや、そんなことありません。新宿からスペーシアに乗っても片道4千円しないんですな。鬼怒川や日光旅行の際に立ち寄るプランもいいですね。もし夜ごはんを食べることがあれば、私のおすすめは「魚登久」さん。鰻をつまみに地酒を楽しめますよ。

 

今回は、「しもつかれコンテスト」から今市を旅してみました!

 

書いた人:白央篤司

白央篤司

フードライター。雑誌『栄養と料理』などで連載中。「食と健康」、郷土料理をメインテーマに執筆をつづける。著書に「にっぽんのおにぎり」「にっぽんのおやつ」(理論社)「ジャパめし。」(集英社)がある。

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