炊き込まない鯛めし?愛媛名物「鯛めし」をフカボリしてみた

「ホットペッパー」&「ホットペッパービューティー」本誌との連動企画「フカボリ! 美味なるご当地グルメ」。第2回目は、愛媛の名物料理「鯛めし」をフカボリしました。

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といえば、めでたい

この語呂合わせを、日本人は古くから大切にしてきました。結婚式などの祝い膳、クラシックなスタイルでは尾頭(おかしら)つきの鯛は欠かせません。鯛を辞書で引けば「魚類の王」なんて称されるし(大辞林)、優勝した力士が手にするのはおなじみの光景。ビールでおなじみ、恵比寿様が抱えているのも鯛。ことわざにも「エビで鯛を釣る」なんてありますし、さらには「腐っても鯛」! 腐ってまでも捨ててはおかれぬというのがすごいですね。かくも日本で愛されてきた魚、それが鯛。

 

鯛を使った料理もいろいろあるわけですが、今回はその中から「鯛めし」をフカボリしてみたいと思います。

 

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さて、みなさんの鯛めしイメージってどんなんでしょう? こんな感じで、土鍋に鯛がまるごと入った炊き込みスタイルが一般的でしょうかね。

(ちなみにこの土鍋の鯛めし、冒頭の鯛を使って炊き込んでみました。山口で獲れた花鯛という鯛です)

鯛めしは、瀬戸内エリアでは定番の料理。中でも愛媛県ではおなじみの料理です。ちなみに愛媛県は養殖マダイの生産量が日本一、なおかつマダイは県魚にも指定されているんですよ。

その愛媛県には、実は2バージョンの鯛めしがあるんです! ご存知でした?

 

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県西部・宇和島地方の鯛めしは、刺身を卵黄入りのタレに漬けて食べるもの。試してみれば、炊き込みスタイルとはまた別の魅力があって実においしい。

この漬けダレ、醤油にみりんを加えて甘めにしたものが基本スタイル。「郷土料理は作る人の数だけレシピがある」は私の持論ですが、家によりお店により、微妙にタレのレシピは異なります。お酒を加える人、砂糖を入れてしっかり甘くする人、たまり醤油を使って風味濃厚にする人もあります。

今回は、家で再現する場合のいちばん簡単なやり方を紹介しますね。

 

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卵の黄身が入るのがなんといってもポイント。これによって刺身とタレの絡まりがよくなります。「刺身といえば醤油とワサビ」な人は、「白身魚を甘めの醤油、しかもプラス卵黄……?」「いやいや、刺身はやっぱりシンプルに食べたい!」と思われるかもですねえ。

でもね、このタレによって刺身の「ごはんのおとも度」がすんごくアップするんです。私も驚きました。ぜひぜひ、試してみてほしいです。

ちなみに宇和島の鯛めしは、

  1. タレにサッとつけて食べる
  2. 刺身をあらかじめタレに漬けておく

この2つのパターンがあります。後者のように、いわゆる「ヅケ」にして味を染み込ませるのもうまいもんですよ。それでは実際にレシピを見てみましょう。

 

ごく簡単なレシピ(1人前)

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  • 鯛の刺身 70~100g
  • 卵黄 1個
  • めんつゆ(ストレートタイプ) 大さじ4
  • 白ゴマ、細ネギ、ごはん 適量

 ごくごく簡単レシピということで、量もアバウト、タレはめんつゆで代用しちゃいます。だし醤油があれば、みりんと「3:1」ぐらいで割ったものでも構いません。

小鉢にめんつゆを入れて卵黄を落とし、ゴマとネギを好みの量入れてください。このタレに刺身をつけて、卵黄をからめればもう完成。これだけです!

 

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ヅケスタイルでやってみたい人は、まずタレに刺身を入れて冷蔵庫に戻し、最低でも15分ぐらい漬けてからごはんにのせてください(上の写真参照)。

そうそう、もしあればミカンの皮を細く刻んで添えてもいいですよ。宇和島はじめ愛媛はミカンの大産地。薬味としても活用されています

 

宇和島の鯛めし、もとは海賊の料理だったと伝わります。それが次第に漁師の間に広まり、長く食べられてきたようなんですね。船の上で仕事の合間にちゃちゃっと作られてきたお手軽メシ。昔の漁師さんも、醤油に酒や砂糖をあらかじめ合わせておき、そこに釣りたての魚の切れ端を放り込んで、食べていたのかもしれません。 

 愛媛西部には鯛にかぎらず、甘めの醤油ダレにいろんな魚の切れ端を浸け、卵をからめて食べる習慣があります。以前に宇和島のかたにうかがった際は、

 

何もないとき、魚を切って、醤油とみりんに卵を落して、それをごはんにかけてよく食べました。特に鯛にかぎらず、そのときある魚でパッと作るものでね。お茶漬け感覚の軽食ですよ。

 

とも教わりました。これらの料理、「六宝」とか「七宝」「ひゅうが飯」なんて名前でも呼ばれるよう。「六宝」や「七宝」は材料の数を示したもの、「ひゅうが飯」は宇和島市に属する日振島(ひぶりしま)が語源とも言われます。

今回のレシピ、新鮮な魚ならそりゃもちろんおいしいですが、スーパーで安くなった刺身を活用するのもおすすめ。私が試した中では、アジやイワシ、カツオ、マグロの赤身なんかが合います。

ぜひぜひ、試してみてください!

 

※この記事は2017年9月の情報です。

 

執筆・撮影:白央篤司

白央篤司

フードライター。雑誌『栄養と料理』などで連載中。「食と健康」、郷土料理をメインテーマに執筆をつづける。著書に「にっぽんのおにぎり」「にっぽんのおやつ」(理論社)「ジャパめし。」(集英社)がある。

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