「けんさん焼き」と聞いて、どんな料理を想像しますか?
名前だけじゃまったく想像つかないですよね。新潟県の郷土料理で、簡単にいうと「ショウガみそを塗った焼きおにぎり」なんです。
なぜこの名か……というのは後にして、まずは作り方をご紹介。白むすびがちょっとしたごちそうに変わりますよ。包丁も火も使わず、楽に作る方法を考えました。おいしいので、ぜひ作ってみてください!
けんさん焼き(2個分)
【材料】
- みそ 大さじ1と1/2
- みりん 大さじ1
- おろしショウガ 小さじ1/2
- 白むすび 2個
【作り方】
1:みそ、みりん、おろしショウガをよく混ぜます。おろしショウガはチューブのものでもいいですよ。
ちなみに、この小さな泡立て器があると混ぜやすい。私は100均で買いました。
2:具なしのおにぎりを2つ用意します。ちょっと大きめにしてください。手塩は要りませんが、面倒であればコンビニの白いおにぎりでもOK。
3:たっぷりと①のみそを塗って、
4:オーブントースターに入れて、みそがこんがりとなるまで焼きます。
焼き時間ですが、8~10分ほど焼きましょう。ただトースターの機種にもよるので、まずは5~6分ぐらいで様子を見てください。この時点でみそがこんがりとなっていれば取り出してくださいね。
できあがり! みそのふちが濃いめの茶色になれば、ほどよく焼き上がってます。私はこれ、9分ほど焼きつけました。
みそのちょい焦げって、どうしてこんなに食欲をそそるんでしょうかね。ほどよく水分が飛んで味が凝縮されています。口に入れれば、ショウガの香りが立ちのぼる!
ああ……むしゃむしゃと頬張ってしまうなあ。口いっぱいに米が詰まってるときって、なんとも幸せだ。
名前の由来
さて、なぜに「けんさん」なのか?
謙さんや健さんが考案した……というわけじゃないんです。まずよく聞かれるのが「剣先」説。上杉謙信の軍勢が兵糧として食べた、という言い伝えによるもの。
兵士たちが冷めてしまったおにぎりを剣先に刺し、たき火であたためていたところ、声をかけてきたのが近くの農民。「それじゃ味気ないでしょう、これをつけて食べてください」と差し出したのがショウガみそだった……というストーリー。
剣の先で焼いたからけんさき焼き、転じて「けんさん焼き」というわけです。
しかし、これはあくまで伝説にすぎないとも言われます。剣先ではなく「献餐(けんさん)」または「献残(けんざん)」、つまり神仏への献上品としてささげた残り物をいかして生まれた、という説も有力。ちなみに新潟県でも中越地方でよく食べられてきた料理のようです。
ひとアレンジがまたうまい
けんさん焼き、熱々の番茶やだしをかけて食べてもうまいんですよ。「このスタイルが本当」という人もいます。
何にせよ、冷めてしまったごはんをおいしく食べるための知恵なんですね。日本一の米どころとして栄え、米を大事にしてきた越後らしい郷土料理だなあと思います。
最後におすすめアレンジを1つご紹介。
おにぎりにショウガみそを両面ぬって、大葉をどちらにも張り、うすーくゴマ油ひいたフライパンを弱めの中火にかけて、両面1分ちょいずつ焼いてみてください。
大葉とショウガとみその香りが楽しめて、うまいですよー。
また来月も郷土レシピ、ご紹介します。おたのしみに。
参考資料
- 『たべもの起源事典』岡田哲著 ちくま学芸文庫
- 『日本の郷土料理』全国料理研究会 柊会編著 実業之友日本社
- 『日本の味探訪 食足世平 続』安藤百福著 講談社
企画・文・撮影:白央篤司(はくおう あつし)
「暮らしと食」、郷土料理やローカルフードがメインテーマのフードライター。CREA WEB、Hot Pepper、サイゾーウーマン、hitotemaなどで連載中。主な著書に『にっぽんのおにぎり』『ジャパめし』『自炊力』『たまごかけご飯だって、立派な自炊です。』など。家では炊事全般と土日の洗濯、猫2匹の世話を担当。