子どもの頃大好きだった「デパートの食堂」は今どうなっているのか【憧れのお子さまランチ】

デパートのレストランで食べる洋食やお子さまランチ。小さい頃の良き思い出となっている人も多いのでは? 昭和生まれには懐かしくてたまらない、平成生まれには新鮮……そんな風景がまだまだ日本には残っていました。

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はじめまして、ライターの山本千尋と申します。

みなさんには子どもの頃に憧れたメニューや、思い出の外食はありませんか?

私にとってそれは、地元・長崎県佐世保市の老舗デパート内にある食堂でした。お子さまランチはもちろん、オムライスやハンバーグといった洋食メニュー。絵本やおとぎ話からそのまま登場してきたかのようなデザートの数々……。

ファミレスなんてものがまだ世の中に浸透していなかった頃、親に連れられて足を運んだ食堂は、ある意味では“ファミリーで行くレストラン”というべき存在でした。私は今30代半ばですが、同世代やそれ以上の方々にとって、デパートの食堂はそういう存在だったのではないでしょうか。

ここでご紹介するのは、行ったことはないけど、どこか懐かしさを覚えるメニューや風景

知っている人は「そうそう、ウチの地元にもこんな場所があった」、知らない若い人には「昭和ってこんな時代だったのか」と思ってくだされば幸いです。

 

佐世保が誇る老舗デパート・佐世保玉屋

子どもの頃の思い出を聞かれると、必ずパッと頭に浮かぶ場所があります。

私の地元佐世保にある老舗デパート・佐世保玉屋です。

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人口約24万人の小さな街ではありますが、市街地とも呼べるエリアのほぼ中央に堂々とそびえる8階建ての存在感ときたら。まさに佐世保の昭和から変わらない風景の1つと言っても良いでしょう。

さまざまな商業施設が登場する前、「玉屋に行く」ことは週末のファミリーの定番でした。

 

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▲日本一長いといわれるアーケード「さるくシティ4〇3」の〇は玉屋のことです

 

私をはじめ、当時の子どもたちのお目当ては決まっておもちゃ売り場、レストラン、屋上遊園地。お出掛けの最後には「帰りたくない!」とダダをこね、父とよくケンカになっていたものです。ひょっとするとみなさんも体験したことがあるかもしれないですね。

そんな思い出の風景を、大人になった今、あらためて見てみたい。

 

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なんともいえぬ切なさを胸に、しかし子どもの頃のワクワクも同時に抱えながら、佐世保玉屋の懐かしの味を巡ってみることにしました。

 

世代を超えて愛される「玉屋食堂」

まず最初にやってきたのはこちら、6階にある玉屋ファミリーレストラン。または玉屋食堂。

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▲フロアガイドには「ファミリーレストラン」と書かれているが、市民には「玉屋食堂」の名でも親しまれている

 

玉屋食堂のご担当者にお話を伺いました。

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▲お話を聞かせて下さった栄食品有限会社・玉屋デパート食堂課長の福田智之さん

 

──小さい頃から祖父母や両親と一緒に食べに来ていました。いつ来ても懐かしいです。先日1歳になる子どもと一緒に来たときは、思わず感動で目頭が熱くなりましたよ。

 

福田智之さん(以下、敬称略):ありがとうございます。昔からずっと変わらない味が恋しいと、親子三代で親しんでくださる方も多いです。当店は彩り豊かな旬の食材を取り入れた、健康にも配慮されたメニューを提供しております。

 

──さっそくメニューのお話ですが、最も好評なものといえばなんでしょう?

 

福田:ちゃんぽんが好評ですね。やはり長崎ご当地グルメは強いです。

 

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長崎県ご当地メニューのちゃんぽん(670円税込)。皿うどん(720円税込)もある

 

──洋食と思いきや、まさかのちゃんぽん。地元愛を感じます。

 

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▲幼い頃夢見たお子さまランチ。ここでは「子供ランチ(650円税込)」というネーミング

 

昭和な香りただよう店内へ

──では、席につく前に、入口の食券販売カウンターでオーダーしましょう。この独特なスタイルはずっと変わりませんね。

 

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▲玉屋食堂の入口には、オーダーを受け食券を発行するカウンターがある。これも昔からずっと変わらない光景だ

 

「こんにちは。いつもの、ちょうだい」

 

私の前で、常連客と思われる女性が気さくに世間話をしながらオーダーをしていました。スタッフの女性は慣れた手つきで食券を発行します。その内容は天ぷら寿司定食と、アイスクリームでした。

「ワタシみたいな美人を撮れるなんて、アンタいいことあるわよ、ウフフ」と、カメラを構える私に微笑みながら座席へと向かっていきました。

 

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▲実物はこんな感じです(以前に筆者が訪れた際のもの)

 

──食券といえば、今や券売機がほとんどです。有人カウンターで販売されているのはとても珍しいですね。

 

福田:そうですね。オーダーの効率を良くすることも大切ですが、接客を通じてお客様をお迎えすることがまず第一だと考えています。

 

──なるほど。

 

私はNo.1の評判を誇るちゃんぽんとお子さまランチに加え、気になるあれもこれもオーダー。

いやはや、子どもの頃には考えもしなかった大人の贅沢だー!

手渡された食券を持ってホクホクと席に座ります。

 

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▲床や壁など、ほとんど改装されていない当時のままの姿

 

──座席数はどのぐらいでしょう。

 

福田:現在は200席ほどあります。

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▲1965年(昭和40年)頃の玉屋食堂。よく見ると奥にウエイトレスらしき女性たちがいる [画像提供:佐世保玉屋]

 

私の場合、親子三代や親戚揃っての食事のときは、お座敷席はマストでした。1階下のおもちゃ売り場が吹き抜けになっているので、おもちゃが稼働する音やゲームソフトコーナーのデモ映像の音などが聴こえてくるのです。

目の前の憧れのランチと階下の賑わいに、私は落ち着いて食事ができるはずもありませんでした。

ソワソワして、両親に怒られながら料理を食べていた記憶があります。

 

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▲座敷席がいかにも昭和

 

当時ほどの賑やかさはないものの、穏やかなおもちゃ売り場の雰囲気を感じつつ、テーブルの上のレトロな小物たちを眺めながら料理が運ばれてくるのを待ちました。

 

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▲10年選手では済まされないベテラン勢。もはやレトロの塊だ

 

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▲やかん急須のデザインも、今見ればどこか新鮮。香ばしく温かい玄米茶でほっとひと息

 

ちゃんぽん、焼肉、お子さまランチ、デザート

待つこと数分、いよいよ玉屋食堂のメインが登場。

いただきま~す!

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▲ちゃんぽん(670円税込)

 

──野菜たっぷりで海鮮の旨味がギュッとつまっていますね! 豚肉が甘くまろやかで、脂がスープと一緒に麺に絡みます。とてもボリュームがあって美味しい上に、栄養のバランスまでとれ、価格も安い高コスパメニューです。

 

福田:こだわりの長崎県産豚を使用しています。脂身までやわらかく、ジューシーなのが特徴です。カツカレーにも使用しておりますので、ぜひご賞味ください。

 

──ちなみに私のイチオシは焼肉定食です。しっかり甘辛の味がついていてごはんがとまらないんです。祖父がぺろりと平らげていたので気になって食べてみたら大いにハマりまして。

 

福田:若い方が当店の味を知るのはやはり上の世代の方に連れてきてもらったり、話を聞いたりされているからですね。とても嬉しいです。

 

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▲焼肉定食(940円税込)

 

──あと、玉屋食堂に来た方にぜひ食べてほしいのが「ざるそば」なんです。

 

福田:ざるそば(470円税込)、天ざる(910円税込)も好評いただいてますね。麺のつややかさとコシが抜群で、ファミレスの域を超えているという嬉しいお言葉もいただいております。

 

──納得です。ところで、デパートの食堂の憧れといえば洋食ですよね。子どもの定番・お子さまランチを見せてください!

 

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▲子供ランチ(650円税込)

 

──わ、コレコレ! チキンライス、ハンバーグ、エビフライに鶏のから揚げ、タコさんウィンナーにデザートのフルーツとプリン。まさに子どもの大好きなものを全部つめ込んだ宝箱。

 

福田:長らくこの形で提供させていただいております。器もずっと変わっていません。

 

──私の母は、記念に国旗を持ち帰ってクラスのみんなに自慢していたと言っていましたよ。私も何度か同じことをした覚えがあります。

 

福田:器をお下げするとき、国旗がなくてパセリだけ残っていることもよくありましたね。

 

──さて、お次はデザートです。子どもが好んでオーダーするのは?

 

福田:ソフトクリーム(280円税込)に並ぶ定番、うさぎアイスをオススメします。

 

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▲うさぎアイス(340円税込)

 

──かわいい! うさぎがバンザイしてる。見た目ではわかりにくいですが、ホイップクリームのクッションが容器いっぱいに……。たまりませんね~。あと、パフェ用のトレイがレトロで素敵です。スプーンの形も懐かしの「いちごスプーン」みたいな形をしています。

 

洋食の定番メニューが消えていた?

──現在提供されているメニューは開店当初からあるものですか?

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▲「させぼ自衛隊グルメ」の期間限定カレーも提供中(2020年3月31日まで)

www.sasebo99.com

 

福田:はい、ほぼ変わっていません。しかし、時代の流れとともに残念ながら提供できなくなってしまったメニューもあります。代表的なものですと、オムライスがそうです。

 

──そういえば、全体的に和食系のメニューが多い気がします。オムライス以外にもハンバーグ、ナポリタン……洋食の定番たちの姿が見あたりません。

 

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▲洋食のスタープレイヤーは、かろうじて「お手軽ランチ(880円税込)」という形で存在を保っている

 

福田:時代の流れとともにさまざまな課題がありますね。しかしそんな状況下でも、「いつもの」と親しんでくださる常連の方や、親子三代でご来店くださるお客様のためにも、変わらぬ味を提供し続けます。

 

──長年慣れ親しんだお客さんにとって、玉屋食堂は特別な場所ですからね。また、家族と一緒にお邪魔します。

 

「回るお菓子」で夢を買う

玉屋食堂の次に思い出深い場所といえば、1階食品売場にある「回るお菓子」コーナーです。

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正式名称はラウンド菓子だそう。百貨店やデパ地下に当たり前のようにあるものと思っていた方も多いのではないでしょうか。

見ているだけで気分が高まる、懐かしさと夢のワンダーランド。

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▲ずっと見つめていると目が回ります

 

グラム販売なので、ちょっぴり贅沢なお値段……のような気がしますが、幸せなお出掛けの余韻を感じるには十分でした。

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お菓子の1つ1つがキラキラしていて、食べるのがもったいなくて。家に持ち帰っても、宝物のようにこっそりと大切にしていたものです(そしていつの間にか家族に食べられている)。

お菓子のラインナップは、時代に沿って変化しています。大好きだった、中にガムが入ったキャンディがなくなっていました。

全国的にかなりの頻度で置かれていたラウンド菓子ですが、百貨店やデパートの減少でその姿も徐々に失われつつあります。

 

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▲同じく1階食品売場のフルーツコーナーの一角には、新鮮な果物だけを使ったフレッシュジュースが味わえるショップ「フレッシュフルーツまえかわ」がある。こちらも昭和49年から営業している古株店の1つだ

 

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▲一番の売れ筋はミックスジュース(250円税込)。パイン、バナナ、オレンジ、リンゴをベースに、季節によって桃やイチゴなどが加わることも。次項に登場する「玉屋サンドイッチ」と並び、佐世保の懐かしメニューのトップを飾っている

 

「玉屋サンドイッチ」、甘いマヨネーズの謎

佐世保が誇る「ご当地グルメ」の1つとして外せないのが、同じく1階フロアにある「ラビアンローズ」のサンドイッチ。甘いマヨネーズを使った通称「玉屋サンドイッチ」は、お土産としても市民に愛されています。

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▲50年以上の歴史がある。この看板が目印だ

 

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▲玉屋サンドイッチとコーヒー、フルーツを使ったフレッシュジュースを販売している(フレッシュジュースは入荷状況によって取扱いが変化)

 

50年以上の歴史を誇る玉屋サンドイッチについて、ラビアンローズの担当者さんにお話を伺いました。

 

──玉屋サンドイッチはいつから販売されているのですか?

 

担当者さん(以下、担当者):昭和38年にお店がオープンして以来販売しています。甘いマヨネーズをメインに、キュウリ・タマゴ・トマト、そしてハム・キュウリ・レタスの2種類の味が入っています。

 

──今とほぼ同じですね。

 

担当者:はい、ほぼ変わっていませんね。多くのお客様に親しんでいただいて、玉屋サンドイッチが佐世保の味として定着していったことはとてもありがたいこと。故郷を離れたお客様が帰省なさった際に、懐かしの味ということでご来店されることも多いんですね。最高1日6000箱販売した実績もある、自慢の逸品です。

 

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▲パッケージは玉屋オリジナル。これまで何度かのデザイン変更が行われている

 

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▲1箱2人前となっているが、1人でも完食できるほどのやみつきになる美味しさ。その秘密はシンプルな具材とメインの甘いマヨネーズのハーモニーだ

 

──まさか甘いマヨネーズがメインだったとは。確かに普通のサンドイッチと比べるとボリュームがすごいですもんね、たぷたぷですもの。カットの際は熟練した技が必要となりそう。ちなみに私をはじめ、箱に残ってるマヨネーズをパンですくってまで食べちゃう人も多いです。それだけ魅力的なんですが、このマヨネーズはどうして甘い味付けになったんでしょう?

 

担当者:うーん、すみませんが、それはナゾなんです。味の開発には、ごく限られた人しか関わっておりませんで。

 

──あの甘さを生み出している素材は……?

 

担当者:ふふ、砂糖かハチミツだとおっしゃる方が多いですが、どちらも不正解と言っておきます。正確には“企業秘密”。ここだけでしか作れない、門外不出の味なのです。

 

──なんだかとっても夢を感じます。ところで、担当者さんオススメの食べ方ってありますか。

 

担当者:トースターでちょっと焼いてから召し上がると、また違った魅力が味わえますよ。あと、コーヒーとの相性が抜群です。

 

──わー、みんなに拡散したい!

 

担当者:実は昨年(2019年)の5~6月に東京の日本橋高島屋などで出店しました。今後もこうした機会があるかもしれません。ぜひ多くの方に佐世保の味を召し上がっていただきたいです。

 

担当者さんにお話を伺ったあと、玉屋サンドイッチを1箱購入。

せっかくお天気も良いので、あとで屋上遊園地で食べようかな(先ほど玉屋食堂でたくさん食べたので少しだけ)。

その前に、昭和当時から“子どもの楽園”として多くの子どもたちの心を鷲掴みにしてきたおもちゃ売場へ足を運んでみましょう。

 

西日本髄一の規模を誇った「子どもの楽園」

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▲現在のおもちゃ売場

 

現在は5階フロアにあり、吹き抜けで明るく広々としたおもちゃ売り場。

ここはまさに夢のような空間でした。

私が通っていた頃は、当時お茶の間を賑わせていた仮面ライダーやウルトラマン、セーラームーンのおもちゃはもちろん、ゲーム機やソフトまでもが余すことなくフロア中にひしめいていました。

あちこちから子どもたちの笑い声や歓声、「買って、買って」と親にねだる声が聞こえていたように思います。

 

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▲1965年(昭和40年)の様子。西日本随一の売り場はまるでおもちゃ箱をひっくり返したよう

 

フロア端のエスカレーターから、玉屋ファミリーレストランのフロアへ上がることができます。

 

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自分の記憶ではこの時点で、すでにお料理の良い香りがしてきたような気がします。待ちきれず、駆け足でエスカレーターを昇っていたことを思い出しました。

 

再び玉屋食堂のある6階をスルーし、8階の屋上遊園地へ。

かつて心が躍りに躍った光景が見えてきました。

 

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▲以前は同フロアに貸しギャラリーがあったが、現在は遊園地のみとなっている

 

屋上の遊園地がレトロすぎる

「天空の楽園」とも言われる、佐世保玉屋の屋上遊園地にやってきました。

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▲屋上は佐世保市街地を一望できる高さ。子ども用遊具、卓球コーナー、ボランティア団体の事務所、稲荷神社の社殿などで構成されている

 

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▲遊具のほとんどが子ども用

 

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唯一大人が乗ることが出来る遊具があります。その名も空とぶかいぞく船。

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▲おひとりさま一回200円

 

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▲モノレール、SLと姿を変え現在はかいぞく船に

 

アーケードの中からは見ることができない、市街地の風景を眺めることができます。

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タイミングがあえば、街中を走る佐世保鉄道や佐世保基地に停泊する軍艦など、レアなシーンも見られますよ。

 

入口そばのこちらの階段からは、稲荷神社の小さな社殿があります。

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▲通常ゲートが閉まっていることが多いが、スタッフさんにお願いすれば開けてもらえる

 

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佐賀県祐徳稲荷神社の分社だ。商売繁盛を祈願している

 

また、別館の9階(遊園地と通路が繋がっています)では、夏季限定でビアガーデンも開催されています。

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▲上から市街地を見下ろしつつ通路をわたると

 

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▲ビアガーデン会場(設営は5月〜9月)へ。かつてはゴーカート広場だった。左側の岩壁は「幸福の滝」

 

幸福の滝はビアガーデンシーズン中にのみ、ライトアップとともに稼働しています。

 

泣きじゃくる子どもはかつての自分なのか

一通りぐるりと回ったところで、 先ほど購入した玉屋サンドイッチを食べることに。

切株のテーブルに座って、いただきます!

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▲佐世保玉屋サンドイッチ(700円税込)

 

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▲パン四つ切の一口サイズ

 

うん、やっぱりクセになる。甘めのマヨネーズと具材のハーモニーが絶妙にあいまって、次の一口が止まりません。食後にも関わらず、あっという間に一人で平らげてしまいました。

青い空と、たくさんの子どもたちを見守ってきたこの場所で食べるサンドイッチは、大人になってからしか味わえないとても特別なもののように思えます。

すっかり満足し、席を立とうとする私の目の前を、「いやだぁ。もっと遊びたい!」と泣きわめく女の子が通り過ぎていきました。あれはかつての私でしょうか。

 

屋上遊園地は今や日本にたった6つだけ

実は、屋上遊園地は絶滅の危機にひんしています。

2020年2月時点で現存しているのは、松坂屋名古屋店(愛知)、名古屋三越栄店(愛知)、大和香林坊店(石川)、そごう徳島店(徳島)、いよてつ高島屋(愛媛)、佐世保玉屋(長崎)の6店舗のみ。年々その希少価値は上がりつつあるといえるでしょう。

 

佐世保玉屋の歴史について、営業推進部課長の西田順一さんにお話を伺いました。

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▲西田さんが手にしているのは、百貨店開業50周年の記念誌

 

──玉屋の創業はいつなんでしょうか。

 

西田順一さん(以下、敬称略):創業は1806年(文化3年)で、1920年(大正9年)に現在の場所に移り、九州初の百貨店となる鉄筋4階建ての「デパート田中丸服店」をオープンしました。「佐世保玉屋」へと改称されたのは1941年(昭和16年)のことです。

 

──屋上の遊園地はいつ頃から?

 

西田:最初は小規模な遊び場程度だったようですが、昭和40年の新装開店時から遊具が充実し始めてきて「遊園地」と呼べるほどになったのではないかと思います。翌年に完成した回転式展望台(ローリングタワー)は、物珍しさで九州各地から多くのお客様がつめかけたそうです。

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▲1966年(昭和41年)当時の写真。建物右上には回転式展望台(ローリングタワー)がある [画像提供:佐世保玉屋]

 

場所は当時の11階、地上30mという他に類を見ない高さで佐世保の景色を360度あますことなく見せてくれたといいます。

 

──高い、そして結構傾くんですね! とってもスリリング。

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▲まぁまぁ怖い。ちなみに料金は一回20円だった [画像提供:佐世保玉屋]

 

西田:そうですね(笑)。あと、以前はモノレールやコーヒーカップもありました。ペットショップに軽食スペース、ゲームコーナー。当時では贅沢すぎるほどの娯楽が集まっていたんですね。 

 

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▲常に行列だったコーヒーカップとモノレール [画像提供:佐世保玉屋]

 

──それにしても、買い物から食事、結婚式場から遊園地までが一カ所に凝縮されているって、当時からすれば大いに新鮮で現実離れした場所ですよね。百貨店というよりテーマパークのような。

 

西田:そうですね。

 

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▲創業160年祭開催中の際に撮影された玉屋全景と周辺市街地。当時は高層建築物がなかった昭和の時代だった。佐世保を形成していった重要な文化要素の1つである [画像提供:佐世保玉屋]

 

──まさに「天空の楽園」と称されるのも分かる気がします。私を含め、当時の子どもたちはここでたくさんの夢を見てきたんですよね。それは親や祖父母から受け継がれてきたもので、とても貴重に思えます。

 

西田:はい。私自身も、そんな子どもたちの1人でしたから。 

 

令和になっても残したい、昭和の味と風景

時代が移っても変わらないものがあります。それは親から受け継いだ懐かしい風景や味だったりするのかもしれません。

 

最後に、昭和の風景をもう少しだけお見せしたいと思います。ちいさな足跡ではありますが、令和の時代にも残ってくれますように。

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▲多くのファミリーの助けとなった荷物預り所(クローク)。まだまだ現役で稼働中、もちろんマンパワー

 

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▲番号札なくさないでね、行ってらっしゃい

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▲1931年(昭和6年)に西日本初のエレベーターが完成。佐世保玉屋のアイドルともいえるエレベーターガールの誕生もこの時から(写真右端) [画像提供:佐世保玉屋]

 

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▲デパートの顔、1階インフォメーション。エレベーターガールと並び、花形業務でした。黒電話が懐かしい! [画像提供:佐世保玉屋]

 

佐世保にいらっしゃった際には、ぜひ「玉屋」に立ち寄ってみてくださいね。

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お店情報

佐世保玉屋

住所:長崎県佐世保市栄町2-1
電話番号:0956-23-8181
営業時間:10:00~18:30(レストランは16:00L.O) ※屋上遊園地は17:00まで、雨天時および毎週木曜は休園日
定休日:不定休

www.sasebo-tamaya.co.jp

 

書いた人:山本千尋

“山本千尋”

佐世保在住フリーライターです。地元佐世保の普通なんだけどどこか味わい深い歴史や文化、グルメ、地域や人について取材をしています。演劇観るのもするのも好き、猫も好きです。

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