独自の進化を遂げたローカル麺「尼崎あんかけチャンポン」を食べ歩く【兵庫】

兵庫・尼崎市は、日本が誇るあのお笑いコンビを筆頭に、漫画家やミュージシャン、芸術家など、数多くの著名人を輩出する街。そんなスター達も食べたかもしれないご当地グルメ「尼崎あんかけチャンポン」を取材してきました。まず、基本の尼崎あんかけチャンポンを出す店として紹介してもらったのは「駒川」です。

エリア阪神尼崎(兵庫)

エリア尼崎市その他 (兵庫)

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先日、兵庫尼崎市でとある居酒屋さんを取材していた際、尼崎商工会議所の小柳駿さんという方と知り合った。

小柳さんは「尼崎あんかけチャンポン」というご当地グルメのPRを担当しているそうで、その魅力についていろいろお話を聞かせてくれた上で「よかったら一度食べてみてください」とおすすめしてくれた。

 

尼崎あんかけチャンポン」はその名の通り、あんがかかった“ちゃんぽん”。

みなさん、ちゃんぽん麺を思い浮かべてみてください。

そしてそこにあんをかけてみてください。

……あまり想像できなくないですか? どちらも特別なものじゃないのに、なんだか意外な組み合わせ。

 

とにかく実物を食べてみるしかない。それに先駆け、尼崎商工会議所で小柳さんに改めてお話をうかがうことにした。

 

あんかけ+麺なら何でもOK

こちらが小柳さん。

尼崎あんかけチャンポン」のハッピを着て出迎えてくれた。

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── 先日うかがったお話が忘れられず、「尼崎あんかけチャンポン」を食べに来ました! まずは、「尼崎あんかけチャンポン」とはどういうものなのか改めて教えてもらってもいいでしょうか。

 

「『尼崎あんかけチャンポン』は尼崎市のご当地グルメなのですが、実はその正確な起源というのは定かでないんです。尼崎市は工業がさかんな街で工場も多いのですが、そこで働く方々の空腹を満たすためにちゃんぽんにあんをかけたのが始まりだという説があります。そしてそれがいつしか尼崎のちゃんぽんのスタンダードになったようです」(小柳氏)

 

── なるほど、お客さんの要求にあわせて同時多発的にいろいろなお店で生まれたのかもしれないですね。

 

「そうかもしれないですね。2009年に伊丹市や芦屋市など阪神7市1町で連携して『ご当地グルメ選手権』というイベントを開催したんですが、そこに出展するに当たって、尼崎ご当地グルメといえば何かということを商工会議所の青年部で検討しました。実はそれまで、尼崎ならではのグルメというのがこれといってなかったんですよ。そんな中で、『尼崎ではちゃんぽんというとあんがかかったものが出てくる』という話が出まして、それをご当地グルメとしてアピールしようということになったんです」(小柳氏)

 

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── ほほう。

 

「その後もさまざまな地域のイベントなどでPRしていくうちに、協力してくださるお店同士の連携なども生まれて、2014年の4月に『チーム・尼崎あんかけチャンポン』として正式に事業者団体としてスタートすることになったんです。現在は22店舗が参加しています。そのほとんどが、このプロジェクトが始まる前からあんのかかったちゃんぽんを出していたお店です」(小柳氏)

 

── これが「尼崎あんかけチャンポン」だ、という、定義というか、ルールのようなものはあるんですか?

 

「それが非常にゆるいんです。あんがかかった麺類であればいいんです(笑)。これはパンフレットなんですが、見た目もお店ごとにそれぞれ結構違うでしょう?」(小柳氏)

 

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── 本当ですね。

 

「味もお店ごとにかなり違うので、飽きずに食べ歩きができるところが魅力なんですよ。それと、どのお店もリーズナブルでボリュームたっぷりで、その満足感やお得感もぜひ味わっていただきたいところです。通はスープを少し残して、そこにご飯を入れて中華丼にして食べるそうです。そこまでやったらもう、お腹パンパンですよ(笑)」(小柳氏)

 

── 食べに行くにあたって小柳さんのおすすめのお店を聞いてもいいでしょうか!

 

「どこもおいしいので難しいのですが、強いて言うなら……」(小柳氏)

 

と、おすすめしてもらった3店舗に食べに行ってきた。

 

高粘度のあんかけ「天遊」

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まずは、阪神電車の尼崎駅から徒歩10分ほどの場所にある「中華料理 天遊」へ。

 

小柳さんによれば「『天遊』は加盟店の中でも『大貫本店』と並ぶ人気店です。『大貫本店』は中華そばが看板メニューなのですが、『天遊』は『尼崎チャンポン』が一押しメニューで。そういう意味からも、『尼崎あんかけチャンポン』を代表するお店と言えるかもしれません」とのこと。まずはここで基本の味を確かめておこう。

 

ほぼ満席で活気あふれる店内はまさに下町の中華料理店といった風情。

 

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メニューを見ると、「天遊名物 尼崎チャンポン『尼チャン』」とある。

醤油味なんだな。その下には普通の「長崎チャンポン」も。

 

今回はもちろん「尼チャン」をオーダー。さあ運ばれてきました。

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具だくさん! そして伝わるだろうか、このとろみ。

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かなりの粘度である。トロトロ。

具材は、白菜、もやし、にんじん、きくらげ、豚バラ、イカ、エビ。スープはそれほど甘くなく、それぞれの食材の食感の違い、味わいの違いを引き立たせるすっきりした味わい。麺は細ストレート。当然だがよく絡む。

 

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ボリュームは確かにあるが、脂っこさはない。毎日でも食べられる感じである。

近隣にお勤めの方々だと思われるお客さんたちがほぼ全員「尼チャン」を食べており、地域の方に絶大な支持を受けていることがうかがわれた。

 

お店情報

中華料理 天遊

住所:兵庫尼崎市東難波町5-8-19
電話:06-6481-2216
営業時間:月曜日〜土曜日10:00~20:30、日曜日・祝日10:00~20:00
定休日:月曜日(月曜日が祝日の場合は火曜日休)

www.hotpepper.jp

 

うどん店であんかけ「駒川」

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お次は「お食事処 駒川」。阪神電車の杭瀬駅にほど近い和食屋さんである。

 

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ちなみにお店の目の前を通る「杭瀬栄町EAST商店街」はこんな感じ。いい雰囲気。

 

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うどん類や定食などが並ぶメニューの中にある「あんかけちゃんぽんうどん」こそ、「尼崎あんかけチャンポン」の一つだ。

 

メニュー名の通りなんと“うどん”である!

小柳さんによると「加盟店の中で唯一『うどんちゃんぽん』を出すお店です。店長が尼崎商工会議所の青年部のメンバーでして、お店でうどんをもともと出していて、定食をやっているので野菜もある。『じゃあやろう!』とオリジナルで作られたメニューなんです」とのこと。

 

2店目にしていきなりちゃんぽんの概念が覆された。この自由度こそが「尼崎あんかけチャンポン」の特徴だ。

ドーンと運ばれてきた。うまそう……。

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麺はこの通り、うどんです。

 

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うずらの卵が入っていてうれしい。

 

カツオの風味豊かなうどんダシで、生姜が効いている。冬の寒い時なら体を芯から温めてくれるような上品で優しい味だ。

しかし今は初夏。汗だくで食べる! うずらの卵以外に、青ネギ、白菜、かまぼこ、えのき、にんじん、玉ねぎなど具はたっぷり。そしてもちろんトロトロである。

こちらも、食べ応えたっぷりだが、しつこさは皆無。野菜もたっぷりとれて「体に良いものを食べた」という気持ちで食べ終えることのできる一杯だ。

 

お店情報

お食事処 駒川

住所:兵庫尼崎市杭瀬本町2-11-9
電話:06-6401-2305
営業時間:11:00~15:00、17:00~21:00
定休日:水曜日、第3火曜日
ウェブサイト:http://bcaweb.bai.ne.jp/komagawa/

www.hotpepper.jp

 

風呂とあんかけ「極楽湯」

最後にやってきたのが「極楽湯 尼崎店」。

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「極楽湯」である。ご存じの方も多いであろう、日本全国に店舗を構える入浴施設のチェーンだ。なんとこの「極楽湯 尼崎店」でも「尼崎あんかけチャンポン」が食べられるという。

 

「スーパー銭湯にある食事スペースって割と味はそこそこだったりしますよね? その点、『極楽湯』さんは違います。この店舗だけのオリジナルメニューとして『尼崎あんかけチャンポン』を出していて、ハマグリが入っていてすごくおいしいんですよ」と小柳さん。

 

なるほど、とはいえ、せっかく極楽湯に来たんだし、まずはお風呂だ。

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これが、広々とした露天風呂のある素晴らしい銭湯で、風に当たりながらゴロンと横になれるスペースなどもあり、それで入浴料が440円。この時点で最高!

 

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それに加えてくつろぎ感満点の食事スペースがある。広い窓の外にはJRの電車が走り過ぎてゆく様が見える。

 

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はあ……。

こうなるとまず、こうなる。

 

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ちなみに「極楽湯 尼崎店」の食事スペースには、10以上の銘柄の焼酎が用意されており、なんとボトルキープが可能。

 

キープした焼酎を水で割って飲みながらのんびりしている常連さんの姿も多数あり、小鉢の総菜なども販売されていて素晴らしい“飲みスペース”となっていた。

 

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さて、メニューの中に見つけた「尼崎あんかけはまぐりちゃんぽん」が目当ての品だ。

 

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できあがるとブザーが鳴って知らされ、カウンターに取りに行くフードコートスタイル。お盆の上に乗った丼がズシッと重い。

では、いただいてみる。

 

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麺は太めで、これこそ一般的なちゃんぽんの麺という感じがする。モチモチである。

 

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2店目に行った「お食事処 駒川」は七味唐辛子が合う味だったが、「極楽湯 尼崎店」のちゃんぽんは鶏ガラベースで、粗びきのコショウがぴったりくる味。とろみもしっかり。

 

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ハマグリもたっぷり入っており、スープにそのうま味がしっかり溶け出している。

 

具材はキャベツ、もやし、にんじん、ピーマン、カマボコ、きくらげ、豚バラ、タコ、イカ、エビなど。これでもかとぜいたくに入っていてうれしい。皿うどんにかかっているあんを思い浮かべていただくとそれに近い感じである。

 

ハフハフと食べているうちに汗をかき、もうひとっ風呂浴びて帰ることにした。いやー最高。小柳さんの言う通り、それぞれのお店にそれぞれのおいしさと個性があり、とても楽しく食べ歩きができた。

 

「チーム・尼崎あんかけチャンポン」の今後の展望について小柳さんにうかがった。

 

「ここ最近、外国から大阪にいらっしゃる観光客の方が、大阪では宿がなかなか取れずに尼崎に宿泊されることが多いんです。そういう方にアピールできるように英語版のパンフレットを用意して、ぜひ『尼崎あんかけチャンポン』を食べていただきたいと思っています。もう一つ、来年(2018年)の8月に阪神尼崎駅のそばにある城址公園に『尼崎城』が復元される予定になっているんですよ。それにあわせて、店舗数を40~50ぐらいに拡大して盛り上げていきたいと考えています。ぜひ尼崎にお越しの際には『尼崎あんかけチャンポン』を食べてみてください!」(小柳氏)

 

お店情報

極楽湯 尼崎

住所:兵庫尼崎市浜1-6-18
電話:06-6497-4126
営業時間:6:00~翌1:00
定休日:第3火曜日
ウェブサイト:http://www.gokurakuyu.com/amagasaki/amagasaki.html

※この記事は2017年4月の情報です。
※金額はすべて税込みです。

取材協力:尼崎商工会議所

  

書いた人:スズキナオ

スズキナオ

1979年生まれ、東京育ち大阪在住のフリーライター。安い居酒屋とラーメンが大好きです。exciteやサイゾーなどのWEBサイトや週刊誌でB級グルメや街歩きのコラムを書いています。人力テクノラップバンド「チミドロ」のリーダーでもあり、大阪中津にあるミニコミショップ「シカク」の店番もしており、パリッコさんとの酒ユニット「酒の穴」のメンバーでもあります。色々もがいています。

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