「岡山県で飲むなら成田家に行けば間違いない」という話を確かめに行ってきた

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岡山県に行った際、岡山在住の友人に「おすすめの居酒屋さんは?」と聞いた。すると、「成田家という岡山のローカルチェーン居酒屋さんに行っておけば間違いない」という返事があった。また、岡山に住む別の友人からも「成田家というお店が独特で面白いからぜひ行ってみて」と言われた。

 

「成田家」は岡山県内に10数店舗存在する。安くておいしい料理を味わいつつお酒を飲むことができる、いわゆる大衆酒場である。「湯どうふ」と「鳥酢(とりす)」という2つのメニューが名物。どのお店も「成田家」の看板を掲げていながらもお店ごとにそれぞれ個性があり、その違いを楽しむのが醍醐味(だいごみ)なんだとか。

 

そんな話を聞きつつも、なかなか「成田家」に飲みに行くチャンスがなかった。自分の頭の中でまだ見ぬ「成田家」のイメージがもわもわと膨らみ、「いつか必ず行く!」と肝に銘じていたのだが、先日ようやく念願かなってお店を訪ねることができた。

 

さらに「成田家 藤原店」の店主・吉岡辰生さんに「成田家」の魅力について存分にお話を聞かせてもらうことができた。岡山県にお住まいで「いつも成田家に行ってるよ!」という方にも、「今度岡山に旅行する予定!」という方にもぜひ知って欲しい話ばかりだったのでここに紹介したい。

 

まずは、私に「成田家」をおすすめしてくれたありがたい友人の一人である“はまいしんたろう”さんに改めて「成田家」のことを教えてもらった。

 

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▲成田家 福富店前に佇むはまいさん

 

はまいさんによると「成田家」とはこのような居酒屋さんだ。

  • 「成田家」の名物はダシの効いた「湯どうふ」と、鳥肉と春雨にポン酢をかけた「鳥酢」(はまいさんはいつも必ず二つとも注文する)。
  • どの支店にも二つの名物は必ずあるが、あとのメニューはそれぞれ違う。お店の雰囲気など細かい部分にも個性がある。
  • 岡山駅周辺から、少し離れたエリアにいたるまでいろんな場所に店舗がある(はまいさんは田町店、中店、島店によく行くらしい)。
  • 家族経営のお店が多くアットホームな雰囲気。
  • 料理は安くておいしい。季節もののメニューなども豊富。

 

ちなみにはまいさんはこれまで数えきれないほど「成田家」で飲んできた。岡山に好きな居酒屋さんは他にもあるが、一人でもふらっと入ることができる雰囲気と、その日の気分に合わせて飲み食いできるメニューの幅広さから「成田家」を利用することが多いのだとか。

 

念願の「成田家」に入店

そんなはまいさんと一緒に今回の目的地である「成田家 藤原店」をたずねた。

「成田家 藤原店」はJR岡山駅から山陽本線に乗って2駅目の高島駅が最寄りだ。開店直後はお店が混みあうとのことで、少し遅い時間に訪れた。

 

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駅からお店までは閑静な住宅街が続き、途中、田んぼの脇を歩いたりする。本当にこの先に居酒屋さんがあるんだろうか。

 

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大丈夫。ありました。

 

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▲ちなみにこちらは明るい時間のお店の外観(画像提供:成田家 藤原店)

 

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▲厨房に面した長いカウンター席(画像提供:成田家 藤原店)

 

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▲家族連れでも利用しやすい座敷席など、全96席もある大きなお店だ(画像提供:成田家 藤原店)

 

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▲箸袋には「成田家」のトレードマークである三重の升が

 

名物は「鳥酢」200円、「湯どうふ」230円

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カウンター席に座るとたくさんのメニューが目に入る。

 

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ホワイトボードには日替わりや季節もののおつまみが。

 

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「成田家」ベテラン客のはまいさんに従い、まずは二大名物である「湯どうふ」と「鳥酢」をオーダーする。

 

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ちなみに「鳥酢」が200円、「湯どうふ」が230円という大安心価格である。

 

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こちらが「鳥酢」。

 

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柔らかな鶏肉の上に小ネギがのり、下には春雨。ポン酢のさっぱりした後味によってグングン食べさせられてしまう一品。

 

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そしてこっちが「湯どうふ」。

 

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濃厚な鶏ダシのスープに白くつややかな絹ごし豆腐。小ネギとかつお節がのっている。

 

もう全部最高だ

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名物二品に合わせるお酒は、グラスにティーバッグを入れてかき回す「コウバシ茶割り」(400円)。緑茶、抹茶、玄米をブレンドした味わいとキンミヤ焼酎との相性が最高。2杯目以降のおかわりは300円になるという親切価格だ。

 

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評判メニューの一つだという「みどりさんのポテトサラダ」(290円)も、

 

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本日のおすすめだという「アジのなめろう」(530円)も、居酒屋さんの黄金比とでもいいたくなるような完璧なうま味のバランス。

 

明るく気さくな接客といい、それでいて静かに飲むこともできるような落ち着いた雰囲気といい、これ以上何を望もうかという大衆居酒屋さんだ。「ここに来れば間違いない」という言葉の意味がわかる。

 

ため息まじりに「成田家……最高っすね」と言うと、はまいさんも「ですよねぇ……」と深くうなづくのであった。

 

一番力を注いでいる「湯どうふ」

営業終了後、「成田家 藤原店」の店主・吉岡辰生さんにお話をうかがうことができた。

お隣にいらっしゃるのは、奥様のみどりさんである。前述の「みどりさんのポテトサラダ」は、こちらのみどりさんの手作りなのだ。

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「成田家」の本店が創業したのは60年ほど前のこと。それから10数年後の1971年に「成田家 藤原店」がオープンした。本店から数えて8番目にできたお店だという。今年でオープンから47年になる。

 

── 素晴らしいお店ですね……。

 

f:id:Meshi2_IB:20180913181131p:plain吉岡さん:ありがとうございます。まあ、こんなお店じゃけど。

 

── 大盛況ですよ。お一人でお酒を飲んでいる方から家族連れまで幅広いお客さんがいて。

 

f:id:Meshi2_IB:20180913181131p:plain吉岡さん:うちは家族連れのお客さんが多いですね。市内からも市外からも、県外に就職したけど帰省するたびに寄ってくれるお客さんもいます。

 

── 「成田家」さんはチェーンではあるけど、お店ごとに個性があってそこが面白いんだと聞きました。

 

f:id:Meshi2_IB:20180913181131p:plain吉岡さん:もともとは創業者の親戚関係がお店を持って増えていったんです。一時期は34店舗ありまして、その何割かはいとこ関係だったり。でも「成田家」のシステムは独特というか、メニューの量とか構成もお店ごとに自由で、どちらかというと“のれん分け”に近いようなものなんです。「湯どうふ」と「鳥酢」は名物メニューでどのお店にもあるんじゃけど、お店ごとに微妙に違ったりね。

 

── そうなんですね!「湯どうふ」も「鳥酢」もすごくおいしかったです。

 

f:id:Meshi2_IB:20180913181131p:plain吉岡さん:例えば「鳥酢」だったら、うちは家族連れのお客さんが多いので、ポン酢の味付けを気持ち甘めにしてあるんです。お子さんからお年寄りまで食べやすいようにと。繁華街にある店舗だと、仕事帰りに寄る人が多いでしょう。そういうところだとちょっと塩気が強い方が好まれるし、そういうこともあって少しずつ違うんだと思います。

 

── 「成田家」の各店舗へ飲みに行った友人も「ここの湯どうふはおいしい!」と喜んでいました。

 

f:id:Meshi2_IB:20180913181131p:plain吉岡さん:そうですか。うちはね、たくさんメニューがある中で、一番力を入れているのが「湯どうふ」なんです。一番神経を使ってるというか。鶏ガラとミンチを毎日朝早くから炊いて、名物だからみなさん頼んでくれるでしょう。だから早く出さないといけないんです。大鍋にスープを張って注文のあった何人か分をその都度まとめて作るんじゃけど、その量によって豆腐から水が出るんで味付けをし直さないといけないんです。そこに気を使うんです。他の料理の比じゃないぐらい大変なんですが、価格は昔から230円で出していて、本当はもうちょっともらいたい(笑)。

 

── 本当にリーズナブルな価格ですもんね。

 

f:id:Meshi2_IB:20180913181131p:plain吉岡さん:特に「湯どうふ」と「鳥酢」はおかげさまで岡山といえばこれ、というような名物になっているから、他の料理とは違ってお客さんの見る目が厳しいんです(笑)。「今日の湯どうふはいつもと違った」とか、あれこれ言われる。そう言われないように、満足していただきたいと思うと大変でねえ。かなりこだわっています。

 

うまく、早く、感じよく、なおかつ安く

吉岡さんのこだわりはもちろん「湯どうふ」と「鳥酢」に留まらない。日替わりメニューも含めて常時110品ほどがそろうという豊富なメニューについても「たくさんある中から選べる楽しさを大切にしたい」という思いあってのもの。

藤原店の初代は辰生さんのお父さんの博務さんだが、辰生さんの代になってから一段とメニュー量が増えたんだとか。そのこだわりはドリンクメニューにもあらわれている。

 

f:id:Meshi2_IB:20180913181131p:plain吉岡さん:「レッドサワー(470円)」ゆうお酒があるんですけど、あれは焼酎と炭酸をトマトジュースで割ったものなんです。そのトマトジュースが、カゴメの業務用のものが一番よく合っておいしいんです。なんじゃけど、それを仕入れたいと酒屋さんに言ったら岡山県には卸してないと。それでもどうしてもと思って、カゴメさんの方に直接お願いして仕入れているんです。そういうのはありますね。大したこだわりじゃないけどね。

 

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── いや、すごいこだわりですよ! トマト味がしっかり濃くておいしかったです。

 

f:id:Meshi2_IB:20180913181131p:plain吉岡さん:ありがとうございます。

 

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── 「成田家 藤原店」がお店として特に力を入れている部分というとどんなところでしょうか。

 

f:id:Meshi2_IB:20180913181131p:plain吉岡さん:成田家の創業者が作った家訓があるんです。“うまく 早く 感じよく なおかつ安く”というもので、これをまず大切にしています。

 

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「夫婦、息子、兄妹三人みんな成田家なんです」

f:id:Meshi2_IB:20180913181131p:plain吉岡さん:それと、うちのお店としては家族連れのお客さんも多いので極力アットホームに、家で食事しているような気持ちで気兼ねなく楽しめるお店づくりをしようと心がけています。「成田家」では、店主の奥さんは裏方にまわることが多いんですが、うちの嫁さんには客席の方を担当してもらっています。お客さんの名前と顔を覚えるすごい才能を持っているんです。

 

── お世辞じゃなく、感じのよい接客で、気持ちよく飲めました。

 

f:id:Meshi2_IB:20180913181131p:plain吉岡さん:嫁さんを褒めるようで恥ずかしいんですけどね(笑)、一度来て下さったお客さんが次に来てくれた時に「あっ〇〇さん、いらっしゃい!」と、迎えることができるから、親しみを感じてもらうことができるわけ。そういう部分も大切にしているところです。だから、お客さんがお会計して帰るときにみなさん「みどりさんありがとう~!」って言ってくださるんです。僕は言われないんじゃけど(笑)。

 

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── いや、お二人をはじめお店のみなさんの仲の良さがあってこその雰囲気だと思います。岡山の方が「とりあえず成田家に行くといい」と言う理由がわかった気がします。

 

f:id:Meshi2_IB:20180913181131p:plain吉岡さん:そう思ってもらえるとうれしいです。「成田家」は、言うたら薄利多売で、どのメニューもできるだけ安くして、なおかつ幅広い品ぞろえで、岡山や瀬戸内のおいしいものも安心して食べれて、そういうことで間違いないと思ってもらえているのかもしれません。

 

── 郊外というか、ほとんど住宅街に近い立地で長く続けてこられた秘訣(ひけつ)はあったのでしょうか。

 

f:id:Meshi2_IB:20180913181131p:plain吉岡さん:うちの親父がここを始めた時、この辺りは、藤原団地というのはあったんだけど、それ以外はほとんど全部田んぼだったんです。「成田家」の中でも郊外に初めて出した店舗だった。それで開店当初はなかなかお客さんが来てくれなかったそうです。それでまず親父が始めたのがお昼の営業でした。国道沿いに自動車関係の企業が多かったので、そこで働いている人がすごくたくさん来て、それでお店を覚えてくれたんです。あと、開店当初は生ビールというものが時代的にまだかなり特別なもので、岡山にビアガーデンが1軒あってそこでしか飲めないぐらいの時に、「うちでも生ビール出したい」と。酒屋さんにお願いしても、居酒屋さんで生ビールを出しているお店が岡山にはなかったので、なかなか簡単にはいかなかった。そこをなんとか頼み込んで、うちのお店では岡山県でかなり最初の方に生ビールを出してそれも人気になった。最初のうちはそういうことをいろいろやって、それで少しずつ来てもらえるようになったんです。

 

── 辰生さんのさっきのトマトジュースの話にも通じるような気がします。先代もやはり、こだわりの人だったんですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20180913181131p:plain吉岡さん:そもそも郊外店でお店がうまくいくかわからなかったですからね。とにかく親父は忙しくて、全然構ってもらえなかった。だからその父の背中を見て、私の姉二人と一緒に絶対商売はやめておこうって誓いました。でも結局姉二人も成田家の支店をやってる、きょうだい三人みんな成田家なんです(笑)。今では親父の苦労も分かりますけどね。

 

現在、厨房の中では辰生さんの息子さんが三代目店主になるべく腕を磨いている。辰生さんは「頑張って今のような感じでこのお店を続けて息子に引き継いでいければと思っています」と語っていた。どんな気分の時でもふらっと入っておいしく食べたり飲んだりできる「成田家」がいつまでも続いて欲しいと思う。

岡山の友人、はまいさんは今回初めて「成田家 藤原店」に訪れたそうなのだが、「ここはメニューも多いし、どれもおいしくてまだまだ食べたいものがあるのでまた来ます!」と喜んでいた。

すぐ行けるはまいさんがうらやましい。私も近いうちまた「成田家 藤原店」においしいおつまみを味わいに来ようと誓った。

 

お店情報

成田家 藤原店

住所:岡山岡山市中区藤原光町2-19-4
電話番号:086-273-2346
営業時間:16:30~22:00
定休日:月曜日・第5日曜日
成ウェブサイト:https://okayama-naritaya.com

www.hotpepper.jp

 

書いた人:スズキナオ

スズキナオ

1979年生まれ、東京育ち大阪在住のフリーライター。安い居酒屋とラーメンが大好きです。exciteやサイゾーなどのWEBサイトや週刊誌でB級グルメや街歩きのコラムを書いています。人力テクノラップバンド「チミドロ」のリーダーでもあり、大阪中津にあるミニコミショップ「シカク」の店番もしており、パリッコさんとの酒ユニット「酒の穴」のメンバーでもあります。色々もがいています。

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