日本酒の味がわかるようになると、ちょっとオトナの階段を上ったような気分になりませんか?
ただ、うっかり「日本酒好き」なんて言っちゃうと、
「○○のひやおろしはもう飲んだ?」とか、「やっぱり日本酒は××だよね」
なんて日本酒談議に花が咲き、男たるもの、「いや、好きってだけで、そこまで詳しくないんです……」とは言い出せず。その結果、
「なんで同じ銘柄なのにいろいろな種類があるわけ?」
「そもそも、吟醸と大吟醸って何が違うのよ!?」
なんて日本酒無知をさらす疑問は口にできずに、酒と一緒にのみ込むしかなく、いつまでたっても学べない……。
そんな迷える日本酒好きのため、いや、そんな無知な自分のために!!!
128年の歴史を持つ横須賀の角打ち「酒のデパート ヒトモト 立ち呑みカウンター」で、日本酒の基礎を学んで参りました!
明治創業の老舗角打ちで日本酒の課外授業
▲右は酒屋さん
京浜急行線横須賀中央駅から徒歩5分ほど。
明治創業の「酒のデパート ヒトモト 立ち呑みカウンター」は、酒屋さんに隣接する老舗角打ち。
▲左は角打ち
10時15分という早いオープンに加え、酒屋さんで販売する酒も飲むことができるから、購入前に試飲したいというときにも助かります。
▲次期8代目店主の仲山さん
次期8代目となる店主の仲山さんは、大の日本酒好き。
蔵元と積極的に交流したり、日本文化を世界へ発信するプロジェクトで蔵元の密着ドキュメンタリーを手掛けたりと、日本酒のイロハを心得た人でもある。そんなわけで、今回は日本酒ティーチャーとして教えていただくことに。
さっそく授業スタート!
1時間目:日本酒の種類
まずは日本酒の基本のキ、「日本酒の種類」から。
日本酒は大きく分けて、「純米酒」と「醸造酒」という2つのカテゴリーに分けられる。その違いは原料。
- 純米酒……米、米麹、水
- 醸造酒……米、米麹、水のほか、醸造用アルコールで風味を調整
米は風味に大きく影響するので、「純米酒」は品質のいい米が使用されていることがほとんどなんですよ。
さらに米の精米歩合や製造方法によって、
純米酒なら
「純米大吟醸酒」
「純米吟醸酒」
「特別純米酒」
「純米酒」に、
醸造酒なら
「大吟醸酒」
「吟醸酒」
「特別本醸造酒」
「本醸造酒」
の各4タイプに分けられる。
- 純米大吟醸酒・大吟醸酒……精米歩合50%以下
- 純米吟醸酒・吟醸酒……精米歩合60%以下
- 特別純米酒・特別本醸造酒……精米歩合60%以下もしくは低温長期発酵などの特別な製造方法
- 純米酒……精米歩合の設定なし
- 本醸造酒……精米歩合70%以下
▲原料や精米歩合は瓶のラベルをチェック!
精米歩合が低いほど香りが高くなり、雑味のない味になります。これら8種は「特定名称酒」といわれますが、どれにも属さない日本酒は「普通酒」に分類されます。
── なるほど。つまり、シンプルな原料で精米歩合の低い「純米大吟醸酒」が、いちばん香り高く風味豊かということですね!
正解! 価格も比例しますけどね(笑)。
2時間目:製法の違い
次に知っておくべきは、「製法の違い」。
この時期になると、「ひやおろし」というラベルをよく目にしませんか?
── 見ます、見ます。あと、「火入れ」や「あらばしり」なんて言葉もよく聞きますが、意味が分かりません。
それは製法やリリース時期の違いを表しています。では、最低限知っておきたいものを解説しますね。
▲こういうやつですね。ちなみに「ふねしぼり」とは、もろみを入れた袋を重ね、上から船の底に似た形の道具で優しく絞る製法のこと
- 火入れ……発酵が進まないように、70度くらいのお湯の中に瓶を浸けておこなう低温加熱殺菌。常温保存が可能な日本酒は2回火入れがおこなわれていることが多い。
- 生酒……火入れをおこなっていない日本酒。
- 生貯蔵酒……生酒のまま貯蔵し、瓶詰めの際に一度だけ火入れをおこなったもの。
火入れをすると発酵が止まるため、日本酒の味が立ちます。逆に、火入れをしていない生酒はとろみのある酒になるんですよ。
- あらばしり……日本酒を搾るとき最初に出てくる白く濁った日本酒。
- しずく取り……搾らずに、重力で落ちてきたしずくのみを集めたもの。
- ひやおろし……春先に出来上がった酒を夏のあいだ寝かせてから、秋口に出荷する日本酒。
リリースのタイミングを表す言葉で、作ってすぐ搾った「搾りたて」などもある。
まったく同じ原料、製法でも、搾り方や寝かせるかどうかで、味が変わります。
- BY……醸造年度。7月1日~翌年の6月30日までをひとつのくくりとしているため、平成28年7月1日~平成29年の6月30日に作られたら「平成28BY」、平成29年7月1日以降なら「平成29BY」となる。
日本酒造りは冬から春にかけておこなわれるので、年度の区切りが6,7月なのです。その年によって味も微妙に変化します。
▲例えばこんな表記もある
ただ、製法の表記方法には決まりがないため、「一度火入れ○○生原酒」など、独特な言い回しで表現しているものもあります。わかりづらいときは、裏面などに貼られているラベルを見るといいでしょう。
3時間目:甘口と辛口の違い
── これで日本酒の違いがある程度わかりました! ただ、「甘口」や「辛口」というのもよく聞くのですが、これは何の違いなんですか?
日本酒度と酸度の違いですね。それには、製造過程の酵母の働きが関係しています。
酒米は糖分がないので、麹を使って発酵させて、デンプンを甘みのもととなる「糖」へ変化させます。同時に、酵母が糖をアルコール発酵させるのですが、そのとき、酵母がどのくらい糖をアルコールや酸へ変えたかで、甘辛さが違ってきます。その目安が日本酒度や酸度。日本酒度がプラスなほど辛口で、酸度が高いほど濃酵になります。
── 酵母、パックマンみたいですね。日本酒度や酸度の見分け方はありますか?
こちらもラベルに書いてありますよ。日本酒度は、表記が「+」だと辛口、「-」だと甘口になります。
4時間目:いよいよ実習!
では、実際の日本酒で比べてみましょう。
▲左:「鶴齢」特別純米酒28BYひやおろし 右:「鶴齢」特別純米酒28BY
そういって用意してくれたのは、新潟県の青木酒造で作られた「鶴齢」の特別純米酒。
ラベル以外、見た目はおんなじ。
▲左:「鶴齢」特別純米酒28BYひやおろし 右:「鶴齢」特別純米酒28BY
── 「特別純米酒」なので、醸造用アルコールが使われていない「純米酒」で、「精米歩合60%以下、もしくは特別な製造方法」の日本酒ですね! で、左は「ひやおろし」なので、右のものを夏のあいだ寝かした日本酒ということ。
そのとおり。右は「平成28年度醸造」と書いてあるので、「28BY」ですね。
▲左:「鶴齢」特別純米酒28BYひやおろし 右:「鶴齢」特別純米酒28BY
グラスに注ぐと見た目はあまり変わりありませんが、ひやおろしのほうが、若干さらりとした感触。
飲み比べてみると……。
── 味が違う!!! どちらもまろやかだけど、右はフルーティで味に厚みがあるのに対し、「ひやおろし」はスッキリしています。
秋口に出る「ひやおろし」は、秋の食材との相性もばっちりなんですよ。
同じひやおろしでも、こちらはどうでしょう? 「志太泉 普通酒原酒 ひやおろし」。醸造酒のひやおろしです。
── 「鶴齢」のひやおろしに比べて、飲み応えがある味わいですね。
それがよく「雑味」と表現される感覚だと思います。どちらを好むかは、飲む人によってさまざまです。
5時間目:ホームルーム
── 実際に飲み比べもしたことで、より違いが分かりました。
それぞれに飲むとわかりにくいですが、同じ銘柄で製法やBYが違うとか、同じカテゴリーの銘柄違いとか、同じ蔵元の異なる銘柄とか、何かしらの共通項をもって飲み比べると、違いが分かると思います。
▲同じ銘柄でも、こんなにいろいろ
── 日本酒って奥深いですね。でも、わかるようになると楽しいです。
でしょ(笑)。お気に入りの蔵元を見つけると、日本酒の楽しみ方も広がりますよ! 最近は蔵元の人と直接触れ合える日本酒イベントも多いので、そういったところで話を聞くのもおすすめです。
▲アテと一緒に相性チェックも。鮭とばくん(300円)
「酒のデパート ヒトモト 立ち呑みカウンター」仲山店長による日本酒講座はいかがでしたか?
ベースがわかるだけでも、オーダーの際の選び方や好みの系統が明確になるので、もう日本酒談議で怖気づく心配もありませんね!
お店情報
酒のデパート ヒトモト 立ち呑みカウンター
住所:神奈川県横須賀市若松町1‐2 ヒトモトビル1F
電話番号:046-823-0455
営業時間:月曜日・火曜日・木曜日~土曜日10:15~20:30 日曜日・水曜日・祝日10:15~20:00
定休日:無休
※この記事は2017年11月の情報です。
※価格は全て税込み表示です。