今、肉好きの間でブームとなっているのが「ジビエ」。
なんとなく高級なイメージもあるし、もの珍しいし、野生動物の肉について語れたら、ワイルドでかっこいいオトコになれそうだと思いませんか?
でも実際は、獣肉ということを漠然と知っている程度で、どこの部位かとか、味にどんな違いがあるのかとかまでは、なかなかわかりませんよね。
ならばそのあたり、徹底的にリサーチしてみようじゃないの!
というわけで、「これさえ読めば獣肉を語れるオトコになれる」、野生動物肉の徹底ガイドを作ってみようと思います。
獣肉の豆知識その① 獣肉がすべてジビエではない
百聞は一見に如かず。
獣肉を知るには制するのがいちばんだろうと、京浜急行線弘明寺駅の目の前にある、鹿肉と猪肉、ときどき鴨肉の専門店「シカとイノシシ 野生-yasei―」にお邪魔。
▲外観からはどこにあるのかわからない
駅前に佇むレトロ感漂う雑居ビルの2階へ上がり、昭和にタイムスリップしたような雰囲気の廊下を突き当りまで進んだ右手にあるのだが、店前に来るまで看板はない。
ちょっと隠れ家っぽくて、案内するだけで「獣肉通」を気取れそうな感じ!?
6人入れば満員御礼のこじんまりした店内では、看板娘の太子(ふとこ)ちゃんがお出迎え。
フランス料理店のように気取った印象はなく、鹿の角や、鹿や猪のオブジェが飾られた一角はあるものの、獣っぽさを前面に押し出した感じもなくて、ひとりでも入りやすい雰囲気。
▲オーナーの久保田さん(左)と金山さん(右)。そして看板娘の太子ちゃん
さっそく、おふたりにジビエについて聞いてみることに。
── そもそもジビエって、なんですか?
金山さん:ジビエは野生動物の肉を使ったフランス料理を指すんですよ。鹿が有名ですが、猪や鴨、うさぎなんかの肉も使われます。
ただ、同店では鹿や猪の肉を “お酒に合う和風の居酒屋料理” として提供しているため、フランス料理ではない。つまり、厳密にいえばジビエにはならないらしい……。獣肉料理がすべてジビエではなかったんだ!!!
獣肉の豆知識その② 獣肉は個体によって味が違う
とはいえ、使用している肉はすべて野生の鹿と猪の肉ということで、調理前の段階では同じ。
そこで、獣肉について疑問に感じていたことを聞いてみた。
── 野生の鹿や猪の肉って、狩猟ですか? それとも輸入?
久保田さん:一般的にはどちらもありますが、うちの肉は南伊豆を中心としたエリアで害獣駆除された日本の鹿と猪のみです。捨てられる命をどうにかできないか……との思いから、立ち上げに至りました。
▲鹿の体内から摘出された猟銃の弾
── 獣肉って独特の臭みが強いイメージなのですが……。
死ぬ間際に苦しんだり、猟銃の弾が内臓を傷つけたり、死んでから時間が経ったりすると、臭みは強くなります。でも、ここで使用している肉は、猟師さんが罠で捕獲して、手早く処理しているから、臭みはほとんどありませんよ。
▲どんな酒にもよく合います
── 野生動物の肉ならではの特徴ってありますか?
自然を駆け回っているし、自然のものを食べて育っているので、高たんぱく低カロリーで、繊維質も多めです。
その動物が食べたものや獲れた季節、年齢や性別などで、個体によっても微妙に味が違うんですよ!
野生で生き抜いた動物だけに、飼育された牛や豚とはまた違った味わいがあるという獣肉。
育った環境も味に大きく影響するというから、食べるたびに新たな発見もありそう。
もちろん動物の種類によっても味や特徴が違うので、次いで猪と鹿それぞれに追及してみることに。
獣肉の豆知識その③ 猪肉の脂はクドくない
まずは猪。
*使用できる部位
- 背ロース
- 肩ロース
- スジ
- バラ
- モモ
- ヒレ
- タン
- 首
- もつ など
*旬の時期
- 冬
使用できる部位や調理方法は、「豚肉と同じ」と考えるとわかりやすいかもしれません。でも、豚肉より淡泊で、脂もしつこくないのが特徴です。
▲猪肉のバラ(左)と、背ロース(右)。豚肉そっくり!
こちらは猪肉のバラと背ロース。
脂のつき方も赤身の具合もそれぞれで、豚肉同様、部位に適した調理方法があるそうです。
バラは下味をつけてから3日間寝かせ、オーブンで火入れしたものをバーナーで炙って……
▲猪バラベーコン(540円) 見よ、透き通る脂身を!
ベーコンにしていただきます!
薫製にしていないから、猪の風味もしっかり感じられます。
▲猪ロースステーキ(1,685円/120g) 猪の風味がいちばんよくわかる食べ方
脂がたっぷりのった背ロースは、そのまま焼いてステーキとして食べるのがおすすめ!
どちらの脂身も、ほんのり甘みがあるうえギトギト感は一切なくて、後味もすっきり。
豚の脂身が苦手な人でも抵抗なく食べられそう!
赤身は生肉自体の赤味が強いため、加熱すると黒っぽくなるものの、獣臭さはなく、口の中にほんのり猪特有の風味が漂います。
かみ応えがあるのは、自然で生き抜いたたくましさゆえの繊維質なのかも。
でも、硬すぎず、かむほどに濃い肉の味を堪能できました。
猪に限らず、野生動物の肉は筋肉質で焼き過ぎると硬くなってしまうので、調理の際は火加減が大切です。
獣肉の豆知識その④ 鹿肉は種類によって味が異なる
お次は鹿。
*使用できる部位
- モモ(内モモ、ランプ、しんたまなど)
- 背ロース
- スジ
- バラ
- ヒレ
- ハラミ
- タン
- レバー
- もつ
- 前脚 など
*旬の時期
- 夏
鹿は牛肉に近いと考えれば、調理しやすいかと思います。鹿の種類によっても、質感や味が異なるんですよ。
▲鹿のモモ肉。本州鹿(左)と、蝦夷鹿(右)
同じ部位でも、本州鹿と蝦夷(えぞ)鹿では見るからに肉質が違う。
味や食感も違うそうなので、食べ比べてみることに。
▲鹿タタキ食べ比べ(540円) 左が蝦夷鹿、右が本州鹿
3種の香味(ポン酢、岩塩、山ワサビのしょうゆ漬け)からお好きな味で召し上がれ
※厚生労働省の定めるガイドラインに沿った調理方法で、提供されています。
タタキで味わうと違いがわかりやすいとのことで、「鹿タタキ食べ比べ」をオーダー。蝦夷鹿は弾力があって、肉の風味も強い。
対して本州鹿は、滑らかで溶けていくような上品な質感だ。
例えるなら、炙りマグロを食べているような感じ。
やはりどちらも獣臭さがなく食べやすいけれど、鹿独特の風味を味わいたいなら、獣肉感の強い蝦夷鹿がおすすめ。
逆に濃い風味が苦手な人は、本州鹿のほうが口にしやすいだろう。
▲蝦夷鹿のハラミ。まだ横隔膜がついています
ジビエではモモやロースが好まれる部位。でも、実はハラミもかなり美味だそう。
横隔膜を丁寧にはぎ取って、
身だけになったら……
フライパンで焼く。
▲蝦夷鹿ハラミ焼(734円)
お皿に盛ってサルサソースをかければ、ピリッと辛味のきいた「蝦夷鹿ハラミ焼」の出来上がり!
牛のハラミに比べれば厚みは劣るものの、柔らかさの中に感じる適度なかみ応えは牛のそれそのもの。
いや、クセが少なく、淡泊ながらふくよかな肉のうま味を感じるあたり、鹿のハラミに軍配が上がるかも。
獣肉の豆知識その⑤ 味わうのは身だけに限らず
獣肉料理というと、つい身を食すことにばかり意識がいきがちだけれど、鹿だってガラで出汁を取って味わうことができるんです!
▲鹿のガラ(奥)と、鹿ガラ100%の出汁(手前)
鹿ガラから取れた出汁はコラーゲンがたっぷり含まれていて、冷やすとプルップルになるんだって!
同店ではこの出汁を使った粥や麺類のメニューもあるから、飲んだあとのシメまで鹿で堪能できますよ。
獣肉の豆知識 おまけ
▲鴨ロースト(1,026円/150g)
野生の生き物だけに、獲れる数や、切り分けられる身の分量も日によってまちまち。
そのため、希少部位は入荷されないこともある。
ただ逆に、珍しい部位を食せるチャンスもあるということ!
日替わりメニューは要チェックです。
なお、ときどき鴨肉も入ってくるから、運が良ければ猪鹿蝶ならぬ「猪鹿“鳥”」がそろうかも!?
自然のパワーなのか、滋養強壮にも絶大な効果があるとされる野生動物の肉。
“獣肉を語れるオトコ” になるべく、まずは自らの舌とカラダで、獣肉の違いとパワーを実感していただきたい。
お店情報
シカとイノシシ 野生―yasei―
住所:神奈川県横浜市南区弘明寺町323 弘明寺駅前ビル2F A-9
電話番号:045-711-6011
営業時間:18:00~翌1:00
定休日:不定休
Facebook:https://www.facebook.com/yasei.g.b.e/
この記事は2017年10月の情報です。
※金額はすべて税込みです。