芸人ヒロシが「ひとりキャンプ」に夢中らしい
哀愁漂う自虐ネタでブレイクした芸人のヒロシさん。
最近テレビであまり見かけないなと思っていたら、YouTubeの「ヒロシちゃんねる」で、ソロキャンプの様子を発信するユーチューバーとして活躍しておりました。
こちらがYouTube動画のヒロシさん。
自然の中でひとりキャンプやキャンプメシを満喫する様子は、癒し効果抜群でつい見入ってしまうけれど、
「……え? ひとりでキャンプ?」
ヒロシさんのイメージにマッチしなくもないけど、ひとり森の中で過ごすなんて、そもそも怖くないのでしょうか。
っていうかヒロシさん、芸人活動は辞めてしまったのでしょうか。
と、さまざまな疑問が湧いてきたので、本人に直接うかがってみることにしました。
きっかけは「焼きそばないんっすか?」が癇(かん)に障って
ヒロシさんに会いに訪れたのは、東京メトロ丸の内線中野坂上駅から徒歩3分ほどのところにある「FOREST COFFEE」。ヒロシさんの事務所を兼任するカフェです(普段はヒロシさん不在です)。
▲「ヒロシグッズ」も販売中
営業日はヒロシさんのスケジュールなどで変動しますが、コーヒーやアイスクリームのほか、カレーやパスタも味わえて、ご近所のかたが憩いの場として訪れることも多いそう。キャンプグッズやギターといったヒロシさんの趣味と思われるもので彩られたナチュラルな雰囲気は、たしかに落ち着きます。
▲きょろきょろと店内を眺めていたら、ヒロシさん登場! テレビのままの雰囲気だ!
──今日はよろしくお願いします。さっそくですが、一般的には複数の人数で楽しむイメージが強いキャンプを、なぜおひとりでしようと思われたのですか?
ヒロシさん:僕も初めは、キャンプは複数人で楽しむものだと思っていたんですよ。でも、みんなで行くとたしかに楽しいけど、日程が合わなくて実行できなかったり、食べたくもない時間に「ごはんにしよう」ってなったり、火起こしも野菜切るのも、すぐ担当決めとかするでしょ? そういうのに不自由さや面倒くささを感じることも多かったんです。
──キャンプに行ってまで不自由を感じるのは本末転倒ですよね。
ヒロシさん:そんななか、あるとき後輩の連れてきた僕の知らない人が「焼きそばないんっスか?」とか好き勝手に振る舞うのが癇に障って(笑)。ああ、やっぱり大人数はイヤだなって。そのとき、ひとりで行けばいいんじゃない? って気づいたんです。
──なにごとも人が集まると煩わしさはつきのもですよね。でも、キャンプとなると、ひとりはちょっと怖くなかったですか?
ヒロシさん:初めてひとりで行ったときは音にビビってましたね(笑)。動物の鳴き声が女性の悲鳴に聞こえたり、テントは外が見えないので、夜にガサガサ音がするとナイフを握って寝たりしてましたもん。それで結局、複数人で行くことが多かったのですが、4,5年ほど前、キャンプに対して同じ思いを抱く芸人さんと知り合って、ソロキャンプを2人でやればいいんだ! って話になりまして。3日後には一緒にキャンプへ行ってました。そのスタイルで慣らしていくうちに、ひとりで行くのも平気になりましたね。ちなみに、今では8人ほどのメンバーが集まっていますよ。
写真提供:有限会社ヒロシ・コーポレーション
──「8人でソロキャンプ」ですか!? どういうことなのでしょう。
ヒロシさん:「ソロキャンプ」なのに「8人グループ」って矛盾していますけど(笑)、何人で行こうが、行く時間も帰る時間も、テントもたき火台も、食事も過ごし方も、準備から片付けまですべて各自で完結。でも、ごはんがおいしくできたらあげたりとか、ほかの人が使っている道具を見て「それどう?」とか、適度に交流もあって、ほどよい関係性が保てるんです。新規加入メンバーも、みんなで相談して、気をつかう人やイヤな人はメンバーに入れないし(笑)。
──ソロキャンプと複数人キャンプのいいところ取りって感じですね。
ヒロシさん:ひとりのソロキャンプも、みんなで行くソロキャンプも、それぞれの良さがあってどっちも楽しいですよ。ただ、動画で使いたいシーンにほかの人たちの下ネタトークとかが紛れ込んじゃうと使えなくなるし、やっぱりまわりにも気を使わすので、撮影のときはひとりがいいですね。よりソロ感のある動画も撮れるんでね。
仕事と趣味を区別しない
──動画と言えば、なぜYouTubeを始められたんですか?
ヒロシさん:もともとは、グループで集まったときにみんなで見て楽しむために、自分たちの思い出を動画にまとめてYouTubeに上げただけなんです。でも、「意外と楽しかった」とか知らない人からコメントをもらえてうれしかったし、フォロワーが増え始めたら「広告収入が入るらしいぞ」って欲も出てきて(笑)、だんだんと見られることを意識して撮影するようになりました。そしたらそれがまた楽しくて、続けています。
写真提供:有限会社ヒロシ・コーポレーション
──ユーチューバーとして始められたわけじゃなかったんですね。
ヒロシさん:趣味でやっていたことが、仕事にもつながったという感じですね。初めの頃は誰かに見られることなんてまったく意識してないから、テントを張っているシーンが延々と続いたり、夜の撮影は画面が真っ暗だったり、結婚式のエピソード動画じゃないけど、内輪ノリでほかの人が見てもなんも面白くない! っていう感じのものばかりでしたよ(笑)。
──ヒロシさんのなかで、芸人とユーチューバーの位置づけは今どのようになっているのでしょうか?
ヒロシさん:基本は芸人だし、YouTubeは趣味だけど、趣味が仕事になるのはうれしいし楽しいから、仕事と趣味をムリに区別する必要はないと思っています。だって、キャンプも仕事になると「芸人のヒロシがキャンプをする」要素が求められますからね。最近は、コメンテーターとか出版とか、趣味や特技をいかしている芸人さんも多いじゃないですか。僕はそれがたまたまソロキャンプだっただけのことだと思っています。
──世間では「芸人からユーチューバーに転身した」などとも言われていますが、そのあたりはどう感じていますか?
ヒロシさん:僕はお笑いが好きでこの仕事を始めましたけど、苦痛なことの方が多くなって、「ネタが面白くてもバカにされるんだったら、好きなことをしたい」と、数年前に自らテレビを降りました。でも、世間的には消えたと思われていて、今どんなにメディアに出ていても、「ヒロシは相変わらず仕事がない」とか「面白くない」とかいう人がいるんです。
──なにかとイメージで語られてしまう職業ですよね。
ヒロシさん:「ユーチューバーに転身」っていうのもそうですよね。今すごく忙しいのに、それでもそんな風に言われたら、どうしていいかわからないですよ。一度イメージがつくと終わり。だから、もうそういう声は気にしないで、そのときそのときで自分のやりたいことをやっていこうと思っています。例えばソロキャンプのブームが去って、動画を今ほど見てもらえなくなっても、僕は続けていきたいです。本当に好きな人は、ずっと見てくれるでしょうから。
写真提供:有限会社ヒロシ・コーポレーション
──そこまでヒロシさんを魅了するソロキャンプの魅力って何ですか?
ヒロシさん:圧倒的自由。
──そんなに(笑)。
ヒロシさん:着いてすぐ寝ようが、一日ボーっとしてようが、誰にも文句言われませんからね! あとね、キャンプに行くと不思議と具合が良くなるんですよ。少し熱っぽいかなと思うときでも、そこに着くと忘れるし、肩こりも治ってしまうんです。
これだけは持って行くべき! ヒロシ流ソロキャンプグッズ3選
──お話を聞いていたら、ソロキャンプに興味が湧いてきました。ヒロシさん的に「これだけは持って行くべき!」というおすすめの道具ってありますか? 3つほど教えてください。
ヒロシさん:道具も基本は自由なんで、いま僕が使っているなかでいいと思うものや面白いものをご紹介しますね。
①オイルランタン
ヒロシさん:いちばんシンプルな構造のランタンです。光が柔らかくて趣きがあるので、ソロでもランタンがあれば絵になるし、明かりを見つめているだけでも楽しいですよ。少し荷物になりますが、僕は必ず持って行く道具のひとつです。
②ハンモック
写真提供:有限会社ヒロシ・コーポレーション
ヒロシさん:テントで泊まるのが常識かもしれませんが、星を見ながら寝て、目覚めに木漏れ日が目に入る素晴らしさを味わえるのはハンモックならでは。まぁ、マットを敷けばいい話だけど(笑)、宙に浮いている感じってワクワクするじゃないですか。それに、常に周囲が見えるのも安心。ガサガサ音がしても、テントと違って目で確認できるので、音への恐怖心はなくなりました。あと、設営、撤収が圧倒的に速いし、思いのほかぐっすり眠れて、一度やったら手放せなくなりましたね。
③火打石と火打金
写真提供:有限会社ヒロシ・コーポレーション
ヒロシさん:火花からちょっとずつ大きくしてたき火の炎にするという喜びを味わえます。ライターがあれば一瞬で着けられるけど、火を育てる感覚が楽しいし、かんたんにできることにあえて手間暇をかけらえるのも、ソロキャンプの楽しみかなって。複数人のキャンプだと、誰かに「まだ着かないの?」って文句言われたり、お調子者がやりたがったりして、じっくりこんなことできませんから(笑)。
ちなみにヒロシさんが火打石から火種をとり、たき火をつけるところまでを撮影した動画がこちら。淡々とした作業しているところを映しているだけなのに、思わず見入ってしまいます。
無人島ではたばこ1本が500円
──どれも素敵です。ちなみに、忘れて困った物などはありましたか?
ヒロシさん:不便を楽しむのがキャンプ。忘れ物をしても、「何かで代用できないか?」とか考えるのもまた楽しいですよ。まぁ車で行っているので、最悪の場合は買いに行けば済む話だし。
──たしかにそうですね(笑)。
ヒロシさん:あ、でも、1度だけ忘れ物で困ったことがありました。グループで無人島に行ったときです。ザックに新品のたばこを4箱入れたはずなのに、最終チェックのときに戻し忘れたらしく、現地に着いたら入ってなかったんですよ。手元には2,3本しかないし、迎えの船は2日後まで来ない。余分に持ってきているメンバーはいるけど、無人島では値段がついて、1本500円とかになるんです。経済原則ですね。仕方がないから買いましたけど、落ちてないかって探し始めたりもして、「あ! たばこだ!」って喜んで拾ったらサンゴだったり。まぁ、そういうのを楽しめるのもキャンプだということで……。
怖くて寂しそうに思えたソロキャンプも、ヒロシさんのお話を聞いていたら「ソロキャンプこそキャンプの神髄なのでは?」とさえ思えてきます。YouTubeの素朴なキャンプ映像が魅力的に見えるのも、「自分のペースで好きなことをする」というスタンスを感じられるからなのかも。
ヒロシさんの話を聞いていたら、皆さんもソロキャンプをやってみたくなりませんか?
そこで、メシ通らしく「ヒロシさんオススメのキャンプメシ」についてもお聞きしてみました。その様子は次回、お届けします!
お店情報
FOREST COFFEE
住所:東京都中野区中央2丁目8-5 B1
電話番号:03-3365-0777(11:00~15:00)
営業時間:12:00~15:00
定休日:不定休
ウェブサイト:https://hiroshi0214.com/forest-coffee/
撮影:渡邊浩行
書いた人:千葉こころ
自由とビールとMr.Childrenをこよなく愛するフリーライター。旺盛な食欲と好奇心を武器に、人生を楽しむことに全力を注いで滑走中。