【創業46年】異彩を放つ鎌倉の老舗中華料理店「ちんや食堂」を深掘りしてみた

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鎌倉と言えば、古き良き風情を感じさせる料理店やしゃれたつくりのレストラン・カフェが点在しているイメージをお持ちではないだろうか。

 

その解釈は間違いではないが、中には例外もある。

 

まずはこれをご覧いただこう。

 

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アンテナ……? 続いてはこちら。

 

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電卓入りロボット……??

 

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象形文字……???

 

この不可思議な光景は全て、知る人ぞ知る鎌倉の老舗中華料理店「ちんや食堂」の外観である。一体どんな店主が営んでいるのか、気になったので行ってみることにした。

 

いざ「ちんや食堂」へ

最寄りは湘南モノレール江の島線の湘南深沢駅。東京方面から行く場合はJRの大船駅で下車し、そこからモノレールに乗り換える。

 

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出発進行!

 

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湘南深沢駅を降りて、県道32号線に出る。そこから12分ほど歩いていくと、

 

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あった。

ここがこの地で創業46年の「ちんや食堂」だ。

 

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事前に調べた情報通り、謎多き外観。(木に隠れてしまったが、冒頭に触れたアンテナ風のオブジェも健在)

 

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お店の外にあるトイレの扉を開けてみると、

 

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観音様とご対面。外階段に目をやれば、

 

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足元注意ではなく「がんばれ、足下」

 

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駐車場周辺には、謎の看板がちらり。ここは鎌倉のはずなのに、一番右にはなぜか御徒町駅前東京・台東区)の文字が。

 

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お店の入り口付近にも、個性的なオブジェが多数置かれている。

 

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「ああ、取材の方ですね〜。どうぞお入りください〜」

 

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突然姿を現したこの人物こそ、店主の増田一仁さん。のんびりした口調の優しそうな方だ。

 

「夢」を追い求めるため、国鉄を辞めて脱サラ

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店内を見回すと、やはりここも多種多様なオブジェであふれている。一体、どこから集めてきたのだろうか?

 

f:id:exw_mesi:20180927151837p:plain増田さん:うちにあるオブジェは、ほとんどお客さんがサービスでくれたんですよ。昔からもらっていたら、こんなに増えてしまいまして。

 

なんと!? この謎のオブジェたち、ほぼお客さんからのもらい物だったのか。どうりで統一感がなかったわけだ。

 

f:id:exw_mesi:20180927152238p:plain増田さん:トイレの観音様は鎌倉市内の方からいただいたんです。それから御徒町駅前」と書かれた看板、あれは床屋さんが置いていったものでして。人形に埋め込まれた電卓は気づいたら誰かが埋め込んでいましたね(笑)。唯一、店先の黄色いアンテナだけは近くのヨット作りの会社に特注で作っていただきました。

 

わざわざ特注で作ってもらった理由が気になるが、それはさて置き、「ちんや」という名前の由来は何なのだろう?

 

f:id:exw_mesi:20180927152428p:plain増田さん:浅草に「ちんや」というすき焼き屋さんがありまして、そのお店のお嬢さんが浅草の歌舞伎役者さんに嫁いだんですね。関東大震災の際、長谷の別荘に避難してきたその歌舞伎役者さんが私の両親と出会い、お嫁さんの実家の「ちんや」という屋号をくれたという話を聞いたことがありますね。なにぶん大昔の話なので伝え聞いたものになりますが。

 

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鎌倉の長谷でお店を営んでいた頃の貴重な写真(写真提供:ちんや食堂)

 

「ちんや食堂」の歴史を紐解くと、前身は昭和初期に増田さんの親が開業した「鎌倉ちんや食堂」で、その頃は中華料理店ではなく、一般的な食堂として営んでいたという。当時のお店は長谷寺などで有名な長谷にあり、高級別荘地として名高い鎌倉山がすぐそばにあるという立地のため、多くの観光客などが訪れたそうだ。

 

f:id:exw_mesi:20180927152525p:plain増田さん:鎌倉山には政治家の近衛文麿さんオペラ歌手の藤原義江さんといった有名な方たちも住んでいたそうです。ちょうど地域の開発が始まった頃で、そこに携わっていた工事業者の方がたくさん食べに来てくれたり、別荘地を訪ねられた方々もいらっしゃってくださいまして繁盛していたと聞いております。

 

その後、家族が増え手狭になったため、1934年頃に長谷から現在地に移転。そこで営業していこうと考えていたが、第二次世界大戦前後という時代背景に加え、子育てとの両立が難しくなったため一旦閉店する。そこから約40年の時を経て、1972年に増田さんが「ちんや食堂」を始めることになった。

 

ここで気になったのは、「ちんや食堂」を開店する以前の話。つまり、増田さん本人が何をされていたのかだ。

 

f:id:exw_mesi:20180928165340p:plain増田さん:国鉄に勤務していたんですよ。サラリーマンとして。

 

収入を得るためにひたすら働く日々を送っていたという増田さん。しかし、心の奥底に抱き続けてきた夢をかなえるべく、ある時、一大決心をする。

 

f:id:exw_mesi:20181001120112p:plain増田さん:しばらく国鉄に勤めていたんですが、親が営んでいた食堂を私もどうしてもやりたくて。空手を習っていた時にお世話になった先生のツテで神田にある北京亭という中華料理屋さんをご紹介いただき、そこで1年修行を積みまして。36歳の時に会社を辞めて、今のお店を始めることになったんです。

 

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夢をかなえた増田さんが丹念を込めて作り上げてきた「ちんや食堂」の料理とは、一体どんなものなのか。さっそくいただいてみた。

 

f:id:exw_mesi:20180927152639p:plain増田さん:さあ、お食べください。このレバー炒め(750円)、生姜汁を搾ってできた繊維層を入れるんですよ。普通のレバーは固いイメージでしょ? それがこの繊維層で柔らかくて食べやすくなっているんです。

 

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おお、確かにお肉が柔らかい。簡単にかみ切れて口に広がる。濃厚な味が食欲を刺激する感じで、これはご飯のおかずとして最適だ。

 

f:id:exw_mesi:20180927152741p:plain増田さん:チャーハン(700円)もご一緒に。このチャーシュー、まず2時間半スープで柔らかくして、生姜汁を搾ってできた繊維層を入れたタレに漬け込んでいるんですよ。

 

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これもうまい。チャーシューは歯切れが良く、まるで口に溶けていくよう。香ばしいチャーハンの味もすごく良い。

 

f:id:exw_mesi:20180927152834p:plain増田さん:36歳から46年間、このお店を続けられた理由を挙げるなら、こういった食べやすさへのこだわりですかね。せっかくですし、サンマーメン(650円)もどうぞ。

 

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一見、味が濃そうに見えて、あっさりしている。あんかけスープにキクラゲや人参など具材が絶妙に絡んだ麺がズズッと口に進む。大げさではなく、本当においしい。

 

長年営んで培ったポリシーは「普段どおり」

お店の外観からは全く想像がつかなかったが、「ちんや食堂」の料理はどれもクオリティーが高い。ちなみに現在、お店で働いているのは4人。増田さんご夫妻と息子さん、そして、従業員さんが1名。

 

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▲奥様の美佐子さん(右)。左側は従業員の方

 

f:id:exw_mesi:20180927153129p:plain増田さん:家内とは稲村ヶ崎に住む知人の紹介でご縁を結んでいただきました。そこから一緒にやってこれてずーっと繁盛することができましたね〜。

 

増田さんいわく、近い将来「ちんや食堂」の店主は息子さんに譲り渡されるという。「どんなお店にしていってほしいか?」と聞くと、「普段どおりにやっていければそれでいいですよ」と、やはりのんびり口調は変わらない。

 

f:id:exw_mesi:20180927153546p:plain増田さん:あのアンテナのオブジェ、普段どおりのお料理が出せるよう、そんな気持ちになる門構えがほしくて発注したんです。すごく売れる必要なんてありません。今と同じように、お客さんにチャーハンやサンマーメン、定食をおいしく食べやすく提供する。そんな「普段どおり」がずっと続けばそれでいいんです。

 

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変に着飾らず、「普段どおり」のものを提供すること。これこそが「ちんや食堂」のポリシーであり、そんな店主・増田さんの純粋な思いが実はあのアンテナのオブジェにも込められていたのだ。

 

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一見、奇天烈な外見の中華料理店は、店主の真心とそれに対するお客さんからの感謝の贈り物でできたお店だった。もし鎌倉を訪れるならぜひ一度この「ちんや食堂」を訪れて欲しい。見て不思議、食べて満足の世界があなたを待っている。

 

お店情報

ちんや食堂

住所:神奈川鎌倉市常盤404
電話:0467-31-8256
営業時間:10:30~15:00
定休日:日、月曜日

 

書いた人:ダイゴロ

ダイゴロ

コピーライターを営んでおります。 広告制作に携わる一方で、月刊公募ガイドにて「コピーはコーヒー牛乳飲みながら。」を連載中。人狼が、最近のマイブームです(強くはない)。

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