日本初の「ブロガーが集うバー」がオープンしていたのでログインしてみた

令和初日、若者の街・高円寺にオープンしたブロバー。ここは、おそらく日本で唯一のブロガー向けの飲食店です。いったい誰がどんな目的で作った? お客さんはどんな人が何を求めて夜な夜なやってくるのか? 全ネット民必読!

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東京メトロ丸ノ内線の新高円寺駅を下りて徒歩1分。雑居ビルの地下に、そのバーはある。

 

店の扉から中を伺うことはできないが、扉に貼られているのは

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▲入店ではなく「ログイン」

 

「ログイン」の文字。どうやらこのバーでは入店ではなくログインと表現する方がしっくりくるらしい。ここはおそらく日本で唯一であろうブロガーによるブロガーのためのバー「ブロバー」だ。

 

「ケイタさんですよね? いつもTwitterで拝見していました! 会えるかなと思って伺いました。うれしいです!」

取材中に入店してきた男女のお客さんが共同オーナーの一人・沖ケイタさんを見つけるや否や語りかける。SNSでいつも追いかけている人と実際に会えた喜びからか、そのお客さんは満面の笑みだ。

 

沖ケイタさんはTwitterのフォロワーが27,000人を超えるブロガー。日頃からブログ、Twitter、メルマガなど複数の媒体で情報発信をしている。テレビや雑誌に顔を出すような有名人ではないが、彼を慕うファンが多い人気者だ。

 

▼沖ケイタさんのブログ

www.proof0309.com

 

もう一人の共同オーナー・ぶんたさんもTwitterのフォロワーは16,000人以上。ケイタさんと同じく情報発信をまめに行っている。

 

ぶんたさんのブログ「いつまでもアフタースクール」https://www.buntadayo.com/

 

▼ぶんたさんのTwitterアカウントはこちら

twitter.com

二人が運営する、ブログを書いたり広告収入を得たりSNSで情報発信する人、いわゆるブロガーが集まるバー「ブロバー」は、2019年5月1日、令和最初の日にオープンした。

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▲「ブロバー」入り口と共同オーナーの二人。左が沖ケイタさん、右がぶんたさん

 

ブロガー同士で飲んでいるうちにバーを作りたくなった

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自分の思いを吐露する、調べ物をしてそのまとめを発表する、芸術作品を公開する、グルメのレポートをする、製品のレビューをする。こうしたブログ執筆活動として「仲間」が必要なシーンはあまり見当たらない。

しかし、ブログを長く続けるには、仲間の存在は大きいもの。ブログを7年続けている筆者も、ブロガーの友人がいなかったらここまで続かなかっただろう。

 

ぶんたさんはブログを始めた最初の月に、記事が炎上した。

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▲ぶんたさん。ブログを始めた月の炎上を思い出させてごめんなさい

 

f:id:Meshi2_IB:20191010180032p:plainぶんたさん(以下敬称略):困惑した僕の悩みや相談を聞いてくれる仲間がいたのは本当にありがたくて、SNSでの批判も多かったのですが乗り切ることができました。

 

その原体験から、ブロガー同士が気軽に会って話せる場づくりの必要性を強く感じることに。

 

f:id:Meshi2_IB:20191006114919p:plainケイタさん(以下敬称略):以前から事業化するならブロガーが集まるお店をやりたい」とうっすら思ってはいたんですね。誰もやっていないことなので価値はあるのかなと。

 

クラウドファンディングの目標額を初日で達成

さっそく二人は2019年3月に、開店資金の協力を募るクラウドファンディングを実施。

camp-fire.jp

 

支援希望額の230万円は初日でサクセスし、最終的には180%・420万円を超える支援を得た。加えて、スポンサーをしてくれる企業や個人も加わり、総支援額は600万円近くにも上る。

 

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▲クラウドファンディングのメリットを語るケイタさん

 

f:id:Meshi2_IB:20191006114919p:plainケイタ:クラウドファンディングはオーナーに大きなメリットがあるんです。まず「お店を成功しなければいけない」というモチベーションが強くなること。次に、話題になることで開業前にお店の認知度が上がること。そして支援してくださった方がそのまま大切なお客様になることです。

 

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ぶんた:飲食店とクラウドファンディングの相性は良いですよ。支援した人は『自分事』になるので足を運んでくれますし、ほかのお客様を連れてきてくれます。内装も、ボランティアを募集したらペンキ塗りや床の張り替えを手伝ってくれるブロガーさんが何人も手を挙げてくれたんですよ。ありがたかったです!

 

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▲店内の黒板にはクラウドファンディング支援者の名前がずらり

 

同店では、クラウドファンディングの支援をしてくださった方を店内に掲示している。その掲示がどこにあるのか見当たらない……と思っていたら、アートのように描かれた店内の掲示物に書かれているものが、支援者のニックネームだった。

 

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▲有名ブロガーの名前もある、クラウドファンディングの支援者

 

支援額の大きな方はより上部へ、より大きな文字で書かれている。支援した側に立ってみると、こうした掲示がいつまでも残っているのは嬉しいものだ。

 

ブロガーや支援者が楽しめる仕組みを

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ブロバーには、ブロガーが親しみやすくなる工夫がいくつかちりばめられている。

 

①メニューがブログやSNSに関係ある名前になっている

まずはこのメニューをとくと見てほしい。

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▲ブログ・アフィリエイトなどの専門用語が名付けられたドリンクメニュー

 

ツイ廃、炎上うめサワー、バズテキーラなどなど、ユニークなメニューばかり。「炎上うめサワー」というのは、ブログなどの炎上と、梅の赤い色をイメージしてネーミングしたそう。ブロガーなら、初めて注文するときに思わずにやりとしてしまいそうだ。

 

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注文したカクテル「ツイ廃(ツイッター廃人。Twitter依存症のような人を指す。上の画像左側)」はブルーキュラソーサワーで、柑橘系の爽やかな味。この爽やかなブルーがTwitterのアイコン色にそっくりなことから名付けられた。

 

サワー・イチゴ・オレンジの三層で作られたカクテルは三種類の頭文字を日本語・英語からいいとこ取りをしてもじり「SEO」に(上の画像右側)。普段は検索エンジンに振り回されっぱなしのブロガーだが、ブロバーであれば一気に飲み干してしまうこともできる。

 

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▲クラウドファンディングのリターンの1つがメニューの命名権だ

 

クラウドファンディングの支援に対するリターンの一つとして、メニューへの命名権があったのも特徴の一つ。こうして支援者の名前がメニューに残る限り、支援者にとってはブロバーは自分事であり続けるのだ。

 

②来店者はプロフィールカード「ブロカード」を作成

筆者が初めて来店したときに、一枚のカードとサインペンを渡された。それはブログをはじめSNSでの活動などを自己紹介するプロフィールカード「ブロカード」(下の画像参照)。

これに自分のSNSアカウント名やアピールポイントを書いてテーブル上に立てかけておくことで、知らない人同士が互いに話しかけやすくする仕組みだ。

 

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▲筆者のプロフィールカード。悪筆申し訳ない

 

このカードには二つ、ブロガーが安心して楽しめる要素がある。

一つは「顔出し禁止」サインを入れられること。ブログやSNSで自分の顔を出さないポリシーの人は顔出し禁止の旨を書いておくことで、店内で撮影された顔写真がSNSに流出しないよう配慮してもらえる。

写真をSNSに投稿するのが好きなブロガーは多いが、同時に他者の「顔出し」についても配慮できる人は多い。そうした配慮が行き届いているのは心強い。

もう一つは、カードにランキング制がなされていること。注文額に応じてランキングが上がるようになっており、特典もいろいろだ。

ブロガーには馴染み深いASP(アフィリエイトサービスプロバイダ。成功報酬型広告を配信するサービス)の、もしもアフィリエイトのアフィリエイターランキングと似た称号になっている。同社と契約しているブロガーなら、ブロバーでのランキングが一目でわかるだろう。

写真のプロフィールカードは下から二番目のもの。筆者も、もっとアフィリエイトを頑張ろうっと……。

 

ブロガー以外の「界隈」の人も集まる

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▲バーカウンターに立ってお客さんとブログ談義することも

 

気になるのははたしてどんなお客さんが訪ねてくるのか、ということ。ブロバーといってもブロガーばかりが来るわけではないでしょう。そう思って客層を尋ねてみると……。

 

f:id:Meshi2_IB:20191010180032p:plainぶんた:そうですね。ブロガー・アフィリエイター・SNSのヘビーユーザーが多いですが、広告主やASPに働く人、エンジニアなどもご来店いただきますよ。

 

──ブロガーはどんな人が来ています?

 

f:id:Meshi2_IB:20191010180032p:plainぶんた:一口には言えないほどいろんな人が来てくださるんですが、意外とブログを始めたばかりの人に来ていただけてないんですよね。「実績がないと来てはいけない」と思ってるみたいで。そんなことは全然ありません。気軽に来られる店ですので是非来てください!

 

──逆に、ブロガーじゃないというか、ブログにまったく関係ない人って来店するんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20191010180032p:plainぶんた:それはあまりいませんね。ブログや情報発信になじみがなさそうな人には「うちのお店はこういうお店で……」と事情を説明するようにしています。そうしないとお互い戸惑ってしまうのかなと。

 

f:id:Meshi2_IB:20191006114919p:plainケイタ:情報発信する上でブログってハードルが低いと思うんですよ。ほぼ無料だし、手軽にすぐ始められるじゃないですか。それよりもさらに低いハードルとしてSNSがあると思うんですけども、SNSやられてる方は多いですね。Twitter、Instagram、YouTubeなどなど、情報発信をしている人は媒体に関わらず来てくれます。

 

デジタル世代の有名アスリートもご来店!

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▲支援者や常連の書いた書籍が店内に並ぶ。これが話題になることも

 

ブロバーでは席替えを促されることがある。共通の話題の多い人が集まる店、交流を望んで来店する人が多い店だからこその動きかもしれない。

ある日、筆者がカウンターでハイボールを飲んでいたら、近くの席に座っていた20代前半の女性が僕の隣に来て話しかけてきた。なんとその女性はバリバリのアスリート。

ソフトボールプレイヤーの本庄遥さんだったのだ。

 

haruka-honjo.athkatsu.com

 

高校時代にエースとして全国大会で投げ、防御率0で優勝。まったく同じフォームから繰り出されるストレートとチェンジアップの球速差が60km/hもあって、YouTubeでピッチングを見せて頂いたときは素人目にもびっくり……!

現在は大学を卒業し、オリンピック出場や海外リーグでのプレーを目指している。スポンサー獲得などに奔走しつつYouTubeやブログでソフトボールの情報発信をし、年下の人たちにピッチングを教えるといった様々な活動をしている。

まさか世界を目指すアスリートが情報発信力の向上のためにこうしたバーに来店しているとは……。

ネット中心のビジネスをしている人が交流を求めて来店するものなのかと思っていたが、他業種の仕事を頑張っている方が情報発信力を身に着けようとしている現状も知ることができた。

 

「勝ちパターン」はまだ見つかっていない

東京渋谷はかつてIT企業が集中した地域だったため「ビットバレー」と呼ばれることもありますが、渋谷の特定のお店にはビットバレーを中心としたIT・Web関係者がよく来店する、といったケースがある。

しかし、ブロガーをはじめとした情報発信者のための店というのは聞いたことがない。おそらく日本で初めての試みなのではないだろうか。

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▲現在と未来を語る二人

 

f:id:Meshi2_IB:20191006114919p:plainケイタ:ウチのように「お酒以外にウリを持っているお店」は、酔っ払って乱れるようなお客様がいない点がメリットなのかなと感じています。いってみれば「お客さんを選べている」のかもしれません。今後の課題は、イベント以外で客単価をどう向上させていくか、でしょうか。ブロガーらしく新しいアイディアを模索して日々PDCAを回している最中です。

 

f:id:Meshi2_IB:20191010180032p:plainぶんた:「ブロバー」という名前の通り、ブロガーさんがもっともっと来てくれるお店にしたいですね。半年近く運営してきて、まだしっくりくる「勝ちパターン」が見つかっていません。また、単にブロガーが集まる飲食店というだけではなく、もう少しブロガーが来て楽しめる要素を作り上げていけたらと考えています。試行錯誤には限りがありませんね。

 

昭和の時代、名だたる小説家や編集者が集まる酒場は、「文壇バー」と呼ばれていた。

ポール・ニューマン主演映画「ハスラー2」が1986年に公開されると、日本にはビリヤードが楽しめるバー「プールバー」が大流行を見せた。その後も、ダーツを楽しむダーツバー、大勢でスポーツ観戦するスポーツバーが流行するなど、共通の嗜好のもとにお酒を楽しむバーは今でも繁盛している。

近頃はより細分化されたジャンルで同好の士が集まる飲食店ができはじめている。ブロガーのためのバーというのは前例がなく、全国に同好の士が集まれる場ができれば旅するブロガーの宿り木にもなるのではないだろうか。

 

店舗情報

ブロバー

住所:東京都杉並区梅里1-7-14 シャトー新高円寺B102
電話:非公開
営業時間:19:00~23:00 ※10:00~18:30 はコワーキングタイム
定休日:不定休(公式ウェブサイトを参照)

bloggers-bar.com

 

書いた人:奥野大児

奥野大児

馴染んだ店で裏メニューを頂けるのが至高と思っている呑兵衛ライターでブロガー。店主と仲良くなるのが得意らしい。グルメ、旅、歴史、IT、スマホなどなど多ジャンルで書きます。

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