JAVAを目にする機会が減ってしまった……と感じるのは気のせいだろうか。
SCRIPTではない。TEAのほうである。
「シンビーノ ジャワティ ストレート」(以降、ジャワティと表記)が鳴り物入りでデビューを飾ったのは、平成が幕を開けた1989年。
ジュースでもなく、日本茶や烏龍茶でもない、紅茶に近いようでいてもっと独特な味わい。そんな前代未聞のテイスト以上に「どんな食事にも合う」新しさも手伝って、またたくまにヒット商品となった。
コーラもいいけど、一度試してみたら? どんな食事にも合う合う
当時のテレビコマーシャルで流れていたそんなキャッチコピーに偽りはなかった。実際、大学生だった筆者(編集部ムナカタ)は、カツ丼や、カレー、焼きそばはもちろん、ロールケーキやポテチを食べるときですら、ほぼ一択状態でかたわらにはジャワティを置いていたのだ。
あれから30年余り──。
以前に比べてめっきり見かけなくなったのは、数が減ったからなのか、あるいは自分の視界に入ってこないだけなのか。
往年のファンとしては後者であってほしいが、世間の声を見かけるに、どうやら同じことを感じている人は少なくないことがわかる。というのも、公式アカウントのフォロワー数は5.8万にものぼるものの、残念ながら 「見かけない」という声が散見されるのだ。
かつてあれほど常飲していたジャワティは今どうなっているのだろうか。
アメリカで受けた衝撃が開発のきっかけに
今回、ジャワティの製造販売元である大塚食品株式会社に取材をすることができた。リモートでのインタビューに応じてくださったのは、ジャワティプロダクトマネジャーを務める辻さんだ。
▲辻さんのジャワティとの初遭遇は、1989年の入社時。工場研修で高く積み上げられた出荷直前のジャワティを見たのが最初だった。以来「仕事も兼ねて毎日飲んでいた」という研究所の勤務を経て、現在の役職に
──辻さん、今回はありがとうございます。現在の状況をうかがう前に、せっかくなのでまずはジャワティの由来についてお聞かせ願えますか。そもそもジャワティはどうやって生まれたんでしょう?
辻さん:その前に、1982年に発売した「シンビーノ アップル」というドリンクについてご説明させてください。シンビーノという言葉は、スペイン語でシン=〜がない・〜抜き、ビーノ=ワインという意味の造語なのですが、ワインタイプのノンアルコール飲料というコンセプトで売り出しました。味わいは甘みがあって好評でしたが、洋食には向いているものの、和食にはあまり合わないという評価だったんです。
▲これが1982年に発売されたシンビーノ。残念ながら筆者はまだ小学生だったのでまったく覚えていない(写真提供:大塚食品株式会社)
──ジャワティの冠に付いている「シンビーノ」は、そこからきてたんですね。
辻さん:はい。この商品を起点として「どんな料理にも合う無糖のテーブルドリンクとはどんなものか」という研究が始まりました。転機になったのが1988年です。この年、当時の大塚食品社長・大塚明彦がアメリカのカリフォルニア州に設立した研究所の竣工式に立ち会った際、フランス料理に無糖のアイスティが出てきて「これは料理に合う!」と感激したそうなんです。そこをきっかけに開発が始まりました。
──で翌年にはもうジャワティ発売と。仕事が早い!
辻さん:さすがに急ピッチすぎて担当者はてんてこまいだったみたいです(笑)。
▲1989年発売当時の缶&瓶。世代的にジャワティといえば真っ先に浮かぶのがこのパッケージである。懐かしい!(写真提供:大塚食品株式会社)
──でも当時の日本だとすでにアイスティ自体は普及していたように思いますが。
辻さん:確かに当時の日本ではすでにアイスティは十分普及していましたが、ほとんどの市販品は甘味があってフレーバーが強かったんですね。レストランでアイスティを注文すると「食後にしますか?」と聞かれることはあっても、食事と一緒に飲む習慣はなかったと思います。
日本には無糖のテーブルドリンクという概念がなかった
──ジャワティの商品開発では、どんなところが大変だったんでしょう。
辻さん:あくまでも目指すのは「和・洋・中どんな料理にも合う、無糖・無香料・無着色の飲料」なのですが、「じゃあいったいどんな飲料が合うのか?」という疑問に答えを出さなければならず、すごくハードルが高かったんですね。そもそもテーブルドリンクという概念自体が世の中にまだまだ浸透していませんでした。
──アイスティという「入口」はあっても、「出口」が見つけられないと商品化できませんからね。
辻さん:そこでいろいろな産地の茶葉を試す中で目をつけたのが、弊社グループ企業があるインドネシア・ジャワ島の茶葉でした。実はインドネシアって、紅茶の産地なんです。
──おっ、やっとここでつながってきました。
辻さん:ジャワ島は赤道直下にありますが、ジャワティの茶葉の農園は標高が高いところにあり、そこは昼夜の気温差があって、水捌けの良い火山灰の土壌なので、茶葉の栽培に適した土地なのです。
▲TEA=紅茶というとインドのダージリン産が有名だが、香りの高いダージリンに比べて、ジャワ島産の茶葉は穏やかな香りでなおかつ口当たりがやわらかく、キレがある←このあたりがどんな料理にもマッチする守備範囲の広さの秘密となっている(写真提供:大塚食品株式会社)
──なるほど。ネーミングの由来を尋ねるまでもないですね。
辻さん:紅茶っていれすぎちゃうとつい渋みが出ちゃって苦くなりがちなのですが、そこは渋みを出さない製法でなおかつしっかりした味わいにすることで「どんな食事にも合う」飲み物に仕上げました。
▲発売当初から現在に至るまで農園に赴いて、品質管理・買い付けを行っている(写真提供:大塚食品株式会社)
辻さん:このしっかりした豊かな味わいは、ジャワティ特有のポリフェノールによるもので、ときどき「ほんのり甘いので砂糖が入ってるのかと思った」というご意見をいただくのは、そのためかもしれません。
1994年に頂点を極めた
▲ここで現行商品の一部を紹介しておこう。左から、シンビーノ ジャワティ ストレートレッド/ホワイト500mlペットボトル、シンビーノ ジャワティ ストレート レッド/ホワイト 375ml瓶。この他、270mlペットボトル(レッド/ホワイト)や、2Lペットボトル(レッドのみ)もある。ちなみにレッドは完全発酵させた紅茶、ホワイトは芯芽と一葉のみを茶葉に使用した微発酵茶(写真提供:大塚食品株式会社)
──辻さんがおっしゃるように1989年のデビューで衝撃的だったのは味わいもさることながら、「どんな食事にも合うテーブルドリンク」という新しい概念だったからですよね。
辻さん:おかげさまで売り上げ本数は、その後6年間ほど右肩上がりを続けて1994年に最高記録を達成しました。
──自分が大学を卒業した年です。確かにあの頃はよく見かけました。
辻さん:それ以降は、いわゆる「茶系飲料」が他社から数多く販売されるようになりましたが、ジャワティはおかげさまでヘヴィーユーザーにしっかり支えられており地道に頑張っています。こうしたお客さまはEC(通販)でまとめてご購入くださるケースが多いですね。
▲ビリヤニ風の炊き込みごはんと一緒に。ジャワ島由来だけあって、とにかくスパイシーな料理にめちゃ合う
いったいどこで手に入るのか
──あのぅ、正直言いますと、90年代はまだまだ見かけたのですが、2000年以降はめっきり減ってしまい「見かけたらとりあえず買っておく」ようにしています。どこにいけばすんなりゲットできるんでしょう。
辻さん:私自身、いろいろな方から「ジャワティを飲みたいけど、どこで売ってるの?」ってよく聞かれるんです(笑)。まず、おすすめは弊社の通販サイトと、一部ですが大塚グループの自販機ですね。あとは、一部のスーパーやドラッグストア、駅売店、ベーカリー、デリカテッセンなどで取り扱っていただいています。
──あ、お聞きしていて今思い出したのですが、東京駅とかJRの駅にあるコンビニでたまーに見かけて買ってます。
辻さん:(ニッコリしながら)ありがとうございます! お弁当に合うからという理由で買ってくださる方も多いので。
▲ほとんど白ワインのようなルックスだが、まぎれもなくジャワティである。まろやかでクセのまったくない味わいのホワイトはシンプルな食事に向いている、と思う
辻さん:最近ですと、ベーカリーも増えました。というのも、こだわりのあるシェフやパン職人さんには、フレーバーが強い飲料を好まれない方もいらっしゃいます。もちろん「パンに合う」という理由もあるんですが。
▲近年はベーカリー中心のキャンペーンも展開している(写真提供:大塚食品株式会社)
30年間、味はまったく変わっていない
──ところでこの30年間でジャワティの味って変わってるんでしょうか?
辻さん:基本的に味そのものはまったく変わっていません。品質管理には努めていますが、茶葉も変えていませんし、味自体はずっと同じです。そもそも(ジャワティ レッド、下記写真)の原料は紅茶=茶葉と水だけですから。
▲確かにそうだ
──すごい。30年前の学生時代に飲んでいた味とまんま同じとは。
辻さん:ただ時代の変化に合わせて、容器やパッケージデザインは変えてきています。
▲パッケージの変遷。1989年の発売開始以来、2003年と2009年に大胆なデザイン変更が行われた(写真提供:大塚食品株式会社)
──最後に、ジャワティにライバルっているんでしょうか?
辻さん:うーん、「いない」んですよね。今流行っているようなフレーバー入りや、ゴクゴク飲めて、のどの乾きを潤すようなドリンクではないので、オンリーワンの商品だと思っています。目指すところが他の飲料メーカーさんの商品とは決定的に違うからかもしれません。
──これからも孤高の存在であり続けることを切に願いつつ、見かけたら絶対買いますので。今回はどうもありがとうございました!
取材協力:大塚食品株式会社