現役ミュージシャンが切り盛りする超リーズナブル酒場、東京・新代田「えるえふる」

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東京・下北沢の隣駅、新代田。環七通り沿いに最近かなり異端な立ち飲み屋がオープンしたという情報をキャッチ。早速、飲みに行ってきました!

 

まず物件だけ押さえ、ほとんど見切り発車でオープン

京王井の頭線・新代田駅。ライブハウスやレコード店が林立する下北沢から1つ隣のこの駅には、話題のライブハウス〈FEVER〉があって音楽好きには馴染みの深い町。

また渋谷・吉祥寺・新宿など評判エリアへのアクセスの良さから、若い人たちが多く暮らす住宅地としても知られています。

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新代田駅の改札を出て、目の前を走る環七通りを駒沢方面へと少し歩くと現れるのは、ガラス張りのギャラリー風な建物。そして、鮮やかな藍色の暖簾。「えるえふる」という名のこの店、かなり異端な立ち飲み屋なのです。

 

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以前はギャラリーが入居していたテナントを、そのまま居抜きで使ってはじめたというこのお店。バンドcore of bellsのベーシストとして活動する會田洋平さんが切り盛りしており、音楽好きや地元の住人たちで連日賑わいをみせています。

 

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瓶ビール班長というペンネームで執筆する酒場めぐりブログが、酒呑みから支持を集めている會田さん。

 

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お店をオープンすることになったきっかけは、2015年春のこと。

 

以前から、仲間内で1杯飲める立ち飲み屋みたいなのやれたらいいねって、2015年のアタマに飲んだ時に話してて。ずっと物件を探してたんですけど、ある時、近所のライブハウスFEVERの西村店長から、もともとCommuneっていうギャラリーがあったこの物件がどうやら空くらしいっていう情報を聞いて。その店にも何度か行ったこともあるから、あそこなら! と思ってパッと具体的なイメージも浮かんだんです。(會田さん)

 

2015年6月にはテナントの契約が決まり、家賃も発生することもあってとり急ぎオープンへと駆け出した會田さん。内装もほとんどいじらず、テーブルもドラム缶を使用した手作りで安上がりに済ませるなど、向こう見ずな勢いとD.I.Y.精神で乗り切って8月3日にはプレオープンにこぎつけたのだそう。

 

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▲「立ち飲み屋はバッグ等を置く場所に困る」という自分たちの意見から、テーブルのドラム缶脇には客の荷物用にフックを取り付けた

 

当初は仮営業しながら、徐々にお店の内容を充実させつつ、2015年9月1日に正式オープンを迎えました。

 

安くておいしい!気の利いたツマミの数々

えるえふるの魅力は、なんといってもそのリーズナブルさ。お酒は290円から、つまみはなんと150円からという、世田谷界隈とは思えない価格設定に驚きです。

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▲毎日7〜10品ほど用意しているという、日替わりのつまみメニュー。確かに安っ!

 

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▲ホッピーやサワーなどに用いる甲類焼酎は、金宮(キンミヤ)。立ち飲みファンには評判の銘柄だ

 

すぐ隣駅の下北沢にも、よっちゃんとか安くていい立ち飲み屋がありますけど、新代田にはウチみたいなお店はほとんどないんですよね。ミュージシャンの知り合いにも「もう100円ずつ高くてもいいだろ」ってよく言われるんです。でも、そうすると僕が行きたいと思えないなって。音楽聴きながら、千円札一枚あれば軽く1、2杯飲み食いできる。そこが「えるえふる」のこだわりですかね。(會田さん)

 

酒とつまみ(揚げ物など温かい料理以外)は、カウンター前の冷蔵庫から自分で好きなものを選んでキャッシュオンで支払いするという、新宿・おおの屋を彷彿させるスタイルです。

もちろん安いだけじゃなく、料理も酒もちゃんと美味しいのが嬉しいところ。取材当日は大分名物のとり天に、パクチーたっぷりの豚の冷シャブ、スパサラなど、酒呑みの心をくすぐるバラエティに富んだメニューの数々を堪能させていただきました。

 

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▲パクチーたっぷり豚の冷シャブ(350円)

 

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大分名物 とり天(300円)

 

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▲スパサラ(200円)

 

旅先で覚えた味をメニューにソク反映

ここ「えるえふる」は、お酒にもこだわりが行き届いています。まず、瓶ビールは赤星(サッポロラガー)。

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焼酎は金宮、割モノはハイサワーにバイスサワー、さらにはシソの香りと唐辛子のピリッとした辛さがクセになる金魚酎や、アールグレー割など、會田さんの酒呑みとしてのこだわりを感じさせるラインナップがズラリと並んでいます。

 

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自分自身は調理経験がほとんどないので、全部自己流ですね。最初は5、6品で手一杯だったんですけどちょっとずつ増やしていって。とり天なんて、こないだ大分県・別府で飲み歩きした影響がダイレクトに反映されたものですよね。そんな感じで自分がいろんな居酒屋や立ち飲み屋を回ったノウハウを活かして、いいなと思ったところを融合しつつ、お店に良さとして反映させられたらいいなと思ってます。(會田さん)

 

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▲日本酒やIPA系のビールなども用意している

 

えるえふるでは不定期で、ミュージシャンが1日店長としてカウンターに立つことも。しかもその日には、ミュージシャンお手製のつまみも提供。これまでにMC.sirafu(ザ・なつやすみバンド/片想い)などのミュージシャンが料理の腕をふるってきたそう。

 

ミュージシャンで料理得意な人って実は結構多くて、中にはキッチンに立ちたいっていう人もいます。そういう人に1ヵ月に2、3回でもお店へ入ってもらえたら、それ自体がイベントになりますよね。しかもライブをやるわけじゃなく、アーティストが料理を出すだけなので、一般のお客さんも入ってきやすいし。僕がブログでやってきたようなことと、音楽をつなげたいってずっと考えてきたんですけど、それが今、ちょうどいいタイミングでやれてるんじゃないかな。(會田さん)

 

1日店長企画の他にも、ミュージシャンたちによるインストア・ライブや、漫画家の谷口菜子さんを招いて、シャリ金(シャーベット状に凍らせた金宮焼酎)をいろんなシロップで味わう〈大人のかき氷大会〉など、音楽と酒、そして周辺のカルチャーが混ぜこぜになった多彩なイベントも開催。

 

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▲過去に開催された「じゃんけんプレゼント大会」の様子。ハイサワーでおなじみの博水社・田中秀子社長を招いて大盛況に

 

お店奥には、インディーロック好きにはたまらない空間が。

では、この店が異端である理由を説明しましょう。それが店内の右手奥スペース。

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そこでは、cinema staffのギタリストとして活動する辻友貴さんが運営するCDショップ〈Like a Fool Records〉の実店舗として、国内外のインディーロックの作品を取り扱うショップが営業しているのです。

 

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コンパクトなスペースながらツボを心得たセレクトで、ハードコア、マスロック、エレクトロニカなどのCD/LPを販売。

 

店内で試聴することもできます。

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こちらが〈Like a Fool Records〉店主の辻さん。

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ソファでゆったりお酒飲みながら試聴できるんですよ。近所のライブハウスFEVERは、幅広いジャンルのライブが行われてるけど、ちゃんと音楽好きが集まるライブハウスなんですよね。なのでライブの前後に立ち寄ってくれる方が多いです。「店にはアコースティックギターも置いてあるんですけど、たまたま飲みに来たミュージシャンが、流しみたいな感じでいきなり弾き語りのライブがはじまったりするのも面白いかなあって」(辻さん)


今って普通の人が、CDやレコードに触れる機会ってかなり少なくなってると思うんです。だから音楽がある現場に、普通の人たちを巻き込みたい。たまたまうちの店に飲みに来たことがきっかけになって、店で流れていた音楽や、店で出会ったミュージシャンたちに興味を持って、CDを買ってもらったり、ライブに行ったりするようなきっかけになれたらいいなって思うんです。そのためには、僕らとしてももうちょっとからくりを用意しないといけないなとは思ってるんですけど……それはまぁ、お店をやりながら考えていくしかないですね(笑)。でも、こうして毎日店に立ってメニューを考えたり、店長を誰にお願いしようかなとか考えるのって、毎日ずっとイベントをやってるような気分なんですよね(笑)。大変ですけど、すごく楽しんでやってます。(會田さん)

 

音楽好きはもちろん酒呑みもしっかり満足させてくれる、「えるえふる」。親しみやすい下町感覚と、下北っぽいカルチャーがフラットに融合したこんなお店が誕生したのは、ちょっとした奇跡かもしれません。

 

お店情報

えるえふる

住所:東京都世田谷区代田5-28-3
電話番号:03-6883-7180
営業時間:平日19:00〜24:00 土日祝17:00〜24:00
定休日:不定休
ウェブサイト:「音」と「酒」新代田 LFR

 

書いた人:宮内健

宮内健

1971年東京都生まれ。ライター/エディター。『バッド・ニュース』『CDジャーナル』の編集部を経て、フリーランスに。以降『bounce』編集長、東京スカパラダイスオーケストラと制作した『JUSTA MAGAZINE』編集を歴任し、2009年にフリーマガジン『ramblin'』を創刊。現在は「TAP the POP」などの編集・執筆活動と並行してイベントのオーガナイズ、FM番組構成/出演など、様々な形で音楽とその周辺にあるカルチャーの楽しさを伝えている。

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