「モツ」は炙ればうまくなる
モツ鍋はお店で食べるもの、というイメージが強いのはなぜか。
新鮮なモツを買ってきて、スープに入れればいい。簡単である。
しかし、お店で食べるような味にはならない。だから外で食べる。
もちろん専門店で食べるモツ鍋はとてもおいしい。
しかし、ある簡単な方法で、自宅でも最高にうまいモツ鍋を作ることができるのだ。
▲おいしそうなモツ鍋。これはイメージです
家で食べるモツ鍋が魅力的でない原因は2つある。
まず、スープのクオリティーが違うこと。
老舗のモツ鍋専門店の味にはかなうべくもないが、これは市販のスープを買ってくればある程度は解決できる。
もうひとつは、モツそのものの違い。
専門店のモツは、市場から届いた新鮮なものを使用しているため、プリプリ度が全然違う。スーパーで買ってきたモツと比べたら、その違いは一目瞭然だ。
つまり、新鮮なモツが手に入るかどうかによる。
▲肉屋さんで売ってます
スーパーではなく、肉屋さんに行けば新鮮はモツは手に入る。
私が住む品川区の西小山・武蔵小山周辺は、区内に食肉市場があることから、新鮮な肉や内臓を扱っているお店が多い。
家の近所にある、ごく普通の肉屋さんで買ったモツ(小腸)を使って、最高のモツ鍋が作れたらうれしい。
かねがねそう思ってきた。
そして、私は気がついた。
ある方法を使えば、自宅でも簡単においしいモツ鍋が作れることに。
▲モツ鍋を作ろうと決意して最初にしたことはガスレンジの掃除
個人的な話で恐縮だが、モツ鍋って本当においしいと思う。
どこで食べたって、それなりにおいしい。
おいしいモツ鍋屋さんがあるんだ、と聞いて足を運ベば、予想以上のうまさにびっくりする。
私たちが思っている以上に有名店のモツ鍋はおいしい。
モツは私たちの想像力を簡単に上回る。
だが、会計を見てさらにびっくりする。意外と安くない。東京で食べるモツ鍋は、高級とは言わないまでも、安い料理の部類には入らないだろう。
だから、私はおいしいモツ鍋が家で簡単に作れるという記事を書こうと思う。
この手法を知ってから、私は3キロは太った。
週に2回はモツ鍋を食べたからだ。
恐るべしモツ鍋。
だが、後悔はしてない。
自宅で絶品モツ鍋を作ってみよう
▲モツを買ってきた
自宅の近くで300gを買ってきた。
510円だった。
安い。
モツは下処理が欠かせない。
まずモツが持つ(シャレである)臭みを消すため、ゆでこぼしと呼ばれる作業が必須だ。沸騰させた湯でモツに熱を通し、それによって臭みを消す。
この際、青ネギの青い部分や、生姜などの薬味を入れるとさらに効果が高まる。
今回は生姜のみを入れる。
この段階でそこまで神経質にならないでもいい。その理由は後ほどわかる。
▲モツを入れた鍋を沸騰させる。上にたまる白い泡状のものはアクである
▲湯がいたら、ざるにあける
何度かこの工程を行うと臭みがさらに消えるが、今回は1回でオッケー。
「小麦粉でモツを洗うと汚れがよく取れる」という説があるが、「小麦粉と一緒にうま味が逃げてしまうので厳禁」という、まったく異なった見解もある。
モツの下処理は難しいのだ。私ごときが悩んでも仕方ない。
あまり考えすぎないようにしよう、人生は短いのだから。
▲モツをカットします
手頃な大きさにカットする。
そしていよいよ魔法の道具が登場。
ガスバーナーである。
回転寿司に行くと、よく職人さんがサーモンを炙っている、あれである。
ガスボンベの上についているのが、着脱できるトーチバーナーと呼ばれる道具で、Amazonなどで1,000円ほどで購入できる。
あったら便利だろうけど、おそらく買わない道具の代表格である。
だが私はこのモツ鍋のために購入した。
察しのいい読者の方はもうおわかりだろうが、これを使ってモツを炙るのだ。
1,000円あれば、あの憧れの「炙り」が家庭で再現できるのだ。
決して高くない(言い聞かせている)。
▲さて、どこで炙ろう
ゆでこぼしてカットしたモツをどこで炙ろうかという問題が発生した。
魚焼き網に水をしいてから火を当てるのがベストだろう。
だが、問題がある。
網の目が大きすぎて、焼いているうちにモツがこぼれ落ちてしまう危険があるのだ。
もちろん、細かい目の網を用意すれば問題ないだろうが今回は別の方法を模索する。
▲いいものがあった
コンパクトスモーカーと呼ばれる燻製道具があった。これを使おう。
▲細かい網の目がちょうど良さそうじゃないか
▲この上にのせる
ウンウン。いい塩梅だ。さあ始めよう。
▲ゴーという音とともにモツに向けて火炎を放射する
いきなり火炎の登場である。
初めて使うトーチはちょっと怖かったが、慣れてきたら恐怖感はすぐになくなる。
勢いに乗って、バーナーの火力を最大にする。
炎を直接モツにぶつけると、油の焦げるいい香りがしてきた。
ちょっと楽しい。
じゃんじゃん炙ろう。
▲モツから火の手が上がった
火事である。モツの油に熱が入り、全体的に温まったようで、とうとうモツに火がついた。
焼肉屋さんでよく見るあれである。
だがバーナーの炎を消したら自然と消火した。
焼肉屋さんの網の上で肉が燃え上がるのは、恒常的な熱源(炭など)があるからだとよくわかる。
バーナーの火を消せば、モツも静かになる。
ゴー。ゴー。
火加減に注意しながら、何度かひっくり返して炙り続ける。
やがて、モツはこんがり色に変身を遂げる。
さっきまでの奥ゆかしい色白なモツと比べると、小麦色に輝くモツの方が断然魅力的だ。
新入社員だったら「生意気だが何かをやりそうだ」と上司から目をかけられるに違いない。
▲こんな感じで完成。すでにおいしそう
モツの周囲は軽く焦げている。
だいぶ油が落ちたようで、最初の大きさの2/3になっている。ちょっと寂しいが、おいしく食べるための犠牲だと思えば、我慢できる。
余計な油をそぎ落としたとも言えるだろう。
そして、強火で炙ったことで臭みははとんど消えている。
この工程を経ることで、味わいはぐっと変わる。
余計な油と臭みが落ち、うま味が凝縮される。そう、この「炙り」こそ、モツを自宅でもおいしく食べる秘訣(ひけつ)なのだ。
▲スープを作る
どうせだから、鍋のキモとなるスープも作ろう。
まずはキャベツを煮る。
材料は以下のとおり。
- モツ 300g
- 水 600ml
- キャベツ 適当
- にら 適当
- 鶏ガラスープの素 大1(味覇 小1)(顆粒だし 小1)
- 醤油 1/2カップ
- みりん 大1
- 砂糖 大1
- 酒 1/4カップ
キャベツをガンガン煮て、柔らかくなったらニラ以外の全ての材料を投入。
5分ほど煮たらおしまい。
▲最後にニラとお好みで唐辛子とニンニクを散らせば完成である
キャベツの量を多くすれば、カサは増えて甘みも増す。
砂糖の量はお好みで調整したい。
キャベツをたくさん入れると、水分は多くなる。
味が薄くなった場合は、味覇などで味を調整する。醤油の代わりに塩で作ってもさっぱりとしておいしい。
炙ってうまくならないものはない
▲いただきましょう
いただきます。
もう、わかっている、絶対においしいって。
▲見てくださいこのモツの焦げ目を
甘めのスープに、ちょっと香ばしい焦げ目がついたモツが入ると、味わいがぐっと増す。
モツが持つ(ダジャレです)油の甘みがスープに溶け出して、ちょっと例えは悪いが、ラーメンのスープを飲んでいるかのような錯覚に陥る。
鍋の締めは絶対にラーメンがいい。うまい!
▲長男が写り込んだ
「うまいを表現する顔」を必死に作っていたら、モツの焼けた香りに釣られ、長男がふらふらとテーブルに引き寄せられてきた。
甘い匂いに誘われたのはカブトムシだったが、モツ鍋の香りに誘惑されたのは4月から小学校に入ったばかりの6歳児だった。
将来有望である。
そういえば、モツを炙っている時から、息子たちはそわそわしていた。
なぜ人は炙りに引きつけられるのか
味はもちろん、その匂いとダブルで楽しめるからだ。
サーモン、エンガワ、に加えて、モツだって炙ったらうまい。
▲炙った結果、これだけの油が鍋に落ちていた
声を大にして言いたい。いや、小声だって伝わるに違いない。
炙ってうまくならないものはない。
トーチバーナーを買うし、もう炙らないなんて言わないよ絶対。
そんなフレーズが頭を駆け巡った春の夜であった。