炭火焼弁当の専門店「鯖の助」のサバ弁当は奇跡の味【人情メシ】

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フタを開けた瞬間、テンションが上がる弁当がある

どの街にだって、うまい弁当屋がきっとある。うまい弁当の定義とはなんだろう。味がうまいのはもちろんそうだし、弁当ならではの良さを持っていることが大事なんだと個人的には思う。

弁当ならではの良さ。

それは、フタを開けた瞬間の「わー」というテンションの上がり方ではないか。のり弁だとわかっていても、フタを開けた瞬間に妙にテンションが上がってしまう。

 

バーベキューがアメリカンで開放的な性格だとしたら、弁当は大和撫子的な楚々(そそ)とした性格が魅力だ。なにが入っているかは、フタで隠れて見えない。だけど、必ずやおいしさが閉じ込められている。

 

だから私たちは弁当が好きなのだろう。

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▲こんな公園の一角に弁当屋さんがある

 

鯖の助」は都営新宿線の篠崎駅から徒歩5分ほどの幹線道路沿いにある弁当屋さんだ。

テレビなどの露出が多いお店なので「ああ、知ってる」という人もいるかもしれない。

 

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▲どうやら居抜きらしい

 

聞けば昔からこの形状らしく、手前に見えるのは東京都が管理する公園である。

一瞬、違法建築のようにも見えるのだが、まったくそんなことはない。7年前からこの地にお店を構えている。

 

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▲正面からは、まあ普通の弁当屋さんに見える

 

目の前は大きな幹線道路だが、あまりに大きな通りのため、こんな小さな作りのお店が目に入るのか心配になる。

さらに、上の写真を見てもらえばわかるが、お店の前は交通量のある道路になっており、車の往来があまりに多いため、通行人は裏道を歩くのか、日中は人の行き来が少ない。

だがしかし、このお店にはひっきりなしにお客さんが訪れる。

そして、おもいおもいの弁当を注文していく。

 

「絶対にあのお店には行った方がいい」

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▲飛脚のお兄さんも弁当を注文している

 

ちなみに、このお店の存在は知人の食いしん坊カメラマン・木村さんから教えてもらった。彼が取材でお店を訪れた時に、そのたたずまいと味の良さ、そして店主夫妻の人間性に魅了されたのだとか。

 

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▲木村さんが登場する記事

 

木村さんは「絶対にあのお店には行った方がいい」と力強く言い切った。

私はただ、うなずくしかなかった。食いしん坊がそこまですすめる弁当屋さんがどんなお店なのか、ずっと気になっていた。

 

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▲店主の川和さんに話をきいた。逆光がまぶしくてごめんなさい

 

そして私は今、念願がかなってその弁当屋さんの前に立っている。店主の川和さんは、昼の混雑が終わったあとに話をしてくれた。

 

── なぜこの場所でお店をやろうと?

 

f:id:Meshi2_IB:20190222162912p:plain川和さん:もともと釣り船店をやってたんですよ。なかなか繁盛してたんだけど、それよりも魚のおいしさをみんなに知ってもらいたいと思って。

 

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▲なにをやろうというあてもなくこの物件を選んだという

 

魚が大好きで弁当屋さんを始めた川和さん。東日本大震災の影響もあり、釣り船からだんだん弁当屋さんへと比重が大きくなっていったとか。現在は弁当屋さんで手いっぱいで、釣り船店は一時休業中そうだ。

 

── 最初はこの場所で苦労されたのでは?

 

f:id:Meshi2_IB:20190222162912p:plain川和さん:そうですね。変な場所だし、どこかで料理の修行したわけでもない。でも、炭火で魚を焼いたらうまいですから。絶対に評判になると信じていました。

 

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▲お昼時に限らず、営業中は常に煙がもくもく。魚も肉も全部炭火で焼いている

 

風変わりな場所だが、お店から出る煙が目につくという利点もあった。

 

f:id:Meshi2_IB:20190222162912p:plain川和さん:最初は運転手さんたちから評判が広がっていきましたよね。トラックとかタクシーでここを通るドライバーさんが多いから。トラックの無線だったり、タクシーだと会社内の口コミでどんどん広がっていきました。

 

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▲最大16尾も焼けるという焼き台。夏場は暑さとの戦いだとか

 

川和さんは、毎日この場所に8時間近く立ち続ける。ほっけ、しゃけ、さんま、あとは肉も評判だが、一番はやはりサバで、1日に100尾以上は出るのだとか。

 

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▲毎日魚を焼き続けた男の手はかっこいい

 

── 注文を受けてから炭で焼くのは大変でしょう。

 

f:id:Meshi2_IB:20190222162912p:plain川和さん:そうですね。熱いのもそうだし、本当に難しいんです。最初、お店を始める時に市場の人に「炭で魚を焼けるようになるには、5年かかる」って言われてね。そんなにかかるわけねえだろって思ったけど、5年じゃきかなかったね。

 

ただ焼けるのと、おいしく焼けるのはまったく違う。魚はそれぞれ状態が違うし、もちろん炭だって違う。7年経った今も、毎日が試行錯誤で、日々勉強中なんだとか。

 

なぜ「鯖の助」の焼き魚弁当は愛されるのか

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▲かなり大きめの文化干ししたサバを炭火で一気に焼き上げます

 

このお店の弁当は、なぜ愛されるのか。トラック運転手や、仕事で体力を使う人たちから、なぜ絶大な支持を受けるのか。それはご想像のとおり、弁当のボリュームにある。

 

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▲サバ弁当(700円)。大根おろしと醤油がついているのがうれしい

 

ご飯の量が、ちょっとおかしい。文字どおり、山盛りになっているのだ。豆腐みたいな大きさだ。

 

f:id:Meshi2_IB:20190222162912p:plain川和さん:自分で弁当を買った時に、ボリュームが少ないと悲しくなりませんか。

 

たとえば、トラックでの移動など、手軽にご飯を食べられない環境にあるから弁当を買うのだろう。だからこそ、この弁当ひとつでお腹いっぱいになってほしい。

容器からあふれんばかりの大きなサバと、ご飯。

それよりも大きな愛が、この弁当には込められているのだ。

 

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▲弁当を持ち帰ると伝えたところ、袋を二重にしてくれた

 

弁当は、できたてのホカホカを食べるのが一番だとわかっている。

だが、せっかくなのでこのお店を愛してやまないドライバーたちと同じように、すこし時間を置いてから食べてみることにしたい。

 

我慢できない、いますぐ食べたい

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▲このあとゆっくりいただきます

 

お店をあとにする。ちょっと移動して駅のホームなどで食べるつもりだった。

だが、いいタイミングで目の前に電車が来て、思わず飛び乗ってしまった。

食べるタイミングを逸してしまった。私は都営新宿線に揺られ、神保町にある知り合いの出版社に向かった。

お腹が空いて倒れそうなので、ここで弁当を食べさせてくださいと泣きついたのだ。

 

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▲テーブルを借りた。白米は精米したてを炊き上げるので、まだツヤツヤしている

 

さっそくいただこう。弁当はまだほのかに温かい。

サバは文化干しされているが、もともとの身が大きく、炭火で一気に焼き上げたのでふっくらと柔らかい。一口かもうとすると、しなやかな身に一瞬跳ね返される。

その弾力に驚きつつ、さらにかみ締めると、ジュンジュワッとうま味があふれ出す。

あわてて白米をかきこむ。すかさず、今度は大根おろしと醤油をのせたサバを口に放り込む。

そして白米。

ああ、うまい!

 

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▲うまい顔です

 

こんな弁当屋さんが自分のよく通るルートにあったら、ドライバーたちはどんなに心強いことだろう。みんなが一生懸命働くロードサイドで、今日も炭火で狼煙を上げて待っているのだ。

 

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▲あまりのボリュームに会社のみんなが見に来た

 

今じゃちょっと有名になってしまったけど、お客さんはみなこの「鯖の助」を大切なお店だと思っている。だから、暑さにも寒さにも負けずに川和さんは今日も炭火の前に立っている。

 

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▲炭火で焼かれた魚は香ばしい、そしてうまい

 

ここの焼き魚弁当は本当においしいから、みんな食べてほしい。

サバでもお魚でも、丹精込めて焼き上げたおかずに、ご飯が止まらなくなることだろう。

 

お店情報

鯖の助

住所:東京都江戸川区篠崎町6-5-9
電話番号:03-3676-3838
営業時間:11:00~13:30、17:00~20:00
定休日:日曜日、祝日

www.hotpepper.jp

 

書いた人:キンマサタカ

キンマサタカ

編集者・ライター。パンダ舎という会社で本を作っています。尿酸値13の痛風持ち。先日は足を引きずりながら立ち飲み屋の取材をしました。『週刊実話』で「売れっ子芸人の下積みメシ」という連載もやっています。好きな女性のタイプは人見知り。好きな動物は柴犬。好きな酒はレモンサワー。パンダとカレーが大好きです。

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