町中華の名店「すずき」店主・スーさんの焼きそばの作り方【料理人のまかないメシ】

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スーさんの焼きそばは、どうしてこんなにおいしいのか【料理人のまかないメシ】

こんにちは、下関マグロです。

プロの調理人が休憩時間にとる「まかない飯」

いろいろなお店の素敵な「まかない飯」を教えてもらうこのシリーズ、今回はいわゆる「町中華」のオヤジさんに聞いてきました。

 

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JR常磐線三河島駅から歩いて6分。

住宅街の中にあるごく普通の町中華の「すずき」です。

 

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こちらが、店主の鈴木栄八さん。僕はスーさんと呼んでいます。

 

── スーさんは、いつもどんな「まかない飯」を食べているんでしょう?

 

「煮込み丼とか好きでよく食べますね」

 

こちらのお店、お酒をたのむとオヤジさんオリジナルのお通しが出てくるんだけれど、なかでも煮込みは絶品。

煮込みをつくったときは煮込み丼が「まかない飯」になるそうです。

 

── その煮込み丼って、素人でも簡単にできますか?

 

「うーん、ちょっと難しいでしょうね」

 

── ですよねぇ、下処理とか大変そう。では、なにか素人でも簡単にできる「まかない飯」ってなにかありますか?

 

「では、ウチの名物でもある焼きそばなんてどうでしょう」

 

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── おお、これは良さそうです。あ、「まかない飯」とは言いながら、メニューにもあるんですね。

 

「はい、お店で出すものと同じですよ」

 

── つくり方を教わってもいいんですか? ありがとうございます!

 

「材料はこちらです。分量は皆さんのお好みで、このくらいで。お肉は、豚肉ならなんでもいいですよ」

 

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── 材料は普通ですね。あ、いや、この麺は中華の生麺じゃないですか。

 

「焼きそば用に売っている普通の蒸し麺でもいいのですが、ここでは中華の生麺を使うのがポイントなんです」

 

── スーパーで売っているものでもいいですか?

 

「ええ、大丈夫です。蒸し麺よりもラーメン用の生麺を使ったほうが、香ばしくなっておいしいものができるんですよ」

 

── なぜ、香ばしくおいしくできるんでしょうか?

 

「理由はわからないんですが(笑)、町中華のお店ではたいてい中華の生麺を使いますね」

 

── では、まず最初はどうすればいいでしょう?

 

「お湯を沸かします。できるだけたっぷりのお湯が望ましいですね。3リットルくらい」

 

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「お湯が沸騰したら、麺をほぐしながら入れます」

 

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「麺を入れたらよくほぐしてください」

 

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「麺にもよりますが、だいたい3分くらいですかね。麺をつまんでみて、芯がなければ、大丈夫です」

 

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「麺がゆで上がったら、いったん麺を水洗いします」

 

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── 思った以上によく洗うんですね。

 

「ここで、麺のぬめりをよく取ってください」

 

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「で、ここが大切なのですが、水気をよく切ります」

 

ここでも、かなりしつこく絞っています。

実は、ここまでの工程こそが、重要なのでまとめておきますね。

 

【スーさんの焼きそばのPOINT】

  • 焼きそば用の麺ではなく、生の中華麺を使う
  • たっぷりのお湯で生麺をゆでる(1玉で3リットルくらい)
  • よく水洗いをして麺のぬめりを取る
  • よく絞り、水気を取る

 

以上のポイントさえ守れば、おいしい焼きそばはほぼ完成です。

それでは、ここから具材を炒めていきます。

 

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「サラダオイルを入れて、煙が出るまで火を入れてください」

 

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「最初は肉(※今回は豚バラ肉を使用)を炒めます」

 

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「肉に火が通ったら、野菜を入れます」

 

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「さっと炒めたら、麺を入れます」

 

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「塩、うま味調味料、胡椒をそれぞれ少々入れます」

 

── スーさんは上手に鍋をあおって炒めてますが、一般の人にはその炒め方は難しいのでは?

 

「ははは。普通のフライパンを使って、箸でよく混ぜればいいですよ」

 

ここまでは、ごく普通ですね。

しかし、この次がポイントになります。

 

「このタイミングでソースを入れますが、気持ち少なめにしておいてください」

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ここで使用するソースはウスターソースだそうです。

 

「ここから、ソースなどの水気がなくなるまでよく炒めます」

 

これで、出来上がりですね。

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「紅ショウガを添えてください。お好みでソースをかけたり、青のりをかけて召し上がってください」

 

さっそくいただいてみましょうか。

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うぉー、麺がかなり香ばしくておいしいですねぇ。

 

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すばらしい出来の焼きそばです。

これなら、僕は追いソースはせず、むしろそのままいただきたいですね。

そのほうが香ばしいですよ。

 

「ソースを少なめにしているのは、お客さんの好みの味にしてもらうというのもあるんですが、時間を置くと麺がくっついちゃうんですよ、そこにソースをかければ、麺がほぐれるんです」

 

── あー、そうか、まかない飯をつくって、さあ食べようという時に、お客さんがきたら、ちょっと放置しなくちゃいけないですもんね。

 

「それもありますけど、この焼きそばね、すごくお酒にも合うんですよ」

 

うれしそうに笑いながらそう話してくれたスーさん。

なるほど、お酒を飲みながら時間をかけてチビチビ食べる場合にも、麺がくっついたら追いソースをしてみるといいんですね。

さっそく、家でビールを飲みながら作ってみたいです。

 

お店情報

すずき

住所:東京都荒川区東日暮里3-22-7
電話番号:03-3807-0044
営業時間:11:30~14:00、17:00~22:00
定休日:第2月曜日・第4月曜日、不定休(定休日以外にもお休みすることがあります)

 

書いた人:下関マグロ

下関マグロ

1958年生まれ。山口県出身。出版社、編集プロダクションを経てフリーライターへ。『東京アンダーグラウンドパーティー』(二見書房)、『歩考力』(ナショナル出版)『まな板の上のマグロ』(幻冬舎)など著書多数。

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