
ちょっと良い醤油を使うと、普通の食べ物がぐっとおいしくなる
先日、社長の高橋万太郎さんのインタビューで紹介させていただいた職人醤油。
実はこの時に、醤油のタイプ別の特徴や使い分け方についてもいろいろとお伺いしました。
とても興味深いお話で、日々の食事にも役に立つと思われる内容。こんないい話を限られたスペースで書くのはもったいない! ということで、今回はその内容をじっくりとお届けしたいと思います。
その前に、高橋さんの名言をもう一度ご紹介しましょう。
高橋さん:僕、料理をほとんどしないんですよ。ただ、醤油がおいしいと、なんでもおいしくなるんですよ。単純なところですが。回転寿司とかにも、おいしい醤油を持っていくと全然違いますよ。さらにおいしくなります。単純にそれです。
さらに、もうひとつ。
高橋さん:とにかく使ってみてください。僕は日常にある食べ物のなかで一番、醤油が費用対効果が高い食品だと思っているんです。
例えばお肉とかお野菜とかで良いものを買おうとすると、1食あたりに換算して、数円とか数十円高いものを買ってもあまり差はないと思うんです。でも醤油って1食あたりでいうと、1円高い醤油を使うだけで劇的に変わります。すごく良い素材じゃなくても、醤油がしっかりしてるとそれだけでおいしくなります。そういった意味では費用対効果がすごく高い食品だと思います。
そうなのです。
ちょっと高い良い醤油を使うと、普通の食べ物がぐっとおいしくなるのです。
そこで今回は、スーパーで売っているごく普通の食べ物に、それぞれに合う醤油をかけて食べてみました。
6タイプの醤油を比べてみる
醤油のタイプは、JAS規格によると5種類に分類されます。
職人醤油では、それに甘口醤油を加えて6タイプとして紹介しています。甘口醤油はJAS規格では濃口醤油に分類されるもので、九州などの甘い醤油を指しています。

(画像提供:職人醤油)
こちらが職人醤油による醤油の分類表です。
白醤油、淡口醤油、甘口醤油、濃口醤油、再仕込醤油、溜醤油。
左の醤油ほど色が淡くてしょっぱく感じ、右の醤油は色が濃くてうま味を感じます。

それぞれのタイプで、職人醤油おすすめの一本を選んでいただきました。
白醤油

▲しろたまり/日東醸造・愛知県碧南市 100ml (411円)
【白醤油とは】
醤油の中でもっとも色の淡い琥珀色をした醤油。主原料は小麦で熟成期間は短く、うま味も抑えてあるので素材を活かすための醤油という存在。炊き込みごはんに使うと醤油の色がつかず、お吸い物や茶碗蒸しなども彩り豊かに仕上がります。(職人醤油HPより)
淡口醤油

▲淡紫/末廣醤油・兵庫県たつの市 100ml (540円)
【淡口醤油とは】
西日本でおなじみの淡い色の醤油。煮物やお吸い物など素材の彩りや出汁を活かしたい料理に使われます。淡口醤油が使われている地域では濃口醤油と淡口醤油の2本が家庭にあるケースが多いです。(職人醤油HPより)
甘口醤油

▲さしみ醤油/久保醸造合名会社・鹿児島県鹿屋市 100ml (411円)
【甘口醤油とは】
九州や北陸などでは一般的な存在。海沿いの地域ほど甘みが強かったり、それぞれの土地に根ざした醤油。地域によって甘さが驚くほど異なる。焼きおにぎりや卵かけご飯は人気が高い。白身の刺身にも。(職人醤油HPより)
濃口醤油

▲平右衛門/鈴木醤油店・福島県岩瀬郡天栄村 100ml (462円)
【濃口醤油とは】
一般的な醤油です。流通量の8割はこれで東日本ではほとんどが濃口醤油。新鮮なものは綺麗な赤褐色で、北海道から沖縄まで各地で生産されています。万能という言葉がぴったりでつけ醤油から料理用途まで何にでもよく合います。(職人醤油HPより)
再仕込醤油

▲鶴醤/ヤマロク醤油・香川県小豆島 100ml (462円)
【再仕込醤油とは】
熟成期間の長い濃厚な醤油。醤油で醤油を仕込む製法で、濃口醤油に比べて2倍の原料と2倍の期間を要します。味と香りのバランスがよく、刺身に合わせる醤油として、まずお試しいただきたい醤油です。(職人醤油HPより)
溜醤油

▲尾張たまり/丸又商店・愛知県武豊町 100ml (462円)
【溜醤油とは】
大豆を主原料に仕込水を少なくすることでうま味を凝縮させた醤油。熟成期間も長くなるので見た目は濃く独特の香りを有することも。うまみ成分は醤油の中でもトップクラスなので、そのままつけ醤油としてや照り焼きに使うと綺麗な照りが出ると好評。(職人醤油HPより)
醤油をそのまま舐めた時と、食べ物にかけた時の違い
さて、自分たちで「きき醤油」をしてみることにしました。「きき醤油」の方法は高橋さんに教えていただきました。
高橋さん:まずお皿に醤油だけ出して、醤油だけ舐めてみてください。何種類か並べて舐めてもらって、自分だったらどれがおいしいかっていうのを決めてもらう。それをみんなで話し合うと、多分(好みが)分かれるはずです。

醤油を小さい容器に注ぎます。「きき醤油」メンバーは6名でした。

出してみると、色の違いもはっきりわかります。

6名がそれぞれ、6タイプの醤油を舐めてみました。

醤油そのものを、そのまま舐める、というのも新鮮な体験です。舌の上に乗せてゆっくり味わってみると、なるほど、味の違いがはっきりと感じられます。
ここで、メンバーそれぞれが一番おいしいと思う醤油を選んでもらいました。
結果、6名中、白1名、淡口1名、甘口2名、再仕込2名。
好みがはっきりと分かれる結果になりました。
さらに、醤油はかける素材とのバランスで感じる味やおいしさが違うということなので、まずは豆腐にかけて試食してみることにします。
高橋さん:豆腐でも、いわゆる「普通の豆腐」と、大豆の味をしっかり感じるような「おいしい豆腐」だと合う醤油が違います。
とのことなので、今回はスーパーで買った「普通の豆腐」を使ってみました。
豆腐にかけて味の違いを比べてみた

それぞれの醤油を豆腐にかけます。

ひと口ずつ味わってみて、ここでまた一番おいしいと思う醤油を選んでもらいました。
すると、淡口1名、濃口3名、溜2名、と先ほどとはまったく違った結果が出ました。
さっきは票が入らなかった濃口が3名、溜が2名になっています。
高橋さん:塩だけで食べたいような「おいしい豆腐」には、しょっぱさのある淡口醤油が合いますね。豆腐の持つ甘みを引き立てます。一方、「普通の豆腐」には、濃厚なうま味たっぷりの醤油。豆腐を包み込み、甘ささえも感じる味わいになります。
本当に、濃厚な醤油をかけると「普通の豆腐」にコクがあるように感じられるのです。
素材の味を引き立てる醤油の効果について、さらにいろいろと試してみましょう。
素材を活かすナンバーワン選手「白醤油」
白醤油は、素材のうまみを引き立てます。

というわけで、今回はちょっと高級なおいしい玉子で作った温泉玉子にかけてみましょう。

色が薄いので、見た目も上品な感じがしますね。

もともと濃厚な温泉玉子の味に、コクがプラスされています。出汁をかけるよりも、より玉子本来の味がわかる感じがします。
料理上手には欠かせない「淡口醤油」
西日本で、煮物やお吸い物など主に料理に使われることが多い淡口醤油。

素材によっては刺身にも合います。準備した刺身盛り合わせのなかから、淡口醤油に合うものを選んでみましょう。

淡口醤油は、刺身のなかでは白身、ホタテや甘エビなど、レモンや塩、オリーブオイルをかけたくなるような繊細な素材に合うようです。
今回は、ホッキ貝につけてみましょう。

ホッキ貝の風味を邪魔せず、うま味を引き出している感じがします。

さらに納豆は、タイプによって醤油を使い分けると良いそうです。
「こだわり納豆」の大粒には溜醤油、小粒には淡口醤油。「普通の納豆」の大粒には濃口醤油、小粒にはだし醤油(※だし入りの醤油の総称。職人醤油では各タイプのものが販売されています。だし醤油好きのあなたへ5本 )。

今回は、ちょっと高い国産大豆使用の「こだわり納豆」小粒なので淡口醤油をかけてみましょう。

砂糖を入れていないのに、大豆の甘い味わいが感じられます。この納豆は後ほど白ご飯にかけて食べたのですが、大豆の味も米の味も甘みが引き立って絶品でした。

さらに、先ほど比較に使ったのとは違う、味の濃厚な「おいしい豆腐」にもかけてみました。
なるほど、これも豆腐の甘さを感じられます。
九州では一般的!? 驚きの甘さ「甘口醤油」
九州で飲食店に入ると、卓上の醤油がみんな甘くて驚いた、という話をよく聞きます。
特に刺身につけるのは、基本的に甘口醤油のようです(九州の読者の皆さん、実際のところ、どうですか?)。
他の地方の人には違和感があるかもしれませんが、素材によってはおいしくいただけると思います。

試しに、かまぼこ、いわゆる板わさに甘口醤油を使ってみました。
甘い。
しかし、これはこれで良いですね。それほどこだわりの素材ではない、いつもの素材に甘口醤油を使ってみると、気分が変わって新鮮だと思いました。

イナダの刺身。けっこう脂がのっていて、まったりとした身です。
甘口醤油をつけると、醤油の甘さがちょっと気になります。お酒と合わせるなら、濃口醤油の方が良いかも、と思いましたが、白ご飯と供にいただくなら甘口醤油、おおいにアリです。漬け丼にする時にも、甘口醤油を使えば、味醂いらずでおいしくできると思います。
この甘口醤油は、好き嫌いが結構わかれるものだと思いますが、皆さんはいかがでしょう?
どんな料理にも万能な醤油といえば「濃口醤油」
一般的な醤油が濃口醤油。料理にも刺身にも万能です。いつも使う醤油だからこそ、おいしいものを選びたいです。

どんな刺身にも合います。今回はタコの刺身に合わせてみました。

タコのさっぱりした味にうま味が加わって、さらにおいしくなりました。おいしい醤油を使うと、食べ物がおいしくなるという見本のような感じです。

こちらの納豆は「普通の納豆」大粒、なので濃口醤油を合わせてみました。

納豆のコクが増したように感じられ、この醤油自体のうま味も味わえます。
2倍の原料と2倍の時間で超濃厚な「再仕込醤油」
とにかく濃厚でコクのある再仕込醤油は、刺身でも特にマグロに合うそうです。

ごく普通のスーパーで売っている、脂のりの控えめな、マグロの赤身です。

再仕込醤油のうま味に包まれて、マグロが何段階か高級になったように感じられます。これからは安いマグロで大丈夫。
濃厚でうま味も素晴らしい「溜醤油」
うま味の強い溜醤油は、かけた素材をうま味で包み込みます。

試食にも使った「普通の豆腐」。定食のつけ合わせにしかならないような味の薄い豆腐も、溜醤油をかけるだけで、うま味たっぷりに。立派につまみの一品になります。

そして、これをやってみたかった、玉子かけご飯。ご飯も鍋で炊いた「ゆめぴりか」です。これはもう、間違いなしのおいしさでしょう。

たっぷりめにかけます。

黄身をちょっと崩して、

いただきます……これはうまいに決まってます!
あえてご飯と玉子を混ぜず、ひと口ごとに玉子の量と溜醤油のかかり具合の違いを楽しんで食べてみました。
溜醤油のおかげで、全体がまろやかにまとまります。
毎日この玉子かけご飯が食べられたらどんなに幸せなことでしょう。

さて、溜醤油には、こんな使い方もあります。

アイスクリームにとろ〜り。

アイスクリームにはいろいろな醤油が合うのですが、溜醤油は特に濃厚な感じになります。
ちなみに、職人醤油のセット商品に「アイスに醤油 5本」というものがありますので、何種類か試してみたい方はこちらをどうぞ。

恐る恐る食べていた人もいますが、感想はみんな、「おいしい!」。
甘じょっぱいスイーツだと、日本にはみたらし団子がありますね。そうなのです、醤油と甘いものは合うのです。
火入れもろ過もしていない、「生揚(きあげ)醤油」って?
【生揚(きあげ)醤油とは】
諸味を絞ったままの醤油。火入れもろ過もしていないので微生物が活動しています。そのため、一般的に流通することは少なく、醤油蔵併設の直売所なので限定的に販売されています。(中略)流通と保存が難しく冷蔵保存が基本になります。(職人醤油HPより)
生揚醤油は、「火入れもろ過もしていない醤油」のこと。つまりそれぞれの醤油に「生揚」があるので、タイプもそれぞれ違う、ということになります。
職人醤油で現在取り扱っているのは2種類。
濃口の「吟醸純生しょうゆ」と再仕込の「搾ったまんまの鶴醤」です。
どちらも1ml単位で量り売りをしていて、持ち込みの容器に入れてもらうこともできるし、職人醤油の瓶に入れてもらうこともできます。(代金に瓶の価格がプラスされます)
生揚(きあげ)醤油は、職人醤油では、前橋本店と松屋銀座の直営店でのみ取り扱っています。量り売りで好きな量で買うこともできます。
生揚醤油

▲吟醸純生しょうゆ/弓削多醤油・埼玉県坂戸市 (1mlあたりの価格:180ml未満2.70円、180ml以上2.16円)
搾ったまんまの鶴醤/ヤマロク醤油・香川県小豆島 (1mlあたりの価格:180ml未満3.24円、180ml以上2.70円)
高橋さん:醤油は瓶詰めの前に、火入れをするか、ろ過するのが一般的です。微生物が生きている状態の醤油を瓶に詰めて、常温のところにおいておくと、発酵を続けて蓋が飛んでしまうんです。
冷蔵保存が基本、という生揚醤油。おいしい使い方も教えていただきました。
高橋さん:火入れしていない醤油は香りがそんなにありません。火入れすると、そこで初めてふわっと良い香りが立つんです。ですので、生揚醤油を料理に使って、その時点で火を入れると、醤油の本当に作りたての、最高の香りが味わえるんです。

そこで、料理をしながら生揚醤油に火入れをするべく、焼きおにぎりを作ってみました。
ちなみにこの調理器具は、「ザイグル」という赤外線ロースターです。
使った醤油は「搾ったまんまの鶴醤」。上にも出ている再仕込醤油の生揚醤油です。

こんがり焼けた焼きおにぎりに、生揚醤油を塗ります。

それをさらに焼きます。ジリジリと上火で焼かれて、醤油の良い香りが立ち上がってきました。
なるほど、これが火入れしたての、出来上がったばかりの新鮮な醤油の香り!
これはぜひ、皆さんにも体験していただきたいです。

香ばしい!
醤油以外になにも入れてないのに、甘みとコクもあります。
冷蔵庫に生揚醤油を常備したら、手軽にこんなおいしさを味わえるのですね。

肉にも合わせてみましょう。

こんがり焼けた鶏もも肉の皮に、生揚醤油をジュッとかけて、全体になじませます。
鶏もも肉の皮から脂が滲み出るので油も敷かず、生揚醤油以外の調味料もなにも使わずに仕上げます。
肉の香ばしさと、醤油のわずかに焦げる香りが混ざり合って、なんともいえない食欲をそそる香りが立ち上ってきます。

出来上がり。パリっとした皮から香ばしい香りが漂って、複雑なうま味もしっかり出ていて醤油だけの味つけとは思えません。
本当に、おいしい醤油さえあれば、料理も簡単なんですね。

日本全国には個性豊かなおいしい醤油がたくさんあります。

醤油を知ると、毎日の食生活がさらに楽しくなると思います。
皆さんもいろいろな醤油を試されてみてはいかがでしょうか。
お店情報
職人醤油 前橋本店
住所:群馬県前橋市西片貝町5-4-8
電話番号:027-225-0012
営業時間:10:00〜18:00
定休日:月曜日



