名古屋人は鶏を美味しく食べる天才かもしれない。幻の郷土料理「ひきずり鍋」を食す【とり日和 今池店】

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最近、鶏胸肉が高タンパク低カロリーってことで注目を集めているらしい。鶏肉が大好きな名古屋人の私は「何を今さら。フン!」と、鼻で笑っている次第である。

名古屋人にとって、鶏肉は今も昔も日常的に食べている身近な食材。街の至る所に鶏料理店があるのを見ればわかるだろう。

 

原点回帰の手羽先唐揚げ

名古屋の鶏料理の中でもっともメジャーなのが、甘辛いタレとコショウで味付けした手羽先唐揚げだ。

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そこで、紹介したいのが千種区内山にある鶏料理店「とり日和 今池店」。

 

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こちらの「元祖肉汁じゅ~しぃ手羽先」は、今年6月に栄の久屋大通公園で開催された「第4回手羽先サミット」に初出店し、全28店を押しのけて第4位となる金賞を受賞した。

 

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これが「元祖肉汁じゅ~しぃ手羽先」(5本 500円)。

 

高温で一気に揚げることで、皮はパリパリ。かむごとにジューシーな肉汁がじゅわっとあふれ出す。

タレとコショウのバランスも秀逸で、いくらでも食べられる。金賞受賞も納得だ。

 

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「とり日和 今池店」のオーナー、伊藤彰浩さんはこう話す。

 

「醤油とみりん、にんにく、コショウのバランスを考えながら、試作を繰り返しました。結果、地元で昔から親しまれてきた味にたどり着きました。ウチは老舗でなければ有名店でもありませんが、金賞をいただけたのは、手羽先唐揚げの原点に回帰したからだと思っています」

 

いちいちうまい鶏料理の数々

伊藤さんは市内の高級ホテル内のフレンチレストランで修業していたが、事情があって料理人の道を断念、別の仕事に就いていた。

しかし、どうしても夢を諦めることができず、長いブランクがあったものの、2011年、愛知県稲沢市に「とり日和」を開店させた。ここ今池店は昨年11月にオープンした。

 

「高級な料理もそれはそれで結構ですが、もっと大衆的なお店をやりたいと思ったんです。だったらやはり鶏料理だろうと。名古屋では手羽先が有名ですが、西尾張地方で昔から食べられていた鶏を使った郷土料理があるんですよ。手羽先と同様に、ビールとめちゃくちゃ相性がイイんです」(伊藤さん)

 

鶏を使った西尾張地方の郷土料理、それは「ひきずり鍋」というらしい。「とり日和 今池店」には、それをメインとした「ひきずり鍋コース」(3,500円)があるので、順番に料理を出してもらうことに。

あ、写真は2人前で、日によっては内容が替わることもあるので、ご了承を。

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付きだしは、「砂肝ポン酢」。

新鮮な砂肝を使用しているため、くさみもなくて食べやすい。ポン酢の酸味が食欲をかき立てる。

 

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続いて、焼き物。

この日は「もも肉の八丁焼」(手前)と「胸肉のにんにく醤油焼」(奥)。

実はこれら鶏焼肉もここの名物。味の要となるタレの味付けは、フレンチで学んだソース作りが生かされているという。もも肉はジューシーな肉汁が八丁味噌ベースのタレと相まって、むちゃくちゃうまい! 胸肉もにんにく醤油が肉のうま味を見事に引き立てている。このひと皿だけで生中が空になるほど。

 

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さらに揚げ物。この日は左から、前に紹介した「元祖肉汁じゅ~しぃ手羽先」と「うずら玉子」、そして「もも肉の串かつ」。

テーブルには、にんにく醤油や合わせ味噌、八丁味噌、梅、ネギ塩、塩麹、ブラックペッパーと7種類もタレや調味料が完備。単調になりがちな串揚げが飽きることなく、おいしく食べられる。

 

西尾張の郷土料理、「ひきずり鍋」

いよいよメイン! これが「ひきずり鍋」だ。

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鶏の水炊きと違って、つゆが少ないが……。

 

「『ひきずり鍋』とは、鶏肉を使ったすき焼きなんです。食べる際に鶏肉を鍋の底をひきずるから、その名前が付いたという説があります。私の親の世代は、『過去をひきずらないように』と、大晦日の夜に食べる縁起物だったようです」(伊藤さん)

 

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鶏肉は愛知県奥三河産をはじめ、国産鶏のもも肉を使用。ほかの具材は、ネギと厚揚げ、椎茸、カマボコ。つゆは醤油とみりん、味噌、砂糖、塩、酒など。

名古屋人好みの甘辛い味付けに仕上がっている。煮込むほどに鶏のうま味が染み出してどんどんうまくなる。

 

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具材がつゆの色に染まった頃が食べ頃。かむごとにつゆの深いコクともも肉のジューシーなうま味が広がる!

口の中に残る味をビールで流し込んで、再び食べる。

 

もう、永遠に食べられるじゃないかっ!

 

私も含めて名古屋人にとってはどこかで食べたことのある、懐かしい味わいだ。県外の方は逆に新鮮な感動を覚えるだろう。

 

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「ひきずり鍋」は、牛肉のすき焼きのように溶き玉子に絡めて食べる。〆にご飯が付くので、残った玉子を鍋に投入して、玉子丼にして食べるのがオススメだ。

それにしても、こんな魅力的な郷土料理なのに、なぜあまり知られていないのだろうか?

 

「昔はどの家も鶏を飼っていて『ひきずり鍋』にはその肉を使っていたと思うんです。実際、それがきっかけで鶏肉が嫌いになったという方は私の親世代には多いですからね。それで作らなくなって、文化が途絶えたのではないかと思います。鶏肉でもこんなにもおいしいすき焼きができるんだということを伝えたくて、メニューにくわえたんです」(伊藤さん)

 

「ひきずり鍋」は、県内の鶏料理専門店でもまだ出しているところは少ない。

ビールとの相性がイイだけに、夏場にブレイクしても良さそうなのだが。

まだ食べたことのない方は是非!

 

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コースを締めくくるのは、伊藤さん自慢の「杏仁豆腐」。素朴な甘さが口の中をリセットさせてくれる。

ごちそうさまでした!

 

お店情報

とり日和 今池店

住所:愛知名古屋市千種区内山3-6-14
電話:052-731-3788
営業:16:00~23:00
定休日:不定休

toribiyori-imaike.com

※この記事は2017年6月の情報です。
※金額はすべて税込みです。

 

書いた人:永谷正樹

永谷正樹

名古屋を拠点に活動するフードライター兼フォトグラファー。地元目線による名古屋の食文化を全国発信することをライフワークとして、グルメ情報誌や月刊誌、週刊誌などに写真と記事を提供。最近は「きしめん」の魅力にハマり、ほぼ毎日食べ歩いている。

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