名古屋洋食界のレジェンド、邨井(むらい)シェフが編み出す洋食メニューが奇想天外すぎる

味噌おでん? いいえ、「フレンチおでん」です。愛知・栄「シェフむらい」は名古屋で洋食界で知らぬ人はいない凄腕シェフの店。洋食屋の定番メニューの「オムライス」や「カニクリームコロッケ」も、どこかフレンチを感じられておしゃれ。「フォアグラ入りお好み焼き」なんて、すごく気になりませんか?

エリア栄 (愛知)

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まず、この写真をご覧いただきたい。

鰹(カツオ)と昆布で丁寧にとった和風ダシがシミシミの大根の上に、名古屋ならではの豆味噌ベースの甘辛い味噌ダレがとろーり。

これから寒くなる季節にぴったりの味噌おでんと思いきや……。

 

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「ちがーう! これはウチの名物の“フレンチおでん”の一つ、『大根とポルチーニ茸のデミグラスソース』(500円)!」

そう話すのは、名古屋市中区錦三丁目にある洋食店「シェフ むらい」のオーナーシェフ、邨井清隆さん。

 

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フッ、フレンチおでん!? つまり、ポトフのようなものだろうか?

まったく味が想像できないので、とりあえず食べてみることに。

んんっ? 大根をかむごとにコンソメの上品な味と香りがジュワッとあふれ出す。味噌ダレとそっくりなデミグラスソースは、味に深みがあり、ポルチーニ茸の香りと相まってメチャうま! キリッと冷えた白ワインと合わせたい!

 

まだある! フレンチおでん

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フレンチおでんは、ほかにも玉ねぎを丸ごと煮込んだ「小さな玉ねぎの粒マスタードソースとトリュフ添え」(680円)もある。

 

辛子マヨネーズと粒マスタードを合わせたソースに自家製のトリュフオイルをくわえて仕上げた一品だ。じっくりと煮込んで引き出された玉ねぎの甘みと、鼻から抜ける辛子の刺激とトリュフの香りがたまらない。

 

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こちらは冷製のフレンチおでん「まるごとトマトの大葉ソースとパルメジャーノ」(780円)。

 

トマトの上にかかっているのは、大葉で作ったジェノバソース。

レシピ通りにバジルのジェノバソースにすると、かなりイタリアン寄りになってしまうが、大葉を使うことで食べ慣れた和の味わいになるから不思議。大葉の心地良い清涼感とトマトの酸味、チーズのコクが一体となる。

 

これもうまいなぁ。

 

開店の動機は原点回帰

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「シェフむらい」は、2012年に栄三丁目にて開店し、昨年7月に現在の場所へ移転オープン。

 

オムライスやハンバーグ、カニクリームコロッケなど定番の洋食は言うまでもなく、旬の食材を使った創作料理も定評がある。それらをバランスよく組み合わせたコース(5,000円~)も好評だ。

 

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「スープの代わりに味噌汁を付けたり、ナイフとフォークではなく、箸で食べるような庶民的な洋食もあるよね? もう少しグレードが高くて、普段着ではなく、オシャレして行きたくなるようなお店にしたくてさ」と、邨井さん。

 

実は、邨井さんは名古屋の洋食界では知らない人はいないほどの凄腕シェフ。

市内にある有名ホテルのレストランに勤務した後、飲食店の料理指導に携わった。1999年、栄に「洋食&ワイン むらい」をオープンさせた。

その評判はすさまじく、市内外に数店舗展開するほどに。しかし、メニュー開発や後進への指導が多くなり、包丁を握る機会が減ったことから、シェフとして原点回帰すべく「シェフむらい」を開店させたのだ。

 

これがお好み焼き!?

「今も昔も定番の料理に新しいメニューを加えていた。ほかのお店ではないものや、見て驚くようなものをね。でも、味のベースとなるのは、定番にも使っているコンソメやデミグラスソースだから、違和感なく食べられるよ。ほら、これもウチの名物だ」

 

そう言いながら邨井さんが出してくれたのは……。

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「フォアグラ入りお好み焼き ビストロ風」(1,000円)。

 

肉の代わりにフォアグラを、キャベツの代わりにエシャロットが入っていて、お好み焼きソースとデミグラスソースで味付けしたひと品だ。

お好み焼きのように、山芋と卵を入れてオーブンでふんわりと焼き上げている。口の中でスッと溶けて、エシャロットの香味ともにフォアグラの風味が広がる。

しゃれっ気たっぷりに「お好み焼き」、とメニュー名にあるが、まったくの別物。

 

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「攻め」の洋食

邨井さんの創作洋食を食べながら思ったのは、老舗と呼ばれる洋食店との違い。老舗洋食店の店主は、先代が作り上げた味がすべてであり、それをかたくななまでに守り、伝えていくのが使命なのだ。いわば、「守り」である。一方、常に新しいメニューを提供し続ける邨井さんは「攻め」。どちらがイイとか優れているという話ではないが、味に対するスタンスがまったく異なるのだ。

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例えば、洋食の定番であるオムライスも邨井さんの手にかかると、従来のものをブラッシュアップさせたオリジナルなひと品となる。

写真は「幸せを運ぶピータースペシャルオムライス」(1,800円)。

 

一見、ごくフツーのオムライスに見えるが……。

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ご飯の味付けはケチャップではなく、自慢のデミグラスソース。牛スジの脂で香味野菜をあめ色になるまで炒め、アクを取りながら毎日コトコトと煮込むという。

濃厚なコクを出すとともに舌触りのよい、なめらかな口当たりにするためソースをこしてはまた煮込む。それを繰り返すこと、なんと1カ月!

このデミグラスソースで味付けしたご飯は、肉と野菜のうま味が凝縮された甘みの中にほんのりとほろ苦さを感じる。具材はデミグラスソースと相性の良いきのこと牛肉。

うん、これはまさに大人の味だ。自分へのご褒美として堪能したい。

 

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お店情報

シェフむらい

住所:愛知名古屋市中区錦3-4-15 ヒグチビルB1
電話番号:052-961-8777
営業時間:11:30~14:00、17:00~23:00 ※土曜日は12:00~21:00、日曜16:00~21:00
定休日:月曜日、祝日

www.hotpepper.jp

※この記事は2017年9月の情報です。
※金額はすべて税込みです。

 

書いた人:永谷正樹

永谷正樹

名古屋を拠点に活動するフードライター兼フォトグラファー。地元目線による名古屋の食文化を全国発信することをライフワークとして、グルメ情報誌や月刊誌、週刊誌などに写真と記事を提供。最近は「きしめん」の魅力にハマり、ほぼ毎日食べ歩いている。

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