「すた丼」不毛地帯にひとすじの光が……!地元風にアレンジした「名古屋スタ丼」が肉好きな名古屋民をザワつかせている

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豚バラ肉にニンニクのきいた醤油タレを絡めて生卵をのせた「すた丼」。いまやすっかり丼物の定番アイテムになっている感すらある。

が、私はテレビやネットで「すた丼」を見かけるたびに溜息をつく。

 

名古屋には「すた丼」が、ない。

なぜ、ないんだ。

 

食べようにも名古屋にはお店自体がないのである。

失礼を承知の上で言わせてもらうが、名古屋よりもはるかに田舎の福井石川富山にもあるし、さらには海外にも進出しているというのに、だ。

 

しかーし!

ある日、見つけてしまったのである。この名古屋で。

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その名も名古屋スタ丼本舗」。新栄にある豚料理店「とんと」で11時から15時までのランチタイムに間借り営業している。

 

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「1年前に天白区で創業しました。もっと人が集まる場所に移転したいと考えていたときに『とんと』のオーナーから声をかけてもらい、2017年10月からここで営業しています。その際に豚肉を『とんと』でも使っている岐阜県産の瑞浪ボーノポークに変えました。従来の味よりも数段グレードアップしたと思います」

 

そう話すのは、店主の伊藤達哉さん。大学卒業後、東京でイタリアンのシェフとして働き、5年前に名古屋へ戻ってきた。

なぜ、イタリアンではなくスタ丼(お店の名前に合わせて以降は“スタ丼”)だったのか。

 

東京では知名度抜群の『すた丼』が名古屋にはなかったのがショックで(笑)。ただ、アノ味はパンチがありすぎて地元では受け容れられないと思いました。名古屋の味覚に合わせたものを作り、地元で第一号のスタ丼専門店にしようと思ったんです」(伊藤さん)

 

なるほど、東京の「すた丼」の単なる完コピではなく、名古屋風にアレンジしているというわけか。

 

味の決め手は八丁味噌

では名古屋風スタ丼とはいったい、それはどんなものなのか。実際に作っていただいた。

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まず、フライパンで瑞浪ボーノポークのバラ肉を焼く。

 

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火が通ったら、ネギと自家製のタレをくわえる。

この香り、もしかして……。

 

「ハイ。お察しの通り、八丁味噌がベースです。コクと甘みを出すために、落花生のペーストをくわえています。これが味噌と相性抜群なんですよ」(伊藤さん)

 

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タレがバラ肉になじんだところで火を止めて、丼にオン。

 

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仕上げに、これまた味噌と相性の良い温泉卵をのせて完成!

こんなの、おいしいに決まってるぢゃないかーっ!

 

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これが「名古屋スタ丼・赤」(並盛900円)。

ちなみに大盛は1,100円、デラ盛は1,300円。

 

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どんな食べ方をしてもイイとのことだが、私はつぶした温泉卵の黄身をバラ肉に絡めて、いっただっきまーす。

 

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瑞浪ボーノポークの脂の甘みと八丁味噌のコク、そこに卵黄のマイルドさがプラスされてメチャクチャうまい!

同時に、どこかで昔食べたことのあるような懐かしさも感じる。地元においては慣れ親しんだ味だろう。なるほど、これが名古屋風なのか。

 

最強のシメ「スタまぶし」

あまりのうまさに丼をひっつかんでかき込んでいると、

 

「あっ! 1/3くらいは残しておいてくださいね! まだまだお楽しみがありますから」

と、伊藤さん。

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言われたとおり、肉とご飯を1/3ほど残した。すると、伊藤さんは肉の上にワサビをのせて、その上からお吸い物をぶっかけたではないか!

 

「これが“スタまぶし”です。ちなみにだし汁はかつおだしにほんの少しだけボーノポークのラードが入っています。ワサビとだし汁で味変するところも名古屋っぽいでしょう(笑)? この『赤』に限らず、すべてのメニューでお楽しみいただけます」(伊藤さん)

 

かつお節でていねいにとっただし汁に溶け出す瑞浪ボーノポークのうま味と味噌ダレのコク。そしてアクセントにワサビ。

これ、最強の〆メシだ!

 

台湾ミンチを使ったスタ丼も

名古屋スタ丼は、八丁味噌ベースの「赤」のほかに、鶏だしと醤油で味付けした「白」(並盛900円)も用意している。

 

さらに名古屋っぽいのが、これ!

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名古屋のご当地麺、台湾ラーメンの上にのる台湾ミンチをトッピングした「自家製台湾ミンチスタ丼」(並盛1,000円)。

辛そうに見えるが、肉のうま味を損ねないように、絶妙なバランスに仕上げてある。台湾ミンチそのものもしっかりとしたうま味があり、ちまたのそれとは完全に一線を画している。

 

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「ベースとなる調味料のヤンニンジャンは、ニンニクと唐辛子、醤油をブレンドした自家製です。ミンチはもちろん、ボーノポークを使っています。バラ肉はシンプルに塩とコショウで味付けしていますので、台湾ミンチの味をより引き立てます」(伊藤さん)

 

「喜楽」のタレとコラボ

伊藤さんが激オシするのは、この「極みスタ丼」(並盛1,000円)。ほかのスタ丼と違って、かなりシンプルに見えるが、どこが「極み」なのだろう……。

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ご飯をバラ肉に巻いてパクリ……。

おおっ! この上品で深みのある味わいはいったい何なんだ!?

 

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岐阜中津川市にある創業75年の老舗五平餅店『喜楽』とのコラボメニューです。五平餅のタレには、醤油や砂糖のほか、クルミやゴマ、落花生がたっぷりと入っています。これがボーノポークとの相性が抜群なんですよ。あまりのうまさに赤や白に使う薬味のネギも要らないと思い、彩りを考えて芽ネギをのせました」(伊藤さん)

 

従来のメニューを独自にアレンジして、まったく別の新しいものにしてしまうのが名古屋めしの特徴である。今回紹介した「名古屋スタ丼」はその最たるものといえよう。

いや、それとも「すた丼」は特定のお店の名物ではなく、もはや一つのジャンルとして確立されている証なのだろう。

 

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お店情報

名古屋スタ丼本舗

住所:愛知名古屋市中区新栄1-8-17
電話番号:052-212-7729
営業時間:11:00~15:00
定休日:日曜日

twitter.com

 

書いた人:永谷正樹

永谷正樹

名古屋を拠点に活動するフードライター兼フォトグラファー。地元目線による名古屋の食文化を全国発信することをライフワークとして、グルメ情報誌や月刊誌、週刊誌などに写真と記事を提供。最近は「きしめん」の魅力にハマり、ほぼ毎日食べ歩いている。

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