【検証】名古屋駅の新幹線ホームで食べるきしめんがサイコーにウマい説、ホントのところどうなんだ?

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4年ほど前から、きしめんのおいしさに目覚めた私。以来、少なくとも週イチのペースで食べている。市内の有名店も数多く取材してきた。

だから、愛知県外の人からの「名古屋できしめんが食べたいんだけど」とのリクエストに応じることくらい今は朝メシ前である。

 

しかし、ひと昔前はそうではなかった。

おいしいきしめんを食べさせてくれるお店を知らなかったため、半ば苦し紛れに紹介していたのが……

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名古屋駅ホームのきしめん。

 

もちろん、何度も食べたことがあるし、おいしいと思っていた。

だが有名店の、手打ちの麺やつゆにとことんこだわったきしめんに出会って以来、すっかり足が遠のいていた。

それどころか、名古屋を訪れたお笑い芸人や芸能人がテレビで駅ホームのきしめんを絶賛していたりするのを冷ややかな目で見ていた。

一般の方々でも、誰だってこんなうわさを一度は耳にしたことがあるんじゃなかろうか。

そう、名古屋駅、東海道新幹線のホームで食べるきしめんがサイコーにウマい」説である。

 

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しかし、私自身、駅ホームのきしめんについて、どれだけ知っているのか。

今回は、駅ホームのきしめんのつゆを徹底的に分析して、名古屋めしライターとして人にすすめられるかどうかを検証してみようと思う。

 

名古屋駅のきしめんは2種類に分かれる

ってことで、入場券を買ってホームへと向かった。

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まず名古屋駅のプラットホームをチェックしておきたい。

  • 在来線ホーム=1・2番線~7・8番線、10・11番線と12・13番線まで計6本
  • 新幹線ホーム=14・15番線と16・17番線の2本

以上の合計8本のホームがある。

きしめんは、12・13番線を除くホーム内の全11店舗で食べられる。新幹線ホームだけでなく、在来線のホームでも食べることができるというわけだ。

 

「きしめんは、1961(昭和36年)に3・4番線と5・6番線のホームで販売したのがはじまりです」と話すのは株式会社ジャパン・トラベル・サーヴィス名古屋営業所の桑原栄介さん。

現在、桑原さんの会社では、名古屋駅ホームのきしめん店「住よし」7店と「憩 いこい」(5・6番線大阪方)、「グル麺」(14・15番線東京方)の計9店を運営している。

 

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ややマニアックな話になるが、在来線1・2番線大阪方の「かきつばた」と新幹線16・17番線東京方の「グル麺」は、JR東海の子会社である株式会社ジェイアール東海パッセンジャーズが運営している。

私もこれらのお店で何度も食べたことがあるが、「住よし」とは明らかに味が違っていた。つまり、以下のことが言える。

 

名古屋駅ホームのきしめんは、

  • 株式会社ジャパン・トラベル・サーヴィス
  • 株式会社ジェイアール東海パッセンジャーズ

の2つの味に分類できる。

 

ダシはお店ごとにとっている

和風だしは時間が経つにつれて風味が抜けていくため、時間帯によっては多少の違いは出るだろうが、ネット上でよく目にする「お店ごとに味が違う」というのは、少し大げさかもしれない。

 

桑原さん:同じ「住よし」でも味が違うとなれば、「レシピはどうなってるんだ!?」と社内で問題になります。ファストフードチェーンのハンバーガーはどこで食べても同じですよね? まったく同じ材料を使って、まったく同じレシピで作っていますから、味が違うことはあり得ません。

 

桑原さんによると、「住よし」でいちばんのこだわりは、名古屋駅で電車を降りたときにふわっとダシが香るつゆだという。

このテのお店は業務用の濃縮タイプ、つまりお湯で割るだけのつゆを使っていると思われがちだが、市内の麺類食堂と同様に、ムロアジをベースにしたダシをお店ごとにとっているとか。

 

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これが削り節(写真上)。ムロアジや宗太鰹(そうだがつお)などをあらかじめブレンドしてある。

削り節でとったダシにかえしを合わせてつゆを仕上げるのだが、ダシの配合やかえしの調合は創業当時からほとんど変わっていないそうだ。

 

桑原さん:週末など多いときで1日に5~6回もダシをとることもあります。効率を考えると、濃縮タイプのつゆを使いたいところですが、それではまったくの別物になってしまいます。

 

一方、麺はというと、冷凍麺を使用している。

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創業時は乾麺を使っていたそうで、その後、ゆで麺になり、冷凍麺に切り替えたのは、新幹線ホームでは2003(平成15)年、在来線ホームでは2008(平成20)年のことだ。味以外に冷凍麺を使うメリットとしては、保存がきくことや1人前の分量が決まっていることなどが挙げられる。

 

これぞ駅の立ち食い店! コスパ抜群なきしめんメニュー

さっそく、きしめんをいただいてみよう。

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こちらが、シンプルな「きしめん」(350円)。

具材は、煮揚げとネギ、花かつお。

市内の麺類食堂では、さらにホウレン草などの青菜と朱色の名古屋かまぼこがのるが、コストやオペレーションの面で難しいのだろう。

でも、きしめんの具材の中でも要であると私が勝手に思っている煮揚げがのっていれば、ノープロブレムだ。

それよりも、つゆの香りの立ち方がハンパない。

 

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箸で麺をつまんで、ズルズルと勢いよくすすり込む。パンチのあるムロアジベースのつゆの味と香りが口の中でふわっと広がる。

うん、ちまたのきしめんと何ら遜色はない。冷凍麺も適度なコシがあり、現代の冷凍技術には驚くばかりである。

ただ、手打ちのきしめんは、コシではなく、もっちりとしたグミのような食感とやわらかいのど越しが特徴なので、やはり麺自体はまったくの別物だといえる。

誤解してほしくないのだが、冷凍麺が手打ち麺よりも劣っているというわけではない。たった350円でこのクオリティーは企業努力のたまものだろう。

 

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一方、こちらは夏季限定(5月中旬~9月中旬)の「冷やしおろしかき揚げきしめん」(570円)。

かけきしめんのダシとかえしの比率を変えて、濃い口に仕上げてあるが、ムロアジベースのダシがしっかりときいている。

大きなかき揚げは食べ応えがあり、大根おろしで後味もさっぱり。暑い夏の日に思い切りすすりたい。これが570円というのも驚きだ。

 

どのお店でも揚げたての天ぷらが食べられる!

さて、ネット上には駅ホームにあるすべてのお店を食べ歩いたツワモノもいるようだが、中でもやたらと評判がよいのは、3・4番線の「住よし」(写真下)である。

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前にも書いたが、名古屋駅ホームで一番最初に開業したからなのかというと、そうではないようだ。

何でも、駅ホームのきしめん店で唯一、揚げたての天ぷらを出しているらしい。

 

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その証拠にお店の入り口には、こんな貼り紙が。

 

桑原さん:いやいや、それ間違ってます!「憩 いこい」を含めた在来線の6店舗にはすべてフライヤー(揚げ物用機器)が完備していますから、どのお店も天ぷらは揚げたてを提供しています。6店舗すべてに貼り紙もあるんですけどね。

 

ただし、どのホームも同じ設備というわけではないようだ。

 

桑原さん:実は、新幹線ホームのお店にはフライヤーがないため、ここ3・4番線のお店で揚げたものを運んでいます。ところが、どういうわけか「3・4番線が唯一、揚げたての天ぷらを提供している」という話になってしまったんです。

 

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3・4番線は電車の本数がいちばん少なく、きしめんを調理して出すという仕事の量は、他のお店よりも少なくなる。その分、新幹線ホームのお店で提供する天ぷらを揚げる作業を負担してもらっているというわけだ。

だから、わざわざ3・4番線まで来なくても、在来線のお店であれば、天ぷらは揚げたてなのでご安心を。

 

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これがエビと玉ネギ、ニンジン、春菊のかき揚げをのせた「かき揚げきしめん」(520円)。

このメニュー、実は新幹線ホームのお店での売り上げは不動の1位。在来線でも2位と評判は高い。

その秘密は、やはりかき揚げだろう。揚げるだけの業務用ながら、作り置きしたものとはまったく違う。玉ネギの甘さがつゆに染み出して、めちゃくちゃウマいのだ。

 

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ただ、ちまたのきしめんは、天ぷらや卵とじなどの場合、白醤油を使った白つゆで出される。いつ頃からそうなったのかは定かではないが、白醤油はたまり醤油と違って野菜などを煮込んでも色が染まらない。具材の彩りがよくなるために用いられていると考えられる。

このように、具材に合わせてつゆを変えるというのは、全国でも名古屋のきしめんくらいだろう。早く、安く提供せねばならない駅ホームのきしめんにそこまで求めるのは酷だとは思うが。

 

今回、名古屋駅ホームのきしめんのつゆと麺、天ぷらを検証してきたが、結論から言えば、かなりおいしかった。それは街中にあるお店と違って、駅という旅情を感じるシチュエーションも大きく関係していると思う。

また、市内の麺類食堂で出される手打ちのきしめんと比較するのは、ファストフードチェーンの安価なハンバーガーと、より値段が高い手作りのグルメバーガーを比べるようなもの。さして意味のないことである。

今回の取材で得たウンチクをひけらかしつつ、駅ホームのきしめんを人すすめてみようと思う(笑)。

 

お店情報

住よし

住所:愛知名古屋市中村区名駅1-1-4 名古屋駅内3・4番線ホーム
電話番号:非公開
営業時間:7:00~20:30(LO 20:20)
定休日:なし

※他のホームの店舗については、株式会社ジャパン・トラベル・サーヴィスのWEBサイトを参照

jt-s.net

 

書いた人:永谷正樹

永谷正樹

名古屋を拠点に活動するフードライター兼フォトグラファー。地元目線による名古屋の食文化を全国発信することをライフワークとして、グルメ情報誌や月刊誌、週刊誌などに写真と記事を提供。最近は「きしめん」の魅力にハマり、ほぼ毎日食べ歩いている。

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