名古屋には創業111年を迎えてなお「居酒屋好きなら一度は行ってみたい最高の老舗」がある【大甚本店】

f:id:nagoya-meshi:20180830153246j:plain

居酒屋評論家が「日本一!」、と太鼓判を押す居酒屋さんがあるらしい──。
そう聞くと、東京京都の老舗店を思い浮かべがちだが、それは名古屋にある。

場所は広小路通と伏見通の交差点。地下鉄東山線・鶴舞線の伏見駅、7番出口の目の前にたたずむ「大甚(だいじん)本店」がそれだ。

 

f:id:nagoya-meshi:20180830153320j:plain

創業は日露戦争の勝利から2年後の1907(明治40)年。以来、一世紀以上にもわたって名古屋の飲兵衛たちに支持されているのだ。

私、永谷も何度か足を運んだことがあるが「昔からあるお店」という程度の認識だった。それだけハードルが低いのである。

そこで今回は、あらためて「大甚本店」のスゴさを飲みながらレポートしようと思う。

 

f:id:mesitsu:20180925101802j:plain

同行したのは、以前紹介した「いもかわうどん」を出す刈谷のうどん店「きさん」の店主、都築晃さん。

『メシ通』の取材で意気投合し、今では私の飲み友。自他共に認める酒好きで、とくに日本酒に関しては全国の地酒を飲み歩くなど、強いこだわりを持っている。

彼の助言を借りながら「大甚本店のここがスゴイ」という点をいくつか紹介したい。飲兵衛ならずともきっと「一度は行ってみたい」と思うはずだ。

 

その①夕方4時に開店し、夜9時すぎにスパッと閉店

大甚本店劇場の幕が上がるのは夕方4時。お店が開くと、待ってました! とばかりにお客さんがなだれ込み、18時頃にはピークを迎える。

f:id:nagoya-meshi:20180830153844j:plain

私たちがお店に到着したのは17時半頃。店内はほぼ満員だったが、かろうじて座ることができた。

閉店は夜9時。残ったお酒をダラダラと飲むことは御法度だ。「ハイ、今日はもうオシマイですよ~!」と追い出される(笑)。お客さんとなれ合いの関係にならないところがココの魅力なのだ。

 

その②配膳台に並ぶ約40種類の総菜が壮観!

f:id:nagoya-meshi:20180830153956j:plain

大甚本店の料理は小鉢に盛り付けられた煮物や酢の物、サラダなどの総菜がメイン。配膳台に並べられ、好きなものを自分で取っていく。

 

f:id:nagoya-meshi:20180830154023j:plain

値段はひと皿250円~。野菜類が250円で魚介類が290円と覚えておくと目安になる。

どれもうまそうなので、選ぶのに困るほど。席を立って配膳台に向かう際に、店員さんがお盆を手渡してくれるのもウレシイ。

 

f:id:nagoya-meshi:20180830154051j:plain

まず、私が選んだのは、「筍と高野豆腐の煮物」(250円)。

筍はとてもやわらかく、しっかりと味が染みている。これがまた名古屋人好みの甘辛い味付け。心が和むなぁ。

「いや、ただ単に甘辛いだけではないですよ。高野豆腐にダシの香りと風味も閉じ込められてる。く~っ、たまらん!」と、都築さんも大満足。

 

f:id:nagoya-meshi:20180830154152j:plain

続いて「ポテトサラダ」(250円)。

私は居酒屋さんで必ず注文するのだが、ジャガイモをつぶしたのが大半。一方、ココのはサイコロ状にカットされたものがゴロゴロ入っている。しかも、マヨネーズと塩、コショウのバランスが絶妙で、ジャガイモの味がしっかり。

私が求めていたのはコレなんだよ!

 

f:id:nagoya-meshi:20180830154219j:plain

こちらは、「里芋煮」(250円)。家で作ると、煮崩れてグチャグチャになるんだけど、やはりプロ。一つ一つがとても美しい。

想像していたとおりの素朴な味わいにお酒もすすむ。おろし生姜も心地良いアクセントになっている。

 

f:id:nagoya-meshi:20180830154243j:plain

素朴といえば、この「厚揚げ煮」(250円)はその最たるもの。ちまたにあふれる、イマドキの居酒屋さんでは見たこともないメニューだ。

かむごとにジュワッと煮汁があふれ出し、厚揚げの味と香りを引き立てる。

もー、たまらん!

 

その③お酒は日本酒、ビール、レモンハイ、ハイボールのみ

ここ大甚本店には、焼酎やカクテルなんてしゃれたものは置いていない。以前は菊正宗と賀茂鶴、2種類の日本酒(各1合 480円、大徳利 740円)とキリンとサッポロの瓶ビール(大瓶 各640円)のみだった。

しかし、今回訪れると、生ビール(グラス 550円)や瓶ビール中瓶(550円)、小瓶(420円)もメニューに加えられていた。

f:id:nagoya-meshi:20180830154333j:plain

さらに、これも時代の流れなのか、ハイボールブラックニッカリッチブレンドとレモンチューハイ(各550円)もあった。

都築さんと生ビールで乾杯した後、レモンチューハイを注文。ビターな味わいが口の中をリセットし、また料理がおいしく食べられる。 

 

その④産地と鮮度にこだわった魚介が美味

お店の料理は配膳台の総菜のほか、ガラスケースには焼き魚や煮魚、焼き鳥が並ぶ。そこから選んで焼いてもらうシステムだ。

また、刺身は注文すると、その場でさばいてくれる。都築さんは「アジ」をオーダー。価格は「時価」だが、だいたい1,000円前後とリーズナブルなので安心して注文できる。

f:id:nagoya-meshi:20180830154421j:plain

「うわっ! このアジ、スゴイ! 新鮮そのもの! めちゃくちゃうまい!」と、都築さん。ちなみに彼の趣味は、釣り。自ら釣ったものを料理して、それをアテにお酒を飲むという料理人ならではのゼイタクをしている。それだけに魚には少し、いや、かなりウルサイのだ。

 

f:id:nagoya-meshi:20180830154500j:plain

ほかにも都築さんは配膳台から「イワシの煮付け」(290円~ ※その日の仕入れによって値段が変わる)をセレクト。

丸かじりできるほどやわらかく、甘辛いタレがしっかりと染みている。とはいえ、イワシそのもののうま味も十分伝わってくる。

やはり、ここの魚料理はうまい!

 

f:id:nagoya-meshi:20180830154520j:plain

「永谷さん、これは絶対に日本酒と合わせた方がイイよ」と、都築さんは賀茂鶴の大徳利を冷やで注文。

ここの賀茂鶴は、入り口に鎮座する四斗樽から注がれるため、口に含むと木の香りがふわっと広がる。口当たりがやさしく、都築さんの言うとおり、イワシとのペアリングは最高だ。

 

その⑤日替わりメニューも超絶うまい

そろそろ温かい料理も食べたくなり、店内のボードに書かれた日替わりメニューから「だし巻き卵」(400円)を注文。「注文がたて込んでいまして、少しお時間がかかりますが」とのことだったが、どーしても食べたいので待つことに。

ちなみに日替わりメニューは、魚介のほか牛や豚、鶏を使ったメニューが10~15品ほど用意されている。

f:id:nagoya-meshi:20180830154605j:plain

約15分後、目の前に運ばれたのがこれ。熱々&フワフワの卵がたっぷりの出汁を吸っているのが目で見てわかる。

ハフハフしながら頬張ると、卵の甘みとともに出汁がジュワッとあふれ出す。口の中で暴れ回るおいしさを静めようとお酒を飲む。まさに至福のひととき。

だし巻き卵は都築さんのお店でも出しているが、果たして感想は……。

「焦げ目がまったくないですね! 同じ味は出せるかもしれないけど、こんな風に焦げ目を付けずに焼くのはかなり技術がいりますよ」と、驚きを隠せない様子だった。

 

その⑥お会計はそろばんで!

この日、私たちは生ビール3杯とレモンチューハイ3杯、賀茂鶴の大徳利2本を飲んだ。

f:id:nagoya-meshi:20180830154707j:plain

料理は、今回紹介しきれなかったものも含めて、総菜8品と刺身1品、日替わりメニュー1品。

 

「会計をお願いします」と告げると、店主の山田弘さんが席までやってきて、空になった小鉢や徳利の数を見て、パチパチとそろばんをはじく。

f:id:nagoya-meshi:20180830154646j:plain

「ハイ、8,770円ね!」と山田さん。しっかりと飲み食いしたせいか、少し値が張ってしまったが、総菜3~4品とお酒1杯程度のサク飲みなら2,000円でお釣りがくるだろう。

それにしても、なぜ今どきそろばんなのか。

「昔からそろばんだでね。電卓だと押し間違うこともあるでね。こっちの方が正確なんだわ」とのこと。

 

その⑦店主の山田弘さんの仕事ぶりに脱帽

大甚本店の店主である山田さんは、1960(昭和35)年に三代目店主としてお店を継ぎ、奥様とともにお店を切り盛りしてきた。

お店に出勤するのは毎朝5時。食材の仕入れで柳橋中央市場へ足を運び、お店に戻るとすぐにメニューを考えて調理にとりかかる。お店は夕方4時~夜9時までだが、その準備と閉店後の後片付けを含めると、お店に立つのは毎日17時間にも及ぶという。

f:id:nagoya-meshi:20180830154809j:plain

「昔から通ってくださる方や遠くから来てくださる方もいるでね。お客さんが喜んで帰ってくれるのを見ると、明日もまた頑張ろうって思うよ」と山田さん。

帰り際、恐れ多くも戸口まで山田さんが見送ってくれた。料理やお酒のすばらしさは言うまでもないが、いちばんの魅力は山田さんのハートフルな接客かもしれない。

 

f:id:nagoya-meshi:20180830154845j:plain

新陳代謝の激しい名古屋の飲食業界にあって、創業1世紀以上経ってもなお暖簾を守り続け、お客さんの途絶えない大甚本店。名古屋を訪れた折には、ぜひ足を運んでみてほしい。閉店まで飲んでも、帰りの新幹線には間に合うのだから。

 

お店情報

大甚本店

住所:愛知名古屋市中区栄1-5-6
電話番号:052-231-1909
営業時間:16:00~21:00 ※土曜日は16:00~20:00
定休日:日曜日、祝日

www.hotpepper.jp

 

書いた人:永谷正樹

永谷正樹

名古屋を拠点に活動するフードライター兼フォトグラファー。地元目線による名古屋の食文化を全国発信することをライフワークとして、グルメ情報誌や月刊誌、週刊誌などに写真と記事を提供。最近は「きしめん」の魅力にハマり、ほぼ毎日食べ歩いている。

過去記事も読む

トップに戻る