学校給食でおなじみの「ミルメーク」は、いまどうなっているのだろう【なんと生誕半世紀】

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私は子どもの頃、牛乳がキライだった。小・中学校の給食では鼻をつまみながら飲んでいたものである。

 

しかし、月に数回登場する“魔法の粉”がユーウツな気分を吹き飛ばしてくれた。私にとってまさに救世主。

 

それは……

 

ミルメーク。

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覚えているだろうか、ミルメークのうまさを。

知っているだろうか、ミルメークの存在を。

 

まずは知らない方のために解説しよう。

ミルメークとは、粉末タイプの牛乳用調味料。牛乳に入れてかき混ぜるだけでコーヒー牛乳に変身するのだ。個人的には、その日学校を休んだ人のミルメークをめぐって熾烈(しれつ)なジャンケン大会が繰り広げられたりしたのが懐かしい。牛乳瓶1本に2袋のミルメーク。当時の私たちにとって、これ以上のぜいたくはなかったのだ。

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給食で出たミルメークは、コーヒー味かココア味だったが、いちごやバナナ、メロン、抹茶きな粉、キャラメル、紅茶と全8種類(上写真)。

これらが毎日出ていれば、私の給食ライフも楽しい思い出として心に刻まれただろう。また、瓶ではなく、紙パックの牛乳に入れる液体タイプもあり、こちらはコーヒーとココア、いちごの全3種類ある。

 

ミルメーク誕生の会社を訪ねてみた

私がここまでミルメークをゲキ推しするのはワケがある。

製造元の大島食品工業株式会社が、名古屋市守山区にあるからだ。牛乳キライの子どもたちの救世主が、名古屋から生まれたということを私は誇りに思っている。

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ってことで、大島食品工業株式会社でミルメークについていろいろ聞いてきた。

 

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案内してくださったのは、名古屋営業所長の原谷昭久さん。ご自身も生まれ育った春日井市で小・中学校時代にミルメークを愛飲していたという。

大島食品工業株式会社は、昭和23年から粉薬を製造していた大島製薬所が前身。その後、食品部門が設立され、昭和40年には学校給食用食材の製造を開始した。そうした背景には、学校給食で飲まれていた脱脂粉乳の存在があった。

 

f:id:Meshi2_IB:20181222130140p:plain原谷さん:私は脱脂粉乳を飲んだ世代ではありませんが、栄養価が高い半面、味が今ひとつだったようです。そこで昭和40年に学校給食の脱脂粉乳がおいしく取れるように、「プリンの素」という商品を開発したんです。これがミルメークの誕生へとつながりました。

 

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これが現在も発売されている「プリンの素」。

当時、プリンはデパートのレストランでしか食べられない高級品だった上に、粉末を牛乳と混ぜるだけという手軽さもあって大ヒットした。

 

ミルメーク誕生の秘密とは

ミルメークが発売されたのは、昭和42年。学校給食が脱脂粉乳から牛乳へと切り替わる過渡期でもあった。

 

f:id:Meshi2_IB:20181222130140p:plain原谷さん:牛乳になって飲みやすくはなったものの、カルシウムやビタミンB2などの栄養価は脱脂粉乳の方が優れていたんです。その不足した栄養素をおいしく補うことができないかと栃木県の学校給食会から打診されたことがきっかけでした。カルシウムなどをそのまま牛乳に入れてもおいしいはずもなく、試行錯誤を繰り返しました。そんなとき、担当社員がコーヒー牛乳を飲む子どもの姿を見て、それをヒントにインスタントコーヒーとカルシウムを混ぜたんです。それがミルメークの誕生です。昨年、発売50周年を迎えました。

 

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私が小・中学校時代に飲んでいたミルメークはしっかりとかき混ぜないと瓶の底にたまることもあった。最後のひと口がやたらと甘くておいしいので、それもよかったのだが、現在は溶けやすい顆粒タイプになっている。

さらに注目すべきは、1袋当たりの量。コーヒーとココアが8グラム。いちごとメロンが6グラム。バナナと抹茶きな粉、キャラメル、紅茶は7グラムと、それぞれ微妙に異なるのだ。

 

f:id:Meshi2_IB:20181222130140p:plain原谷さん:粉末タイプのミルメークコーヒー(10グラム)はミルメークの原点ですから、実は現在も製造しています。ちなみに人気トップ3は、コーヒー、ココア、いちごの順。とくにコーヒーは全体の7~8割をしめます。トップ3以下の味はほぼ横並びですね。それぞれ1袋当たりの量が違うのは理由がありまして、瓶の牛乳1本(200ミリリットル)と混ぜたときに一番おいしくなるよう調節しているんです。もちろん、実際に飲み比べて決めました。

 

ここでちょっとミルメークの工場をのぞいてみよう。

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工場ではロール状になっている小袋がカットされ、決められた分量のミルメークが詰められていく。そして大量のミルメークが出来上がる。製造工程を見ていて実に気持ちがよい。

 

なぜ地域によって認知度に差があるのか

さて、製造を依頼した栃木県学校給食会から太鼓判を押されたミルメークは、評判を聞きつけた近隣の県から全国へと瞬く間に広がっていった。

原谷さんからいただいた給食用ミルメークの2017年度の県別出荷数集計表によると、出荷数は約1250万食で47都道府県すべてを網羅している。

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とはいっても「えっ! ミルメークなんて知らない」という方もいるだろう。

実際にSNSでミルメークを検索すると、「出た」、「出なかった」、「存在すら知らなかった」と認知度が分かれる。

 

 

 

それは給食の献立は、主に市区町村の教育委員会が中心となって決められるからだ。

出荷数ランキング3位(約67万食)の大阪府は豊中市や四條畷市、門真市などへ出荷されているが、なぜか大阪市と堺市への出荷はない。

東京都は21位(約19万食)で、出荷は足立区、板橋区、江戸川区、荒川区。

そして全体の2割弱、約260万食を占めるランキング1位が地元の愛知県だが、ミルメークのお膝元である名古屋市への出荷はこれまで一度もない。名古屋市民の多くにとってミルメークは「未知なる味」ということになる。

 

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f:id:Meshi2_IB:20181222130140p:plain原谷さん:給食も教育の一環ですから、牛乳には何も入れず、そのまま味わってほしいという思いがあるようですね。

 

毎日、ミルメークが出るというならそれも理解できるが、地元が生んだロングセラー商品を知ることも教育ではないのだろうか。

この原稿を書いているときに、ニュースが飛び込んできた。

名古屋市内の小学校で給食の牛乳が飲み残され、廃棄されているというのだ。昨年度はなんと、84万本。金額にしておよそ4,300万円分にもなる。そこで、名古屋市議会で牛乳用調味料、つまりミルメークの導入について議論がなされたのだ。

 

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f:id:Meshi2_IB:20181222130140p:plain原谷さん:名古屋生まれのミルメークがなぜ名古屋市内の小学校で出ないのかと少し寂しい思いをしていましたが、この「導入について議論がなされた」というニュースには、社員一同本当に喜んでおります!

 

当の原谷さんも大喜び。名古屋市で導入されれば、他の政令指定都市も追随する可能性だってある。

ミルメークを飲んだことがないという人は、一生縁がないのかというと実はそうではない。全国のスーパーやドラッグストア、100円ショップでも発売されているのでご安心を。

今回、約35年ぶりにミルメークを飲んでみると、その味は子どもの頃よりも甘く感じた。同時に小・中学校時代の思い出がよみがえってきて、なんだか懐かしい気持ちでいっぱいになったのであった。

 

取材協力:大島食品工業株式会社 https://www.milmake.com/

 

書いた人:永谷正樹

永谷正樹

名古屋を拠点に活動するフードライター兼フォトグラファー。地元目線による名古屋の食文化を全国発信することをライフワークとして、グルメ情報誌や月刊誌、週刊誌などに写真と記事を提供。最近は「きしめん」の魅力にハマり、ほぼ毎日食べ歩いている。

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