関東風と関西風、うどんつゆの「天下分け目」はどこにあるのか? ~関ヶ原のあるお店をめぐって~

東日本と西日本で大きく異なる「うどんのつゆ」。その分岐点はいったいどこに? 歴史上もっとも有名な合戦場・関ヶ原のユニークお店にそのヒントが!

エリア岐阜

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ライターという仕事柄、出張が多い。私が旅先で必ず食べるようにしているのが、うどんだ。うどんつゆは、昆布をベースとしたダシに薄口醤油を合わせるあっさりとした関西風と、カツオ節ベースのコクがある関東風に分かれるのは皆様もご存じだろう。

関東でも関西でもない名古屋で生まれ育った私にとって、普段食べ慣れない味との出合いは旅情をかき立てるのだ。

 

天下分け目の合戦場、関ヶ原へ

ところで、うどんのつゆの味の分岐点はどこにあるのだろう。ネットで検索すると、産経新聞のこんな記事にたどり着いた。

www.sankei.com

ナニナニ? カップうどん「どん兵衛」の味が関東と関西では違う、と。うん、それは知っているぞ。

パッケージをよく見ると、関東風が「E」、関西風が「W」って書いてあるアレね。さらに読みすすめると、日清食品ホールディングスの人たちが約1年がかりで東西の販売エリアの境界線を自らの舌で探したという。

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そこでたどり着いたのが、岐阜県と滋賀県の間。かつて天下分け目の関ヶ原の合戦が行われた、岐阜県不破郡関ケ原町だ。上の写真は、関ヶ原古戦場決戦地。

徳川家康率いる東軍の兵士たちが我こそはと石田三成の首を狙って激戦を繰り広げたという地である。

もしや、ここが「うどんつゆの分け目」でもあるというのか?

 

東西両軍のダシで「勝負」

壮大な歴史に思いをはせながら関ヶ原の街で車を走らせていると、こんな看板を見つけた。

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そこには「決戦関ヶ原 両軍ダシで勝負 天下分け麺処」と、ある。

 

両軍ダシで勝負って……何じゃそりゃ?

 

思わず、お店の駐車場に車を停めてしまった。

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さらに駐車場にはこんな立て札と看板が!

「うどんつゆ天下分け目の地」

さらには「日本の食文化 関東風 関西風 分岐点認定地」。思いっきり断言しているが、いったいこれはどういうことなんだろうか。

 

東西の境目だった「不破関」

ここは関ケ原町にあるうどん店「やまびこ路」

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見たところ、ごくフツーのうどん店だが……。とりあえず、中へ入って話を聞いてみることに。

 

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出迎えてくださったのは、店主の桑原陽子さん。

何でも、お店は35年ほど前に今は亡きご主人とともに始めたそうだ。なぜ、ここが「うどんつゆ天下分け目の地」なのか聞いてみたところ……。

 

f:id:Meshi2_IB:20190224095608p:plain桑原さん:ウチはうどんのつゆを関東風と関西風の2種類を用意しているんですよ。お客さんにお好みのつゆを選んでいただけます。夫は関西風が、私は関東風が好きでしたから……というのは冗談で、この近くにある不破関(ふわのせき)が東西から人や物の行き来が多くあったんです。実際、今でも関東と関西の両方からお客さんが来られます。

 

つゆの濃淡で違いは歴然

うどんを作っていただく前にうどんつゆに使うダシを見せてもらった。

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左のカツオ節が関東で右の昆布が関西だが、これらはあくまでもベースであって、ほかの魚節類も配合しているのは言うまでもない。

にしても毎日2種類のダシをとるのは、かなりの手間というか面倒だと思うのだが。

 

f:id:Meshi2_IB:20190224095608p:plain桑原さん:もう、35年もやってますから慣れましたよ。

 

一方、こちらはつゆのかえし。

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左の色の濃い方が醤油ベースの関東で、右の淡い方が薄口醤油を使った関西だ。かえしでもここまで色が違う。まったくの別物と言ってもよいだろう。

 

そして、完成したのがこちら。

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いずれもシンプルな「かけうどん」(700円)で左が関東、右が関西。

つゆの色の違い、わかるだろうか? 見た目的もその違いは歴然だ。やはり、関東の方が濃くて関西は淡い。

写真には写っていないが、それぞれ「いなり寿司」が付く。

 

うどんでは西軍に軍配が!?

では、実食してみよう。

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まずは関東風から。うん、醤油の味と香りを鰹ダシが引き立てている。ガツン! とインパクトのある味だ。

つゆの色は真っ黒。筆者の地元・名古屋のうどんつゆも色が濃いので、関東風と誤解されるが、まったく違う。名古屋はムロアジベースのダシにたまり醤油を合わせるため、ほのかに甘いのだ。

 

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こちらは関西風。昆布ダシがふわっと香る上品な味わい。桑原さんによると、関西風を注文するお客さんの方がやや多いという。

関西から来たお客さんがそれを聞くと、「関ヶ原の合戦では西軍が負けたけど、うどんは勝ったでぇ!」と喜ぶとか。

何も400年以上前のことを引き合いに出さなくても(笑)。

 

f:id:Meshi2_IB:20190224095608p:plain桑原さん:家族連れやカップルのお客さんは、関東風と関西風の両方を注文して食べ比べてますね。

 

お客さんは関東や関西以外に名古屋からも来るようで、メニューには名古屋の「きしめん」(いなり寿司付き・700円)もあった(笑)。さすがに名古屋風のうどんつゆではないが、関東風のつゆで作ってもらった。

完成したのがこちら。

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うん、違和感アリアリ(笑)。関東風と関西風はまだしも、名古屋風もフォローするならば、ムロアジのダシとたまり醤油のつゆでなきゃ、と言ったところで名古屋は完全に蚊帳の外だと思うが……。

 

不破関で「証拠」を発見!

「うどんつゆ天下分け目の地」──。

何だか、言ったもん勝ちのような気もするが(笑)、帰る途中で桑原さんの話に出た不破関跡に立ち寄ってみた。

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不破関が設置されたのは、壬申の乱(672年)の翌年と、かなり歴史が古い。それだけこの地は大昔から重要視されていたのだ。

ここは東海道の鈴鹿関、北陸道の愛発関(のちの逢坂関)とともに三関と呼ばれ、この三関よりも東は東国と呼ばれ、関東・関西の呼称の由来になったとも言われている。

 

www.rekimin-sekigahara.jp

 

さらに、不破関跡の近くにある不破関資料館の入り口に目をやると、

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「食の境目・文化の関所」という看板が!

うどんつゆ天下分け目、いや天下分け麺の地=関ヶ原説、意外に真実なのかもしれない。

 

店舗情報

やまびこ路

住所:岐阜県不破郡関ケ原町野上1380-1
電話:0584-43-2893
営業時間:平日11:00~16:00、土曜日・日曜日11:00~17:00
定休日:火曜日

www.hotpepper.jp

 

書いた人:永谷正樹

永谷正樹

名古屋を拠点に活動するフードライター兼フォトグラファー。地元目線による名古屋の食文化を全国発信することをライフワークとして、グルメ情報誌や月刊誌、週刊誌などに写真と記事を提供。最近は「きしめん」の魅力にハマり、ほぼ毎日食べ歩いている。

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