ケバブ屋さんのあの肉塊、どうやって作ってるの?

ドネルケバブ屋さんの回る肉塊。 あの巨大な肉塊はいったい何なのか!? なんとなく見慣れている、謎の肉塊の正体に迫る。

 

街なかで見かける、ドネルケバブ屋さんの回る肉塊。

迫力ある見た目と食欲をそそる匂いに、おもわず足を止めてしまう。

なんとなく見慣れている、あの謎の肉塊、いったいなんなんだろうか?

 

アンテップケバブ秋葉原店の店主ムスタファさん、お店の手伝いをしているドネルケバブマニアのメルツさんのお二人にインタビューして、あの肉の正体に迫ってきた!

 

▲店主ムスタファさん

 

▲ドネルケバブマニアのメルツさん

 

 

鶏もも肉を一枚一枚重ねていく。キレイな形を作るのは熟練の技!

 

▲焼く前の鶏もも肉の肉塊

 

ーこの肉塊、何の肉なんですか!?

 

メルツ:これは、鶏もも肉です。このお店では、鶏肉と牛肉でドネルケバブを作ってますよ。

本場トルコではラム肉使うことも多いんですけど、日本でやると高くなっちゃうので、あまりやってるお店はないですね。

トルコはイスラム教徒が多いので、豚肉は使わないです。

 

ー鶏もも肉だったんだ!

 

メルツ:冷凍の鶏もも肉を一晩水に漬けて、解凍しておきます。それを毎朝、袋に入れていて下味をつける。下味のついた肉を一枚ずつ、重ねていくんです。

この味付けは、店ごとに違う。味つけはどこもマジで企業秘密なんで、僕も知りません。

 

ー下味つける時間はどれぐらいなんですか?

 

ムスタファ:量によって変わるけど、20㎏なら5分~7分ぐらいで味がつきますよ。

 

メルツ:味のついた肉を、真ん中の尖った串にガーッと刺していく。積み重ねていくとこういう形になるんですよ。

 

―端っこに刺して、横に広げてるんですか? 横にハミ出て、刺さってなさそうな肉もありますよね。

 

メルツ:重ねるときに肉を広げてますし、肉の重さでも伸ばされてるからそう見えるんですけど、全部刺さってるんですよ。肉の真ん中あたりに刺すんですけど、上手く刺さなきゃいびつな形になるので、上手く積み重ねていかなきゃいけないんです。

 

▲肉が伸びてるだけで、中心の串に全部刺さってる

 

ー難しそう……!

 

ムスタファ:ああ、やっぱり最初はできなくて、すごい変な形になっちゃって。特に鶏肉刺すのは難しかったですね。

 

―塊肉作る時に、なるべく凸凹しすぎてない方が良いんですよね

 

メルツ:凸凹しすぎると火に近いところがあって、焼けすぎちゃう部分が出来るから、キレイな形になってた方がいいですね。

 

▲ガスで火を起こして回転しながら焼く。表面の焼けた箇所をそぎ取る

 

メルツ:切るのも難しいんですよ。表面の焼けた部分を切るんだけど、切り過ぎちゃうと、まだあまり焼けてない部分までいっちゃうので。

 

―どのくらいの量の鶏肉が刺さってるんですか?

 

ムスタファ:今日は40㎏ですね。鶏もも肉2㎏パック20個分です。

ケバブサンド1人前で大体100~150gぐらい使います。この塊で200食分は余裕であります。

 

―1日で全部使い切るんですか

 

メルツ:基本的に使い切れるように大きさを調整します。今日は休みだから、肉塊かなりデカいです。これを売り切らないと。

コロナが大変だった時期は悲しかったですよ。20㎏の塊作って、売上が3,000円とか5,000円の日がほとんどでした。街に人がぜんぜんいなかったですから。

 

―コロナの時もお店を閉めなかったんですね

 

ムスタファ:バカみたいに毎日来て、お客さん来ないけどオープンしてた(笑)。

 

▲表面は焼けているが、内部はまだ焼け切っていない状態なのだ

 

 

牛脂と薄切り肉を交互に刺して、ジューシーにする

 

メルツ:このお店は、最初、鶏肉だけだったけど、途中から牛肉を始めました。

 

▲冷凍した牛肉の肉塊。牛脂と薄切り肉を交互に刺している

 

―牛肉はステーキみたいな大きな肉を重ねてるんですか?

 

メルツ:薄切り肉ですね。牛脂と薄切り肉を交互に重ねてます。牛脂を挟むとジューシーになるんですよ。牛肉をミンチにして固めて刺す方法もあるんですけど、ここは薄切り肉使ってます。

鶏肉と違って、薄切り肉だと肉の形や薄さにばらつきが少ないので、キレイな円筒系になります。鶏肉は形が不規則なので横に広がるんですけど、薄切り肉はキレイな形になりますね。

 

▲たしかに牛肉の肉塊は、鶏肉よりもキレイな円筒状だ

 

 

地元トルコで、ドネルケバブはタコ焼き的な存在!?

 

 

―このグリル機のメーカー、POTIS社って有名なんですか

 

メルツ:ケバブグリル機ばかりを作ってるドイツの会社です。ケバブ屋さんの多くが、ここの使ってますね。

 

―回転速度は変えられるんですか?

 

メルツ:回転速度は変えられます。店主の感覚で回転速度は決めてて。忙しい時は肉が早く焼けるように回転をゆっくりにしたり、暇な時は回転を速めて肉が焼け過ぎないようにします。

火の加減も、つまみで調整できます。上から下まで、4つのグリルが重なってるので、グリルごとに火をつけたり消したり、火の加減を調整して焼きます。あまり焼き過ぎるのもよくないので。

 

 

▲グリルで肉塊を焼く。一番上部のグリルは火をつけてなかった

 

ーまかないもドネルケバブですかね

 

ムスタファ:そう、毎日ケバブ。美味しいけど、さすがに飽きてるよ(笑)。

 

メルツ:ドネルケバブってトルコではファーストフードで、日本でいえばタコ焼きみたいな感覚なんですよ。

 

―なるほど、そういう感覚なんだ! タコ焼き美味しいけど、毎日は食べないかも

 

 

秋葉原の人出が戻り、バイトを雇えるようになった

 

―自分のお店持つ前、どこかで修業されましたか

 

ムスタファ: やってましたよ、トルコにある兄の店で働いてました。ドネルケバブだけじゃなくて色んなトルコ料理をだしてるレストラン。

トルコではお父さんが農業をやってたから、農業とトルコ料理のお店やって、冬はお休み。 半年働いて、半年休みって感じ。

8月に久しぶりにトルコ帰る予定なので、 楽しみにしています。

 

▲「イケメンに撮ってね」と要望を出し、真剣なまなざしで肉を切るムスタファさん

 

ーケバブ屋さんをやるために日本に来たんですか?

 

ムスタファ:そういうわけじゃない。最初、2年ぐらいで帰るつもりだったんだけど、日本人の奥さんと結婚して子供が出来たから。それで、日本に住むことになった。

奥さんに「何の仕事できる」って聞かれて。飲食店ならできるって答えたら、じゃあやろうって。

 

ーそもそも住み続けるつもりじゃなかったんですね

 

ムスタファ:最初は原宿で小っちゃい店出しました。楽しいけど、朝7時に起きて仕込みして、11時に開店して1日中働くから大変。今、原宿店は甥が店長してます。日本に親戚は9人ぐらい住んでます。

 

―皆さん、トルコ料理に関わることを仕事にしてるんですか?

 

ムスタファ:そんなことないよ。料理の仕事は私ともう1人ぐらい。他は解体の仕事してる。

 

―コロナが納まって、人出は変わりました?

 

ムスタファ:すごい忙しい。コロナ前よりお客さん多いです。

 

―海外からのお客さんや観光客が増えたからですかね

 

ムスタファ:それもあるし、あと平日は近くの会社で働く人がランチ食べに来る。この辺だとランチ食べて1,000円以上とか普通だけど、ここなら500円代から食べられるから。

 

▲ケバブサンド(チキン)550円。野菜たっぷりで食べ応えがスゴイ!

 

▲ケバブ丼(ビーフ、チキンミックス)700円 + ハラペーニョ100円

 

―お客さんが戻ってきたのは、ここ半年ぐらいですか

 

ムスタファ:1年前から徐々に戻り始めてましたけど、日本人が戻ってきたのはここ半年ぐらい。今年に入って、さらにブーストがかかってます。ある程度、儲かるようになって、最近はバイトを雇えるようになりました。

 

 

ドネルケバブのあの回る肉塊。

その正体は、下味をつけた鶏もも肉や薄切り肉を重ねたものだった。

熟練の技術が必要だという積み重ね術。

今後は、味だけでなく肉塊の形にも注目をしてしまいそうだ。

 

 

 

お店情報

アンテップケバブ 秋葉原店

住所:東京都千代田区外神田1-3-5

営業時間:11:00~22:00

定休日:なし

 

書いた人:松澤茂信

松澤茂信

珍スポットマニア。日本全国1,000ヵ所以上のちょっと変わった観光地や飲食店を巡り歩いています。

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