なぜ沖縄の居酒屋さんは「食べ飲み放題」を楽しめるお店が多いのか?パイオニアに聞いてきた

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バイキングでもコースでもなく、席に座ったまま胃袋と肝臓の気が済むまで飲食を堪能できる「食べ飲み放題」。

 

数十種類の豊富な食事・アルコールメニューの中から好きなものを好きなだけ飲食できて、その価格およそ3,000円前後。そんな「食べ飲み放題」を実施している居酒屋さんが、那覇市には多く存在する。

 

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私は東京から沖縄に移り住んだ時、このコスパの良さに衝撃を受けた。そして飲みに行く頻度が3倍に増えた。2軒目に行く率もだ。1軒目で食も酒も堪能できるので、2軒はしごしてもそんなにお金がかからない。素晴らしいシステムだと思う。

 

だがしかし、なぜ国際通りのど真ん中であるこの好立地で、これほどコスパの良いお店が多く存在するのだろうか? 観光客が多くひしめくこの場所なのだから、もっと高単価で設定してもいいはず。良心的すぎやしないか。

 

その謎を解き明かすべく、今回は沖縄の食べ飲み放題文化を活性化させ、那覇市で7軒の居酒屋さんを経営する「輪っしょいグループ」オーナーの「南風見 一樹(はえみ かずき)」さんにお話をうかがってきた。

 

「食べ飲み放題」を生み出したのは約18年前。閑散とした国際通りを変えたかった

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かれこれ20年近く居酒屋業界に携わっているという南風見さん。一番最初に食べ飲み放題をやったのは、国際通りの大型チェーン居酒屋である「HUB」。もともとは南風見さんの叔父さんのお店だったという。

 

当時、今ほど発展していたわけではない国際通りには、居酒屋さんは数軒しかなく、「HUB」の経営もあまりうまくいっていなかったのだそうだ。

 

そこで、なんとか居酒屋業界を盛り上げたいと思い、考え抜いた末に浮かんだのが「食べ飲み放題」。

 

f:id:Meshi2_IB:20181102193819p:plain南風見さん当時はバイキング居酒屋(自分で取りにいく制)はあったものの、「食べ飲み放題」(オーダー式)という文化はなかったんです。そこで、「座ったままある程度クオリティーの高いものを食べたり飲んだりできる仕組みがあったらいいのでは」と思い、食べ飲み放題を始めました。

 

ーーバイキング居酒屋が発想のきっかけになったんですね。オーダー制にすることで、お客さんは増えたのですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181102193819p:plain南風見さん:オーダー制というだけでなく、メニューも工夫しました。子どもが喜ぶチャーハン、唐揚げなどの定番メニューをはじめ、お酒のつまみになるようなたこわさや枝豆、観光で来た人にはチャンプルーや沖縄そばなど、家族で来ても、お酒を楽しみに来ても楽しめるようにしました。ドリンクは100種類くらい、フードは約80種類くらいですね。

 

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ーーなんと! カクテルも飲み放題なんですね。あ、しかも+500円で日本酒も!? これ、めちゃくちゃお得ですよね。なぜ、観光客が多いこの場所で、この価格で経営されているんですか? 土地代高そうですけど……。

 

f:id:Meshi2_IB:20181102193819p:plain南風見さん:国際通り、今はかなりにぎわってるでしょ? でも当時は死んでたんですよ。観光客なんていなくて、地元の人だけ。しかもお店もあんまりなかった。地元の人にとって必要な居酒屋さんをつくりたかったんです。

 

ーーだからこの価格で?

 

f:id:Meshi2_IB:20181102193819p:plain南風見さん:沖縄でやっていこうとしたら、客単価3,000円がボーダーラインなんです。特に当時の沖縄は賃金が安かったので。3,000円を数百円でも上回ったら、月3回来る人が1回になる。だったら少々きつくても、月3回行ける居酒屋さんにしたかったんです。ぶっちゃけ、3,000円払ってもらっても、お店に残る売り上げは300円くらいなんですけどね(笑)。でも、席が埋まってないよりはいいんです。

 

「食べ飲み放題」が成り立つ仕組み

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f:id:Meshi2_IB:20181102193819p:plain南風見さん:とはいえ普通にやったら赤字なので、やり方とかルールはめちゃくちゃ考えました。

 

食べ飲み放題にはルールがある。今回取材させていただいた輪っしょい系列店舗のひとつ「琉球楽園ダイニング OHANA(オハナ)」のルールを聞いてみた。

 

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まず、「食べ飲み放題メニュー」から好きな料理を注文する前に、決められたコース料理を食べきってもらう。最初に食べてもらう料理を決めておくこおとで、仕込みができ、注文が追い付かないなどを防ぐことができるのだ。

 

また、席時間は150分、ドリンクのラストオーダーは110分、フードは100分と、時間制限も設けている。ドリンクはグラス交換制、メニュー追加は1人1品のオーダーというのもルール。

 

以上だ。

 

これだけ? 普通にお得……。

 

最初に出るコース自体もステーキがあったりお造りがあったりと、豪華だ。やっぱりどう考えてもお得。というか、コースだけでも十分満足なのでは?

 

f:id:Meshi2_IB:20181102193819p:plain南風見さん:コースをぺろりと平らげて、永遠に食べ続ける人も存在するんですよ(笑)。

 

ーーすごい食べる人がいたら冷や冷やしそうですが(笑)。ぶっちゃけ、どれくらい食べたら赤字なんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181102193819p:plain南風見さん:食べる人と食べない人のバランスでどうにかやってるんで、“どれくらい食べたら”は考えないようにしてます。うわ、めっちゃ食うやん! みたいなのは全然ありますね(笑)。

 

ーーなるほど。ちなみに「食べ飲み放題」をスタートして、お客さんは増えました?

 

f:id:Meshi2_IB:20181102193819p:plain南風見さん:増えましたね。週末は常に満席になりました。もうひとつ、でかいメニューの看板を持って国際通りに立ってキャッチしたのも大きいですね。当時は国際通りでキャッチをするお店もなかったので、一人勝ちというか。ぶっちゃけ、めちゃくちゃにぎわってました(笑)。

 

当時は居酒屋さんも少なかった国際通りで、食べ飲み放題一号店としてにぎわいを見せたことをきっかけに、「食べ飲み放題」を取り入れるお店は急増したそうだ。その後、次々と食べ飲み放題店は増加し、現在那覇市の観光メインストリートとなった今でも、食べ飲み放題文化は健在。

観光客であふれる場所となった今でも、食べ飲み放題が主流となっているのには、沖縄県民ならではの理由があった。

 

国際通りがにぎわった今もなお「食べ飲み放題3,000円」を貫く理由

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その後は、観光客も増え、人も店も大幅に増えた国際通り。その場所で今もなお、この価格で食べ飲み放題を貫くのはなぜなのか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181102193819p:plain南風見さん:実際、きついですよ。食べ飲み放題をやっている居酒屋さんはどこもそうだと思うんですけど、純利益でいうと売り上げの8~12%くらいしかない。

 

ーーなぜ値上げしないんですか? 当時と比べて観光客も増えたし、値上げしてもお客さんは来るのでは?

 

f:id:Meshi2_IB:20181102193819p:plain南風見さん:消費税とかの兼ね合いで、泣く泣く料金を上げるときは来るかもしれませんが、ずっと通ってくれている地元のお客さんがいるので、今まで来てくれたお客さんがいるから上げないって感じですね。県外の人の値ごろ感と、県民の値ごろ感は違うので。本当は結構きついんで、上げたいんですけどね(笑)。あと、いまだにコースではなく食べ飲み放題を続けているのは、よく食べ・よく飲む人が多い県民の特性もありますね。

 

ーーなるほど。住んでいる私たちにはすごくありがたいです(笑)。ちなみに、一番原価の高いメニューって聞いてもいいですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181102193819p:plain南風見さん:こちらです。

 

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▲海鮮サラダ

 

ーーお刺身が山盛りですね! これは原価高そう……。

 

f:id:Meshi2_IB:20181102193819p:plain南風見さん:ゴーヤも高いので、ゴーヤチャンプルなんかもいっぱい注文されたら痛いですね。でも観光客の方には、やっぱり地元の料理を食べて欲しいので、やっています。

 

ーー一番評判のいいメニューも教えてください。

 

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▲チキントマト焼き

 

ーーチーズがぎっしりでおいしそう! これはビールに合うやつですね!

 

f:id:Meshi2_IB:20181102193819p:plain南風見さん:メニューが多いので、割と人気料理はばらけてますが、このメニューはダントツで人気ですね。あと、観光の方はやっぱり沖縄料理を注文する人が多いです。ちなみに食べ飲み放題でコースを予約されるときに、観光で来たという方にはコース料理の内容を沖縄料理バージョンに変更したりもしてます。

 

ーーなんと。これは必見です。観光客の方は、事前に予約して沖縄料理バージョンのコースをぜひ味わってください。

 

HUBの成功を皮切りに、その後食べ飲み放題のお店を次々と輩出した南風見さんの「居酒屋論」

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f:id:Meshi2_IB:20181102193819p:plain南風見さん:今では居酒屋さんはかなり増えて、うちより安いお店もいっぱいあるんですよ。けど、安さが一番のお店だと、食べたいものがないんです。僕くらいの年齢だと特に(笑)。だから気軽に行ける価格で、でもそれなりのクオリティーを担保するようにしています。自分が飲食店によく行くので「これがありがたい」というのがよくわかるんです。

 

f:id:Meshi2_IB:20181102193819p:plain南風見さん:3,000円払って満足してもらう。値ごろ感を感じてもらう。そこからの「また来ようね」がうれしいんです。地元客もそうですが、観光客も「なじみのお店」が欲しいのだと思いますし、そういうお店でいる努力はしています。メニューも1カ月に一度変えるための会議をしてますし。

 

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取材日当日も、枯れかけた観葉植物を見つけた瞬間、反射的にどかし始めた南風見さん。常にお客さんがどう思うかを真剣に考え続けて20年間居酒屋業界にいるのだろう。

 

ーーちなみに、今7店舗系列店があると思いますが、また新しく店舗をつくるとき、食べ飲み放題をしようと思いますか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181102193819p:plain南風見さん:思わないです(きっぱり)。やるとしてもコース料理+飲み放題でやりますね。やっぱり、食べ放題があるとメニューの調整が難しいんです。何とか利益が残るようにしないといけないので、食べ放題前に出すコース料理も、料理人の好きなようにできないんです。料理人の負担が大きいんですよ。だから今ある店舗は、今いてくれているお客さんのためにやっているようなところはありますね。次は、違った形でやりたいです。

 

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▲琉球楽園ダイニング Ohana 内観

 

現在は離島への出店も計画しているという南風見さん。居酒屋業界、沖縄に対するエネルギーをひしひしと感じた。

 

「うまい・安い・早い」すべてをクリアした食べ飲み放題。沖縄で食べ飲み放題文化に触れたことのない人は、ぜひこのお得な幸せを味わってみてほしい。

 

お店情報

琉球楽園ダイニング Ohana

住所:沖縄那覇市久茂地3-4-1 丸福ビル5F
電話番号:098-866-0873
営業時間:16:30~翌2:00
定休日:無休
ウェブサイト:http://wassyoifamily.com/shop-list/ohana/

www.hotpepper.jp

 

書いた人:三好優実

三好優実

お腹が減る感覚が一番嫌いで、「腹が減っては戦はできぬ」という言葉を作った人は天才だと思っている。回転寿しで36皿食べたことが武勇伝。ちなみに普段は納豆で生きています。

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