とある男性からこんなことを聞きました。
料理にキッチンバサミを導入してからというもの、包丁をほとんど使っていません。それどころか「結局、かなりの種類の料理がキッチンバサミだけでできちゃうんじゃね?」と思い始めて軽く10年は経ちます。
キッチンバサミ───。
たいていの家庭には当たり前のように常備しているであろうキッチン用品。包丁やまな板と同じくらい、その存在が自然なキッチンバサミ。
確かに便利だよな、うんうん。
これです、これ。
▲柄の付け根の丸い隙間はくるみの殻を割るためのもの(キッチンバサミでよく見かけるけど、くるみの殻を割ることが多い家庭ってあるのかは長年の謎)
そんなことを考えていると、今度は別の男性からこんな発言が。
うちはキッチンバサミないですよねー。
そのときは驚いたものの、どうもひとり暮らしの男性の場合、キッチンバサミを必ずしも導入しているとは限らないという現実が見えてきました。
いやいやいや、もったいない。キッチンバサミがどれほどいい仕事してくれるか知らないなんて、もったいないこと山のごとしです。
メーカーの担当者に聞いてみた
そもそもキッチンバサミは普通のハサミといったいなにが違うのでしょう。外見的にはほとんど同じように見えるし、くるみの殻を割れるか否か以外の相違点はあるのでしょうか?
これはキッチンバサミのメーカーさんに聞くしかないと業界大手の貝印株式会社に問い合わせたところ、広報・宣伝部の高多さんが丁寧に教えてくださいました。
高多さん:「キッチンバサミは食品を切ることを想定して作られています。刃の部分にギザギザが付いているのは事務用(文具)のハサミにはあまり見られない形状で、これによって食材をしっかりとらえることができています」
刃のギザギザ、確かにあります!
ただ、キッチンバサミと一口に言っても、いろいろなものがあるようです。
高多さん:「包丁にも菜切り包丁、肉包丁、ペティナイフなど、目的に合わせたバリエーションがあるように、キッチンバサミも大きさ、形状、ハンドルの特性など、用途に合わせて選べるくらい種類があります」
なるほど。お見それしました!
高多さん:「たとえば、分解して洗えるタイプのものは、油汚れや切りくずを洗い流せるので衛生的ですし、刃がカーブしたタイプは食材が“逃げていく”のを防ぐ効果があります。硬いものを切ることも想定したキッチンバサミの場合は、ハンドル部分を強く握っても手が痛くならないようにラバーが付いているものもあります」
そんなにいろいろあったとは……。
でもキッチンバサミって1万円を超す高級品もある一方、100円ショップでも売られていたりするし、ずいぶん幅がありますよね。
高多さん:「キッチンバサミの価格には、刃の鋼材や研ぎの仕上げなどにかかる費用が反映されています。長く使えば使うほど切れ味に差が出てくるので、きちんと選んで購入されることをおすすめします」
勉強になりました。高多さん、ありがとうございます。
キッチンバサミの通販 | キッチン雑貨 | お料理の道具 | 貝印公式オンラインストア
のり、こんにゃく、練り物は楽勝
改めて、キッチンバサミのなにがすごいかって、今さらですが包丁の代わりになることです。たとえば筆者の実家では、昔から刻み海苔は「使うときに作る」のがセオリーでした。
こんな感じ。
それからしらたきは包丁より断然切りやすく、当然ながらこんにゃくもしかり。
たとえばこの刺身こんにゃくは、一口サイズではあるものの、ちょっと大きいのです。これだと酢味噌が絡まる表面積が狭くなってしまいます。
そこでこんな風に半分にカットすれば……
酢味噌をたっぷり絡めていただけます。
ちくわなどの練り物もお手のもの。ジョキジョキいけます。
真骨頂は油っこいものや生肉
個人的に「包丁の代わりにキッチンバサミを使うと楽だわ~」と思うのは、油っこいものやニオイの強いものを切るときです。包丁がというよりも、まな板が汚れたり、ニオイがついちゃったりしますから。
味噌汁に入れる油揚げもジョキジョキ!
油っこいソーセージも楽々!
これはとんかつ用の豚ロースですが、これも……
サイコロ状に切ったり、余計な脂身を取り除いたりできます。
しかも、まな板を汚さずに!
生肉の処理はキッチンバサミの真骨頂といえるかもしれません。
ベーコンや豚バラ肉などの薄切りは、包丁よりも処理しやすいと思いますし、鶏肉の筋を取ったり皮や脂肪を取り除いたりするのも簡単にできます。
隠れメリット=まな板にニオイがつかない
それにほら、にらのような野菜だと、ニオイも色もまな板についてしまうんですよね。
これもキッチンバサミでどんとこい。根元のほうから切ったほうがばらけなくて切りやすいです。
これでまな板ににニオイも色もつかない!
ついでにまな板に切ったにらがくっついてイラっとすることもない!
これね、実は見逃せないメリットだと思うんですよ。
切って炒める料理ならかなりイケる
せっかくなのでここまで切ったものを使って焼きそば作ってみましょう。
これは以前包丁でカットして冷凍しておいたきのこ類(何種類かミックスして保存しておくと便利です!)。
ついでにこれも使いましょう。
できました! キッチンバサミだけで作った焼きそば。
まったく違和感なし!
ついでに、にらでチヂミも作ってみました。
▲微妙な感じのビジュアルなのは、生地に卵を入れ忘れたからですよ。安心してください、卵なしでもおいしくいただけることが今回判明しました
材料を切って炒めるパターンの料理ならかなりイケちゃうのではないでしょうか。
無限の可能性を秘めたキッチン用品
そのほか、キッチンバサミを活用している人からは、こんな使い方も教えてもらいました。
- 食パンを切る(これは試したことないです。切り口がつぶされないのでしょうか? 今度やってみよう)
- ねぎを小口切りにする(麺類の薬味はキッチンバサミでたいがいいけますね)
- キャベツや白菜を切る(野菜はかなりの種類、キッチンバサミでいけると思います)
- ニンジンだって切れる(まじか! 今度やってみよう)
- 魚も切れる(筆者はバラちらし作るときに包丁使ってます。上級者はキッチンバサミで魚をさばけるそう。動画サイトにアップされています)
- 離乳食のためにバラバラにする(友人ママさんに聞きました)
- 高齢者向けに誤飲予防のために切る(介護経験ありの奥様に聞きました)
ただしひとつ懸念が。「使い勝手もいいし包丁よりも危なくなさそう」という親御さんの考えにより小さい頃からキッチンバサミに慣れ過ぎてしまうと、使いこなしっぷりはすごいことになるかもしれませんが、包丁を使えない大人になってしまわないか心配になってしまいます。いや、どこのお子さんの心配してるんだって感じですが、そんなことを考えてしまうほど優れものだということですよ、キッチンバサミ。
これからひとり暮らしをするにあたってキッチン用品をそろえる人、自炊にチャレンジしてみようという人は、ぜひキッチンバサミをマストアイテムとしてみてください。まな板が汚れる、食材を均一・均等に切れない、包丁は指を切りそうで怖いといった各種ストレスから解放されること間違いなしです。
ただし、包丁には包丁のよさがあります。
包丁の切り口の美しさは(突然情緒的で恐縮ですが)食材へのリスペクトを感じますし、見た目も大切な本格的な料理の際は、やはり包丁だからこそできる職人芸があります。
包丁一本やりじゃなく、うまくキッチンバサミを活用することで自炊生活がより楽しく快適になったらいいじゃない、そんなご提案なのでした。
これが包丁なしで作れるなら、自炊のハードルも下がるのでは。
なお、写真に写っているのはいつどこで買ったのかも定かでないマイキッチンバサミです。
筆者この記事を書くにあたりどんどんキッチンバサミが気になりだして、とりわけ貝印さんのお話を聞いたときに登場した刃のカーブしたキッチンバサミにどうにもそそられ、購入しちゃいました。
ポチしたのでまだ手元には届いていないのです。早く届かないかな~。楽しみです。