【お米の常識が変わる】ユーザーの声をもとに生まれた「いちほまれ」は、“全米史上”最高ブランドになれるか

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「コシヒカリ」といえば日本を代表するお米の銘柄。多くの県で生産されていますが、コシヒカリ発祥の地がどこかご存じですか。新潟県? 秋田県?

違いますっ、違いますよ!

コシヒカリは1956年に福井県が生み出した品種なのです。

その福井県が「コシヒカリを超えるお米を作ろう」と、6年がかりで新しい品種を開発しました。それが2018年9月から全国で販売開始となった「いちほまれ」です。

 

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▲2018年は、いちほまれ全国デビューの年となりました

 

筆者はかつて「お米は魚沼産コシヒカリを買っておけば間違いないだろう」という気持ちで、機械的に購入していました。けれど自分の好みが「粒感のしっかりした、甘味が強すぎないお米」であり、コシヒカリがそれに合致していないことに気づきました。

そこで数年前からさまざまな品種のお米を食べ比べてきたのですが……「いちほまれ」にガツン! とやられました。艶やかな白色、しっかりした食感とほどよい粘り気、かむほどじわっと広がる甘味。感激かつ衝撃でした。

 

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▲「いちほまれ」のおいしさは尋常じゃありません

 

コシヒカリを超えるために消費者ニーズを探る

このお米はなぜ、そしてどうやって生まれたのか。それが知りたくて、福井県農林水産部福井米戦略課市場戦略グループ主任の堂越浩さんに、いちほまれ開発秘話からおいしいお米の炊き方まで教えていただきました。 

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▲堂越さん、よろしくお願いします!

 

── ブランド米が乱立する中、なぜ新しい品種をつくろうと思われたのですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181214103623p:plain堂越さん:福井県はコシヒカリ発祥の県でありながら、福井産のコシヒカリは「魚沼産」などのいわゆるブランド米と違ってお手頃価格で販売されてきました。また、気温の上昇による品質低下などの問題も生じていたため、県をあげて現在の気象条件に合い、かつ、コシヒカリを超える味のお米を作ろうということになったのです。福井県農業試験場内にポストコシヒカリ開発部を設置し、2011年から研究を始めました。

 

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福井県農業試験場内で研究開発スタート

 

── お米の消費量が減少している一方でブランド米が乱立している現在、新品種を世に送り出すことにどんな意義があるのでしょうか。

 

f:id:Meshi2_IB:20181214103623p:plain堂越さん:福井県のブランド力を高めたいという思いがあったこと、それから福井県の農家の方にも「自分たちは『いちほまれ』やコシヒカリの生みの県でおいしいお米を作っているんだ」という自負と自信を持っていただきたいという思いがありました。

 

── あのコシヒカリを超えるお米というだけでも壮大な夢のような気がしますが、具体的にはどうやって超えようと考えられたのでしょう。

 

f:id:Meshi2_IB:20181214103623p:plain堂越さん:「コシヒカリを超える味のお米」と言っても、その味がどういうものかわからないわけですよね。そこで約1500名の方にさまざまなお米を食べていただいて、現代の人がどんなお米を好きなのか嗜好(しこう)をリサーチしました。するとコシヒカリの強い粘りをあまり好まない人も多いことがわかり、意外な結果に私たちも驚き、従来のように「こういうお米を作ろう」とこちらで決めるのではなく、消費者の好みを反映させたお米を作ろうということになりました。それが「絹のような白さと艶」で「粒感と粘りが調和」し、「かみ締めると口に広がる優しい甘さ」のお米です。

 

商業ベースでの物作りにかかわる人にとってはこの発言、結構な衝撃ではないでしょうか。現在、多くの商品はマーケティングをもとにして商品企画が練られ、この世に生み出されます。つまりは基本はユーザー本位。お客さんの声を反映してナンボなのです。

がしかし、ことブランド米の世界にあっては、なかなかこの論理が通じないこともしばしば。その点、消費者ニーズをもとに開発された「いちほまれ」は業界の常識を打ち破った風雲児ともいえるかもしれません。

 

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▲コシヒカリに似たお米を作ってもコシヒカリは超えられない

  

炊きたてはもちろん、冷めてもおいしい

── 開発に先がけて、まずは消費者ニーズを探り、そこで得られたデータを実際の開発に反映していったと。こういった手法で作られたお米というのは、過去にあまり例を見ないのでは。

 

f:id:Meshi2_IB:20181214103623p:plain堂越さん:そうですね。開発には6年かかりましたが、まずは最初の3年間で20万種の稲から100種類くらいまでに絞りました。そこから収穫調査や食味評価の結果などを踏まえて10種類に、さらに農家の水田での現地実証などで4種にまで絞り込みました。この稲をふるい分けていく作業が「さっき外したものが実はものすごくいいものだったのでは」という不安との戦いで、研究者にとっては大きなプレッシャーだったようです。最後は有識者の方々の意見も聞き、最終的に1種を選んだのが2016年12月のことでした。

 

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▲20万種の稲から優良な1種を選び抜く。気が遠くなるほどの作業だ

 

── ところで「いちほまれ」というネーミングはどのように決められたのですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181214103623p:plain堂越さん:公募です。「全米史上最高ブランド誕生!!」というかなりキャッチーなうたい文句で募集したところ、10万7652件もの応募をいただきました。そのなかから「日本一(いち)おいしい誉れ(ほまれ)高きお米になってほしい」という思いが込められた「いちほまれ」が選ばれました。

 

── 全米史上……ってそっちの「米」ですか! ただおっしゃるとおり、シンプルなパッケージを見ると、そんな思いは確かに伝わってくるような気もします。

 

f:id:Meshi2_IB:20181214103623p:plain堂越さん:パッケージはデザイナーの副田高行さんに手がけていただきました。「いちほまれ」という名称がすごく正当で今時と逆行するほどまっすぐなので、デザインも奇をてらわずシンプルなものになりました。お米を作る源である太陽をモチーフに、「本物」や「日本」を意識したパッケージです。

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▲余計なものをそぎ落とした潔いパッケージデザイン。究極の美とでもいうべきか

 

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▲「いちほまれ」は、一定の基準を満たす農家だけが栽培できる

 

── 発売後は消費者からの反応がやっぱり気になりますよね。そもそもユーザーの声を反映しているわけだから余計にプレッシャーがあるのは当然でしょうし。

 

f:id:Meshi2_IB:20181214103623p:plain堂越さん:ありがたいことにたくさんの「おいしい」の声をいただいています。また、炊きあがって炊飯器のふたを開けた瞬間が「楽しい」と。つややかで真っ白な米が目に飛び込んでくることにワクワクした思いを感じてくださるようです。

 

── ええ、炊飯器のフタは悦楽への入口ですから。

 

f:id:Meshi2_IB:20181214103623p:plain堂越さん:味わいも私たちが目指した「もっちりした中にも感じられる粒感」が好評で、「お米を食べる日が増えた」と言っていただけるのがうれしいですね。「炊きたてだけでなく冷めていてもおいしい」という声も多数いただいています。

 

──「冷めてもおいしい」というのは、日本人にとってすごく重要な気がします。

 

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▲冷めてもおいしいからおにぎりにも最適!

 

おいしく炊くコツはこれだ!

── お話をずっとうかがっていたらお腹が空いてきました。「いちほまれ」のおいしい炊き方を教えてくださいますか。

 

f:id:Meshi2_IB:20181214103623p:plain堂越さん:はい、待ってました(笑)。では、ご説明しますね。

① お米の汚れを取る(すすぎ1)

お米を正確に測り、浄水器の水かミネラルウォーター(軟水)をたっぷり注ぎ、軽くかき混ぜて素早く水を捨てます。(所要時間は10秒程度)。

次に、水道水を入れ、軽くかき混ぜて素早く水を捨てます。

★お米に付いた糠やほこりを取り除く作業です。時間をかけるとお米が汚れた水と臭いを吸ってしまうので、素早く行います。

 

②お米を研ぐ

すすぎ1の水切りが終わったら、水を加えずに指を広げて、シャカシャカと音を立てるように15回程度かき回します(洗う)。

★ゴシゴシと力を入れて研ぐと、お米が傷ついたり、割れるため、炊き上がりがべたつくことがあります。

 

③すすぎ2

お米の研ぎ汁がボウルの下に溜まってきたら素早く水を入れ2~3回かき混ぜ、研ぎ汁を薄めてから捨てます。

★洗い、すすぎを2~3回繰り返します。

 

④チェック

すすぎ終わった後に水を入れ、薄く濁っている程度なら研ぎは終わりです。

★濁りが気になるという場合は、すすぎのみを数回繰り返してください。

 

⑤水の量

いちほまれの特徴である粒感と粘りを引き出すには、少し少なめの水の量がおすすめです。

初めていちほまれを炊飯するときは、炊飯器のお釜の目盛の下のラインに水の線がくるように加水し、食感を確かめてください。2回目以降はお好みで、水の量を加減してください。

 

⑥炊飯

浄水器の水かミネラルウォーター(軟水)を入れ炊飯します。

★炊飯器の場合は、炊飯時間に浸水時間を含んでいるので、浸水やザル揚げは必要ありません。

★炊き上がったら素早く切り混ぜ、余分な水分を飛ばします。※(ふくいブランド米推進協議会)このコツは超米屋HP「白米の研ぎ方」の表現を参考に作成しています。

 

までの行程を1分程度で終わらせるようにしてください。そのくらい「手早く」がコツです。研ぎ過ぎはお米にダメージを与えますし、2回目以降の研ぎ汁が濁るのは汚れではなく、お米のでんぷん質が削れているだけ。

また、IH炊飯器の場合は浸水や蒸らしは不要です。炊き上がったお米には十字にしゃもじを入れて、1/4ずつひっくり返すように混ぜてください。「いちほまれ」がさらにおいしくなります!

※以上の炊き方は、いちほまれの公式サイトに「いちほまれを美味しく召し上がるコツ」というコンテンツにも掲載されています

 

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炊き上がったお米は4等分にして、1/4ずつひっくり返すのがふっくらおいしくなるコツ

 

和洋中なんでも合う万能さ

── お米はおいしく炊けたとして、さておかずはどうしましょう。

 

f:id:Meshi2_IB:20181214103623p:plain堂越さん:和洋中のおかずに合う多様性を受け入れるオールマイティーなお米ですが、あえて言うなら「いちほまれ」は粒感があるので、歯応えのあるおかずと一緒に口内調味していただくのがいいかと思います。漬物もいいですし、脂との相性もいいので焼肉などの肉類もOK、もちろん刺身にも合います。福井の特産品であるへしこも相性抜群ですよ。

 

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▲和食よし、魚よし!

 

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▲洋食よし、肉よし!

 

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▲牛すじ煮込みもよし!

 

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▲キムチやきんぴらごぼうとの相性も抜群

 

── ちなみに堂越さんのお好みは……?

 

f:id:Meshi2_IB:20181214103623p:plain堂越さん:個人的にはお米の味そのものがおいしいので、具が何も入っていない塩おにぎりも最高だと思っています。

 

味自体はすでにコシヒカリ超えを果たした!?

── そこまでいうなら試してみようじゃないかという読者の方も多いと思います。「いちほまれ」は、現在どこで買えますか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181214103623p:plain堂越さん:百貨店や米穀店、一部スーパーでお買い求めいただけます。「いちほまれ」には最上級グレードのJAS認定米・無農薬無化学肥料栽培米、農薬使用が5割以下かつ化学肥料使用が5割以下という特別栽培米、農薬と化学肥料を2割減らす栽培方法エコ栽培米という3種類のグレードがあります。百貨店がおもに扱っているのは最上級グレードの「いちほまれ」で、パッケージも特別仕様。グレードに応じて違うパッケージで販売しているブランド米は、今のところ「いちほまれ」だけですね。 

 

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▲おいしければ売れる。これ、食べ物全般の摂理なり

 

── いろんな意味で、お米の常識を覆しそうな……いや、全米制覇しそうな、そんな予感もしています。

 

f:id:Meshi2_IB:20181214103623p:plain堂越さん:ありがとうございます。「いちほまれ」はコシヒカリを作った福井県が力を込め、技術の粋を集めて作ったお米なので、味に関しては100%の自信を持っています。「いちほまれ」をきっかけにお米好きな方が増えて、国内のみならず、外国の方にもお米を食べる日本の食文化や日本の素晴らしさを知っていただけたらと思っています。

 

── 堂越さん、ありがとうございました!

 

「いちほまれ」のおいしさは日本穀物検定協会による食味官能評価でも実証済み。コシヒカリの0.55を上回る0.7という評価値で、その確かな味が客観的に評価されています。

そう、堂越さんの自信あふれる発言が裏付けられたことになります。

唯一気にかかるのはその値段。ブランド米と銘打つお米はやや高価です。けれど2kg入り、5kg入りで数百円~1,000円ほどの価格差なら、1合に換算するとさほど大きな額ではありません。

時代はもうとっくにユーザーが自分の好みでお米を選ぶ時代。と考えれば、ユーザーの意見や好みで生まれた「いちほまれ」のようなブランド米が主流になる時代がやってくるのかもしれません。

ichihomare.fukui.jp

 

書いた人:椿あきら

椿あきら

猫の下僕をしているライターです。猫と暮らすようになってから、断然家飲み派になりました。著書に『オリンピックと自衛隊 1964-2020』(並木書房)。

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