「山本のハンバーグ」の山本社長が語る激烈ハンバーグ愛

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「俺の」から「山本のハンバーグ」へ

「俺のハンバーグ山本」という、一度聞いたら耳に残るネーミングのハンバーグ専門店があります。ハンバーグに特化した業態で一世を風靡したお店ですが、今年の春に、代表を務めておられた山本昇平氏が、新たな名前のお店を展開されはじめたとのこと。

現在は「山本のハンバーグ」というネーミングでお店を展開され、すでに都区内に6店舗を構えていらっしゃるといいます。新展開されたお店は、一体どんな感じなんでしょう。

今回ありがたいことに、山本さんにお時間をいただくことができました。さっそく東京渋谷恵比寿は「山本のハンバーグ 恵比寿本店」へ。

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「待ってたぞ。ハンバーグ食べたいんだって?」

「そうなんす、アニキ」

そういうやりとりを妄想しちゃいそうな、ナイスガイ&タフガイな雰囲気の山本社長。

 

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「まずはお店の中へどうぞ」

 

山本社長、実際にお会いするまでは、体育会系のイメージだったんですが、穏やかな話し方をされる物腰が柔らかい方です。

 

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恵比寿本店は、なんだかとても暖かみがあって、スタイリッシュなお店。

 

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女性の方が一人で来店しても入りやすそうな、いい雰囲気の内装ですよね。

 

サービスや商品力で勝負したかった

──まず「俺のハンバーグ山本」から「山本のハンバーグ」にお店の名前を変えられたのは、どうしてなんでしょう?

 

「俺のハンバーグ山本」というお店の名前自体は13年前に出店した時に、私が考えた店名です。オープンから4年ほどしてから、当時私が所属していたムジャキフーズさんが商標を取得されました。
私自身は、料理人として修行を積んでお店を出したわけではないんですね。大学を出た後に、独立支援を主力事業にしていたムジャキフーズさんに新卒で入って会社員として働いていました。そこは、社員各々が企画を出してプレゼンテーションをやって「いけそうなプランならお店を出してあげるよ」という仕組みがある会社だったんです。
幸いなことに出資を受けることができて、出店させていただくことになった際に「俺のハンバーグ山本」という店名をつけたというわけです。その後、契約の関係上、お店の名前をそのまま使わせてもらうかどうか決めないといけなくなったんですね。結果として今年の6月に「俺のハンバーグ山本」という店名を「山本のハンバーグ」へ変更させていただくことにしました。その際に、現在の渋谷の店舗のみ、ムジャキフーズさんとの関係上、移転しました。移転前に渋谷にあった元の店舗では、ムジャキフーズさんが「俺のハンバーグシュシュ渡辺」というお店を営業されています。

 

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──お店の名前が変わることに、葛藤はなかったのでしょうか。

 

私たちは、お店のネームバリューでお客様にリピートしてもらうのではなくて、サービスや商品力を高めてご愛顧をいただける工夫を重ねてきたつもりでした。そういった、私たちのお店作りの「思い」が、お客様に正しく伝わるようにしたかったんですね。ただ一方では(我々とは関係のない)「俺の」という名前がつくお店が増えてきた。そういったお店のほとんどが、私たちのお店作りの「思い」と違う部分が多かったんです。それで、そういったお店と混同されるのを避けるために「俺の」という部分を外して「山本のハンバーグ」に店名変更しました。ですから、そこまで葛藤はなかったですね。

 

──そもそも経営者としてハンバーグ専門店を立ち上げられた際に、どのような理由でハンバーグを選ばれたのかお聞きしたいのですが。

 

開業当時、飲食のプロとして経験が浅かったので、お客様に満足していただくお店作りをするためには、単品集中で提供するお店じゃないと難しいのではないかと考えていたんですね。それで、ハンバーグを提供するお店にしました。ハンバーグってわくわくするイメージがあるじゃないですか。子どもの頃、夕食に出されると楽しい気分になったメニューの一つだと思うんですよ。また、幅広い世代のお客様に来店してほしかったので、子どもから大人まで好きなメニューを考えた結果、ハンバーグを選びました。
ハンバーグって家庭的な匂いがする料理というイメージがありますけど、そこは、プロの料理店ならではのクオリティで料理を提供する、と。その上で、お店では家庭で食事をしている時のように、くつろいで楽しんでいただけるサービスを常に意識しています。

 

──なるほど。では経営される上で、何が一番大変だと感じていますか?

 

これはもう「人」ですね。スタッフをどのように教育していくか。社内だけで発揮できるスキルを教育していくのは合理的なんですけど、いわれたことしかやろうとしないタイプの社員が育ってしまう恐れがあります。スタッフ自身が、将来的にお店を辞めたとしてもハッピーでいられる力を養う教育を、常に意識しています。同時に、そういったスタッフとの出会いを大切にし、いかに長く続けていけるお店を作るかが、もっとも重要なテーマだと思っています。

 

少年時代に痛感した「やらない後悔」

──飲食業界は、料理人として修行を積んで経営者になる方が多いと思います。山本さんは、経営側からスタートされたわけですが、そもそも経営者に向いている方ってどんなタイプなのか、教えていただければ……。

 

私自身がそういったことを語れるとは思えないんですけど、やりたいことを、自分で能動的に動ける人かなと思います。そう思ってしまうのは、私の子どもの頃の経験が強く影響しているのかもしれません。子どもの頃は、テニスとボーイスカウトに熱中する子どもだったんですね。ある時、世界中のボーイスカウトが集まるジャンボリーという大会があったんです。私は、行ってみたかったんですけど、勇気がなくて見送っちゃった。ところが、参加したボーイスカウトの仲間が、とても楽しかったと熱っぽく語るんですね。「やるかやらないか選択を迫られた時に、やらなかったら、これだけ後悔するんだ」ということが、子ども心にすごく響きました。それから、迷ったらやるという考え方を培って今に至っています。

 

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──お店の運営にそれだけ心を配ってらっしゃるのなら、お料理もたくさんの工夫をされているのだと察します。付加価値が高い商品を提供するにはどのような工夫を?

 

ハンバーグはお肉の劣化が味に出やすい料理なので、お肉を仕入れたらすぐにお出しするようにしています。作り置きをしないということですね。あくまでお店で一個一個、新鮮な素材を使って、手作りでハンバーグを作ることが大事。お店で朝仕込んだものは昼に使って、午後から仕込んだものは夜に全て提供してという感じで、一番おいしい状態のものを提供させていただくように心がけています。同時に安全面にも配慮しています。以前は、オーストラリア産のお肉を使っていたんですが、全て産地が分かる国産の牛肉、豚肉に切り替えました。もちろんオーストラリア産のお肉が悪いわけじゃないんですが、国産のお肉なら生産者までトレースすることができる。価格の問題もあって、ずいぶん悩みました。でも万が一、BSE(牛海綿状脳症:狂牛病)などの問題が起きた時に、私たちが提供しているお肉の安全性を確認できますからね。産地を調べることで、お肉が安全かどうかを確認できる体制があれば、お客様に安全なハンバーグを提供することができますから。

 

多店舗展開より一世紀続くお店

──「山本のハンバーグ」ならではの味の工夫もいろいろとありそうですね。

 

トッピングとソースで味を変えるわけではなくて、メニューが全て調理工程が違うので、メニューごとに違った美味しさを楽しんでいただけることがウチの特徴でしょうか。こういったことは、お店で手作りしているからできると自負しています。また、各店舗のシーズンメニューは、各店舗の料理長に、ある程度の裁量を持たせて開発させています。

 

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──それにしても、メニューといい、お店の内装といい、とてもスタイリッシュですよね。それぞれのお店が個性的なんだけど統一感があるというか。山本さんのこの総合プロデュース力っていかにして培われたものなんでしょうか。

 

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▲パンフレット風に見えるが実はメニュー。写真がどれも美味しそう!

 

いえいえ、そこまで自慢できるほどではありません(笑)。ただ、学生時代にとてもセンスのいい友人がいて、流行のファッション雑誌とかは一切参考にしないで、自分の感性でかっこいいと思うものを選ぶヤツだったんですね。彼には結構インスパイアされましたね。周りから見てどう思われかではなくて、自分がいいと思うものを自信を持っていいと思うと主張する感性を常に大事にしています。

 

──ズバリ、座右の銘は?

 

出会いを大切にすること。そして継続していくこと。ビジネスは継続が大事ですから。多店舗を展開するお店を作るよりも、100年続くお店を続けるほうが価値があると思っています。いかに続けていけるお店を作るかが、もっとも関心があるテーマですね。

 

恵比寿店限定の極上ハンバーグ

小一時間ほどお話をうかがって、そろそろおなかが空いてきたので、お料理を出してもらうことにしました。メニューも豊富で迷ったんですが、恵比寿本店だけのメニュー「元祖山本のハンバーグ」をオーダー。

 

山本さんのお話どおり、ハンバーグは全てシェフが一つ一つ生地を手でこねて、焼き上げておられました。

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ハンバーグって、火加減が本当に難しい料理なんですよね。ただ単に、強火でガンガン焼くと肉汁が逃げて、パサパサになっちゃう。絶妙な火加減で肉汁を逃さず、生地の芯まで火を入れていくテクニックは脱帽です。

 

さてさて、メインディッシュのハンバーグが登場!

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▲ 「元祖 山本のハンバーグ」(1,750円)/恵比寿本店限定

 

写真は割愛させていただきましたが、このハンバーグに、ごはんとお味噌汁がついてきます。

「ハンバーグの上にかかってるのは、マヨネーズと卵を泡立てたものなんですね。ハンバーグの上に乗せて火を入れてあります」とスタッフさん。さらに、うれしい不意打ちが。ハンバーグを割ってみると、中には生ハムで巻いたチーズ入りのコーンクリームがトロっとお出ましになり、ダブルの愉悦が。 

フォークを口に運ぶたびに、複数のうまみが重なって、すごくリッチな風味が広がります。

 

さらにガッツリ系にいきたいならこんなメニューも。

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▲「ハンバーググラタン」(1,500円)

 

ベシャメルソースは、クリームをしっかりきかせて作ってあって粉っぽさがまったく感じられない舌触り。加えてデミグラスソースも八丁味噌と出汁が混ざっており、コクのある風味に。

ふたつのソースを合わせると、どちらが勝るとも劣らない立体的な味が立ち上がる。それでいて、中に入ってるハンバーグもソースに負けることなく、濃厚な風味を主張しています。これは、名のあるホテル並みの美味しさですな。

 

そうそう、お味噌汁とご飯がついてくると紹介させていただきましたが、お邪魔したのはまだ残暑厳しい夏の終わりのためか、冷や汁もご用意されていました(別料金)。

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スタンダードメニューだけでなく、季節ならではのメニューも各店舗でご用意されるとのこと。各店舗の独自メニューを食べ歩くのも楽しそうです。

これからだんだん涼しくなるにつれて、あたたかいものが恋しくなりますよね。お近くまで出かけられた際には、ぜひ一度試されてみてください。

山本社長、ありがとうございました!

 

お店情報

山本のハンバーグ 恵比寿本店 恵比寿本店は閉店

住所:東京渋谷恵比寿4-23-12 茗荷原ビル
電話番号:03-6455-7170
営業時間:11:00~15:00、17:00~23:00 (LO 22:30)
定休日:無休
ウェブサイト:http://www.yamahan.tokyo/

※金額はすべて消費税込です。
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

 

書いた人:松沢直樹

松沢直樹

1968 年福岡県北九州市生まれ。SE、航空会社職員などを経て、1994年よりフリーランスの編集者・ライターとして活動。主に扱うジャンルは、食全般、医療、 農業、安全保障、社会保障など。マグロ解体ショーの実演、割烹の臨時板前などとして、メシを作ることも。近著に「うちの職場は隠れブラックかも(三五 館)」。

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