函館は一年通してイカを食べられるイカの楽園です。旬もなにも、一年中イカがうまいのです。そんなイカに恵まれた函館ゆえでしょうか、「イカのスイーツ」まで存在するらしいのです。
ちょっと想像ができませんね……そこで現地に取材に行ってきました!
超ド生鮮のイカをおさえておこう
北海道の玄関口、函館にやってきました。
前日は強風に大雨、最高気温が8度と雪国感ゼロ。この日は打って変わって雪景色となりました。まずは、駅周辺を散策してみました。
道路はきちんと雪かきがされていました。ただし、前日の雨が凍ってツルツルです。
足全体で垂直に地面を踏むと転ばずに移動できます。冬場の観光は本当に気をつけていただきたい!
函館駅から徒歩約10分、例のウォーキング技術を駆使し、函館自由市場にやってきました。観光客はもちろん、飲食店の調理担当者も品物を選びに来る、モノの良さに定評のある市場です。
建物のなかには30軒の鮮魚店のほか、塩干(えんかん)店6軒、生花店1軒、青果店1軒が営業しています。いい雰囲気ですね。
実は今年は、イカの水揚げ量が少ないのだそう。おまけに前日嵐だったためそもそも漁に出られたのか……。
かなり厳しい状況にも関わらず、いました! イカです。ありがとうございます!!
函館は12月から6月はヤリイカ、6月から12月はマイカと、年中イカを捕ることができます。この時期のヤリイカは身が柔らかく、甘みがあるのが特徴です。
市場ならでは! 冷蔵庫のない喫茶店
自由市場には4軒の飲食店があります。今回はそのうちの一つ、「coffee マルシェ」でイカをいただきます。市場には似つかわしくないポップなお店、一方でメニューは本格的な海鮮を取りそろえ、札幌の名店「菊地珈琲」仕込みのコーヒーも楽しめます。
メニューはこちら。「いか刺し定食」(1,000円)……2位!? 市場に来たからには鮮度が問われる生のものを食べたい気がしますが、1位は「銀だら定食」(1,200円)です。うわー、イカ以上に気になる……! でもここはやはり、「いか刺し定食」でしょう。
注文するとおもむろにお店の外に出て行った板前さ……マスター。
ああっ! すぐ隣のお店でイカ買ってる! なんという鮮度!!! そういうことなので、「coffee マルシェ」の店内には冷蔵庫がないのだそう。
ついさっきまでまんまの姿だったイカが、数分でお刺身になりました。透明度のあるきれいな白さは、この鮮度ゆえなのでしょう。写真左側のほんのり色がついているのはヒレ、いわゆる耳の部分です。こちらは少し歯応えがありますね。
食べてみると筋っぽさがほとんどない! かむほどにイカが溶け出し、甘味とともにコクがでてきます。食べた瞬間からガツンとうまい、というよりも、かみ締めることでしみじみとうま味が感じられる……うまい、うまいだけに1位の「銀だら定食」が気になる……!!
胴の部分のほかに、イカのワタとゲソも食べられます。
吸盤のコリコリしたゲソは、胴の繊細なうま味よりも強めな味わいが特徴。胴と交互に食べるとイカをイカで味変できます。そして好みのわかれるワタは、苦みの薄い優しい味でした。食べたことのない人に是非挑戦してもらいたい! そして酒飲みたい!
どうしても気になったので、人気ナンバーワンの「銀だら定食」も食べてみました。
裂け目からあふれる脂……いやこれは肉汁といったほうがいいかもしれない。箸を入れてみるとふわっふわの身。そして味付けがまたご飯が進む! 「分けて食べようぜ!」とか絶対無理、瞬間的になくなります。
和菓子屋さんのイカは刺身にできない
シンプルながら極上の市場直送イカ刺し。これを超えるものなんて存在しない! そう思えるほどのコク、うま味が詰まっていました。しかしここはイカ天国、函館。私たちの想像をはるかに超える「イカのスイーツ」が存在しているのです。
「イカのスイーツ」をいただけるのは、函館駅から車で約7分、和洋菓子店の「はこだて柳屋」です。甘いイカのお菓子……想像がつきません。
店内に入ると外観以上にお菓子屋さん。
噂の「いかのスイーツ」について聞こうとショーケースに近づいて見ると……
発見しました、イカの楽園函館のイカスイーツ「いかようかん」(1,188円)です。
パッケージを読むと「絶対に刺身にしないでください」。謎すぎる……。
見た目はおろか、食感までイカ!?
「いかようかん」を購入し、家に持ち帰ってきました。早速その姿を拝むことにしましょう。
パッケージを開けると、いきなりイカの絵が飛び出してきた!
柳屋さん曰く「箱って食べたら捨てられてしまう。この仕組みで少しでも家に飾ってもらい、楽しかった函館旅行を思い出してほしい」とのこと。確かに箱はすぐ捨ててしまいますよね。観光地のお土産にはぜひ標準装備してほしいアイディア!
お待たせいたしました、これが「いかようかん」の全容です。
10本の足のうち2本は獲物を捕まえるための長い触手、それをきちんと再現しています。顔の前でクロスさせると、エジプトの王みたいな風格が出ますね。
ちなみにヤリイカ、マイカといった種類のモチーフはないそうです。
パッと見ものすごい手がかかっているのがこの足。一つ一つ吸盤がついている!
足一本に10個、長い触手には20個の吸盤、イカ一匹につき120個!! 絞り袋にようかんを詰めて、一つ一つ手作業でくっつけています。くっつけたら1日置いて冷やすため、「いかようかん」の製作には2日間必要です。
「いかようかん」のなかでも最も目を引く部位がこの目。飛び出し気味です。目玉はねりきりを丸めて作っており、少し硬めの食感がアクセントになっています。
ヒレはようかんの層が複数あり、かみ応えのある食感……本物のイカと食感の分布が一緒じゃないか!
胴を切ってみると、中は3層構造になっていました。中心の白いものはかみ応えのある求肥、そのまわりはほんのりコーヒー風味のあんで包まれています。
なるほど、イカ刺しと同じように調理したら、ただのようかんになってしまうのですね。
食べ進めると突起が現れました。この突起が「いかようかん」を固定し、長旅で箱が揺れても形崩れしません。贈答用として買われることの多いいかようかん、見た目を守る工夫が見えないところにありました。
食べてみると、ようかん、コーヒーあん、求肥と歯ごたえの違いが感じられます。それぞれの相性も良く、和菓子として完成されていますね。味はようかんなのに本物のイカを食べている感覚、見た目って大事!
ただ一つ気になるのは、いかの目線です。罪悪感が出ちゃうかたはまず目玉を食べましょう。そして結構な分量があるので、シェアしてみんなで食べるとおいしく盛り上がるはず!
吸盤、ヒレといった見た目だけでなく食感まで作り込み、箱へのこだわり、形崩れ防止の工夫など、「いかようかんって面白ネタ?」 と思っていた自分が恥ずかしい!
職人さんが手間ひまかけて、函館人の誇りをこめた芸術品、いや、これは新種のイカ! ぜひ新鮮なイカと「いかようかん」、食べ比べてみてください!
※「いかようかん」は生産できる数に限りがあるため、まえもって予約をしておくと確実です
お店情報
coffee マルシェ
住所:北海道函館市新川町1-2はこだて自由市場内
電話番号:0138-22-7686
営業時間:7:00~17:00
定休日:日曜日(はこだて自由市場もお休み)
はこだて柳屋
住所:北海道函館市万代町3-13
電話番号:0138-42-0989
営業時間:8:30~20:00
ウェブサイト:http://hakodate-yanagiya.com/ikayokan
※「いかようかん」は通信販売もあり。
※この記事は2017年3月の情報です。
※金額はすべて税込みです。