▲あまりの美味しさで話題の「よだれ鶏(口水鶏)」
「四川料理のスゴい人」シリーズ、ついに書籍化
──おまたせしました。人長さんの四川料理のレシピをまとめた書籍がいよいよ発売されます。
人長:この『メシ通』の連載をもとにしたレシピ本が出版されるんです。おうちで本格的な四川料理を作ったら楽しいし、「なぜそうするとおいしくなるのか」を知るとおもしろいぜ、という部分を大事にして作った本です。載っている品数も多いんで、とても食べきれないと思いますよ!
▼人長さん初の著書『四川料理のスゴい人 自宅でつくる本格中華レシピ』(三才ブックス)
──ぜんぶ一気に作るんじゃないんで、食べきれないってことはないですよ。
人長:ペラペラめくってみて、気になる料理にチャレンジしてください。で、食べておいしいなと思ってくださるとそれ以上の喜びはありません。四川料理をもっと身近に感じてほしいです。ぜひ皆さんに読んでいただきたいですね。
よだれ鶏のポイントは「甜醤油」にあり
さて、今回のレシピのテーマは「よだれ鶏(口水鶏)」。
四川料理のお店でも人気のメニューですが、真っ赤だし辛そうだし食べたことないって人も多いのではないでしょうか。
お店によっては辛さを売りにしてたりして、ちょっとハードルが高いんですよね。
そんな「よだれ鶏」の作り方を【四川料理のスゴイ人】人長良次さんに教わりました。
重要ポイントはタレに使う「甜醤油(テンジャンユ)」。
これがバッチリ決まると、ほかの料理にも展開できてめちゃくちゃおいしくて楽しくなることがわかりました。
今回は、この甜醤油を使って「雲白肉(ウンパイロウ)」という料理にも展開していきます。甜醤油の奥の深さを、ぜひみなさんにもわかってほしい。
▲こちらが「雲白肉(ウンパイロウ)」
人長:茹でた鶏肉を冷やして、甘辛っていうか辛いタレをかけるのが「よだれ鶏」。ちなみによだれ鶏って、なんでよだれ鶏っていうかご存知ですか。
──ヨダレが出るほどおいしいから、と聞いたことあります。
人長:中国の料理っていろんな説があって、どれがホントかわからないですけど。僕の師匠から聞いた話だと、この料理を好きな人がいたんですって。
役人だったので地方に異動になって、前の任地で食べたよだれ鶏を思い出して「あー、あれおいしかったなあ」とヨダレが出ちゃうと。そういうふうに聞きました。まあなんというか、それくらいおいしいタレだよってことですね。
人長:そんなおいしいよだれ鶏のタレを作るために、まずその材料となる「甜醤油」と「花椒油」を作りますよ。
──さっそくちょっとめんどくさそうな……。
人長:いやいや、甜醤油と花椒油は幅広く応用できるものなので、なんならどっさり作るほうが楽しいですよ。甜醤油があると、ほかの料理にもいろいろ使えるんです。今日は甜醤油を使って、オマケで雲白肉(ウンパイロウ)も作りますよ。
──ウンパイロウ。聞いたことあります!
人長:まずは、よだれ鶏は甜醤油が大事。甜醤油と書いて「テンジャンユ」と読みます。甜醤油って字にアブラってありますけど、ショウユも醤油って書きますでしょ。これも「甜・醤油」なんです。
──ホントだ。じゃあアブラではなくショウユに近いもの。
人長:四川料理では隠し味とかに使うソースなんですけど、イメージとしては「香料が入った甘醤油」が近いのではないでしょうか。
──いい匂いのする砂糖醤油みたいなもんすかね。
人長:仕上がりはトロ~っとした感じになります。ほかにも、いろんなものに使えます。豆腐にちょっとかけるとか。後で作る雲白肉もタレに甜醤油をたくさん使いますし。
──じゃあいっぱい作ったほうが楽しみが増えますね。
人長:タレにいろんなものが複合的に入ったほうがおいしいので、手の込んだものを作ります。ハーブ&スパイスですよ。シナモン、スターアニス、ローリエ。あと陳皮。
──このでっけえ陳皮、もう陳皮というかミカンの皮そのものですね。自家製?
人長:自家製ではありませぬ。中華街とかに行くと売ってるんです。スーパーにはなかなか売ってないのですが、無農薬のミカンを家で食べることがあったら、それをよく洗ってベランダで天日干しにすると同じものができます。
──ホントですか。
人長:あのホレ。ゴミ箱にミカンの皮を投げて入らなかったやつって、しばらくして発見されたときにこうなってるじゃないですか。あれです。カビてるかカビてないかです。
──それに時期になると、ヨソんちの庭にもありますしね。
人長:盗むのはやめてください。
【甜醤油】 の作り方
(材料・作りやすい量)
- 醤油 300cc
- 料理酒 130cc
- 砂糖 300g
- 長ネギのアタマ 1本ぶん
- ショウガ 30g
- スターアニス(八角) 5g
- シナモン(桂皮) 5g
- ローリエ 5枚
- 陳皮(※あれば。なくても可) 10g
人長:切りものとしては、長ネギのアタマとショウガくらいですね。
人長:ショウガは香りが出やすいように薄くスライスしてあげて。長ネギも、アタマからポンと落として。
──あ、そんなもんでいいんすね。
人長:なんなら切んなくてもいいくらいです。具材が鍋に入ればいい。
人長:鍋の中に砂糖300gと醤油300cc、料理酒130ccを入れて中火にかけます。お砂糖が溶ければいいです。
──醤油を300cc使うって、けっこうたくさん作るんですね。
人長:少しだけだと作りにくいんです。冷蔵すれば1カ月2カ月はもちますし、まとめて作ることをおすすめします。ここのポイントはお砂糖はいっぺんにドカーンと入れないこと。いっぺんに入れると溶け切る前に熱が上がって焦げる恐れがあるので、溶けるまで混ぜてあげます。
人長:シナモンを入れます。中華では桂皮といいます。
人長:スターアニスも加えましょう。いわゆる八角ですね。やっぱり角が8個ある。
人長:さらに陳皮。柑橘系のさわやかな香りが入りますんで、できれば入れたほうがいいです。
人長:ローリエと、さきほど切ったショウガと長ネギのアタマですね。白い方よりも緑のところが、長ネギの香りがしておいしいので、こっちを入れてください。
人長:香りつけのスパイスと野菜を入れたら、いちど沸騰させましょう。沸くまでは強火で。沸いたら弱火にして20分から25分。だいたい1/2から1/3くらいまで煮詰まってくるんで。すると、トローっとしてくるんですよ。そこまで煮詰めてください。
──だいたい「みたらしになったなー」くらいの目安ですか。
人長:そうですね。いま、こう持ち上げるとポタポタって切れますよね。これがツーってつながって落ちるくらいになります。
──おおう、香りが強い。メインは砂糖と醤油だし、ホントに「いい匂いのみたらし」っぽいですね。
──さて、20分ほど煮詰めました。
人長:色はさっきから確実に黒くなってますね、飴色になってきました。ツーっと流れるかというとまだ不十分なので、あと5分、やりましょう。
──これで合計25分ほど煮詰めてます。
人長:ツーっと流れるようになりました。いま熱いんでシャバシャバですけど、お砂糖が溶けているんで、冷めると固くなります。
──けっこう砂糖が入ってるんで焦げるんじゃないかという心配もありますが、かき混ぜながら熱するとかじゃなくていいんですね。
人長:弱火なら焦げないですね。大丈夫です。
人長:これをザルでザーッと濾して、冷めたらオーケーです。ハイ。できたものがこちらになります。ツーっとね。
──おいしそう。スイーツの香りがする。
【花椒油】の作り方
(材料・作りやすい量)
- 花椒 20g(フードプロセッサーやミルで挽いておく)
- 長ネギのアタマ 30g
- サラダ油 200cc
人長:花椒油もよだれ鶏のタレに欠かせないんです。お店だと大量に作って置いてあるんですけど、今回はおうちで作る方法を。
人長:花椒は潰すと香りがいいので、フードプロセッサーで挽きます。
──パウダーで買ってくるのは違うんですか。
人長:パウダーだと細かすぎて焦げちゃうんです。あと、挽いてから時間が経ってるので、香りが飛んじゃってるんです。
人長:(ウイーン)
──すげー香り!
人長:これくらい細かくなりました。
人長:サラダ油を鍋に入れます。
人長:花椒を挽いた粉を入れます。
人長:長ネギのアタマも入れて火にかけますよ。沸くまで中火で、沸いたら弱火です。あまりボコボコ沸かしたらダメで。花椒も柑橘系の植物なんですよね。一気に沸かしてしまうと香りが飛んでしまいます。
なので、フツフツとなったら火を弱めて、そこから1分くらいしたらもう火を止めちゃってください。置いておくと、余熱で香りが移ります。
人長:いまいま! 聞いて! プチプチ、チリチリと鳴っていますね。このミュージックが鳴ったら火を弱めてください。この状態で1分くらいです。すでに香りが出てきてますね。火からおろして置いておきます。
人長:これで半日くらい置いておくのが理想です。すると香りがしっかり出てきます。長ネギだけ抜いて、濾さないでこのまま清潔な容器に移し替えます。ネギ油ってわりと売ってるんですけど、花椒油ってなかなか無いんですよね。でも、こうやってわりと家でも作れますので。
──挽いた花椒と、長ネギを入れたサラダ油を火にかけて、チリチリ鳴ったら弱火で1分。冷ましたら長ネギと花椒を取り去って完成。思った以上に簡単すね。
人長:まあ今回はザルにクッキングペーパーをしいて濾します。しばらく置いておきましょう。
──模様やガラが付いたクッキングペーパーは油でインクが溶け出したりすることもあるので注意です。
「よだれ鶏」の鶏肉を茹でる
(材料・2人前)
- 鶏ムネ肉(鶏モモ肉でも可) 1枚
- 長ネギのアタマ 100g
- ショウガ 30g
人長:次に鶏を茹でます。ガンガン茹でるというよりも、低温調理に近い方法です。鶏肉は、茹でてから冷やして、そのあと味付きスープに漬け置きします。
──二段構えがおいしさの理由なんすね。
人長:沸かすお湯(分量外)なんですけど、鶏の8倍から10倍くらいの量を用意してほしいんです。なんでかというと、余熱で火を通したいんですけど、お湯が少ないと熱が入る前に冷めちゃうんですよ。なので、最低でも8倍から10倍のお湯を用意してください。
人長:鶏ムネ肉、これは400g。かなりデカいです。今回はついでに鶏モモ肉230gも一緒にやっちゃいましょう。食べ比べましょう。
人長:できれば、いい鶏のほうが確実においしいです。
──ブランド鶏がまちがいない、と。
人長:なんでかっていうと、よだれ鶏って「素材の味ありき」の料理なんですよ。唐揚げとかはいろいろと下味をつけたりするんで大丈夫なんですけど、こういうのはいい肉を使ったぶんだけおいしくなるんで。
人長:約400gのムネ肉と約230gのモモ肉で、合わせるとお湯は6リットルくらいですかね。
──この工程は、低温調理器がある人はそれを使っていいんですね。
人長:いっすよ。ただ、後で説明しますが、こうやって普通にお鍋でお湯を沸かして鶏肉を茹でた方がなにかといいと思います。はい、沸かしたお湯に、長ネギとショウガを入れます。
人長:ここに鶏を入れます。よだれ鶏はムネでもモモでもいいんですけど、僕はムネ派です。なんでかというと、モモはジューシーに仕上がるんですけど、ムネはしっとりした感じになるんです。ムネのほうが固くなりにくいんですよ。
人長:お湯がまたポコポコして沸いてきたら火を止めます。フタをしてもらって。フタがない場合は、火からおろした鍋のフチを濡れタオルで冷やしてから、ラップで二重にフタをします。
人長:ラップ1枚だと空気の膨張で膨らんできてですね、隙間ができて蒸気が抜けちゃうんですよ。タオルでくるむと、より確実に保温できます。
人長:20分経ったんで、火の通りを確認しましょう。お肉の厚い部分に串を刺して透明な汁が出たらOKです。
人長:氷水(分量外)に移します。このままだと余熱が通り続けて、固くなっちゃうんです。氷水に漬ける時間は、5分から10分ですかね。
「よだれ鶏」の鶏肉を漬ける
(臭み消しの漬け置きスープ 材料・2人前)
- 長ネギのアタマ 100g
- 塩 15g
- 胡椒 少々
- 紹興酒(※料理酒で代用しても可) 30cc
- 花椒 5g
- 鶏出汁のスープ(鶏の茹で汁) 1リットル
人長:鶏にも下味をつけないとおいしくない。それが中華です。さっき鶏を茹でたお湯で漬けダレを作るんですけど、あのお湯をもう1回沸かし直します。なんでかっていうと、このままだとアクが出るんですよ。なので、沸かし直してアクを取って、それから漬けダレとして使います。
人長:低温調理器だと、これができないと思うんですよね。出汁が出ないというか、アクが取れないというか。鶏の出汁が出てるんで、これで中華スープも作れちゃいますからね。
人長:漬けダレを作っていきましょう。さっき鶏肉を茹でた鶏出汁のスープを1リットル。
人長:お塩、15g。花椒、5g。紹興酒、30cc。普通の料理酒でもいいですけど、紹興酒は香りがいい。長ネギのアタマ。胡椒少々。
人長:味見して……はいOKです。
──鶏出汁のスープに、味と香りをプラスして漬けダレにするってことですね。
人長:これを冷やします。十分に冷えたタレにお肉を2時間から3時間漬けて、味を入れてください。肉が浸るようにペーパータオルでしっとりさせて、と。いちおう冷蔵庫に入れてくださいね。
人長:さて、3時間後です。漬けていた肉に味が入った計算です。
人長:ご自宅ではジッパー付きの食料保存袋で密封したりするといいかもです。
「よだれ鶏」のタレの作り方
(材料・2人前)
- 砂糖 100g
- 料理酒 60cc
- 酢 30cc
- 醤油 90cc
- 黒酢 50cc
- 甜醤油 100cc
- 花椒粉 少々
- 花椒油 20cc
- ラー油 20cc
人長:はい、いよいよさっき作った甜醤油と花椒油を使って「よだれ鶏のタレ」を完成させます。ラー油と花椒油は後入れです。オイルは後から入れてあげたほうが馴染みやすいんで、まずはそれ以外のものを合わせます。
人長:はい、砂糖。タレ系は粉ものから先に入れたほうがいいです。このあとに料理酒とお酢を入れるんですけど、醤油よりも前に入れる理由は、砂糖が溶けたかどうか目視できるから。だから透明なほうから入れていきます。そして、料理酒、お酢。
人長:まず、砂糖をこうやって溶かしてあげてください。見えるうちに溶かす。タレ作りの鉄則は、「ちゃんと混ぜる」こと。溶け残りがあると味が変わってきちゃいますからね。
人長:次に黒酢。醤油。
人長:花椒粉。少々と書いてありますが。あまり入れすぎても強くなりすぎちゃうんで。あくまで香りのひとつなんで。1gくらいですね。
人長:甜醤油を入れます。おいしくな~れ、おいしくな~れ。
──知育の駄菓子の魔女っぽいな。
人長:練っても色は変わりませんが、タレにとろみがつくんですよ。
人長:もしあれば、ラー油の底に沈んでいる粉の部分を少し入れるとおいしいですよ。ティースプーン1杯くらい。
人長:辛いのが苦手な人は入れなくても大丈夫でーす。
人長:(ガバガバ、ドバドバ)
──なんで? なんでいつもそんなに辛くする?
人長:これがオイシイんだっ!
人長:ここにさっきの花椒油を入れます。
人長:ラー油を入れます。
人長:よくかき混ぜて、タレ完成です。
「よだれ鶏」のトッピングを準備する
(材料・2人前)
- 長ネギ 1/2本
- シャンツァイ(パクチー) 適量
- 炒りごま 少々
- ラー油 適量
人長:上にのせる長ネギとかシャンツァイを切りましょう。適量です。のせたいぶんだけ切ってください。
──量は好きなだけでいい感じですね。
人長:長ネギはお尻を落として。真ん中に目入れして。
人長:小口切り。1/2本くらいですかね。
人長:真ん中に目入れ一発するだけで長ネギの輪っかが切れてるので、あとは小口切り白髪ネギができちゃいます。斜めに切ると長くなる。
──これは覚えよう。便利。
人長:シャンツァイは下を落として、テキトーにバサバサと。
人長:長ネギもシャンツァイも水(分量外)にさらしておきます。パリッとしておいしいです。
人長:あ、切り落としたシャンツァイの根っこはパクチー餃子に使うといいですよ。香りが強いんでおいしいんですよ。
人長:3時間漬けていた肉です。肉にも漬けダレの味が入っています。
人長:鶏モモ肉を切ります。
人長:半分に切ってから。こんな感じです。厚さ1センチ弱、くらい。
人長:ムネ肉はこうです。
──断面が! ほんのりピンクで、いい色!
人長:鶏のムネとモモの合盛りですよ。タレをかけますよ。
人長:炒りごま。
人長:追いラー油を。
人長:水気をきった長ネギを。芯の方も甘くておいしいですからね。
人長:みずみずしいシャンツァイを。
人長:よだれ鶏の完成です。
甜醤油があれば、雲白肉も簡単に作れる
(材料・2人前)
- 豚バラスライス(しゃぶしゃぶ用) 100g
- キュウリ 1本
- 甜醤油 適量(ニンニクと同量から倍量くらい)
- ニンニク 2片
- ラー油 適量
人長:次は雲白肉を作りましょう。豚肉の塊をボイルしたものを「白肉(パイロウ)」っていうんです。肉を薄切りにして茹でたときに波打つんですね。その脂身のところが雲のように見えるから「雲白肉」。雲のような形の白い肉。
人長:白肉(パイロウ)を作るのはなかなか大変なので、今日は豚バラスライスで簡単に作ります。ソースは今回のよだれ鶏で作った甜醤油、お肉は以前に回鍋肉の作り方のときにご紹介した白肉。どっちも流用できますので。
人長:ちなみに回鍋肉の記事でご紹介した白肉を使う際は、皮を剥がして使ってくださいね。雲白肉で使う場合は皮が固いので。
──回鍋肉とよだれ鶏の二毛作でいける気軽なメニューっすね。
人長:ソースはニンニクと甜醤油だけです。とっても簡単。
──シンプルー。マジで気軽だ。
人長:まずはニンニクをすりおろします。できればチューブよりはフレッシュを使ったほうがいいです。
人長:日本語でいうと「豚バラ肉のニンニクソースがけ」ってお料理になるので、ニンニクがおいしいことは大事なんです。
──言わばニンニクが主役の料理ですね。
人長:四川料理屋さんにはよくあるメニューだと思うんですが、これをご自宅で作る人ってなかなかいないんじゃないかと。がんばって甜醤油を作ったら、これも楽しめるんですよ。ぜひとも作って食べてほしい。
──せっかく甜醤油があるなら、いろいろ作りたくなりますもんね。
人長:すりおろしたニンニクと同量の甜醤油を。
──どどど、同量? ほとんどニンニクじゃないですか。
人長:大さじ1同士、くらいの感覚です。まあ「おいしそうに見える」比率でいいです。
──こりゃおいしそうだ。甘じょっぱいニンニクのハードパンチ!
人長:あの香辛料の香りとニンニクがガッと手を組んだおいしさですよ。ヤバいですよ。中毒性ですよ。クンクン。はあー。
人長:たったこれだけでソースができました。
雲白肉を飾りつけるためのキュウリ薄切り
人長:キュウリを切りましょう。薄切りになればいいんで、ピーラーでピューってやってくれればいいです。ただ僕は料理人なんで。見せますね。
──こりゃピーラー並みの包丁テクだわ。
人長:ぜひチャンレンジしてほしいですね。中華包丁って面が大きいのでやりやすいんですよ。包丁にのせて切れるんで。
人長:氷水(分量外)にさらします。ピーラーでやったものも氷水に入れるとパリッとしますんで。
人長:水気をきって、パリッとしたキュウリをクルッとひねります。
──パリッととかクルッととか、簡単に言ってくれますけども。
──すごーい! かーわーいーいー!
人長:キュウリのスライスの端っこを合わせて輪っかにして、メビウスじゃない輪っかにして、こんなふうに見えるように重ねていけばなんとかなりますよ。
雲白肉の豚肉はしゃぶしゃぶする
人長:お肉は半分に切ります。そのままだとちょっと長いので食べにくいですし。
人長:お肉をしゃぶしゃぶするんですが、お湯(分量外)の温度は90℃くらいです。
人長:沸騰しちゃうとお肉が固くなっちゃうんですよ。火が通ったらあげてしまって大丈夫です。
──スライス肉を買ってくるなら、豚バラしゃぶしゃぶ用がいいですね。
人長:そうですね。お皿にお肉を並べていきます。
──たしかにお肉が波打ってますね。雲の白肉、ウンのパイロウだったんですね。雲白の肉、ウンパイのロウだと思ってました。
人長:そうなんです。雲の白肉でウンのパイロウなんです。でもやっぱね、塊肉のパイロウでやったほうがジューシーでおいしいです。塊肉を茹でたほうがお肉をおいしく食べられるんでね。
人長:肉が波打ってフニャフニャしてるじゃないですか。こういうときは、こうして外側のフチをきれいに並べると、おいしそうに見えます。
──地味にプロのアドバイスだ。
人長:タレをかけます。
人長:たっぷりかけたほうがおいしいです。こういう使い方すると甜醤油があっという間に無くなっちゃうんですよ。
人長:そしてラー油です。ウソだと思うでしょうけど、これくらいかけたほうがおいしいです(と、ぐるぐるとラー油を回しかける)。
──ウソでしょー。3周?
人長:最後に飾りキュウリをのせてあげて。
人長:雲白肉完成です。
食べましょう
──盛り付けもとても綺麗です。
人長:食べます。よだれ鶏からいただきます。
人長:モモ肉のほうから。ううむ、長ネギ、シャンツァイ、タレ。
人長:うん、やわらかい! 甜醤油の香料が効いてますね。こりゃあ家で出てくる料理じゃないですね。お店レベルですね。
──自画自賛するだけあって、たしかにうまい。モモ肉はこの肉自体に漬け込んだ下味が効いてて、じんわりとした味わいがあります。
人長:ムネ肉。おおおおー!
人長:ムネムネ、ムネうめえな。やっぱムネだな。めちゃくちゃしっとりしてる。
──ムネ肉が柔らかい! ジューシーでうまみが濃いし、よだれ鶏のタレもいいすね。甘さが効いてるし、香りがすごい。……すごいなこれ。シャンツァイが合いますね。マストトッピングですね。しっとり肉にタレが染みて、こりゃうまい。そして人長バージョンは麻のシビレ感が厳しい(笑)!
人長:モモは味が濃いです。皮と肉の間のゼラチン質、これがとってもおいしいんで。ムネはすげえしっとりしてて、ジューシー。ムネってパサパサしてるイメージじゃないですか。みなさんが思ってるよりジューシーですよ。モモとムネ、行って帰ってきた結果、両方うまい。うまさ両成敗ですね。
──うまさ両成敗ってなんすか。しかし、これはムネとモモの両方作って、あっち行ってこっち来てって食べるのが楽しいですね。
人長:そのほうが楽しい、絶対に。そしてけっこう辛いですよ(笑)。
──まあ、辛いからおいしいってのがわかる料理ですよね。人長バージョンはすごく辛いけど(笑)。
人長:次、雲白肉いきましょう。
人長:これも四川料理を代表するおいしいやつです。甜醤油を有効活用した料理です。ニンニクと混ぜるだけですから。がんばってきれいに盛り付けたんですけど、まあこうやっちゃいますよね。
──ガバーッといきますねえ。フグチリじゃないのよ。
人長:見て見て、ヤバい、これはうまいよ、絶対。
人長:うめー!
人長:ニンニクもガッツリ効いてます。
──おうっ、単純な甘辛じゃないですね。ニンニクの強さがうまいタイプ。甜醤油の香りと甘みが大量のニンニクと合わさって、猛烈にうまい。そして3周まわしかけたラー油の辣が鮮烈。
人長:これを食べた後だと、誰かとキッスはできないですね。
──でも、これを食べた人同士でキッスをするのは?
人長:OKです。だからキッスしたいんだったら、恋人とふたりでいっしょに食べてください。じゃないと、お口がマジで臭いです。
──んもー。
人長:マジで。ホントに。ビールもおいしいです。ただし、キッスするときは気をつけてください。
おまけ
鶏を茹でたお湯で、スープを作ることができます。
鶏から出たアクを取ったら、味付けは塩だけ。鶏の出汁を堪能しましょう。
具は適当に。このときは、きのこ類、かき卵、刻んだ長ネギをパッと散らして。
深い滋味があり、しみじみうまいんです。ほっとする味ですよ。
【まとめ】甜醤油を作っておくと、食卓がもっと楽しくなる
人長さんが料理長を務めるお店「リバヨンアタック」のよだれ鶏は肉がすごくうまいんだそうです。大山鶏を丸鶏で。うまみに強さがあるのは丸鶏だからこそとのこと。
よだれ鶏は、いわゆるサラダチキンと市販のタレでも作れるんですけど、今日教えてもらった方法のどこかをつまんで利用すると、必ずおいしくなります。
甜醤油はホントにおいしくて、流用パターンも豊富です。
鶏肉の料理法とか、タレの作り方とかをちょっとマネるだけでもいいし、できればぜんぶやると超おいしいよだれ鶏ができる。
そういうことですね。
撮影:平山訓生
お店情報
リバヨンアタック
住所:東京都中央区日本橋室町3-4-4 OVOL日本橋ビルB1F
電話番号:03-3548-0840
営業時間:ランチ/月曜日〜土曜日11:30~15:00(14:30 LO)、祝日11:30~14:30(14:00 LO)
ディナー/平日17:30~翌0:30※金曜日のみ翌1:00まで(23:00 FLO/24:00 DLO)、土曜日17:30〜翌0:00(23:00 FLO/23:30 DLO)、祝日17:30〜22:00(21:00 FLO/21:30 DLO)
定休日:日曜日(20名様以上のご予約の場合は、営業させて頂きます)