崎陽軒「シウマイ弁当」どんな順番で食べる?超豪華ラインアップがこだわりを語りまくる『食べ方図説』

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クイズです。

 

Q:大食いグルメアイドルの、もえのあずきさん。彼女が崎陽軒のシウマイ弁当を食べるとき、一番最初に箸を付けるのは、次の3つのうち、どれでしょう?

 

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  1. まずは、ご飯をひと口。左下のひと俵ぶんをパクリ(シウマイ弁当はご飯が8つの俵に分かれている)。
  2. 5つ並んだシウマイのうち、真ん中のシウマイ。
  3. 筍煮をいくつか。まずは野菜系でスタートする。

 

答えは、下の同人誌のどこかに書いてあります。

 

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今回のZINE「食べ方図説」

発行人:市島晃生

判型:B5判

発刊ペース:半年に約1回。これまで第2号まで発行

価格:第1号756円(税込)、第2号771円(税込)

内容:崎陽軒「シウマイ弁当」の白飯&おかずを食べる順番やそのこだわりを、同弁当ファンの文化人やタレントが図表と解説入りで紹介する。ちなみに、もえあずの記事は第2号に掲載されている。

 

ベテランテレビマンが四十路過ぎて同人誌に挑戦!?

メシ通編集部とライター(よ)が「これはオモシロイ!」と感動した食の同人誌を紹介していく「ニッポン偉ZINE伝」。

連載第2回目の同人誌は『食べ方図説 崎陽軒シウマイ弁当編』。各界著名人にシウマイ弁当の食べ順を取材して番号入りで図解した話題作で、最近メディアでも何かと話題になっている。シウマイ弁当愛好家も大納得のピンポイントなツボを突いたオモシロさの秘密を、制作者である市島晃生さん(食べ方学会、写真下)に聞いてきた。

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まず驚いたのは、取材の下調べで市島さんのお名前をググったとき。ヒットしたウィキペディアに紹介されているのは『食べ方図説』制作者としてではなく、テレビ番組の演出家・ディレクターとしてのプロフィールなのだ。

しかも、担当番組は「料理の鉄人」「とんねるずのハンマープライス」「ウンナンのホントコ!」など、ヒット番組ばかり。テレビのプロが、なぜ同人誌を?

 

f:id:Meshi2_IB:20180522184744p:plain実は僕、40歳を過ぎてからアニメにハマりまして(笑)、個人的にコミケへ通うようになったんです。そこで強い衝撃を受けたのが、食べものテーマの同人誌の存在でした。コミケの「評論・情報」ジャンルのサークルが、『この麻婆豆腐がすごい!』とか『ローソンで呑む』とか、面白い同人誌を出しているんですよ。もう、片っ端から買いまくって。そのうち自分も机の向こう側に行きたい(出展者になりたい)と思い始めて、コミケに申し込んだのがきっかけです

 

テレビマンが遅咲きデビュー(笑)でハマったコミケに触発され、はじめての同人誌作り。なんだかイイ話である。

テーマとなった崎陽軒のシウマイ弁当は横浜の名物だが、もしかして神奈川県のご出身だろうか?

 

f:id:Meshi2_IB:20180522184744p:plain神奈川の大和市です。もちろん、シウマイ弁当は子どもの頃から食べてました。大人が「甘酸っぱいあんずは最後に食べるんだよ」って教えてくれたり、もう物心ついたときから食べる順番を意識してましたね。「好きなおかずはどれか? 自分的にいらないおかずはどれか?」とか、とにかくシウマイ弁当は食べ方が議論になりやすいので面白いんです。ビジュアル的には、シウマイ弁当の写真に食べる順番の数字を振っていくアイデアも誌面で実現できました。

 

市島さんはシウマイ弁当に限らず、「食べ方」そのものにも深いこだわりがある。

 

f:id:Meshi2_IB:20180522184744p:plainfacebookにいろんなお店の料理の食べ方について書いてたんですけど、それを元にした一般書籍も出したことがあるんです。『絶対にうまい食べ方』という本で、銀座「ジャポネ」のスパゲッティの食べ方を、ゴルフのグリーン攻略にたとえて解説したりしています。そんな流れから、同人誌のテーマも「食べ方」ならいけそうだなあと思って『食べ方図説』を作ることにしました。

 

「食べ方」はエンターテイメントになる。

それこそ40代以上の人にしかわからない話かもしれないが、70~80年代のテレビ番組「欽ちゃんのどこまでやるの!?」(テレビ朝日系列)に、食べ方をエンタメ化した有名コーナーがあったのを思い出す。番組のゲストが食事しているVTRを見ながら、レギュラー出演者の萩本欽一さんたちが、どの順番で食べていくか推理する内容だった。

 

f:id:Meshi2_IB:20180522184744p:plain(手を叩いて)そうそう!「欽どこ」ですよね。実は、以前から食べ方に関するテレビの企画も出してるんですけど、これがなかなか通らないんです。当時視聴率30%台を記録した「欽どこ」の例も挙げて提案するんですけど……。あと、ちょっと昔の深夜枠とかだったら、かなりマニアックな企画でも許された時期があったんですが、今の時代的にそうでもなくなってきて。そういうジレンマも、同人誌を作る原動力になってます。同人誌の世界って、みんな好き勝手やっているのが良いなぁと思って。それが紙の本として形になることに感動しますね。

 

皆すでにシウマイ弁当に一家言もっていた

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『食べ方図説 崎陽軒シウマイ弁当編』はシリーズ2冊が既刊。

2017年の夏コミで初披露した第1号(写真上)に「食べ方」が紹介されているのは、「タベアルキスト」のマッキー牧元さん、雑誌『dancyu』植野広生編集長、漫画家のおおひなたごうさん、放送作家の小山薫堂さん、ミシュラン二つ星レストラン「傳」店主の長谷川在佑さん、そして崎陽軒社長野並直文さんなど。さらには『孤独のグルメ』原作者で知られる久住昌之さんのインタビューまで掲載されている。

同人誌としては豪華過ぎるキャスティングだ。

 

f:id:Meshi2_IB:20180522184744p:plainみなさんテレビの仕事で接点があったので頼みやすかったっていうのと、シウマイ弁当の取材だと言うと快諾してくれる人が多かったんです。崎陽軒や「食べ方」について、自分の作品やメディアなどで言及している人たちばかりですしね。マッキーさんは雑誌で書いているし、薫堂さんはラジオで話題にしていました。久住さんの『食の軍師』にもシウマイ弁当が出てきます。

 

縦置き派と横置き派。食べる前から分かれる流儀

2017年の冬コミでお目見えした2号目(写真下)は、ぐっとコミケを意識した人選で、大食いアイドルのもえのあずきさん、「ザ・チャレンジ」の沢田チャレンジさん、コミュニケーション・ディレクターのさとなおさん、声優の安元洋貴さんの食べ方を掲載。第1号で存在感を放っていたマッキー牧元さんも再登場している。

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f:id:Meshi2_IB:20180522184744p:plain人選的にどうしても男性が多くなりがちなんですけど、女性の食べ方にも興味あるじゃないですか。それで第2号では、もえあずさんに登場をお願いしました。彼女は、とにかく真ん中から食べるんですよね。ショートケーキは真ん中のイチゴから。シウマイ弁当も真ん中のシウマイから食べるそうです。

 

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ハイ、というわけで、本記事冒頭のクイズの答えは「2. 五つ並んだシウマイのうち、真ん中のシウマイ」でした。

 

ちなみに、最初のクエスチョンの選択肢で挙げた「1. 左下のひと俵ぶんのご飯」は崎陽軒野並社長の第1手、そして「3. 筍煮」からスタートするのは、さとなおさん。

 

それにしても、つくづく食べ方は十人十色。シウマイ弁当へのアプローチには、各人の流儀や工夫、理論が満載で、まさに目からウロコだ。

たとえば、弁当箱の置き方にもいくつかのスタイルがある。

 

f:id:Meshi2_IB:20180522184744p:plain縦置き派の人と横置き派の人がいて、横派の人たちにしたら、横派が珍しいという意識は全然なくて、新幹線とかに乗って食べるときは横にしか置けないじゃん、っていう話なんですけどね。

 

聞けば市島さんご自身は縦派。筆者も縦派だ。

この取材に同席したメシ通編集部の2名に確認したら、ともに横派だった。

さらに、市島さんの言う通り、編集部2名は横置きで当然と思っていたことが判明。わざわざお互い確認しないと絶対にわからないコトだが、わかると新たなる発見があって実にオモシロイ。

「議論になりやすい」ってのは、コレですね。

 

かまぼこと玉子焼きを重ねてひとつにして食べる

f:id:Meshi2_IB:20180522184744p:plainさらに、横派には「ご飯右側型」「ご飯左側型」の2タイプがあって、第1号に載っている人だと傳の長谷川さんが右側型、小山薫堂さんが左側型ですね。薫堂さんの左側型はカレーライス型です(カレーライスはご飯左側型が多数かつ一般的)。右側型の長谷川さんの場合、まず、ご飯を右側にして経木(シウマイ弁当の木のふた。念のために書いておくと崎陽軒のシウマイ弁当の弁当箱は全体が木製である)を左側から外すと、裏にご飯がくっつきにくいんだそうです。さらに、醤油とからしの位置も手前に来るし、バラン(葉を模した弁当の仕切り)の向きも正しくなる

 

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小山薫堂さんは横置きご飯左型。

 

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長谷川在佑さんは横置きご飯右型。

 

「右型」である長谷川さんの食べ方には、さらに興味深いポイントがある。

 

f:id:Meshi2_IB:20180522184744p:plainかまぼこと玉子焼きを重ねてひとつにして食べるんです。これ、良いですよ。「すっ」と「くにゃ」の違う食感と、塩味と甘味の相乗効果で独特のおいしさが生まれる。これを聞いてから、自分も必ずこのふたつは一緒に食べるようになりました。

 

たしかにウマそう。今度やってみよう。

このほか、シウマイ弁当の食べ方には「あんず問題」という大きな山場があって、多くの人はデザートとして最後に食べることを選択するが、これを鶏唐揚げと一緒に食べることで酢豚的な味わいに落とし込むという、独創的な工夫をしているのがマッキー牧元さんである。

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マッキー牧元さんは、シウマイ弁当の食べ方の大きな山場である「あんず問題」に、独創的な解決策を実践する。


さらには「小梅の下のご飯」「シウマイに醤油とからしをつけるときの工夫」など、特筆すべき面白ポイントはまだまだあり、できれば紹介したいのだが、全部ここで解説するとネタバレになってしまうので、ぐっとガマン。

興味のある人は、ぜひ『食べ方図説 崎陽軒シウマイ弁当編』を手に入れて読んでみてほしい。

 

あくまで同人誌側でいたいからアマゾンには出さない

『食べ方図説 崎陽軒シウマイ弁当編』を入手できるのは、コミケ、コミティアなどの同人誌即売会と、メロンブックス、COMIC ZIN、とらのあな、まんだらけ、といった同人誌を取り扱う書店。そして、崎陽軒と同じく横浜に本拠地を置く書店チェーン、有隣堂だ。

 

f:id:Meshi2_IB:20180522184744p:plain有隣堂さんは一般書店にもかかわらず横浜のネタということで声をかけてくださいました。都内でも恵比寿の有隣堂さんではレジ横に置いてくれたみたいです。自分的には、蔦屋書店さんとかも、この本と親和性がありそうだとは思うんですけど、自分から売り込むのは違うかなあと思ったり……。基本的には同人誌側の存在でいたいので、たとえばアマゾンとかには出さないつもりなんですよ。

 

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基本は即売会と同人ショップのみ。市島さんがきっちり同人誌のセオリーを守っていることに好感を覚える。

最近は、テレビや雑誌、ネットメディアでも話題になっている『食べ方図説』。その発行部数も気になるところだ。

 

f:id:Meshi2_IB:20180522184744p:plain最初はどのくらい印刷したらいいのか、まったく見当つかなくて。コミケデビューで100部売れたら成功っていう話を聞いて、まずは100部印刷するつもりだったんですが、コミケ直前に一部ネットで紹介されて、もしかしたら100部じゃ足りないかもしれないと思ったり。とはいえ、あんまり調子こいても良くないので、100部よりはちょい多目くらいに刷ったら、午前中で完売してしまいました。これならもう少し頑張れるなということで、2回目はゼロ1個増やすくらいの部数で印刷してみたんですよ。

 

なんと、その2回目のコミケ出展で、食べ方学会はいきなり「壁サークル」(コミケ会場の壁側にサークルスペースを設置できるサークル。大手の常連サークルの多くはこの“壁”である)の地位を得ることとなった。

ジャンルこそ違え、さすがメディアのプロフェッショナル。コミケでブレイクするツボをしっかり押さえていたということかもしれない。そんな食べ方学会の、今後の展開がとても気になる。

 

f:id:Meshi2_IB:20180522184744p:plainコピー本の『食べ方序説 たまごサンド編』(写真下)があるんですが、あくまで準備号という位置づけなので早く完成バージョンを作りたいですね。あと、吉野家、冷やし中華、カツカレーなどの食べ方を一冊にまとめてみたいです。

 

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『崎陽軒シウマイ弁当編3』はないのだろうか?

 

f:id:Meshi2_IB:20180522184744p:plainいやね、出したいんですよ。でも、1号と2号、人選の方向性こそ違いますけど、編集の切り口は一緒じゃないですか。同じやり方で3号目ってアリなのか悩んでいます。2018年は崎陽軒創業110周年なんですよね。記念の年なので、出せたらいいなあという気持ちもありつつ、やっぱり悩んでますね。

 

『食べ方図説 崎陽軒シウマイ弁当編』で目からウロコを2、3枚ほど落とした筆者としては、ぜひ出してほしい。

あのお店がおいしい、あの料理がおいしいと、食べる対象について語ったり、批評したりするのは全然珍しくない。逆に、ひとつの食べものを楽しむとき、できる限りおいしくなるように食べ手側がしている工夫や、その工夫の技術、個性が語られることって、あまりなかった気がする。そこに、ぐいっと一歩踏み込んでいるのが『食べ方図説』だ。

 

ホント、読めば発見の連続なのである。

 

いやー、それにしても市島さんの話を聞いていたら、崎陽軒のシウマイ弁当が無性に食べたくなってきた。シウマイ弁当を買ってきて、『食べ方図説』を参考に、自分なりの食べ方を編み出してみようっと。

 

書いた人:(よ)

(よ)

『味の形 迫川尚子インタビュー』などを発行するマイクロ出版社「ferment books」の編集者で、ベトナム大好きのアジア料理フリーク。ただいま発酵食品についての書籍を製作中。3ヶ月に一度開催されるECODA HEMでのイベント「ろじものや」では「発酵書店」としてポップアップ書店も展開している。

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