まいど憶良(おくら)です。
福井県は坂井市にやって来ました。北陸自動車道丸岡インターから1分。
この、ちょっと高級な感じのお店が、実はすごいんです。
福井の丸岡インターという名前を聞いて、そば好きの方はピンときたかもしれませんが、
ここ「大宮亭」では、おいしい丸岡そばを食べる事が出来ます。
そば屋さんで、「本日のそば 丸岡産」という文字を見たら、何も考えずにのれんをくぐるべしとまで言われる、丸岡産のそばを100%使っているのが自慢。
一体何が他のそばと違うんでしょう。
国産のそばは、たった20%
福井のおいしいものといえば、辛味大根で食べる越前そば、ソースカツ丼、そして谷口屋の油揚げ。ここ「大宮亭」ではこれが全部一度に食べられるメニューもあるんです。
とは言え、ここはそば屋さん。まずはそばについてレポートしましょう。
そばは日本のものというイメージがありますが、日本で作っているそばは大体15~25%で、多くは外国から、特に中国からの輸入に頼っています。
国産のそばって、貴重なんですね。
そばの在来種王国、福井
そばの最大の欠点は育てにくいこと。
同じ面積ならお米を育てた方が何倍も効率がいい。
そして日本固有の在来種のそばは、発芽時期が種によってまちまちのため、米のように一斉に収穫するとまだ育ち切っていないものも混ざってしまうという問題があります。
そのうえ、粒が小さいので、さらに効率が悪いという作物なんです。
そこで大きく、育てやすく、病気に強く、収穫しやすい物へと品種改良が進められたそうです。
ところが、そうやってできたそばはおいしくなくなってしまったそうです。
ご高齢の方が、「昔はそばっていうのはおいしいもんだった」と言うのは、あながち間違いではないんですね。
そこで福井県は、県をあげて在来種を守ってきました。
理由は、在来種がおいしいから。
今や福井は在来種王国として、日本のそば好きに注目される県になっているんです。
粒が小さいからこそ、香りとうまさが詰まっている
そばのうま味や香りは、実の周りの部分に多いそうです。
外国産や国産でも品種改良されたものに比べて実の小さい丸岡産のそばは、逆に言うと実の中の外側の比率が高い品種。つまり、うま味と香りの塊のような品種なんです。
福井県民が、「他県ではそばは食べられない」と言う理由がここにあります。
福井県産のそばは全国でもどんどん評価が高くなってきていて、さらに地産地消も進んで、品種によっては他県には全く出荷されないものもあります。
丸岡産のそばは、福井のそばを全国にアピールするために、一部出荷されていますが、大変貴重なものです。東京や大阪で食べられる丸岡そばが高いのは、こういう理由もあるんですね。
しかし、地元ならこの貴重な丸岡そばが混ざりけなし100%で食べられます。
さて話をしているうちに、そばは石臼でひかれて、こねられていました。
水は最初半分程度を入れて指先でかき混ぜ、
全体に水がいきわたったらさらに1/4を入れて混ぜ、
最後に残りの1/4を混ぜてこね上げて
まとめていきます。
こねあがった状態。その表面はしっとり滑らかです。
これをまずは手で抑えながら丸く広げていきます。
そば打ちの様子は店内からも見られるようになっていました。タイミングが合えば見られるかもですね。
そしてこれをさらに伸ばしていきます。
ある程度まで伸ばすと、細い麺棒でさらに伸ばします。
折りたたんで、
切っていきます。「大宮亭」のそばは少し太めの1.5mmくらい。
これを沸騰したお湯の中へ。
20~30秒程度ゆでると、
水の中へ。驚くほどゆで時間は短いんですね。
流水でぬめりを取り、すぐに
さらに隣の冷水に移してキュッと締めます。
これにより、そばのエッジが立ち、また食感も良くなります。
「辛味大根おろしそば」(900円)。
その麺は艶として、角が立っていて、そして緑色がかっています。
越前そばといえば辛味大根ですが、季節によって、また大根の個体によって、泣くほど辛いと言われています。でも、慣れるともう他の食べ方では満足できないというほど病みつきになる味なんです。
この大根のおろし汁に、福井の大野産の醤油を入れて、これがつゆになります。
ではまず大将のおすすめの食べ方、そばだけを食べます。塩も付けません。
これが、びっくりするほどおいしい。
次にお好みでそばの1/3程度をチョンとつけて。そばつゆではないので、ドブンってつけて食べてもおいしいですよ。おろし汁が絡むと、これまた刺激的な味に。
たまらんです。
後はもう、好きに食べていきましょう。
そうそう、もう一つ大将から聞いたそばの楽しみ方。そばの一部を触らずにそのまま置いておいて、ちょっと水気がなくなって麺の表面が乾いた状態を作ってから、何もつけずに食べてみてください。大将が一番好きな食べ方と言うだけあって、そばのうま味、風味をダイレクトに楽しむことができます。
うむっ! 確かにうまいッ!
福井のうまい物が一度に食べられる
福井のうまい物がセットになった、「丸岡二八そば膳」(1,600円)は、夢のラインアップ。
そばの上にのるのは「谷口屋」でぐぐると出てくる、谷口屋の油揚げ。
お店自体は山の中にあるにも関わらず、観光バスなどが押し寄せる名店。併設するレストランは時として2~3時間待ちになることもある、その谷口屋の油揚げがのったそば。本店のように揚げたてではないですが、表面は香ばしく焼き上げられ、カリッとサクッとして、中はしっとり、ジューシー。納得のおいしさです。
そばと交互に食べ進めます。
そして福井が発祥ともいわれているソースカツ丼(諸説あり)。
福井で一般的に食べられているソースカツ丼は各店舗によりオリジナルのソースがかかっていて、食べ比べるのも楽しい一品。もちろんカツはサクサクです。ここ「大宮亭」のソースカツ丼は、ソース自体もそばと一緒に食べる事を前提にした味付けで、自己主張せず、そばに合う上品な味です。これもあっという間に完食しました。
やれることは全てしてこそ、おいしいそばになる
大将に話をお聞きました。
憶良:ごちそうさまでした。おいしかったァ。早速ですが、このお店が一番こだわっているところはどこですか。
大将:おいしいそばを食べてもらうために、出来る事をとにかくすべてやる事ですね。
憶良:と、いいますと?
大将:そばの実は大きさがバラバラなので、選別して粒をそろえ、皮をむいて、石臼でひいて粉にします。お店で出すそばは前日にひいて当日か、最悪その次の日には出すようにするんです。そばはひきたて、打ち立て、ゆでたてがおいしいので。
憶良:それから気になったのが、福井のそばは緑がかっているんですね。
大将:新そばは緑がかっているというけれど、丸岡のそばはそのなかでも緑色が強いと言われてます。ウチは新そばの時期に一年分のそばを仕入れて、真空パックにしたうえで、専用の冷蔵倉に入れて温度管理をしながら保存してます。そうすることで通年で新そばの味わいが楽しめるんです。
憶良:そうなると、コストがかかるのでは。
大将:コストも大切だとは思いますが、一番なのはおいしいそばを食べてもらうこと。その時々でベストなそばを楽しんでもらうことが、お店を支えてくれる事につながると思って、真っ正直に仕事をするようにだけ心がけています。中には割高な丸岡そばに、外国産のそばを混ぜて、というお店もあるかもしれない。けれど、そういうものは、ここ丸岡に来て、本当の混じりけなしの丸岡そばを食べてみたら、はっきりと違いがわかると思います。私らが心配しているのは丸岡のそば粉を使っているという言い方で、他のそば粉を混ぜたそばを食べた人が、そんなにおいしくはないなぁ、と思ってしまうこと。それは本当に悲しいことです。憶良っていうライターさんが本当のことを言ってるか、大げさに言っているか、ぜひあなたの舌で試してみて欲しい。そのくらいの自信と責任感を持ってそばを提供しています。ぜひ、一度ウチで100%の丸岡二八そばを食べて見てください。
お店情報
丸岡二八そば 大宮亭
住所:福井県坂井市丸岡町里丸岡3-10
電話番号:0776-66-8787
営業時間:11:00~21:00
定休日:水曜日
ウェブサイト:http://www.oomiyatei.com/
書いた人:憶良(おくら)
ゲームプランナー、プロデューサー、CMディレクター、ゲーム企画講師や駄菓子屋店長などを経て現在に至る。日本で一番古いハンドルネーム、OKURAです。休日はよく温泉に行き、その道中では積極的に食べ歩いたり、行先の地元スーパーで珍しい食材を買い込んで料理したりと、食に対してはかなり貪欲。「美味しいものを食べている時、美味しいものについて話している時に、悪いことを考える人はいない」という持論を持つ。
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