まいど憶良(おくら)です。
京都市は下京区にやって来ました。
京都駅から歩いて10分という場所の、市営住宅の1階にちょっと変わったお好み焼き屋さんがあります。
その名も、山本まんぼ
京都には「べた焼き」といわれるご当地お好み焼きがあるんです。
生地を焼いて、その上にキャベツやホルモン、天かすなどをのせていくスタイルです。
この山本まんぼのまんぼ焼きは、このべた焼きが独自進化したもの。
昔ながらのお好み焼き屋さん、
という感じの店内。
メニューは貼りだしてあります。
注文は当然まんぼ焼き
基本のまんぼ焼き(小580円、大680円)には肉、イカ、油かすのどれか1品が入ります。
ここに細かなカスタマイズが出来るのですが、私を含めて初心者の人におすすめは、
マンボ焼きスペシャル(1,020円)。
具材は肉、イカ、ホルモン、油かす、卵、ネギとうどんかそばの全部入り。
そばとうどんは、かなり迷いましたが、そばを選択しました。
実はこの、かなり迷ったというところが後で意外な展開に発展します。
では、まんぼ焼きが出来るまでを見てみましょう。
ラードを引いて、
お肉はミンチでなく、たたいたものを使います。
その上から生地をかけて、
削り鰹と、天かす、ネギ、たくあんが……。
えっ!? たくあん?
浜松の「遠州焼き」にはたくあんが入る事でも有名ですが、他にもたくあんが入るお好みってあったんですね。
そして紅ショウガをのせて
その上からキャベツをのせると思いきや、
キャベツとそば、うどんは生地の外に。
ソースをかけると、
別に炒めます。
ソースの焦げる音と臭いが広がり、胃袋を刺激します。
火が入ったら、焼けた生地の上に重ねます。
このそばは、麺のメーカーさんと共同開発した特別なそばなんです。
細めんでもちっと感が強く、また時間がたつとパリッとした食感も、芯の部分に独特のプリっとした歯応えも楽しめます。
その上にのるのは油かす。
食肉から油をとった後の残りかすという意味ですが、これがまたおいしさが凝縮したものでもあるんです。
まんぼ焼きで使う油かすはみじん切りほど細かく切ったもの。
そこにホルモンを置きますか
ホルモンは、先ほどそばやうどんを焼いてソース焦げがある場所に置かれます。
「えっ? そこに?」と思いましたが、凝縮したソースの上で焼くことで香ばしさもプラスされるんですって。
掃除するのが面倒だからではないんですね。(←大変失礼)
ホルモンがのせられました。
その後、焦げたソースは捨てられ、きれいに掃除されます。
再度生地をかけたら、
ひっくり返します。
この辺、作り方は広島のお好み焼きに通じるものがあります。
混ぜ焼きでなく、重ね焼き。
ぎゅっと押して、しばらく放置します。
ビールがすすむ、うまさの塊
その間にホルモン焼き(450円)が作られます。
ホルモンの上から
キャベツをのせて、チャチャっと味付け、
ギューっと押したら、
最後に一味とネギをのせて出来上がり。
しかも、「えっ?」これだけ? と思うほど量が少ない。
パクリと食べて見ると、おおっ、これはおいしい。
なるほど、好評メニューにしてリピートが多いというのも分かります。
ホルモンの質や、鮮度にもこだわりあり!
こりゃビール(生 500円)が進みます。
一方、まんぼ焼きは
しばらく放置されたまんぼ焼き、ここから仕上げに入ります。
卵は生、半熟、良く焼きから選べますので、今回は半熟を選択しました。
卵を鉄板に置いて黄身に穴をあけて、その上に本体を合体させる。
これもまた広島のお好み焼きと同じような作り方ですね。
秘伝過ぎるソース
先代が作るソースは、秘伝中の秘伝。
息子の現オーナーにもその作り方は秘密というソースは2種類。
その甘口ソースと、
辛口ソースを塗っていきます。
味は、この2つの混ぜ方で、甘口、甘辛、辛口から選べるとの事。
辛さは後から足すことも可能という事で、甘辛にしてもらいました。
ネギをのせると完成です。
人との触れ合いもごちそう
さて、 食べようとしたその時。
隣の常連さんから、「うどんも食べてみ」と声が。
なんと、私が迷ってそばを選択したのを見ていて、半分とっかえっこしてくれました。
常連さんの言うには、
「こんな汚いお店やし、お世辞にも上品な味やないけど、このお店の空気もごちそうやねん。ここへ来たら、一見さんも何にもあらへん。旅行者も、常連さんもみんな友達みたいになってしまう、そこがこのお店のええとこやねんな」
との事。
確かに、次々と来る旅行者の皆さん、昔から知ってた友達同士のように笑いながら話しているところも特徴ですね。
なんだか建物もそういう空気づくりに一役買っている気がします。
さて、まんぼ焼きのお味は?
うまッ!
お好み焼きだと、具材のひとつひとつが、口の中で「私は肉です」「私はイカです」などとその存在を主張するのが当たり前なんですが、
まんぼ焼きは具材全体で、ひとつの融合した味。
油かすも、肉も、たくあんでさえ主張することなく、お互いを支え合ってうまさを作り出しています。
うどんもおいしい。
時間がたつと、生地はもちっとからパリッと、カリッとにその食感を変えていきます。
当然ビールもすすみ、どんどんと食べ進めていきます。
半分ほど食べたところで辛ソースをかけてもらいました。
私は辛いのがおいしかったですが、中には辛すぎるというお客さんもいるそうですから、無理せず、少しづつ足してもらってもいいかも。
だし巻き卵もうまそ~っ
別の旅行者グループさんから、京風だしまき(550円)の追加注文が入りました。
作るところの写真撮っていいですか。
と聞きますと、「どーぞ、どーぞ」と。
出会って間もないにも関わらず、もうお友達モードに。
お好みや、鉄板焼きのお店としては、なかなか高級な「ええ卵」を使うてるんよ。
という卵は、だし巻き以外のメニューにも使われています。
これをコテでくるくると、
まとめていったら
切って、
完成。
紅ショウガ以外、歯がいらないだし巻き
紅ショウガはのせますか?
と聞いてから紅ショウガを散らすと
出来上がりです。
そのお味は、
「うわぁっおいしいっ、なにこれ」
「すごいな、これ」
「紅ショウガ以外、歯がいらないほど柔らかいっ」
など、大盛り上がり。
そこまでうまいなら、私も食べようかと思ったんですが、
「紅ショウガ以外歯がいらない」というコメントを超えるコメントが思いつきそうになかったため、見送りました。
さて、最後の一口。
名残惜しいっ。
いやぁ、おいしかったです。
なんでまんぼ焼き
店長さんにインタビューしました。
憶良:そもそも、まんぼ焼きって何ですか。
店長さん:元々は京都のべた焼きがベースなんですけど、そこにオリジナリティーを加えてウチの味が確立したころに、お客さんの一人があまりのうまさに「う~っ!」とうなりだして、その勢いで、「う~っ! マンボっ!」と叫んでしまったのだとか、形が魚のマンボウに似ていると言われたからだとか、諸説ありです。
憶良:一番の特徴っていうのは何なのでしょう。
店長さん:他所のお店と違うのは、具材を細かく刻むことですね。お子さんからお年寄りまで食べやすく、口に残らないのが特徴です。
憶良:調理へのこだわりはどういうところにありますか。
店長さん:うーん、新鮮な素材を丁寧に仕込んで……、料理人なら誰でもしていることで、特にこれといったことはないかなぁ。
常連さん:何いうてんのん、イカは普通やけど、それ以外はいろいろ工夫してるやん、そんなんを言うたらええんや。
店長さん:イカもええのん使うてるわ。あれ、結構ええやつやねんで。
憶良:卵もって言ってましたよね。
店長さん:そうです、卵もええやつ使うてるし、ホルモンも、えっ、こんな高いの使うてるの? って思ったなぁ。
常連さん:そーそー、そんなん言うたらんと。それから、腕も確かやしな。こう見えて、大阪の料亭に居てたんやで。
憶良:それがまたなぜ京都でお好み焼きを?
店長さん:元々料理が好きで、大阪の料亭で修業したんで和食全般を得意としていたんですけど、なんやかんやで、ここでまんぼ焼きを焼いてます。
憶良:うーむ、そのなんやかんや、気になりますね。じゃあ、料理のテクニックもこのお店で役に立っているという事なんですか。
店長さん:そうですね。発揮できていると思います。
憶良:ホルモン焼きとかだし巻きなんか、めちゃ何気なくちゃっちゃと作った感じがしますが、仕上がりは普通じゃないですものね。
常連さん:それから、何回来ても飽きへん味やな。最初はスペシャルから入って、ソースの辛さを自分好みに注文したり、卵をどうするかとか、具の組み合わせをどうするかとか、そんなんも楽しさのひとつや。
おれなんか、良く焼きの卵に、最後生卵トッピングするんが好き、
みたいに、自分のまんぼ焼き作っていくのも楽しいで。あとやっぱり、常連さんだけやなくて旅行で来た人同士も自然と仲良くなれるこのお店の雰囲気がええなぁ。
店長さん:私もやってて楽しいお店です。あっ、知らない同士が自然と話をしやすいというだけで、無理やり話しに参加させるというのはないので、安心してください。このお店で初めて会った人同士がよし、じゃあ飲みに行こう、なんて肩組んで出ていく、なんて光景も珍しくはないですね。
憶良:旅の思い出も出来そうですね。では、最後に読者さんに向けて何かメッセージをお願いします。
店長さん:ちょっと入りにくいかも知れない、怪しいお店ですが、一度食べに来てみてください。
地域、年を超えて楽しく過ごせるお店が京都駅のこんなに近くにある事にちょっと驚きながら帰途に就きました。
お店情報
山本まんぼ
住所:京都府京都市下京区高倉通塩小路下ル東側 市営住宅内
電話番号:075-341-8050
営業時間:10:00~22:00
定休日:水曜日
書いた人:憶良(おくら)
ゲームプランナー、プロデューサー、CMディレクター、ゲーム企画講師や駄菓子屋店長などを経て現在に至る。日本で一番古いハンドルネーム、OKURAです。休日はよく温泉に行き、その道中では積極的に食べ歩いたり、行先の地元スーパーで珍しい食材を買い込んで料理したりと、食に対してはかなり貪欲。「美味しいものを食べている時、美味しいものについて話している時に、悪いことを考える人はいない」という持論を持つ。
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